2022.12.25 (日)
2022年度 第71回 全日本大学サッカー選手権大会 準決勝
桐蔭横浜大学 × 関西学院大学
( カンセキスタジアムとちぎ,14:00 )
introduction
- カンセキスタジアムとちぎで開催されている全日本大学サッカー選手権大会の準決勝は、第1試合で新潟医療福祉大学が国士舘大学を1-0で下し、北信越勢として初となるファイナルに進出。「元日国立」のピッチに立つ切符を獲得した。第2試合は、その新潟医療福祉大学の対戦相手を決める一戦。関東第4代表の桐蔭横浜大学と、関西第1代表の関西学院大学が相まみえる。
- 桐蔭大は今大会は2回戦からの登場。初戦は北海道教育大学岩見沢校に3-1、3回戦は東京国際大学に2-0と勝利し、順調にベスト4まで勝ち進んでいる。チームには来季川崎フロンターレへの加入が内定している山田新を筆頭に、サンフレッチェ広島加入内定の中野就斗、水戸ホーリーホック加入内定の寺沼星文など、「Jリーグ内定持ち」の選手がズラリ。無論、Jに内定を貰っている選手が多い=強いというわけではないのだが、インパクトは強いといえるだろう。桐蔭大は2019年のインカレでも決勝に進出しているが、その際は明治大学に敗れて準優勝に終わっている。当時の1年生だった選手は2度目の決勝の舞台を目指しての一戦だ。
- 対する関西学院大は、言わずと知れたインカレの常連。関東勢以外で全国制覇を狙うことのできる数少ない強豪校だ。関西学院大も今大会は2回戦からの出場。初戦では静岡産業大学に2-1、3回戦では常葉大学に1-0と、1点差の際どい試合を勝ってきている。関西学院大にとってはこの試合が初めての関東勢との対戦で、まさに試金石ともいえる一戦になるだろう。もしこの試合で勝利すれば、決勝戦は関東勢以外での顔合わせという非常に珍しいケースが生まれることになる。個人的には、そんな光景を見てみたいという邪な気持ちが強い(笑)。
- 第1試合から1時間以上のインターバルが空いたこともあり、厳しい冷え込みの中で観客が試合開始を待つ一方、バックスタンド側には両校の部員応援が入ってまずまずの盛り上がり。第1試合は新潟医療福祉大の応援が無かったため、かなり賑やかさが増したように思う。この寒さのもと、シーンとした中で試合を観るよりは、「賑やかし」であっても応援の声があった方が圧倒的にありがたい。
1st half
- 前半開始早々の9分、アクシデントに見舞われたのは関西学院大。2トップの一角としてスタメン出場していた山田剛綺が左足の太腿を負傷した様子でプレイを止め、ピッチをアウト。そのまま戻ることができず、いきなりの交代を余儀なくされる。代わって入るのは木村勇大。今季はJリーグの特別指定選手として京都で試合にも出場していた、実力のある選手だ。おそらく後半の切り札としてベンチに温存していたのだと想像するが、いきなりこのカードを切らざるを得なくなったのは関西学院大にとって想定外だろう。
- 木村がボールを収めることにより、ここからは関西学院大がゲームを支配。15分にはその木村が自らのポストプレイから味方のサポートを受けてシュート。枠外に外れるが強力な形だ。30分には再び関西学院大が縦パスを起点に根木洸希が裏をとってシュートへ行くがこれも枠を外れる。関西学院大が先制しそうな雰囲気が漂うピッチ上だが、シュートに持ち込む場面はあるものの、決定的に崩す場面というのが無い。関西学院大にとっては、リズムよく攻めてはいるのにゴールだけが入らない、もどかしい展開だ。
- このまま前半終了かと思われた45分、桐蔭大は右サイド深くでボールを受けた山内日向汰がドリブルで仕掛ける。小刻みなボールタッチでハーフスペースを切り崩すと、そのまま一気にシュートまで持ち込み、これがゴール左隅に決まって1-0。個の力でゴールをこじ開け、チームに大きな先制点をもたらす。前半はこのまま終了。これといった取り掛かりの無かった桐蔭大にとっては最高の時間帯にリードを奪っての折り返しとなる。
2nd half
