2023.4.15 (土)
2023 明治安田生命J1リーグ 第8節
FC東京 × セレッソ大阪
( 味の素スタジアム,16:00 )
introduction
- 本日は久々にリーグ戦の現地観戦である。東京のリーグ戦を最後に現地で観たのは第2節のアウェイ・柏戦で、およそ1ヵ月半ぶり。この間、ホームゲームも2試合開催されたが、いずれも都合がつけられず、泣く泣く年間チケットをリセールに回して欠席した。気が付けば今節は第8節。既に全日程のおよそ4分の1を消化しようかという段階に来ている。序盤戦の順位がめまぐるしく入れ替わる混沌とした状況が落ち着いてきて、上位と下位の差が明瞭に表れはじめる時期だ。現在リーグ8位のFC東京は、ホームの味スタに現在12位のセレッソ大阪を迎えての試合である。
- 今日の天気は朝から悪く、強い雨が延々と降り続いている。気温も4月中旬にしては低めで、冬用のジャケットを引っ張り出して万全の服装で飛田給へと向かった。リーグ戦ということもあって駅からスタジアムまでの道はそこそこ混雑していたように見えたが、実際の入場者数は16,939人と少なめだった。この雨と寒さのもとでは仕方ないとはいえ、さすがにリーグ戦で20,000人に届かないのは、少し寂しいものがある。
- 4月に入ってからの東京の成績は良くない。4/1に行われたアウェイ・鳥栖戦で終了間際のミスによる失点により0-1の敗戦を喫すると、4/9のホーム・湘南戦も2-2とドロー。このドローも湘南の縦に速いサッカーに終始圧倒されて内容的には完敗といって良いものだった。リーグ戦では現在3試合連続で勝利から見放されており、アルベル監督体制2年目のシーズンとしては悩ましい状況が続いている。
- 東京にとっての好材料は、シーズン開幕直後に怪我で戦列を離れた選手たちが戻ってきていることだ。中村・安部・渡邊といったチームの中心を成す選手が前節の試合からメンバーに復帰。今節はこの3人が全てスタメンに名を連ねている。一方で東がベンチスタートとなっており、どのようなシステムで臨むのかも気になるところ。またペロッチや熊田といったストライカータイプの選手も、今日はベンチ外となっている。
- 一方のC大阪は、今季は前節を終えて2勝2分3敗と負けが先行。オフシーズンには昨季横浜F・マリノスで得点源となっていたレオセアラや、アビスパ福岡のジョーカー的存在だったクルークス、2010年シーズン以来13年ぶりのJリーグ復帰となる香川など、主に攻撃的なポジションで積極的な補強を行ったが、ここまでは思うような結果が出ていない。どちらのチームにとっても復調のために勝点3を掴みたい試合である。
1st half
- スタートの並びを見ると、東京は小泉と松木がボランチに並ぶ4-2-3-1のシステム。今季は状況に応じてシステムを使い分けている東京だが、今日に関してはややバランスを意識した感じだろうか。対するC大阪も4-2-3-1でスタートするが、左のアタッカーに入っていたカピシャーバが開始8分で早々にクルークスに交代。足を痛めた様子で、C大阪にとっては予想外のアクシデントである。
- 東京は後方でボールを保持し、縦にボールをつけようという意識を見て取れるが、C大阪が高い位置からプレスをかけてきて、なかなか中盤で前を向くことができず。裏を狙った中長距離のパスや、両サイドバックを使った仕掛けが主体となる。たまに良いパスが入ってボックス付近まで侵入する場面もあるが、C大阪のプレスバックが早い。雨もあってボール扱いに苦心しているのも要因かもしれない。
- 最初のチャンスは22分。東京は相手陣内まで攻め込み、一度は奪われるものの、安部がプレスをかけて即時奪回。左からサポートした渡邊にパスが通り、GKの鼻先で折り返したラストパスにディエゴが飛び込むが、僅かにタイミングが合わない。東京が絶好のチャンスを逃す。するとC大阪も直後の23分に左サイドを追い込んでのボール奪取からカウンター。香川のスルーパスにレオセアラが抜け出し、エリア内でフィニッシュに持ち込むが、森重がすんでのところでカットして難を逃れる。
- その後も東京が時間を作るのに苦しみながらも攻める構え。33分にはアタックゾーンを横に揺さぶり中村がハーフスペースまで侵入して折り返したり、38分には仲川が巧みなキープで中盤での時間を作るなど、局所的に良いプレーは見られるが、いずれも決定機とはならず。
- 41分には木本のロングフィードに中村がぎりぎり追い付くと、内側のレーンを走ってボールを受けた松木が強烈なミドルシュート。これはGKが正面で押さえるが、ピッチ条件も考慮すれば悪くないアイデアだ。一方のC大阪も43分にレオセアラがPA外からミドルを狙うが、これも枠は捉えず。前半はこのまま0-0で終了する。守備優位の試合展開となっており、華麗な崩しからのゴールなどは正直期待できるような内容ではない。ショートカウンターやセットプレーが明暗を分けそうな予感がする。
