2022.9.18 (日)
2022 明治安田生命J1リーグ 第30節
FC東京 × 京都サンガF.C.
( 国立競技場,19:00 )
introduction
- J1リーグは第30節を迎え、各チームの残り試合数は概ね5試合前後となってきた。優勝争い、ACL出場権争い、残留争いはいずれも混戦模様で、決着は最後までもつれそうな様子。ACL出場権争いを睨む東京は、今節が3試合ぶりのホームゲーム。現在J1残留争い中の京都サンガF.C.を迎えての一戦だ。京都は今季J2からの昇格組でもあり、リーグ戦でホームに京都を迎えるのは互いにJ2を戦っていた2011年シーズン以来、11年ぶりのことである。
- 本日は4月29日のガンバ大阪戦以来、今季2度目の国立競技場でのホームゲームだ。前回の国立開催でかなりの観客を集めたこともあってか、クラブはホームゲーム史上最多入場者数を目指して、早い時期からこの試合を「特別な90分」としてプロモーション。特に京王線では駅や車内で広告を何度も見かけることがあり、クラブの「本気」を垣間見たような気がした。試合には過去にJリーグやFC東京とコラボレーションしたことのある著名人を多く招待してSNS上にハッシュタグ付きで発信してもらうなど、インターネット戦略も抜かりなし。更には本日限定となる3rdユニフォームの着用など、まさに「特別感」がある試合の開催にこぎつけた。
- 一方、この3連休は残念ながら天候に恵まれていない。一時猛烈な勢力まで拡大した台風14号が九州に接近しており、九州では何試合か試合が延期されている。関東にも影響が及び、昼間に大雨が降る時間帯もあったが、幸いにも夕方からはどうにか天候が持ち直した。
- チケットは今回も試合の見やすさを優先して3階席を押さえている。4月の試合では全ての層の観客を同一のゲートから入れていたため、2,3層目に上がる観客が階段に押し寄せてちょっとしたカオスの様相を呈していたが、今回は層別に入場ゲートを完全に分離。おかげで座席まではストレスなくアクセスすることができた。これは前回からの改善点だと思う。
- 東京は現在勝点「40」で暫定8位。この1週間は、J1残留争い中のガンバ大阪、ヴィッセル神戸、そして京都サンガF.C.との3連戦になっている。先週末に行われたG大阪とのアウェイ戦は、相手の守備を崩せないまま逆に押し込まれる難しい内容だったが、どうにか0-0のドロー。続いて水曜日に行われた神戸とのアウェイ戦は前半の2失点が響き、1-2の敗戦だった。しばらく勝ち星が遠ざかっており、今節はどうしても勝ちたい試合である。発表メンバーを見ると、前節ベンチスタートだった東とレアンドロがスタメン。特にレアンドロのスタメンは久しぶりだ。改修後の国立で2戦2発という相性の良さを見せてくれるか期待がかかる。
- 対する京都は、2010年シーズン以来12年ぶりとなるJ1での戦い。昨年からチームの指揮をとる地元出身の曺貴裁監督のもと、J1残留を目指してのシーズンを送っている。シーズン序盤は悪くない戦いが続いていた京都だが、後半戦に入ってからは苦戦続き。現在は暫定15位となっており、1シーズンでのJ2降格が危ぶまれる状況だ。湘南ベルマーレ時代からの「キジェチルドレン」が多くメンバーに名を連ねる中、要注意は3トップの頂点に入ることが予想されるウタカか。東京にも2017年に1年だけ所属してチームの力になってくれたことは記憶に新しい。
1st half
- 試合の立ち上がりは両者共にアグレッシブな姿勢を見せるものの、プレス合戦となりチャンスには至らない。互いに4-1-2-3のシステムを採用しており、特に中盤は潰し合いとなるため仕事量が多い。どちらかといえば京都の攻撃に対して東京がやや余裕をもって対応している印象がある。
- 12分には京都の武田が強烈なミドルシュートを放つが、スウォビィクが正面でキャッチ。京都は徐々にサイドへマークを引きずり出してから中央もしくは逆サイドへ素早く展開し、フィニッシュを狙う意図が見える。東京も直後の13分に松木→バングーナガンデ→レアンドロという繋ぎからレアンドロがシュートへ持ち込むが、角度が狭すぎてゴールマウスを捉えられない。
- 28分、東京は森重が左サイドのバングーナガンデにフィードを通すと、バングーナガンデが内側からサポートしたレアンドロにパス。相手マークがやや甘い。ゴールから左45度のペナルティーエリア隅付近から右足を振り抜くと、これがクロスバーとポストを叩いてゴールに吸い込まれる。レアンドロのゴラッソで1-0。東京がリードに成功する。レアンドロはこれで国立競技場のゲームでは3戦連発。まさに神がかり的存在だ。ここまで決定機といえるようなチャンスはほとんど無かっただけに、こういう形でリードできたのは大きい。
