2023.5.4 (木)
2023 明治安田生命J3リーグ 第9節
SC相模原 × カターレ富山
( 相模原ギオンスタジアム,13:00 )
introduction
- 大型連休の真っ只中の今日(5/4)は、久しぶりに終日フリー。スポーツ観戦の予定を立てられることになった。そんなわけで早速サッカーの日程をチェックするが、Jリーグは昨日(5/3)に大半の試合を消化しており、今日はJFL以下のカテゴリの試合もほとんど組まれていない。そんな中、J3は3試合が本日にスケジュールを組まれていて、そのうち「SC相模原×カターレ富山」のカードだけは、唯一ふらっと行ける距離にある相模原ギオンスタジアムでの開催である。他に観に行けそうな会場は無く、選択の余地は無い。ほぼ即決で久しぶりのJ3観戦を決定した。
- ギオンスタジアムへのアクセスは自分の中での定番ルート、JR相模線の原当麻駅からの徒歩だ。駅前のスーパー三和で昼食の弁当を調達し、スタジアムで食べるのはもはやルーティーンの一部である。天候にも恵まれ、空は雲ひとつ無い快晴。天気予報によれば最高気温が25℃を超える夏日で、6月下旬くらいの暑さだという。少し汗ばむ陽気ではあるが、少し強めの風が吹いていて気持ちが良く、絶好のスポーツ観戦日和だ。到着したギオンスタジアムは連休中ということもあり、ホーム側やバックスタンドにはそこそこ観客が入っているが、ビジターチームが比較的遠方の富山ということもあり、メインスタンドのアウェイ側は平和そのものだ。
- ホームのSC相模原は前節終了時点で1勝3分4敗、勝点「6」の19位。2021年シーズンにJ2から1年で降格となり、再昇格を狙ってJ3を戦った昨季は、選手の大幅な入れ替えも響いて屈辱的な最下位フィニッシュ。今季は理論的なサッカー解説に定評のあった元日本代表の戸田和幸新監督が就任し、立て直しを図りたいシーズンだが、第2節の福島ユナイテッドFC戦(2-1)以降は勝利から見放されており、ここまでは苦しい戦いが続いている。ただし負け試合は全て1点差であり、この僅差を詰めることができれば一気に好転する可能性も秘めているともいえそうだ。昨日に行われた他会場では、相模原と同勝点で最下位のY.S.C.C.横浜が勝利して相模原を抜き、相模原は暫定ながら最下位に後退している。まだシーズン序盤ではあるが、今季からは久々にJ3とJFLの入れ替えが発生するレギュレーションとなっており、自動降格の危険性がある最下位はあまり居心地の良い順位ではない。なるべく早い段階で上の順位に上がっておきたいところだろう。
- 対するカターレ富山は前節を終えた段階で5勝1分2敗、勝点「16」で首位に立っている。昨季は2014年シーズン以来のJ2復帰に向けて挑んだものの、夏場以降に急ブレーキとなり、失意の6位フィニッシュ。今季は前年途中から指揮官に就任した小田切道治監督のもとでリスタートを切り、ここまでは上々の戦績だ。前節は同じくJ2昇格を争う松本山雅FCをホームで3-0と撃破して波に乗っているが、昨日に行われた他会場では勝点2差以内で富山を追走する奈良クラブ・愛媛FC・AC長野パルセイロが全て勝利を挙げて富山を追い抜いており、暫定で4位に後退している。今節も勝利して首位をキープすることができるか、「首位の重圧」との闘いでもある。
1st half
- ホームの相模原は4-2-3-1のシステム。1トップには世代別の日本代表経験がある栗原が入り、ポスト役を担う。攻撃の仕掛けは2列目の若林・前田・佐相の3人が中心となりそうだ。一方の富山は4-4-2。2トップの一角には今季既に5得点を挙げているストライカーの高橋がいて、彼にいかに点を獲らせるかが鍵を握る。ちなみに富山のGKは今季これまで全試合フル出場の田川の先発が発表されていたが、試合前にアクシデントがあったらしく、控えに入っていた40歳のベテラン・柴崎が急遽スタメンで登場。柴崎は昨季1年間だけ相模原に所属していたため、期せずしての古巣対決だ。
- 10分、相模原は中央の吉武から左サイドの若林へ展開すると、若林がドリブルでハーフスペースまで侵入。グラウンダーでマイナスに折り返し、ニアに走りこんだ佐相がスルーして潰れると、その先でフリーとなっていた吉武がエリア外から右足を振り抜く。すると弾丸のような勢いのパワーシュートがゴールの左上に突き刺さり1-0。吉武が自ら起点となって作ったチャンスを最後に仕留めてみせ、相模原が貴重な先制点を奪う。やや強い風が吹く中でのキックオフとなり、前半の相模原は風上に立つことになったが、追い風要素を差し引いたとしても圧巻のミドルシュートだった。