2nd half
- 後半は立ち上がりに両チームにチャンス。まずは47分、C大阪は松田が香川に速いパスをつけると、これを香川がクルークスにラストパス。クルークスがゴールマウスのニアハイを狙ったパワーシュートを狙うが、スウォビィクが僅かに触ってCKに逃れる。松田・香川・クルークスの3人の特長がよく表れたフィニッシュワークだ。東京も51分に渡邊が左からカットインしてコントロールショットを狙うが、こちらもゴール右隅をかすめるように外れ、得点にはならない。
- 54分、C大阪は左サイドでFKを獲得。これを山中がゴール前へシュート性の速いクロスで送り込むと、ゴール前の密集でコースが僅かに変わり、スウォビィクが触れずにゴールイン。C大阪がセットプレーで0-1と先行する。誰がコースを変えたのかよく分からなかったが、得点のアナウンスによると奥埜だったようだ。
- 東京にとってはほぼイーブンな展開だっただけに、セットプレーで先制を許したのは痛い。失点直後に仲川を下げてアダイウトンを投入。アダイウトンの突破力で相手の守備をこじ開ける狙いだろうが、本来これは0-0の状況で打ちたかった手だろう。まだ時間はあるので焦りは禁物だが、なんとなく相手より先に全体の間延びが始まった感がある。良くない流れだ。
- 68分、東京は自陣でのボール回収から右サイドの中村へ展開。この時点でC大阪のバックラインは既に人数が揃っており、得点は難しいシチュエーションだ。しかし中村がアーリー気味に中央へフィードを送ると、エリア外ながらゴールほぼ正面に位置取りしていた渡邊が相手DFを背負いながら胸トラップし、振り向きざまに右足でボレーシュートを放つ。今日味スタでこの場面を目撃した人のうち、このシュートが枠内を捉えることを予期できたのはどれくらいの数だったろうか。果たしてGKの金鎭鉉はほとんど反応することができず、強烈なシュートがゴールネットに突き刺さるのを横目に見送るだけだった。スタンドもそれがゴールだと認識するのに一拍必要なほどだったが、すぐさま地鳴りのような歓声がスタンドに響き渡った。渡邊の超絶ゴラッソにより、東京が1-1のタイスコアに戻す。
- 同点とした直後からゴール裏は「LA EDOGAWA」の大熱唱となり、逆転に向けて雰囲気を作っていく。東京は77分に渡邊を下げて俵積田を右サイドに投入し、ドリブルでサイドを攻略する構え。81分にはその俵積田が右サイドを狙い通りにドリブルで切り裂いてハーフスペースまで切れ込むが、折り返しをニアで合わせた安部のシュートは惜しくも枠を右に外れ、絶好のチャンスを生かせない。
- 「逆転まで持っていけるかは分からないが、流れは来ている」。少なくとも自分はそう思いながら試合の経過を観ていたのだが、その直後にエアポケットが待っていた。84分、C大阪は山中が左サイドで起点となり、クルークスに代わって途中出場していた上門がサイドに流れた所へパスを送ると、対応の遅れた東京に対して上門が悠々とグラウンダーで折り返し。ゴール正面でフリーだった奥埜がダイレクトで合わせて流し込み1-2。再びC大阪が一歩前に出る。全体が前がかりになっていた影響か、東京は前から奪いに行った逆手をとられてしまった。なんともあっさりとした、腰が砕けてしまうような失点である。
- 東京はディエゴと安部を下げて塚川と東を投入。アダイウトンが最前線に入るのかと思いきや、塚川を頂点にした4-1-2-3にシステム変更する。様々なポジションに対応できる塚川を実質的なFWで起用する采配は理解できなくはないが、単純に今まで見たことがなく、本当に準備してきた形なのかちょっと疑わしい。僅かな残り時間で攻勢をかける東京だが、その塚川にも思うようにボールを収められず、後半ATに得たCKからの混戦も東のシュートが跳ね返されて万事休す。そのまま1-2でタイムアップとなり、ホーム側スタンドからは不満を示すブーイングが鳴り響いた。
impressions
- ホーム・味スタで、今季初めての敗戦。チームの苦境を象徴するかのような結末となった。先制点を与えて苦しくなったのは間違いないが、最高の形で同点に追いつき、逆転に向けたムードも作れていた。逆転までは難しくても内容的には少なくともドローで終えていなければ試合だったし、東京の実力ならばそれは充分に達成可能なミッションだったはずだ。試合後にスタンドから上がったブーイングは、試合内容を考えれば少し厳しすぎるようにも思えたが、最低限確保すべき勝点すら得られなかったチームの詰めの甘さに対する不満の表れなのだろうと解釈する。
