2022.9.3 (土)
2022 明治安田生命J1リーグ 第28節
FC東京 × 横浜F・マリノス
( 味の素スタジアム,19:00 )
introduction
- 気が付けば夏休みシーズンは終わり、カレンダーは9月に突入。J1リーグ戦も既に第28節である。チームによって消化試合数に多少ばらつきがあるとはいえ、残り試合数が少ないのはどこも同じ。他チームと比べて未消化が多めの東京も既にリーグ戦を25試合消化しており、残りはあと9試合だ。まだ充分に試合が残っているようにも思える一方、2ヶ月後にはもうシーズンは終わるわけであり、あっという間のように感じる。今節は、味スタに現在暫定2位の横浜F・マリノスを迎えての一戦だ。
- 個人的には7月17日のジュビロ磐田戦以来、7週ぶりの現地観戦。アウェイは当然ながら行けていないし、8月のホームゲーム2試合も、7日の清水エスパルス戦は新型コロナウイルスに感染して行くことができず、13日のセレッソ大阪戦は台風の影響で試合自体が延期になってしまった。今までは毎週のように行くのが当たり前だった「現場」が遠くなってしまった感覚で、飛田給へ行くのも今は立派な「非日常」である。スタジアム着は18:15くらいだったが、この時点で既にバック自由席の中央寄りはほぼ満席。本日は上位の横浜が相手ということもあってか、バック自由席は完売したそうだ。
- 前節、東京はアウェイで柏レイソルと対戦。前々節時点で5位につけていた上位相手に厳しい試合となることが予想されたが、前半のうちに2点を先行して優位に立つと、後半も撃ち合いの展開の中で強力なカウンターを中心に得点力を見せつけ、終わってみれば3-6の圧勝だった。後半こそ大味な内容とはなったが、前半はハードな守備と素早い繋ぎが見られ、チームの理想とする形が垣間見える内容だっただけに、今節も期待である。スタメンは前節と大きくは変わらないが、インサイドは前節スタメンだった松木がベンチスタートとなり、代わりに安部がスタメン。また左SBはバングーナガンデではなく中村となった。横浜は右のアタッカーポジションに仲川を起用してくることが予想され、対面を考慮してのメンバー選考だと思われる。
- 対戦相手の横浜は勝点「48」で暫定2位。消化試合数は東京より1試合少ないものの、同「38」の東京を10ポイント引き離し、J1優勝争いの真っ只中。8月はルヴァンカップとACLで敗退を余儀なくされるなど公式戦4試合で全て敗戦という難しい1ヵ月を過ごしたが、8月18日のACLを最後に試合間隔が2週間空いただけに、フレッシュな状態で試合に臨んでくるだろう。現在得点ランキングトップのレオセアラ、今季新加入の西村らを擁する攻撃陣は豪華そのものであり、東京の守備が持ちこたえられるかが鍵となる。
- 選手紹介から選手入場時にかけては派手な火炎と花火の演出があり、スタンドからは大きなどよめき。また入場者全員に貸し出された自動制御式のペンライトが暗転時に点灯されてスタンド全体が光るなど、あたかも音楽ライブのような演出だ。こういう演出はちょっと前の自分ならば斜に見ていたかもしれないが、生活が変わって観戦頻度が減り、サッカーをシンプルに娯楽として楽しみたい気分の今は、素直に「いいな」と思える。
1st half
- 最初に決定機を作ったのは東京。9分、左ウイングの渡邊が中盤でマークをかわして前を向くと、ドリブルで前進して右サイドの紺野へパス。紺野が得意の右45度の角度から中に切れ込んで左足を振り抜くが、シュートは惜しくもクロスバーを叩いて得点ならず。オープンでない状況で今の東京が1点を取るならばこのパターン、という形を作れただけに惜しい場面だ。