- 先制して以降は再び京都がセカンドボールを拾う場面が増える。東京はボールを奪ったらディエゴに一度ボールを収めようとするが、厳しいマークに遭い攻撃のリズムが作れず、ディエゴはストレスが溜まっていそうな様子だ。前半の残りは自陣で過ごす時間が多かったものの、1-0で前半終了。何度か良いクロスを上げさせているのは気になるが、膠着しかかった展開で先制できたので、悪くない内容だ。このまま逃げ切りたい。
2nd half
- HT明けから京都は最前線のウタカを下げ、関西学院大学に在学中の特別指定選手である木村を投入。これが号令となったのかは分からないが、京都の守備での当たりがやや激しくなった印象がある。前半以上の執拗なマークに苦しむ東京はファウルを受けた際に主審にクレームを入れる場面が増えるようになり、ストレスが増しているように見える。そんな中でも54分には長いキープからディエゴが松木とのワンツーでフィニッシュまで持っていくが、シュートはGKの正面。
- 拮抗した内容が続く中、京都は早めの選手交代でフレッシュな選手をピッチに投入していく。49分に福岡、57分にジュニーニョが入り、67分にはインサイドの武田がアクシデントでプレイ続行できなくなったのを機に金子とカリウスの2人が入り、これで早くも全ての交代を完了。前線の運動量をより活発化して東京のバックラインに圧力をかけてくる。
- 一方の東京は、京都が全ての交代を完了させてから動く。69分にレアンドロとディエゴが下がり、アダイウトンとフェリッピを投入。単独でゴールを奪える選手を前線に入れる。75分にはバングーナガンデと塚川が下がり、中村と三田を投入。中村の投入はサイドでの守備強化が狙いだろう。ここ数試合の間、ベンチからも外れていた三田は久々の出場機会だ。
- 78分、東京は自陣ゴール前に押し込まれての守備の中で、ボールを奪った松木が金子にハーフスペース付近でボールを奪い返され、一転して大ピンチ。グラウンダーのクロスに京都の選手が雪崩れ込むが、僅かにタイミングが合わずボールが流れる。するとこの流れからボールを拾った東京が攻勢。パスを受けた三田がドリブルでアタッキングゾーンまで攻め込み、なおもフリーな状況から得意の左足を振り抜く。すると濡れたピッチにバウンドしたボールのコースがやや変わったか、GKの上福元はこれを弾くのが精一杯。ゴール正面にこぼれたところをアダイウトンがすかさず押し込んで2-0。東京にとって値千金の追加点が入る。ちなみにレアンドロと同様、アダイウトンも国立でのゲームは3戦連発だ。
- リードが2点に広がったことで、東京にはかなり余裕が生まれた。残り時間は引き続き京都が攻撃を仕掛ける展開となるが、東京が安定した守備で京都の攻撃を寄せ付けない。結局これといったチャンスを作らせず、タイムアップのホイッスル。東京が2-0で逃げ切り、リーグ戦4試合ぶりの勝利。勝点を「43」に伸ばし、暫定7位に浮上した。一方の京都は、勝点2差に迫っていたヴィッセル神戸が他会場の試合で勝利したため、J1参入プレーオフ圏内の16位に後退している。苦しい状況が続く京都だが、ビジター席のサポーターからは選手たちを鼓舞する拍手が起きていた。
impressions
- まずは、およそ1ヵ月ぶりとなるリーグ戦勝利を素直に喜びたい。最後に勝ったアウェイ・柏戦以降の試合でも、内容ではそれほど悪くない試合が続いていたが、肝心の勝点が伸び悩む間に少しずつ右肩下がりに内容が悪化する状況が続いていたので、ここで食い止めることができ、ひと安心といったところか。J1残留争い中で、何がなんでも勝点が欲しい京都相手に勝てたというのも価値あることといえるだろう。
- 先制点を取れたことが大きかった。多彩な演出による独特な雰囲気の中でのキックオフとなり、テンションは高い一方、両者攻撃でのミスが多く落ち着かない内容。京都が厳しめにプレスをかけてくる中、東京は攻撃の糸口を掴めない時間が続いていた。そこで森重のシンプルなフィードを起点に、レアンドロが鮮やかなシュートを沈めてくれた。これで無理に1点を取りに行く必要がなくなり、試合運びが楽になったと思う。
- 後半は積極的に交代カードを切って前に出る京都に対し、背後のスペースを使ったカウンターで対抗する交代策を講じた東京だが、簡単に追加点を奪うことができなかった。もちろん京都のネガティブトランジションが早かったことも要因として挙げられるだろうが、アタッキングゾーンの仕上げの精度が低かったことは否めない。結果的は途中から投入された三田とアダイウトンが絡む形で追加点を挙げて試合を決めることができたが、それまでに危ない場面があったことも事実である。