- 途中までの戦い方は、それほど悪くはなかった。ピッチ条件が悪くボール扱いが難しい中、相手のプレスに苦しみながらも浮き球を使ったパスに活路を見出し、単発ではあるが良い形は作れていた。システムも4-2-3-1と守備に重きを置いた形を採用し、(途中までは)流れの中で決定的なチャンスを作らせることはあまりなかったと思う。惜しむらくはセットプレーで先制を許してしまったことだが、渡邊の圧巻のゴールで同点に追いつき、幸いにも負債はチャラにできていた。
- しかし、同点にした後に後方が疎かになってしまった。C大阪の2点目の場面を見返すと、起点となったサイドバックの山中がボールを持った時点で中村がミドルゾーン付近までプレスをかけに釣り出され、裏のスペースへ走った上門は完全なノーマーク。俵積田が慌ててカバーに回ったが、時既に遅しだった。この局面の責任を特定の誰かに求めることは避けたいが、勝ちを追い求める過程でチーム全体としてリスクマネジメントの意識が薄れてしまっていた可能性は否定できないのではないか。
- 終盤の塚川のFW起用については、試合後のアルベル監督のインタビューを読む限り、ディエゴがアクシデントを抱えていたことが理由だったようだ。そういう意味では仕方ない起用ともいえるが、そもそもディエゴの代わりをベンチに置かなかったのは何故なのか、という疑問が次に湧く。アルベル監督曰く、ペロッチはコンディション不足、熊田は「まだ若手だから」というのがベンチ外の理由らしいが、これまで積極的に若手を起用してきた指揮官が「若手だから」という理由で熊田を外すのも不可解だ。あらゆるシチュエーションを想定したメンバー選考ができていたか、という点においても疑問の残る試合だった。
- 現時点で最も心配なのは、「ドローで終えられた試合を無駄に落とすことでチームが自信を無くし、焦りが生まれ、遂にはドローすら覚束なくなる」という負のスパイラルである。内容が破滅的に悪いわけではないのでまだ静観したいが、4月に入ってからの2敗(鳥栖戦と今日のC大阪戦)は、いずれも「戦い方次第ではドローにできたのに、落としてしまった試合」だった。昨季以上の結果を求められるシーズンでこういう敗戦が続くのはシンプルに悔しいし、またリーグ開幕時からの落差が激しくて不安になる。今後は中3日でルヴァンカップの試合があり、来週末には現在リーグ戦5連勝中と絶好調のサンフレッチェ広島とのアウェイ戦が控えている。これ以上上位に離されないためにも、メンタル面も含めた立て直しに期待したい。
FC東京 |
1 |
0 | 前半 | 0 |
2 |
セレッソ大阪 |
1 | 後半 | 2 |
|
|
|
渡邊 凌磨 | 68' | 得点 | 59' | 奥埜 博亮 |
| | | 84' | 奥埜 博亮 |
GK | 27 | ヤクブ スウォビィク | GK | 21 | 金 鎭鉉 |
DF | 2 | 中村 帆高 | DF | 2 | 松田 陸 |
| 4 | 木本 恭生 | | 22 | マテイ ヨニッチ |
| 3 | 森重 真人 | | 24 | 鳥海 晃司 |
| 17 | 徳元 悠平 | | 6 | 山中 亮輔 |
MF | 37 | 小泉 慶 | MF | 25 | 奥埜 博亮 |
| 7 | 松木 玖生 | | 4 | 原川 力 |
| 39 | 仲川 輝人 | | 16 | 毎熊 晟矢 |
| 8 | 安部 柊斗 | | 8 | 香川 真司 |
| 11 | 渡邊 凌磨 | | 27 | カピシャーバ |
FW | 9 | ディエゴ オリヴェイラ | FW | 9 | レオ セアラ |
GK | 41 | 野澤 大志ブランドン | GK | 31 | 清水 圭介 |
FP | 5 | 長友 佑都 | FP | 3 | 進藤 亮佑 |
| 10 | 東 慶悟 | | 7 | 上門 知樹 |
| 15 | アダイウトン | | 11 | ジョルディ クルークス |
| 33 | 俵積田 晃太 | | 17 | 鈴木 徳真 |
| 35 | 塚川 孝輝 | | 20 | 加藤 陸次樹 |
| 44 | エンリケ トレヴィザン | | 41 | 中原 輝 |
| | | 交代 | 9' | | カピシャーバ |
| | | ジョルディ クルークス |
| | | 警告 | 45' | | 山中 亮輔 |
| | | 得点 | 59' | | 奥埜 博亮 |
仲川 輝人 | | 63' | 交代 | | | |
アダイウトン | | | |
| | | 交代 | 65' | | 毎熊 晟矢 |
| | | 中原 輝 |
渡邊 凌磨 | | 68' | 得点 | | | |
| | | 交代 | 76' | | ジョルディ クルークス |
| | | 上門 知樹 |
渡邊 凌磨 | | 77' | 交代 | | | |
俵積田 晃太 | | | |
| | | 得点 | 84' | | 奥埜 博亮 |
ディエゴ オリヴェイラ | | 86' | 交代 | | | |
塚川 孝輝 | | | |
安部 柊斗 | | | |
東 慶悟 | | | |