2022.10.8 (土)
2022 明治安田生命J1リーグ 第32節
FC東京 × 湘南ベルマーレ
( 味の素スタジアム,15:00 )
introduction
- この1週間は季節が一気に進んだ感があり、最高気温が15℃にも満たない本格的な冷え込みとなる日もあったほど。つい先日まで自宅で冷房をつけるのが当たり前だったのが、まるで嘘のようだ。夏の暑さが過ぎ去ったかと思えば、いつの間にかリーグ戦は残り3節。今週末の試合を消化すると、来週末に天皇杯決勝、再来週にルヴァンカップ決勝を挟んでラスト2節の試合が行われ、Jリーグはシーズン終了となる。未消化分の1試合を加えた4試合のうち3試合がホームゲームの東京は、次の水曜日に行われる試合とあわせて味スタで2連戦。今週末は湘南ベルマーレを迎えての試合だ。
- 前回のホームゲームは国立競技場での開催だったため、味スタでの試合は9/3の横浜F・マリノス戦以来だ。都心に出ていくよりは近所の味スタで観る方が圧倒的に気楽であるものの、今日はバック自由席がチケット完売となっており、現地着の時点では上層席のハーフウェイライン寄りはかなりの混雑。空席を探すのにもかなり苦労する。一時期は早めに到着して空席を確保するのも苦ではなかったが、ここ2年のパンデミックの間にマインドがすっかり指定席に慣れてしまった。来季は指定席SOCIOへの変更を真剣に検討すべきなのかもしれない。
- 今節は声出し応援実証試験の適用試合ということで、ゴール裏の自由席だけはマスク着用の上での声出し応援が可能となっている。味スタでは既に何試合か声出し応援適用試合が実施されているが、自分はこれまで適用試合を全て欠席していたので、これが今季初めての声出し応援を聞く機会ということになる。スタジアムでちゃんとした応援を聞くのは2年半ぶり。スタンドから上がるチャントの声には懐かしさを覚えた一方、感慨深さはそれほどでもなかった。ゴール裏以外では未だに応援の制限が続いており、完全な「元どおり」までは未だ道半ばだからかもしれない。
- 東京は現在勝点「46」の6位。9月はなかなか勝点を伸ばせずに苦しい1ヶ月を過ごしたが、インターナショナルウィークを挟んで迎えた10/1のアウェイ・鹿島アントラーズ戦は守備が粘り強く耐えて終盤に安部のゴラッソが決まり、1-0のシャットアウト勝ち。上位対決で久々にミッションコンプリート感のある気持ちの良い勝利であった。東京としては、この勢いを失わずにいきたいところだろう。発表されたスタメンは、前節出場停止だった森重が戦列に復帰し、現状のベストメンバーといえるラインナップとなった。
- 対戦相手の湘南は現在、勝点「32」で15位。J1参入プレーオフ圏内の16位・福岡とは僅かに勝点「1」差という苦境に立たされており、死に物狂いで勝点を獲りにくるであろうだけに厄介な相手だ。湘南とは2015年や2019年のシーズン終盤、タイトルレースの重要な局面での対決でことごとく勝点を落とした苦い思い出が未だ鮮明に残っており、ちょっと苦手な印象がある。まして今季はルヴァンカップを含めて湘南と既に3試合を戦い、1勝2敗と負け越している状況。苦手意識が定着しないうちに勝利が欲しい。
1st half
- 良い入り方をしたのはアウェイの湘南。キックオフ後最初のプレイでタリクのプレスバックからボールを奪取すると、速攻からの左クロスにウェリントンがヘディングシュート。これは枠を外れるが、湘南の狙いがいきなり分かりやすい形で実現する。
- その後も湘南は積極的に「狩りに行く」姿勢を崩さない。東京は長友とバングーナガンデのインナーラップで押し上げを図りたいが、それを警戒する湘南のインサイド、平岡と池田のプレスが非常に効果的で、中盤で奪われる場面が多発。開始10分の間に何度も押し込まれる。シュートが枠に飛んでいないだけで、この時点で先制を許していても全くおかしくない展開だ。
- しばらくして試合が落ち着きを見せ、東京もキープはできるようになったものの、地上戦で回そうとしても相手ゴールが遠い構図に変化は無し。こうなると手段はロングボール一択になる。31分には森重のフィードに渡邊が抜け出したかに見えたが、オフサイドの判定。しかしこの試合内容ではこれくらいしか活路の見出しようがないだろう。
- その後は再び湘南が攻勢を強め、32分には池田が右サイドからカットインしたボールを平岡が引き取ってのミドルシュートが僅かに枠の右。40分にはCKの流れからまたしても平岡にシュートチャンスを許すが、シュートコースに入った長友がカットしてどうにかピンチ脱出。湘南の良い形だけが延々と続く。それでもどうにかゴールは割らせず、0-0で前半終了。東京は全くといって良いほど攻撃の形を作らせてもらえなかった。逆を言えば、これだけ相手の一方的な内容ながら、同点で折り返すことができたともいえる。後半からの巻き返しに期待するしかない。
