2023.7.1 (土)
2023 明治安田生命J1リーグ 第19節
FC東京 × 柏レイソル
( 味の素スタジアム,19:00 )
introduction
- カレンダーは7月に入り、J1リーグ戦は後半戦2試合目となる第19節。我らがFC東京は、前節に引き続き味スタでのホームゲームを迎える。監督交代後最初のゲームとなった前の試合で、名古屋グランパスを相手に2-0の快勝を挙げた東京が今節迎える相手は柏レイソルだ。
- この週末は西日本を中心に大雨が降っており、東京もその影響を受けてあまり芳しくない天気。昼間は雨が止む時間帯もあったが、夕方になって再び小雨が降り出している。ピッチコンディションにはほとんど影響はなさそうだが、湿気をまとう空気が不快感を引き上げており、選手にとっては厳しい条件だ。味スタは観客が雨に濡れないよう南側スタンドの上層席が避難用に開放されていたが、観客も20,571人で、前節と比べると苦戦したようだ。
- 前節、クラモフスキー監督が初めての采配を振るい勝点3を獲得した東京だが、内容面では圧倒的だったものの、今後に対する一抹の不安も残った。それは慣れ親しんだハイプレス&ショートカウンターの戦術は他チームのスカウティングの眼も早く行き渡り、早晩立ち行かなくなるのではないかという懸念である。この1週間はビルドアップの構築に取り組んだようだが、その出来栄えがいかほどか注目される。スタメンは前節とほぼ同じ顔ぶれになったが、唯一、仲川だけは負傷交代の影響があるのか、本日はメンバー外。代わりに塚川がトップ下での起用となりそうだ。
- 本日対戦する柏は現在リーグ16位。シーズン開幕から勝点を伸ばせず、ネルシーニョ前監督は5月にその任を解かれた。代わりに指揮官の座に就いたのは、ヘッドコーチから昇格した井原正巳監督。実績のある新指揮官に託したが、監督交代後もここまでリーグ戦5試合を消化して2分3敗と、未だ勝利が無い。一刻も早く勝点3が欲しいところだろう。
- 東京にとっては勝点3を期待したいところだが、実は柏とのホームでの相性はあまり良くない。味スタでのリーグ戦で柏から勝利した直近の試合を振り返ると、8年前の2015年5月まで遡らなければならないのだ。逆にアウェイでは比較的良い戦績を収めていることから、このカードにおける両チームの「外弁慶」ぶりが窺える。そういった背景から、この試合は順位関係だけでは説明のできない、様々な難しさに直面するものと覚悟しておくべきだろう。
- 柏のスタメンを見ると、攻撃の中心的存在である細谷、サヴィオに加えて武藤がFW登録。直近の試合を見る限り、おそらく4-4-2の布陣を敷いてくることが予想されるが、彼らの並びがどのようになるかが最初の注目ポイントとなりそうだ。
1st half
- スタートの布陣を見ると、東京は前節と同様の4-2-3-1。塚川がトップ下、渡邊が右サイドに入る配置は、前節の仲川交代後の並びと同じだ。対する柏は4-4-2のシステムで、2トップに細谷と武藤が入り、サヴィオは中盤の左サイドに入っている。対面となる右SBの小泉はタフなマッチアップとなりそうだ。
- 前半の立ち上がりは東京がボールを支配し、柏の陣内を攻める。6分、ゴール正面のFKを遠距離ながら松木が直接狙うが、これはGKの松本が好セーブ。その後は東京がCKを立て続けに獲得してゴール前にボールを入れるが、柏が集中した守備でどうにか防ぐ。11分にはロングフィードを起点にディエゴがポストプレイで時間を作り、最後は安部がエリア外から右足を振り抜くがシュートは枠の左。東京が再三にわたりアタッキングゾーンまで侵入するものの、決定機といえる場面をなかなか作れない。
- 東京がチャンスを作れないでいるうちに柏の守備も「秩序」を取り戻し、試合の流れは膠着。両チームのファウルの数も少しずつ増えてきて、試合が止まることが増える。蒸し暑さもあって集中を保つのが少し難しそうだ。29分には柏の陣内で相手選手とぶつかった渡邊がピッチに倒れ込み、治療のため試合が中断。治療に時間を要する間、痺れを切らした柏のゴール裏から拡声器で野次が飛び、東京のゴール裏からは抗議を示すブーイングが上がる。治療中の選手へ野次を飛ばす行為は全く感心できないが、流れが途切れ途切れになり、観客が試合になかなか没入できないのもまた確かだ。
- しかし、この一連のやりとりでスタジアムに多少の熱気が戻ったかと思われた直後に均衡が破れる。35分、ディエゴがポストプレイで収めたボールを長友が受けて左サイドの俵積田へ繋ぐと、俵積田はカットインと見せかけて切り返しから素早く右足でクロス。これがゴール正面のディエゴの頭にピタリと合い、ヘディングシュートがゴール右隅に決まって1-0。ディエゴの2試合連続ゴールで東京が先制する。