- 後半は桐蔭大が守備を固めて入る。関西学院大は前半に引き続きボールを保持することはできるものの、前半ほど木村にボールが収まらなくなり、ボックス内で時間を与えてもらえない。特に決定機の生まれないまま時間だけが過ぎていく。木村だけを頼るわけにもいかない関西学院大は、66分に倍井謙が左サイドからカットインしてミドルシュートを狙うがGKの正面。73分には自陣でのボール回収からロングカウンターが発動し、途中出場の髙木大輝の持ち運びから再び倍井がシュートに持ち込むものの、やはりGKがストップ。なかなか得点の匂いがしてこない。
- ボールは支配している関西学院大だが、攻撃は中へ中へという感じで、ピッチを広く使えていない。桐蔭大もポイントを押さえれば大丈夫という感じの対応になっており、守りやすそうに見える。1点差ではあるが、何か事故のような出来事でも起こらない限りは桐蔭大がウノゼロのまま逃げ切りそうな雰囲気だ。
- この流れのままタイムアップかと思われた89分、関西学院大は左CKでのリスタートからPA内で混戦。すると、この混戦の中でハンドの反則があったようで(詳しくは不明)、関西学院大にPKが与えられる。後半のチャンスが皆無に等しかった関西学院大にとっては、まさに「蜘蛛の糸」ともいえるPKだ。これを木村が冷静に右隅に決めて1-1。終盤でタイスコアに戻す。後半はこのまま終了。規定により15分ハーフの延長戦に入る。関西学院大の攻撃を完全に殺すことに成功していた桐蔭大にとっては、最後に帳尻を合わされた恰好であり、これがこの後の流れにどう影響するだろうか。
extra time
- 延長戦は両チーム共に中盤がやや間延びした中での攻防となり、どちらにゴールが入ってもおかしくない展開。しかし体力的な消耗もあってか、攻撃の精度はあまり高いとはいえず。ボールは互いのコートを行き来するものの、守備側がそれほど人数をかけずとも跳ね返せる展開が続く。
- 延長後半が追加タイムに入ったところで、自分は帰りに乗りたかった路線バスの時間が迫ってきたために席を立ち、スタジアムを撤収。するとゲートを出て少し歩いたあたりで客席からワアッと歓声が上がるのが聞こえた。ゴールとはえてしてこういう時に決まってしまうものである。後ろ髪を引かれる思いでバス停に向かい、予定通りのバスに乗車。すぐさまYouTubeライブをチェックする。延長終了間際に桐蔭大の白輪地敬大が値千金の勝ち越しゴールを決め、2-1で決勝進出を果たしたことを確認した。
impressions
- 120分に及ぶ死闘となった準決勝だったが、内容面でも結果においても、桐蔭大が上回ったといえる試合だったのではないか。前半は関西学院大にボールを支配されながらも要所を押さえた守備でゴールを割らせず、逆に個人の打開で先制点を奪取。ゲームを優勢に進めることができた。願わくば90分で逃げ切りたかった中、PKを与えて追い付かれてしまったものの、大味な展開となった延長戦でも守備が緩むことはなく再度突き放すことに成功。試合全体を通して冷静な立ち回りが好印象だった。
- 試合の流れを決定づける先制点を挙げたのは3年生の山内。関西学院大も固い守備を築いていた中、1人でマークを剥がし、ゴールまで取り切るスキルの高さは見事だった。山田と寺島がなかなか良さを出せない中、役割を果たしたといえるだろう。山田と同じく山内も川崎フロンターレの下部組織出身であり、川崎ブランドのクオリティの高さには驚かされるばかりだ。
- 敗れた関西学院大は、前半開始早々のアクシデントによる交代によりゲームプランが狂いはじめたことは否めないだろう。木村を早々に起用せざるを得なくなり、試合終盤での切り札的な交代ができなかった。早いうちに1点を取っておかなければ苦しい試合展開になることは自明だった。もちろん木村のパフォーマンス自体は素晴らしいものだったが、良くも悪くもチームメイトが木村を頼りすぎてしまうきらいがあるように見えた。長い時間のプレイとなったことで相手も対応できるようになっていただけに、延長での決着とはいえ敗戦は必然的なものといえるのではないか。
