2023.2.18 (土)
2023 明治安田生命J1リーグ 第1節
FC東京 × 浦和レッズ
( 味の素スタジアム,14:00 )
introduction
- Jリーグ開幕の週末がやってきた。ここ近年は自分が歳をとったせいもあり、オフシーズンが随分と短く感じられるようになったが、このオフに関してはワールドカップがあった関係で3ヶ月半という長い休みだったので、さすがに少し待ち侘びた感がある。この週末は季節外れの暖かさに恵まれ、サッカー観戦にも好条件。我らが東京の開幕ゲームは、ホームの味スタに浦和レッズを迎えての一戦だ。
- 入場に時間がかかるかもしれないため早めに家を出たが、久々に降り立つ飛田給の駅は大混雑。さすが浦和サポーターの動員力・・・と舌を巻くが、よくよく見てみるとサッカー観戦とは異なる様子の客層も混じっていて、若い女性が多い。どうやら味スタ隣の武蔵野の森総合スポーツプラザで別のイベントがあるようだ。人波に乗りながら味スタに到着。
- 今季から味スタのバックスタンドは全て指定席となり、自分の年間チケットも通年で同じ席が指定されている。チケット申込時にだいたいのエリアを指定して希望できるようになっていたため、概ね望みどおりの配席だ。座席確保の必要が無くなったのは本当にありがたい。バック上層の後列に座る自分の周囲は思った以上に空席が多く、開幕戦でもこれだけしか入らないのかと少し残念に思ったが、発表された観客数は38,051人とかなりの入り。この数だと、自由席だったら空席を探すのには少し難儀しただろう。どれだけの空席が「荷物」で潰されていたかが可視化されただけでも、指定席化の意味はあったのかもしれない。
- 今季の味スタはマスク着用を条件に、全席で声出し応援が可能。もちろん選手入場前のユルネバを歌うのもOKだ。声を出して歌ったのは実に3年ぶりのことだが、喉を使わないうちに相当衰えていたようで、嘘みたいに声が出なくなっていた(笑)。そんなユルネバを掻き消すように浦和サポーターのブーイングと大声援が響き渡るものの、嫌な気持ちは特に無く、むしろこれだけ来て盛り上げてくれてありがたいと思える。
- 今季の東京はアルベル監督の就任から2シーズン目。昨季はいわゆる「種蒔き」のシーズンで、クラブとして成績面での目標は掲げずに戦ってきたが、今季はタイトルレースに絡むような結果を求めていきたい1年。昨季の主力はほぼ全てチームに残り、新加入選手が加わったことでどれだけ積み上げができるか期待したい。注目のスタメンには新加入の仲川と小泉が入った一方で、今季もキャプテンを務める森重がメンバー外。事前情報も無かったので心配だが、試合をする上では、長期離脱から戻ってきたエンリケがいるので大きな穴にはならないはずだ。中村・木本・松木・安部・渡邊といった「若い背番号」に変わった選手たちにも、昨季以上の活躍が期待される。
- 対する浦和は、今季から指揮官に招聘したポーランド出身のスコルジャ新監督が公式戦の初采配。戦術は前任のロドリゲス監督時代から踏襲している部分が多く、継続性があると聞く。このオフはいわゆるビッグネームの移籍加入は無かったものの、全体的に層が厚くなった印象だ。スタメンにはヨーロッパ国籍の外国人選手が4人名を連ねており、特にホイブラーテンとショルツのCBコンビの壁が厚そう。ユンカーや江坂といった昨年の主力が抜けた前線は、昨季から在籍しているリンセンが1トップを張りそうだ。
1st half
- スタートのシステムは東京が4-1-2-3、浦和が4-2-3-1。発表されたスタメンから想定されるとおりの並びだ。最初に「らしさ」を見せたのは浦和。守備では東京のポゼッションに対して高い位置から圧力をかけ、奪うことができれば速攻狙い。攻撃は時間も手数もあまりかけない組み立てが多く、縦の意識が強い。モーベルグと大久保の両サイドアタッカーの仕掛けに加え、酒井と明本の両SBも積極的に前へ出てくるので厄介だ。8分には中盤でのパスカットから明本が攻め上がり、PA至近まで運んで直接FKを得るが、このチャンスは生かせず。その後もリンセンが裏を取る動きなどを見せるが、東京も高めのライン設定と帰陣の早さでカバーする。
- 東京の攻撃はサイド起点が多く、浦和がサイドを埋めていても狭いスペースを連携で崩していく形。仲川とアダイウトンはやや内側のレーンを意識したポジショニングでSBの攻撃参加を促している。14分にはバングーナガンデが左サイドをフリーで攻め上がり、鋭いグラウンダーの折り返しを入れるが味方に合わず。33分にはバングーナガンデが左サイドを1人で突破し、パスを受けたアダイウトンがカットイン気味にドリブルで前進するが、ディエゴへのラストパスは通らない。38分には自陣でのボール奪取からアダイウトンにボールが渡りファストブレイクが発動するが、浦和の帰陣が間に合いフィニッシュに持ち込めず。仕上げの部分が少し噛み合わない。