- 12分、横浜は東京の左CKのルーズボールをエウベルが回収してドリブルで一気に加速。そのまま東京陣内まで攻め込み、並走していた仲川へラストパスを通す。仲川がPA内に侵入しようとしたところで、マークについていた長友が後ろから倒してしまい、清水主審はPKの判定。しかしスポットにボールがセットされたところでVARのチェックが入り、判定はPKから直接FKに変更。どうやら長友の手が掛かったのはギリギリPA外だったようだ。この直接FKはレオセアラが決めきれず、東京が難を逃れる。
- その後は冷静さを取り戻した東京が後方からパスを繋いで様子見。しかし横浜は高い位置からプレスをかける前進的な守備で圧力をかけてくる。東京も繋ぐ姿勢を見せて相対するが、最終的には蹴らざるを得ない場面も多い。そんな流れから27分には中央からレオセアラにラストパスを通され、PA内でスウォビィクが倒してしまうものの、PKの判定にはならず命拾いだ。
- 30分を過ぎてからは更に横浜のポゼッションが増え、東京は防戦一方の展開に。前半の残り時間もそう多くはないし、ここは耐えどころだ。しかし40分、横浜は右CKを中央の競り合いのこぼれ球がファーサイドに流れ、そこに詰めていた岩田が押し込んで0-1。流れの中では耐えていただけに、セットプレイでやられたのは痛い。
- 横浜はなおも攻撃の手を緩めず、速いテンポでパスを回して東京を押し込んでくる。45分、横浜はエウベルが左サイドをドリブルで攻め込んでハーフスペースまで押し込み、折り返しのボールが長友に当たってゴール正面にこぼれたところを仲川が押し込んで0-2。前半残り僅かの間に横浜が一気に2点差をつける。システム的な問題というよりは、先制点を挙げた相手の勢いと空気に飲まれた感があり、これはちょっと余計な失点だ。
- 横浜はこの直後にも短いタッチ数でのロングカウンターから、折り返しを西村が意表を突いたダイレクトでシュートを撃つが、スウォビィクが神がかり的な反応で弾き出して失点を阻止。前半で3点差がついたら「THE END」な内容だったので、このセーブには感謝しかない。0-2でハーフタイム。途中までは互角に渡り合っていたとはいえ、セットプレイで先制を許してから一気にギアを上げた横浜についていけなかった。後半はベンチワークも含めて総動員で戦わなければ、このまま終わってしまうだろう。
2nd half
- HT明けから東京は左SBの中村を下げ、同ポジションにバングーナガンデを投入。最初の攻撃的なメッセージといえる交代だ。この采配は早い時間に効果を発揮する。51分、そのバングーナガンデがサイドを攻め上がってファウルを貰いFKを獲得すると、バングーナガンデの蹴ったボールの競り合いがPA内のファーサイドにこぼれた所を拾った塚川が左足で叩き込み1-2>。シュートコースには相手選手も立っていたが、僅かな隙間を抜けてくれた。やはりシュート意識は大切だと感じる追撃弾である。
- 57分、東京ベンチは松木・アダイウトン・フェリッピの3人が交代でピッチに入る。この3人の投入は当然予定をしていただろうが、ここが勝負どころと見たか、一気に全員投入する強気の采配だ。こぼれ球も拾えており、チームの勢いはなおも衰えない。すると63分、東京は右CKを松木が蹴ると、中央の混戦で頭ひとつ高く跳んだ塚川が競り勝ち、ヘディングシュートがゴール右隅に転がり込んで2-2。1点差に詰め寄ったことで雰囲気の暖まりきっていたスタンドからは大きな歓喜の声が上がる。塚川の本日2得点目となるセットプレイからのゴールで、試合は遂にタイスコアに戻った。
- しかし73分、東京は塚川が足を攣った様子でプレイを続行できず。インサイドの換えはもういない。どうするか気を揉むが、ここでベンチはDFの木村を投入してシステム変更。木本・森重・木村の3バックに変更し、渡邊がフリーマン気味のトップ下で、前線にアダイウトンとフェリッピを残す3-4-1-2のような形となる。オープンな展開上等ということか。