2nd half
- 47分、東京は左サイドで得た直接FKをレアンドロが蹴り、GKと密集の間のスペースへふわっとしたボールを入れると、これに両チームの選手が雪崩れ込む形に。混戦の中で渡邊が頭で合わせたようだが、シュートはGKの谷の正面を突いて弾き返されてゴールならず。52分にも東のパスカットからファストブレイクが発動してレアンドロがゴール前まで迫るなど、後半開始直後の時間帯は東京が良い入り方を見せる。
- その後も優勢に試合を進める東京だが、ここで1点を取れないまま再び試合は少しずつ膠着。湘南は瀬川や町野といったベンチスタートの主力選手をピッチに送り出す一方、東京は65分にディエゴが足を攣ってプレイを再開できずにフェリッピと交代。前線で身体を張っていたディエゴがいなくなったことでややピッチ上のパワーバランスが変わったか、湘南が再び中盤を支配しはじめる。
- 東京は飲水タイム前のルーズボールの競り合いで相手選手を後方からチャージした塚川のプレイに対してオンフィールドレビューが入り、辛うじて警告で済むなどの苦しい展開。塚川に代えて松木、レアンドロに代えてアダイウトンを投入して流れを変えようとする一方、湘南も前線に阿部を投入。中盤が徐々に間延びして、ゲームスピードが上がっていく。どちらに1点が入ってもおかしくない展開だ。
- 均衡が破れたのは78分。湘南のボールキープから、エリア外の正面やや左寄りでパスを受けた阿部が右足に持ち替えたまさにその時だ。時間にして僅か1秒の間だが、ゴール右隅にぽっかりとシュートコースが空くのを見たバックスタンドの観客は、自分だけではないはずだ。「危ない」と思った次の瞬間には、阿部のミドルシュートがゴールマウスを捉えていた。見事な弾道がスウォビィクの伸ばした手の先を通り抜けてゴール右隅に突き刺さり、0-1で湘南が先制。ビジター席の湘南サポーターが力強い雄叫びをあげ、その一角を除く味スタのスタンドは水を打ったように静まり返る。
- さらに82分、右サイドでこぼれ球を拾った町野がドリブルで前進すると、マークの隙間を抜けて裏返す。そのままPA内に侵入し、ドリブルの勢いそのままにシュート。ドリブルの勢いそのままに放たれたシュートは、スウォビィクの身体に僅かに当たったものの、勢いを失わずに転々とゴールに転がり込んだ。0-2と湘南がリードを広げる。
- 時間はまだ10分あまり残っていたが、今日の湘南にはこの2点で充分だった。東京は長いボールを蹴って前線にボールを送り込むものの、ゴール前を固める湘南の守備が淡々と跳ね返し続ける。オンフィールドレビューがあった関係で7分とやや長めにとられたATも、東京にとってはあまり意味のない時間でしかなかった。このまま試合終了となり、0-2で湘南がJ1残留に一歩近づく大きな勝点3を確保。お馴染みのラインダンスで歓喜に湧くビジター側と対照的に、ホーム側スタンドからは選手に対して不満を示すブーイングが鳴り響いた。
impressions
- スコアが示すとおり、湘南の「完勝」だった。残留争いで勝点を少しでも積み上げなければならない状況にありながら、決して受け身にならず積極的にボールを奪いに行く姿勢を見せたことによって、試合を圧倒的に支配することができた。特にインサイドの平岡と池田が良い圧力をかけていて、東京は攻撃の起点ともいえる中盤低めのエリアで落ち着いてボールを保持することができなかった。後半開始直後など、東京にも一時的に押し返す時間帯はあったものの、チャンスは数えるほどしかなく、終盤まで0-0の状況が続いたことで、どちらに転んでもおかしくない状況になった。湘南にとってはそれこそが目論見どおりの展開だったのではないだろうか。
- 試合を決めたのは、後半途中から投入された阿部のミドルシュート。ゲームスピードが上がってきてバイタルエリア付近の守備が徐々に緩くなってきた中、巡ってきたシュートチャンスを見逃さなかった。阿部といえば、川崎フロンターレに所属していた当時からチームメイトにシュートコントロールを絶賛されていたような記憶があるが、それほどの技量を誇るリーグ屈指のシューターがあのチャンスを外すわけがない。阿部の持ち味が生きる時間までイーブンな状況を維持し、ここぞという所で起用した湘南のベンチワークが奏功した結果といえるだろう。
- 一方、東京は試合の大半において、全くといって良いほどチャンスを作ることができなかった。高い位置からのプレッシングと速攻は今季磨いてきた形のひとつだと思うが、実際の試合内容は湘南に完全にお株を奪われた形で、前半から一方的な相手のペース。攻撃はDFライン裏へのロングボールくらいしか手立てがなかった。後半の入り方だけは悪くなかったが、そこで1点を決められずに再び試合が膠着してしまい、終盤のオープンな展開から先制点、追加点と立て続けにやられてしまった印象である。