- 42分、東京は相手陣内でのボールロストからカウンターを受けるところで東が相手選手を止めてファウル。東は既にイエローを1枚貰っており、浦和の選手は笠原主審に激しく2枚目を要求するが、カードは出ず。東京は命拾いだが、ネガティブトランジションで苦戦しているのは事実だ。
- 前半ATには右サイドの仲川が起点となり、ディエゴがオーバーラップしてきた中村にスルーパスを通してハーフスペース深くまで切り崩すが、速いボールの折返しはこれも中で合わず。前半最後のチャンスを生かせず、0-0でハーフタイムに入る。東京にもチャンスはあったが、バックラッシュのリスクが内在する危うい展開だった。後半に修正はできるだろうか。
2nd half
- ハーフタイム明けから、東京が交代カードを切る。既に退場にリーチがかかっている東を下げ、今日はベンチスタートとなっていた安部がイン。中盤の並びがどうなるのかと注目して観ていたところ、小泉と松木がそのままボランチに下がり、安部がトップ下に立つ4-2-3-1にシステム変更した。狙いが浦和のカウンター対策にあることは言うまでもないだろう。
- 決定機はすぐさま訪れる。48分、左サイドからのグラウンダーのクロスをハーフスペースで受けた仲川が、ニアをパワーシュートで狙う。これはクロスバーを叩き、移籍加入後初ゴールとはならないものの、さっそくのチャンスメイクとなった。東京は高い位置からのプレスが機能するようになり、徐々に浦和陣内でのプレー時間が長くなっていく。
- 66分、東京は左サイドに開いてボールを受けたバングーナガンデが、ハーフスペースに走り込んだ安部に斜めのパス。ゴールライン至近の深い位置でこれを安部が受けると、鋭い切り返しでマーカーをかわし、フリーの状態でマイナスに折り返す。するとこれが帰陣してきた浦和の小泉に当たり、跳ね返ったボールは転々と浦和ゴールへ。意表を突くリフレクションに西川も反応しきれず、これがゴールに収まり1-0。オウンゴールで東京が先制。実質上のアシストを決めた安部を中心に、歓喜の輪ができる。
- 東京はこの直後に仲川とバングーナガンデがお役御免となり、代わりに長友と渡邊を投入。システムはなおも4-2-3-1のままだ。対する浦和はこちらも2枚替えで、興梠と関根を投入。興梠は北海道コンサドーレ札幌への期限付き移籍からの復帰ゲーム。経験がある選手の投入はとても怖い。
- しかし追加点を奪ったのは東京。74分、右サイドのスローインによるリスタートからアダイウトンが中央のディエゴに収めると、ディエゴは左サイドから走り込んできた渡邊にパス。すると渡邊のコントロールシュートがブロックに入った浦和の選手に当たってコースが変わり、西川がケアしていなかったゴールのニアサイドに決まって2-0。またしても浦和の選手に当たってのゴールだが、今度はオウンゴールではなく渡邊の得点だ。
- 東京はその後もチャンスを作り続け、79分にはディエゴがPA内で仕掛けたこぼれ球を長友がシュートで狙い、更にそのこぼれ球を中村が押し込もうとするが、浦和の守備がブロック。追加点とはならないものの、両SBがPA内まで押し上げる積極的な攻撃を見せ、東京が良い流れを継続する。
- 80分には右サイドにポジションを移していたアダイウトンを下げ、塚川を同ポジションに投入。おそらく対面の関根をケアするための交代だろう。守備にも全く抜かりはない。実際、終盤は浦和がボール保持する時間が多くなったが、ほとんどチャンスといえるような場面を作られることなく残りの時間を過ごすことができた。5分とやや長めに取られた追加タイムも無風のまま過ごし、タイムアップのホイッスル。東京が2-0で浦和を下し、2020年シーズン以来、3年ぶりのリーグ開幕戦勝利を挙げている。
impressions
- 開幕戦からこんなに上手く事が運んで良いものかと思うような勝ちっぷりだった。一時期ほどの相性の悪さは近年は見られなくなってきたものの、決して「お得意様」とは言えない浦和に対して、この内容での勝利は凄い。試合後の浦和サポーターは挨拶に来た選手たちを「沈黙」で迎えていたが、味スタであの大サポーターが試合後に押し黙る光景を観たのは記憶の限りでは2004年にルーカスの一発で勝利した試合以来で、懐かしい体験だった。
- 前半は苦しい内容だった。ハイプレスで圧力をかけてくる浦和に対し、東京も組み立てを見せる場面はあったものの、ボールを失った後の対応が難しかった。ハイラインを保ってオフサイドにしたり、ゴール前で跳ね返したりして対処はできていたが、後追いの守備となってしまう局面もあり、アンカーの東は主審の裁量如何では退場になるところだった。4-1-2-3は昨季から継続しているシステムとはいえ、他チームのスカウティングも進んでいるはずであり、今後も「狙い撃ち」されるおそれがあるため、課題といえる。