- 先制を許した富山はサイドを使って押し上げたいが、相模原は人数をかけた守備でサイドに蓋をする。富山の右サイドにはドリブルでの縦の突破が持ち味の松岡がいて、ここを突破口としたい様子だが、相模原もそれを分かっていて複数人で松岡に対応。松岡は中に絞って組み立てに参加するなどの工夫も試みるが、攻撃が全体的に中に偏り、幅を使った攻撃が出来ない。
- それでも前半の終盤にかけては富山がチャンスメイク。32分、富山は左CKを柳下が頭で合わせるが、シュートはGK・川島がセーブ。41分には左サイドからのクロスを相模原の選手がクリアしたボールが味方に当たり、これを拾った高橋がシュートしたこぼれ球を大山が押し込もうとするが、ライン上でDFがクリア。相模原がギリギリで持ちこたえ、1-0で前半終了となる。先制点の場面以外には相模原のチャンスはほとんど無かったが、守備では高橋への供給路を徹底的に断ち切り、完全に崩されるような場面は無かった。富山としてはこの拮抗した状況を打破したい。
2nd half
- 後半は富山が風上となり、追い風を受けながら攻める展開。早い時間帯でFWの切り札でもある大野を投入し、松岡をサイドに張り付けることで、サイドの幅のある攻撃を作っていく。相模原は栗原のポストプレーでなんとか相手陣内で時間を作りたいが、味方のサポートが乏しく、ボールは必然的に富山が拾う展開となる。しかし富山も追い風をなかなか利用できず、ロングパスが流されて味方に合わない場面が多い。
- 69分、富山は自陣からCBの大畑がミドルゾーンまで持ち上がり、ゴール前へ長い距離のフィードを蹴ると、これが風に乗ってぐんと伸びていくのに反応した高橋が抜け出す。コースを狙った「当てるだけ」の丁寧なヘディングシュートがゴール右隅に決まり1-1。逆転を狙うのであればそろそろ1点が欲しい時間帯に、富山がシンプルな形で同点に追いつく。長距離のパスに苦しんでいたが、ようやく追い風を味方につけることができた。
- 久しぶりの勝利に向けて光が見えつつあった中で一発を許してしまった相模原は、選手交代で仕切り直し。75分にトップ下の前田を下げ、前節のギラヴァンツ北九州戦(1-1)で1点ビハインドの試合終盤に値千金の同点ゴールを決めた藤沼を投入する。76分にはその藤沼が起点となり、若林がハーフスペースから折り返しの場面を作るが中で味方に合わず。フレッシュな藤沼の仕掛けもあってリズムは良くなってきた相模原だが、終盤になってパスの精度はかなり落ちている。
- 試合をひっくり返す1点が欲しい富山は終盤に圧倒的な攻勢。81分、スローインから相手陣内でボールを受けた途中出場のマテウスがPA内に侵入してシュートへ持ち込むが、精度が低く枠の上。86分にはCKの流れからゴール前に攻め残っていたDFの今瀬が右サイドからのクロスにドンピシャのヘディングシュートを放つものの、GKの川島が弾いてゴールを割らせない。
- 終盤はパワープレー気味にロングボールを増やして強引に1点を狙いに行った富山だが、やはり時折吹く強い風を上手く読み切れず、味方がゴール前に走り込んでいながら、ボールが流れて無情にもゴールラインを割ってしまう場面が多かった。結局、1-1のまま試合終了のホイッスル。その瞬間、両チームの選手がピッチに倒れ込む姿が、見た目以上にタフなゲームであったことを物語っていた。
impressions
- 相模原が序盤で得たリードを元手に、どうにか勝点「1」をキープした試合だった。下位に沈む相模原と、首位争いに絡む富山と対決ということで、戦前からなんとなく富山優位の展開になるのかなと予想をしていたが、相模原が先制したことで、どのような結末を迎えるのか全く読めない試合となった。前半は相模原が厳しい守備を披露して富山の攻撃をほぼパーフェクトに抑え込んだが、前線で時間を作れなかったことで後半は富山のワンサイドゲームになった印象。それでも富山の反撃をどうにか同点までで食い止められたのは、相模原の前半の「貯金」が生きたからともいえるし、富山の攻撃にあとひと工夫が足りなかったからともいえる。総合的に見れば、ドローという結果は妥当だったのではないだろうか。
- 相模原はそこまで悪い試合運びだったとは思わない。先制点を取ったことでリードを手堅く守るというゲームプランが明確になり、それを途中までは遂行できていた。しかし、強力なアタッカーを揃える富山を前に80分間を守り抜くというのはかなり難しい。お決まりのフィニッシュパターンや個人技による局面の打開があれば話は違うが、そういった引き出しも現状では多くは無さそうに見えた。この試合で相模原が放ったシュート本数が僅か「4」だったことも、それを如実に表しているといえるだろう。最少失点で乗り切り、勝点「1」をキープできたことは大いに評価されるべきだと思うが、戸田監督には試練の日々が続きそうだ。今日得点を挙げた吉武や、途中出場の藤沼は今後のキープレイヤーとなってきそうだと感じた。