- 42分には東京のFKからゴール前の混戦のこぼれ球を俵積田が押し込もうとするが、ゴール右隅を捉えたシュートは松本が好セーブで弾き出し得点ならず。1-0の東京リードで前半終了となる。コントロールの難しい試合だったが、ワンチャンスを決めることができてひとまずは安心だ。後半に柏が攻撃のスイッチを入れてくると思われるため、そのタイミングで集中を切らさないようにしたい。
2nd half
- ハーフタイム明けに柏は早速交代のカードを切る。2トップの一角をなした武藤と右SHの落合を下げ、同じポジションにそれぞれフロートと小屋松を投入。武藤はあまりボールに絡めていなかったし、この試合がJ1初先発だった落合も俵積田との対戦で苦戦していたので、対戦相手側から見ていても理解のできる交代だ。
- 50分、東京は前節にも見せた相手コートからのハイプレスを見せ、最終ラインのエンリケが中盤付近で相手ボールをカット。しかしすぐさまこぼれ球を柏が拾い、最前線のフロートに収めてアタッキングゾーンまで侵入する。これは決定機までは繋がらなかったものの、一連の場面でフロートが見せた前進により、試合の風向きが変わる。56分、柏は右サイドでの小屋松の持ち運びから再びフロートがフィニッシュへ持ち込むチャンス。これもシュートが枠外に外れるが、後半から出てきた2人がボールに絡む場面が多い。
- 東京は渡邊や俵積田がボールを持ち運び、カウンターのチャンスを作ろうとするが、全体が押し下げられた影響で、攻撃に出ても人数が揃わない場面が多い。59分には俵積田のドリブルからディエゴへボールが渡り、ボックス内まで侵入するが、狭い角度からのシュートは枠を捉えられず。東京ベンチは60分に俵積田を下げて東を左サイドに投入。前節と同様にサイドに蓋をする狙いだろう。
- 後半の中盤から終盤にかけては両チームのベンチが忙しくなる。柏は61分に高嶺を下げて戸嶋、75分に椎橋を下げて仙頭を入れ、ボランチ2枚を共にスイッチ。中盤を支配できていることから攻撃センスのある選手を底に入れて組み立てを円滑にする。一方の東京は79分に野澤、84分にペロッチと寺山を投入し、あくまで前線からのプレスにこだわる姿勢だ。
- 85分、東京は自陣内で柏の攻撃を跳ね返した際、相手選手と競り合った森重がピッチに倒れ込む。受傷箇所は不明だが、駆け寄った選手たちがすぐさまストレッチャーを要求するなど、プレイ続行は難しそうな様子だ。東京は後半で既に3回の交代カードを切っており、これ以上の選手交代はできない。即席で松木が最終ラインに下がり、ペロッチを最前線に残した4-4-1で試合を再開する。森重はピッチ外で治療後、足をひきずりながらピッチに復帰するが、最終ラインをコントロールできるような状態ではないので、前線に残り相手のパスコースを切る仕事だけをこなす。
- 事実上の数的有利となった柏は、少ない残り時間で猛攻。中央でフロートが待ち構える中、左サイドでフリーの局面が増えたサヴィオが何度もドリブルでカットインを仕掛ける。追加タイムだけでサヴィオがエリア外から2本のミドルシュートを放つが、いずれも枠を僅かに外れていった。6分の追加タイムは長く感じられたが、どうにか試合終了。東京が前半のリードをしぶとく守りきり、4月以来となるリーグ戦の連勝を達成している。整列後、足を痛めた森重はスタンド挨拶には加わらなかったものの、自らの足で歩いてドレッシングルームへ引き揚げる姿が印象的だった。
impressions
- まさに薄氷の勝利だった。先週の試合であれだけ上手く事が運んで勝利したことで、観る側にとっての期待値だけは高くなっていたが、そういうシチュエーションで迎える試合こそ、えてして苦戦しやすいもの。そして案の定、柏の交代策によって狙いどおりの試合運びをさせてもらえなかった。先述のとおり、柏とのホームゲームは順位など一切関係なしで苦戦させられる傾向があったが、今回もやはり簡単な試合ではなかった。ただ、それでも勝ち切れたことは大きな手応えとなるだろう。
- 試合の入りは悪くなかったが、チャンスを作りきれなかった。蒸し暑さもあってゲームの流れが止まってきて、メンタル的にもコントロールの難しい試合展開になっていたように見えた。しかし、そこで先制点が生まれた。早い時間帯から左サイドでカットインを見せていた俵積田が、先制点の場面ではクロスを選択。クロスの精度も高く、まさに値千金のアシストだったといえるだろう。この試合で初めてのチャンスを確実に仕留めたディエゴは、リーグ戦で早くも2桁の10ゴールに乗せてきた。東京では2019年の14ゴールがシーズン最多得点だったディエゴだが、それを更新する勢いでゴールを量産しているのは非常に頼もしい。残りのシーズンも注目だ。