- 一方の横浜も追いつかれて以降は勝ち越しを狙って次々に攻撃のカードを切る。前線にはマルコス・水沼・ロペスといった強力なカードがフレッシュな状態で並び、東京にとってはかなりの脅威だ。終盤は案の定オープンな展開となり、横浜は81分に西村、83分にロペスが立て続けのチャンスを迎えるが、いずれもシュートミスに救われる。東京も84分に渡邊が前を向く鮮やかなターンからラストパスをアダイウトンに通すものの、横浜も高丘の好セーブにより逆転は許さない。
- 守備時に5バック気味で対応する東京に対し、SBが押し上げて圧力をかけ続ける横浜は、後半ATに右サイドからのクロスをロペスが難しい体勢ながら左足に当ててフリック気味のシュート。意表を突く形のフィニッシュにスウォビィクが反応しきれずにスタンドが息を飲むが、ボールはクロスバーを叩いて跳ね返り、土壇場の勝ち越しはならず。大きなどよめきがスタンドにこだまする中、ほどなくして試合終了。ホイッスルの瞬間、両チームの少なくない選手たちが膝を折ってピッチに座り込む姿が印象的だった。
impressions
- 多くのお客さんを集めた中で、期待に違わぬ内容を見せてくれた好ゲームだった。端的にいえば、東京が「勝点1を拾った」試合といえるだろう。横浜はやはり強かった。公式戦での勝利から少し遠ざかってはいたものの、試合間隔が空いたところでしっかりとリーグ戦に向けてアジャストしてきた印象。特に多種多様なタイプのアタッカーを揃える攻撃力はやはり脅威で、90分間全く気を緩めることができなかった。前半のもっと早い時間に先制されていたら、より一方的な試合展開になっていたかもしれず、2失点で抑えられたのは御の字だった。DF陣の粘りもあっての結果だろう。
- 前半の先制されるまでの間は、押される時間も多かったとはいえ、ここまでの試合で積み上げてきたチャレンジが出来ていた。横浜が高い位置から圧力をかけてきてヒヤリとする場面もあったが、インサイドでは安部と塚川が激しい運動量で攻守を支えていたし、紺野と渡邊の両ウイングも常に前を向いてプレイする意識が感じられ、それが相手にとっての脅威となっていたように思う。一方で、セットプレイで先制を許してからはなんとなく受け身に回ってしまい、PA内に押し込まれて横からこじ開けられ、連続失点を喫してしまった。この立ち直りの遅さは課題といえるだろう。
- 後半は攻撃的な采配が奏功して、見事に追いつくことができた。HT明けの早い段階でバングーナガンデを投入し、攻撃的な姿勢を明確に打ち出したのが吉と出た。松木・アダイウトン・フェリッピの3人同時投入も、チームの勢いを加速させる良い采配だった。東京の2ゴールはいずれもセットプレイによるものだったが、選手交代によって得た流れを逃さずゴールに結びつけたものだと解釈している。切り札的な存在をベンチに多く準備しておけるような選手層の厚みが出てきたのも良いことだ。
- 今日はなんといっても塚川の存在が大きかった。今夏の移籍市場で川崎から補強した選手だが、攻守にタスクの多いインサイドに難なく適応。守備では多少荒っぽいファウルも厭わずに相手選手へアタックして「潰し屋」の役割をこなし、かたや攻撃ではスピーディな展開でも問題なく繋ぎ、アタッキングゾーンにも多く顔を出していた。それだけでも充分にありがたいが、更に今日の2得点である。J2の岡山や松本でプレイしていた頃にゴールを決めていたことは知っていたが、J1での得点は今日の2得点が初めてとのこと。ちょっと意外なくらいだ。松木と安部の2人でギリギリ回していたインサイドに計算のできる選手が加わったことの意味は大きい。
- いくら相手が横浜とはいえ、試合には勝てていないわけであり、大満足というわけにはいかない。はっきりいって内容では負けていた。しかし、部分的ながら自分たちの目指すスタイルを実践してチャンスも何度か作り、劣勢になってからは、現実的な采配も振るいつつドローに持ち込んだ。理想と現実の間にある「良い感じの落としどころ」に着地させることができたという意味では、評価に値する試合だったのではないだろうか。