- 今日の試合は前述のとおり、先制点を挙げたレアンドロの存在感が際立ったゲームだった。センターラインを崩すことができずに苦しんだが、先制点はPA外の得意の角度からここしかないという所に決めきった。森重のフィードで上手く裏を返したことで京都の寄せが遅れ、余裕を持って撃てたことも要因だろうが、それでも難しいシュートだったことに変わりはない。改めてレアンドロの技術の高さを感じさせる一発だった。
- 今日の試合は5万人を超える観客を集めることができ、その上で勝利することができたので、エンターテインメントとしては当然、「成功」に部類される試合だったことは言うまでもない。一方、1-0としてからは京都を突き放すチャンスを作ることができず、スリリングな場面も少なかったため、途中で席を立ってしまう観客も自分の周囲では見受けられた。出入りの激しい派手なサッカーをすることが絶対的な「正解」だとは思わないが、今日のような勝ち方で満足はしてほしくない、と感じたのもまた確かだ。
- 来週末はインターナショナルウィークということもあり、リーグ戦は行われない予定だ。次節は2週間後のアウェイ・鹿島アントラーズ戦。ACL圏内を目指す上では勝利がマストともいえる非常に重要な試合となる。今日の試合で森重が累積4枚目となる警告を受けてしまい、次節出場停止となってしまったのは非常に手痛いが、上位進出へと繋がる最大の関門となるだけに、万全の準備をして臨んでもらいたい。
FC東京 |
2 |
1 | 前半 | 0 |
0 |
京都サンガF.C. |
1 | 後半 | 0 |
|
|
|
レアンドロ | 28' | 得点 | | |
アダイウトン | 78' | | | |
GK | 24 | ヤクブ スウォビィク | GK | 21 | 上福元 直人 |
DF | 5 | 長友 佑都 | DF | 14 | 白井 康介 |
| 30 | 木本 恭生 | | 31 | 井上 黎生人 |
| 3 | 森重 真人 | | 3 | 麻田 将吾 |
| 49 | バングーナガンデ 佳史扶 | | 44 | 佐藤 響 |
MF | 10 | 東 慶悟 | MF | 24 | 川﨑 颯太 |
| 35 | 塚川 孝輝 | | 7 | 武富 孝介 |
| 44 | 松木 玖生 | | 16 | 武田 将平 |
FW | 23 | 渡邊 凌磨 | FW | 23 | 豊川 雄太 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 9 | ピーター ウタカ |
| 20 | レアンドロ | | 18 | 松田 天馬 |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 1 | 若原 智哉 |
FP | 7 | 三田 啓貴 | FP | 6 | 本多 勇喜 |
| 15 | アダイウトン | | 10 | 福岡 慎平 |
| 19 | 山下 敬大 | | 19 | 金子 大毅 |
| 22 | ルイス フェリッピ | | 40 | 木村 勇大 |
| 37 | 中村 帆高 | | 41 | アラン カリウス |
| 47 | 木村 誠二 | | 47 | パウリーニョ |
レアンドロ | | 28' | 得点 | | | |
| | | 交代 | HT | | ピーター ウタカ |
| | | 木村 勇大 |
| | | 交代 | 49' | | 武富 孝介 |
| | | 福岡 慎平 |
| | | 交代 | 57' | | 松田 天馬 |
| | | パウリーニョ |
| | | 警告 | 60' | | 白井 康介 |
| | | 交代 | 67' | | 武田 将平 |
| | | 金子 大毅 |
| | | 豊川 雄太 |
| | | アラン カリウス |
レアンドロ | | 69' | 交代 | | | |
アダイウトン | | | |
ディエゴ オリヴェイラ | | | |
ルイス フェリッピ | | | |
塚川 孝輝 | | 75' | 交代 | | | |
三田 啓貴 | | | |
バングーナガンデ 佳史扶 | | | |
中村 帆高 | | | |
アダイウトン | | 78' | 得点 | | | |
渡邊 凌磨 | | 81' | 警告 | | | |
渡邊 凌磨 | | 90+3' | 交代 | | | |
山下 敬大 | | | |
森重 真人 | | 90+4' | 警告 | | | |