- 個の力という点においては、富山に一日の長があったと感じる。ロングパス一本で獲りきった高橋の同点ゴールはその最たるものだろう。苦しい展開でもたった一本の良いパスを1点に繋げられるのは、高橋という強力な得点源を擁する富山の強みだと感じた。一方で、同点とした後に最後まで相模原を自陣に押し込め、ボディブローのように攻撃は続けていたが、クロスの精度に関しては安定せず、追い風という気象条件を完全には味方につけきれなかった印象だ。ハーフスペースの崩しを増やすなど、柔軟性が今後は必要になってくるのかもしれない。アウェイで先制を許す展開にも関わらず、最低限の勝点を持ち帰ることができたのは収穫といえるだろう。
- 本日の結果を受け、混戦が続くJ3の上位争いは再び順位が変動。JFL昇格組の奈良が首位に立ち、勝点「1」にとどまった富山は4位へ後退となった。相模原は今節を終えての順位では最下位転落を免れたが、予断を許さない順位であることに変わりは無い。引き続き厳しい戦いが続くだろう。今週末はリーグ戦がお休みとなり、天皇杯予選が行われる。相模原は神奈川県予選、富山は富山県予選の決勝戦を予定しており、メンバーのやり繰りが今後のチーム状態にどう影響するか、各クラブのファンは要注目だ。
- 個人的には、久しぶりに飛田給以外のスタジアムへ足を運び、良い気分転換になった。しばらくJ1以外のカテゴリをしっかりと観られておらず、各チームの状況にはかなり疎くなってしまったが、全く観ずにいるとそれこそ「別世界の出来事」になってしまうし、身体も衰える一方なので(笑)、このようなインプットの機会で現地に足を運ぶのはとても大切だと思っている。また時間を作って、色々なカテゴリの試合をチェックしていきたい。
SC相模原 |
1 |
1 | 前半 | 0 |
1 |
カターレ富山 |
0 | 後半 | 1 |
|
|
|
吉武 莉央 | 10' | 得点 | 69' | 高橋 駿太 |
GK | 16 | 川島 康暉 | GK | 1 | 柴崎 貴広 |
DF | 17 | 伊藤 恵亮 | DF | 20 | 大山 武蔵 |
| 2 | 加藤 大育 | | 3 | 大畑 隆也 |
| 4 | 山下 諒時 | | 5 | 今瀬 淳也 |
| 8 | 橋本 陸 | | 19 | 柳下 大樹 |
MF | 13 | 吉武 莉央 | MF | 8 | 松岡 大智 |
| 25 | 田中 陸 | | 17 | 坪川 潤之 |
| 22 | 佐相 壱明 | | 16 | 末木 裕也 |
| 15 | 前田 泰良 | | 27 | 吉平 翼 |
| 20 | 若林 龍 | FW | 39 | 高橋 駿太 |
FW | 26 | 栗原 イブラヒム ジュニア | | 13 | 安藤 由翔 |
GK | 21 | 竹重 安希彦 | FP | 4 | 神山 京右 |
FP | 3 | 水口 湧斗 | | 6 | 碓井 鉄平 |
| 9 | 藤沼 拓夢 | | 9 | 大野 耀平 |
| 14 | 安藤 翼 | | 10 | マテウス レイリア |
| 23 | 左部 開斗 | | 22 | 椎名 伸志 |
| 24 | 牧山 晃政 | | 24 | 大森 大地 |
| 28 | 佐野 陸人 | | | |
吉武 莉央 | | 10' | 得点 | | | |
佐相 壱明 | | 19' | 警告 | | | |
前田 泰良 | | 29' | 警告 | | | |
| | | 警告 | 33' | | 坪川 潤之 |
| | | 交代 | HT | | 柳下 大樹 |
| | | 大森 大地 |
伊藤 恵亮 | | 56' | 交代 | | | |
牧山 晃政 | | | |
| | | 交代 | 57' | | 安藤 由翔 |
| | | 大野 耀平 |
| | | 交代 | 67' | | 坪川 潤之 |
| | | 椎名 伸志 |
| | | 吉平 翼 |
| | | マテウス レイリア |
| | | 得点 | 69' | | 高橋 駿太 |
| | | 警告 | 70' | | 大森 大地 |
| | | 交代 | 80' | | 末木 裕也 |
| | | 碓井 鉄平 |
栗原 イブラヒム ジュニア | | 90+1' | 交代 | | | |
安藤 翼 | | | |
若林 龍 | | | |
水口 湧斗 | | | |