- 一方、後半の4-2-3-1へのシステム変更は効果てきめんだった。ボランチが増えて守備を安定させつつ、逆に東京が前からプレスで相手に圧力をかけられるようになっていた。必然的にボール保持率が上がり、全体的に選手が高いポジショニングをとることができるようにもなり、相手ゴール前で迫力のある攻撃の場面を作ることができた。
- 開幕戦勝利の最大の立役者は、後半から登場した安部だろう。4-2-3-1のトップ下起用はちょっと記憶に無いが、守備では効果的なハイプレスを仕掛けていたし、攻撃でもハーフスペースに入り込む動きを何度も見せ、先制点の場面に繋げてみせた。今季から背番号「8」を付ける安部だが、チームの中心選手らしい圧巻の働きだった。安部と同じく途中出場の渡邊も、開幕戦からさっそくゴールという結果を出し、こちらも昨季から変更した背番号「11」に相応しい活躍ぶり。今季も期待してよさそうだ。
- 新加入選手もフィットしていた。小泉は松木とのコンビでボールを執拗に追い回して相手のチャンスの芽を摘み取っていたし、仲川も惜しいシュートがあっただけでなく、右サイドで相手を牽制する役割を果たし、中村のオーバーラップを促していた。他の既存メンバーにも成長が見られ、特に左サイドのバングーナガンデは個人での突破力やサイドから中を崩しにいくアイデアが増えたように見える。森重の不在の穴を埋めたエンリケも久々の公式戦ながら安定した守備を見せていた。
- 課題はあったものの、総合的にはパーフェクトに近い勝ち切り方で、非常に満足度の高い内容だった。長丁場のリーグ戦のうち、まだ「34分の1」を終えたに過ぎないが、新たなチームの形が早くも見えたし、結果を重視するシーズンのスタートしては上々といえるのではないだろうか。
- 次節からは柏レイソル、京都サンガF.C.とアウェイでの連戦になるが、この時期はまだ日程に余裕があるので、システムの課題を見直しつつ次の試合に臨めれば良いと思う。個人的には今年もアウェイはほとんど欠席予定だし、ホームも行けない試合が多くなるが、ひとまず味スタでの開幕ゲームに立ち会うことができて良かった。次の試合も楽しみに待ちたい。
FC東京 |
2 |
0 | 前半 | 0 |
0 |
浦和レッズ |
2 | 後半 | 0 |
|
|
|
小泉 佳穂(OG) | 66' | 得点 | | |
渡邊 凌磨 | 74' | | | |
GK | 27 | ヤクブ スウォビィク | GK | 1 | 西川 周作 |
DF | 2 | 中村 帆高 | DF | 2 | 酒井 宏樹 |
| 4 | 木本 恭生 | | 5 | マリウス ホイブラーテン |
| 44 | エンリケ トレヴィザン | | 28 | アレクサンダー ショルツ |
| 49 | バングーナガンデ 佳史扶 | | 15 | 明本 考浩 |
MF | 10 | 東 慶悟 | MF | 3 | 伊藤 敦樹 |
| 37 | 小泉 慶 | | 19 | 岩尾 憲 |
| 7 | 松木 玖生 | | 10 | ダヴィド モーベルグ |
FW | 39 | 仲川 輝人 | | 8 | 小泉 佳穂 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 21 | 大久保 智明 |
| 15 | アダイウトン | FW | 9 | ブライアン リンセン |
GK | 41 | 野澤 大志ブランドン | GK | 12 | 鈴木 彩艶 |
FP | 5 | 長友 佑都 | FP | 13 | 犬飼 智也 |
| 8 | 安部 柊斗 | | 14 | 関根 貴大 |
| 11 | 渡邊 凌磨 | | 22 | 柴戸 海 |
| 22 | ペロッチ | | 27 | 松崎 快 |
| 33 | 俵積田 晃太 | | 30 | 興梠 慎三 |
| 35 | 塚川 孝輝 | | 66 | 大畑 歩夢 |
東 慶悟 | | 4' | 警告 | | | |
| | | 警告 | 25' | | ダヴィド モーベルグ |
| | | 警告 | 29' | | 酒井 宏樹 |
東 慶悟 | | HT | 交代 | | | |
安部 柊斗 | | | |
| | | 交代 | 56' | | ダヴィド モーベルグ |
| | | 松崎 快 |
小泉 佳穂(OG) | | 66' | 得点 | | | |
仲川 輝人 | | 69' | 交代 | 69' | | 小泉 佳穂 |
渡邊 凌磨 | | | 関根 貴大 |
バングーナガンデ 佳史扶 | | | ブライアン リンセン |
長友 佑都 | | | 興梠 慎三 |
渡邊 凌磨 | | 74' | 得点 | | | |
アダイウトン | | 80' | 交代 | | | |
塚川 孝輝 | | | |
| | | 交代 | 81' | | 酒井 宏樹 |
| | | 大畑 歩夢 |
ディエゴ オリヴェイラ | | 88' | 交代 | | | |
ペロッチ | | | |