- 後半は柏の選手交代が的中し、流れが一変。フロートと小屋松の2人が入ったことで、柏が中盤でボールを持てるようになった。東京にとっては中盤でボールを奪いに行かなかったのか、あるいは行けなかったのかはよく分からなかったが、いずれにしても前節あれだけ綺麗にハマっていたハイプレスが、今日の柏相手にはあまり見られなかった。だがそれでもゴール前で跳ね返し、散発ながら相手のゴール前まで運ぶことができたことで、相手の一方的な展開にさせなかった。終盤は森重が負傷して更に苦しい展開になるかと思われたが、システムを柔軟に変更して対処できた。
- これでクラモフスキー監督が就任してからの試合は2連勝。ゲーム内容こそ違いが見られたものの、いずれも無失点で勝ち切っており、守備に安定感が見られるようになってきた。冷静に考えてみれば、アダイウトン、仲川、青木、中村、バングーナガンデなど各ポジションの主力に負傷者が相次ぐ厳しい台所事情でここまでチーム状態を戻してこれたのだから、これは凄いことである。ただ、今節は彼らに加えて森重まで負傷してしまい、チームへ与える影響は気になるところ。長期離脱にならないことを祈りたい。今日の勝利で東京は勝点「25」となり、順位こそ前節と同じ11位のままだが、中位集団との差は縮まってきた。なんとか食らいついていきたい。
- 東京の次節はアウェイで浦和レッズとのアウェイ戦。苦手としている埼玉スタジアムでの一戦は、好調を取り戻しつつあるチームの勢いを試される試合となりそうだ。更にその次の週末には鹿島アントラーズとの試合が待っており、上位チームと立て続けに当たることになる。来週は水曜日に天皇杯の東京ヴェルディ戦もスケジュールされており、負けられない試合が立て続けにやってくる。個人的には浦和戦と東京V戦は現地観戦を見送ることになりそうだが、総力戦でこの連戦を乗り切ってもらいたい。
FC東京 |
1 |
1 | 前半 | 0 |
0 |
柏レイソル |
0 | 後半 | 0 |
|
|
|
ディエゴ オリヴェイラ | 35' | 得点 | | |
GK | 27 | ヤクブ スウォビィク | GK | 46 | 松本 健太 |
DF | 37 | 小泉 慶 | DF | 24 | 川口 尚紀 |
| 3 | 森重 真人 | | 50 | 立田 悠悟 |
| 44 | エンリケ トレヴィザン | | 4 | 古賀 太陽 |
| 5 | 長友 佑都 | | 2 | 三丸 拡 |
MF | 7 | 松木 玖生 | MF | 40 | 落合 陸 |
| 8 | 安部 柊斗 | | 5 | 高嶺 朋樹 |
| 35 | 塚川 孝輝 | | 6 | 椎橋 慧也 |
FW | 11 | 渡邊 凌磨 | | 10 | マテウス サヴィオ |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | FW | 19 | 細谷 真大 |
| 33 | 俵積田 晃太 | | 9 | 武藤 雄樹 |
GK | 41 | 野澤 大志ブランドン | GK | 31 | 守田 達弥 |
FP | 4 | 木本 恭生 | FP | 14 | 小屋松 知哉 |
| 10 | 東 慶悟 | | 17 | フロート |
| 17 | 徳元 悠平 | | 20 | 田中 隼人 |
| 22 | ペロッチ | | 28 | 戸嶋 祥郎 |
| 26 | 寺山 翼 | | 34 | 土屋 巧 |
| 42 | 野澤 零温 | | 41 | 仙頭 啓矢 |
ディエゴ オリヴェイラ | | 35' | 得点 | | | |
| | | 交代 | HT | | 落合 陸 |
| | | 小屋松 知哉 |
| | | 武藤 雄樹 |
| | | フロート |
| | | 警告 | 54' | | 高嶺 朋樹 |
俵積田 晃太 | | 60' | 交代 | | | |
東 慶悟 | | | |
| | | 交代 | 61' | | 高嶺 朋樹 |
| | | 戸嶋 祥郎 |
塚川 孝輝 | | 62' | 警告 | | | |
| | | 交代 | 75' | | 椎橋 慧也 |
| | | 仙頭 啓矢 |
塚川 孝輝 | | 79' | 交代 | | | |
野澤 零温 | | | |
| | | 警告 | 81' | | フロート |
渡邊 凌磨 | | 84' | 交代 | | | |
寺山 翼 | | 84' | | 川口 尚紀 |
ディエゴ オリヴェイラ | | | 土屋 巧 |
ペロッチ | | | | |
東 慶悟 | | 90+2' | 警告 | | | |