- J1優勝争いでは横浜と川崎フロンターレが共に勝点を落とした一方、好調のサンフレッチェ広島が連勝を伸ばして暫定ながら首位に立ち、ますます混戦の様相を呈している。東京にとっては、優勝争いはさすがに非現実的ではあるものの、ACL出場圏内の可能性はまだ十分に残している。来週はガンバ大阪とヴィッセル神戸を相手にアウェイでの連戦があり、少々タフな日程を消化することになる。J1残留争いの当事者であり、現実的な戦いをしてくるであろうチームを相手にどのような試合をするのか注目したい。
FC東京 |
2 |
0 | 前半 | 2 |
2 |
横浜F・マリノス |
2 | 後半 | 0 |
|
|
|
塚川 孝輝 | 53' | 得点 | 40' | 岩田 智輝 |
塚川 孝輝 | 63' | | 45' | 仲川 輝人 |
GK | 24 | ヤクブ スウォビィク | GK | 1 | 高丘 陽平 |
DF | 5 | 長友 佑都 | DF | 25 | 小池 龍太 |
| 30 | 木本 恭生 | | 24 | 岩田 智輝 |
| 3 | 森重 真人 | | 5 | エドゥアルド |
| 37 | 中村 帆高 | | 2 | 永戸 勝也 |
MF | 10 | 東 慶悟 | MF | 8 | 喜田 拓也 |
| 31 | 安部 柊斗 | | 16 | 藤田 譲瑠チマ |
| 35 | 塚川 孝輝 | | 30 | 西村 拓真 |
FW | 17 | 紺野 和也 | FW | 23 | 仲川 輝人 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 9 | レオ セアラ |
| 23 | 渡邊 凌磨 | | 7 | エウベル |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 50 | オビ パウエル オビンナ |
FP | 15 | アダイウトン | FP | 4 | 畠中 槙之輔 |
| 19 | 山下 敬大 | | 6 | 渡辺 皓太 |
| 22 | ルイス フェリッピ | | 10 | マルコス ジュニオール |
| 44 | 松木 玖生 | | 11 | アンデルソン ロペス |
| 47 | 木村 誠二 | | 18 | 水沼 宏太 |
| 49 | バングーナガンデ 佳史扶 | | 27 | 松原 健 |
長友 佑都 | | 12' | 警告 | | | |
| | | 得点 | 40' | | 岩田 智輝 |
| | | 得点 | 45' | | 仲川 輝人 |
| | | 警告 | 45+5' | | 喜田 拓也 |
| | | 警告 | 45+6' | | 永戸 勝也 |
中村 帆高 | | HT | 交代 | | | |
バングーナガンデ 佳史扶 | | | |
塚川 孝輝 | | 53' | 得点 | | | |
安部 柊斗 | | 57' | 交代 | | | |
松木 玖生 | | | |
紺野 和也 | | | |
アダイウトン | | | |
ディエゴ オリヴェイラ | | | |
ルイス フェリッピ | | | |
| | | 交代 | 61' | | 仲川 輝人 |
| | | マルコス ジュニオール |
塚川 孝輝 | | 63' | 得点 | | | |
| | | 交代 | 69' | | エウベル |
| | | 水沼 宏太 |
| | | レオ セアラ |
| | | アンデルソン ロペス |
塚川 孝輝 | | 73' | 交代 | | | |
木村 誠二 | | | |
| | | 交代 | 85' | | 藤田 譲瑠チマ |
| | | 渡辺 皓太 |