- 第2試合の結果を受け、決勝戦の対戦カードは新潟医療福祉大学と桐蔭横浜大学という組み合わせに決定。おそらく大会前には誰も想像できなかったであろうカードとなった。自分は都合が悪く観戦できないが、インカレの決勝を元日に国立競技場で行える機会はそう滅多にあるものではない。良い勝負になることを期待したい。個人的には、この試合で2022年の現地観戦は見納めとなった。今年はほとんど現場に足を運ぶことができなかったが、それだけ生で試合を観られることのありがたみを強く感じた1年だった。来年も良い試合を多く見られることを祈り、2022年の締めとしたい。
桐蔭横浜大学 関東第4代表 |
2 |
1 | 前半 | 0 |
1 |
関西学院大学 関西第1代表 |
0 | 後半 | 1 |
0 | 延前 | 0 |
1 | 延後 | 0 |
|
|
|
山内 日向汰 | 45+1' | 得点 | 90' | 木村 勇大(PK) |
白輪地 敬大 | 120+1' | | | |
GK | 1 | 北村 海チディ | GK | 22 | 藤澤 周弥 |
DF | 2 | 羽田 一平 | DF | 29 | 濃野 公人 |
| 3 | 中野 就斗 | | 3 | 山内 舟征 |
| 4 | 吉田 和暉 | | 27 | 山本 祐也 |
| 13 | 田中 大生 | | 7 | 竹村 健汰 |
MF | 12 | 楠 大樹 | MF | 15 | 平山 湧喜 |
| 8 | 山内 日向汰 | | 6 | 長尾 優斗 |
| 5 | 高吉 正真 | | 23 | 美藤 倫 |
| 10 | 水野 颯太 | | 17 | 倍井 謙 |
FW | 9 | 山田 新 | FW | 5 | 根木 洸希 |
| 11 | 寺沼 星文 | | 9 | 山田 剛綺 |
GK | 21 | 西澤 翼 | GK | 1 | 吉原 大芽 |
FP | 7 | 笠井 佳祐 | FP | 4 | 廣瀬 龍弥 |
| 14 | 白輪地 敬大 | | 10 | 木村 勇大 |
| 19 | 國谷 敦史 | | 11 | 岡島 温希 |
| 22 | 井出 真太郎 | | 12 | 稲田 翔真 |
| 24 | 五十嵐 聖己 | | 13 | 髙木 大輝 |
| 25 | 神田 洸樹 | | 14 | 浦道 翔 |
| 29 | 笹沼 航紀 | | 16 | 佐藤 陽太 |
| 30 | 鍋田 純志 | | 19 | 渡邉 颯太 |
| | | 交代 | 13' | | 山田 剛綺 |
| | | 木村 勇大 |
山内 日向汰 | | 45+1' | 得点 | | | |
| | | 交代 | 55' | | 根木 洸希 |
| | | 岡島 温希 |
楠 大樹 | | 67' | 警告 | 67' | | 山本 祐也 |
水野 颯太 | | 67' | 交代 | | | |
井出 真太郎 | | | |
| | | 交代 | 68' | | 平山 湧喜 |
| | | 髙木 大輝 |
山田 新 | | 76' | 交代 | | | |
白輪地 敬大 | | | |
楠 大樹 | | 80' | 交代 | | | |
笠井 佳祐 | | | |
| | | 交代 | 81' | | 山本 祐也 |
| | | 稲田 翔真 |
| | | 交代 | 82' | | 美藤 倫 |
| | | 佐藤 陽太 |
| | | 得点 | 90' | | 木村 勇大(PK) |
寺沼 星文 | | Ex1 | 交代 | | | |
神田 洸樹 | | | |
羽田 一平 | | Ex2 | 交代 | | | |
五十嵐 聖己 | | | |
笠井 佳祐 | | 106' | 警告 | | | |
山内 日向汰 | | 118' | 警告 | | | |
白輪地 敬大 | | 120+1' | 得点 | | | |
白輪地 敬大 | | 120+1' | 警告 | | | |