- 交代策も湘南と対照的で、効果が薄かった。ディエゴが負傷交代してから前線に入ったフェリッピは味方と息が合わずに前線を浮遊するだけで、かといってディエゴほど守備を頑張ってくれるわけでもないため、相手の方が実質的に数的優位を確保していたし、アダイウトンも先制を許して以降は当然ながらスペースを与えてもらえなかった。時計が進めば進むほど相手に流れが傾いていったのは当然といえるだろう。
- 個人的には、現地観戦で東京の負けを観るのは今季初めて。久しぶりに現地観戦で負け試合を観て、思うところが無いわけではないが、特段不満の感情は湧かなかった。終盤まで0-0で引っ張ってしまった時点である程度想像できた展開だったし、守備の強度やベンチワークの差も含め、「負けて当たり前」の試合内容で、「当たり前に負けた」だけだからである。今日は湘南の完璧なサッカーを称えるべきであり、どうにかできたであろう要素が特に無い試合にストレスを溜めても仕方がない。
- 実際のところ、次の試合は4日後に迫っており、今日の試合を受けて出来る手立ては「切り替える」くらいしかないだろう。4位確保への道のりは険しいものとなったが、次のセレッソ大阪との一戦はACL出場権獲得のために勝利がマストといえるシックスポインターであり、ここで勝てば再び光明が見えてくるはずだ。平日のナイトゲームとなるため自分は観戦できないが、良い結果を出してくれることを祈りたい。
FC東京 |
0 |
0 | 前半 | 0 |
2 |
湘南ベルマーレ |
0 | 後半 | 2 |
|
|
|
| | 得点 | 78' | 阿部 浩之 |
| | | 82' | 町野 修斗 |
GK | 24 | ヤクブ スウォビィク | GK | 1 | 谷 晃生 |
DF | 5 | 長友 佑都 | DF | 4 | 舘 幸希 |
| 30 | 木本 恭生 | | 16 | 山本 脩斗 |
| 3 | 森重 真人 | | 2 | 杉岡 大暉 |
| 49 | バングーナガンデ 佳史扶 | MF | 3 | 石原 広教 |
MF | 10 | 東 慶悟 | | 14 | 茨田 陽生 |
| 31 | 安部 柊斗 | | 44 | 中野 嘉大 |
| 35 | 塚川 孝輝 | | 27 | 池田 昌生 |
FW | 23 | 渡邊 凌磨 | | 28 | 平岡 大陽 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | FW | 9 | ウェリントン |
| 20 | レアンドロ | | 11 | タリク |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 31 | 立川 小太郎 |
FP | 15 | アダイウトン | FP | 10 | 山田 直輝 |
| 17 | 紺野 和也 | | 13 | 瀬川 祐輔 |
| 22 | ルイス フェリッピ | | 15 | 米本 拓司 |
| 37 | 中村 帆高 | | 18 | 町野 修斗 |
| 44 | 松木 玖生 | | 24 | 福島 隼斗 |
| 47 | 木村 誠二 | | 49 | 阿部 浩之 |
| | | 交代 | 58' | | 平岡 大陽 |
| | | 瀬川 祐輔 |
| | | 池田 昌生 |
| | | 町野 修斗 |
東 慶悟 | | 61' | 警告 | | | |
ディエゴ オリヴェイラ | | 67' | 交代 | | | |
ルイス フェリッピ | | | |
塚川 孝輝 | | 71' | 警告 | | | |
| | | 警告 | 72' | | 石原 広教 |
塚川 孝輝 | | 73' | 交代 | | | |
松木 玖生 | | | |
レアンドロ | | | |
アダイウトン | | | |
| | | 交代 | 76' | | タリク |
| | | 阿部 浩之 |
| | | 得点 | 78' | | 阿部 浩之 |
| | | 得点 | 82' | | 町野 修斗 |
長友 佑都 | | 83' | 交代 | | | |
中村 帆高 | | | |
安部 柊斗 | | | |
紺野 和也 | | | |
| | | 交代 | 86' | | ウェリントン |
| | | 米本 拓司 |
| | | 茨田 陽生 |
| | | 山田 直輝 |
ルイス フェリッピ | | 90+4' | 警告 | | | |