2022.7.2 (土)
2022 明治安田生命J1リーグ 第19節
FC東京 × アビスパ福岡
( 味の素スタジアム,18:00 )
introduction
- 6月はリーグ戦のホームゲームが1試合も開催されなかった関係で、1試合もサッカーを観戦することができなかった。7月に入って最初となる今節の試合は、5/29の鹿島戦以来となる現地観戦である。
- 6月下旬から東京は猛暑日が続いており、今日も日中の最高気温は35℃に迫る勢いだった。夕方になってやや気温は落ち着いてきたが、蒸し暑さの残る中での18:00キックオフ。個人的に、夏場の18:00キックオフは薄暮の中で試合を観る雰囲気が好きなのでウェルカムなのだが、19:00キックオフと比べれば昼間の暑さの影響が少し残るため、水分も少し多めに持参する。選手たちにとっても過酷なコンディションなのは間違いないだろう。
- 東京のチーム状態は、あまり良くはない。6月上旬の中断期間が明けて最初のリーグ戦となったアウェイ・湘南戦を0-2で落とすと、アウェイでの連戦となった前節の鳥栖戦は0-5の大敗。ここ近年で折り合いの悪い鳥栖相手とはいえ、カウンターから軽い失点を繰り返す様は見ていてあまり気分の良いものではなかった。リーグ戦の合間に行われた天皇杯の試合でもJ2の長崎に延長戦で敗れて敗退となり、公式戦では3連敗中である。
- 今節迎える相手はアビスパ福岡だ。リーグ前半戦では5月にアウェイで対戦しており、その試合では東京が森重の負傷欠場など守備に難を抱えていたこともあって、福岡が5-1と東京を粉砕している。福岡とはJ1に昇格してきた昨季から公式戦で5試合を戦っているが、2分3敗と勝利がなく、この間のゴール数も僅かに「1」。長谷部監督の築き上げた堅守速攻のサッカーに毎度手を焼いている印象だ。とはいえ、福岡も最近は苦戦を強いられており、現時点で勝点「19」の13位。J1参入決定戦へと回る16位とは僅かに2ポイント差しかない。今日の試合ではドローでも良しとする現実的な戦いをしてくる可能性があり、ロースコアのまま推移する展開は充分考えられる。東京としてはやはり先制点を与えたくない試合だ。
- 発表されたスタメンをチェックすると、東京は前節の鳥栖戦で負傷交代した安部がメンバー外。中盤の要ともいえる安部の不在がどこまで響くかが気になるところだ。また、海外移籍のためチームを離れた小川の代わりの左SBには長友、右SBには中村が起用された。連戦という影響もあってか、アダイウトンはベンチスタート。展開次第では交代で勢いをつける必要が生じるかもしれず、この起用法が適当だろう。対する福岡は今季の正GKだった村上がベンチスタートとなり、代わりに永石がスタメン。あの福岡大学でレギュラーを張っていたレベルなので、すっかりJ1の試合は経験済だとばかり思っていた永石だが、なんと今日の試合がJ1初出場のようだ。
1st half
- スタートの並びを見ると、福岡は4-4-2の3ラインを敷くオーソドックスなシステム。ここ数試合の福岡は3バックで戦っていたはずなので、並びを戻してきたことになる。5月の博多の森でシンプルなカウンターから圧勝を飾った東京相手ということを考えれば、守備が安定しやすく、かつ堅守速攻に向いている4-4-2への回帰は妥当な判断なのかもしれない。
- 立ち上がり早々、東京をアクシデントが襲う。まだ開始10分も経過しないうちに右サイドをスプリントしていた中村が足を痛めた様子で、自らプレイを中断。すぐさまメディカルスタッフが呼ばれるが、結局中村はプレイ続行できず、スタッフに支えられてピッチアウト。ベンチに戻らず、担架でロッカールームに下がっていく。安部に続いて中村まで離脱とは・・・。長友が右SBに回り、バングーナガンデが左SBに投入されてピッチ上の穴埋めはスムーズに行われるが、色々な意味で手痛い交代だ。
- 良くない流れは続く。16分、福岡はアタッキングゾーンまで攻め込んで東京を押し込み、右サイドからのセカンドチャンスをSBの前嶋がクロス。これをファーサイドでフリーになった山岸が頭で折り返し、ゴール正面に詰めていたルキアンが押し込んで0-1。アウェイチームが先手を奪う。東京はペナルティーエリアの幅まで侵入されてしまい、その上で前嶋のクロスにファーサイドで2人もフリーにしてしまっていた。
- 福岡のハイプレスが機能していることも要因としては考えられるが、東京は後ろが重たい。なかなか前にパスの出しどころがなく、後ろで回せてはいるが、相手が動揺するような起点を見つけられないでいる。
- 34分、東京は最終ラインの森重がいよいよ痺れを切らしたか、自陣から強い弾道の縦パスをトップの位置まで入れると、これに粘ったディエゴがPA前で粘って最後は松木がシュート。ようやく良い形を作るが、これはゴールマウスの僅かに右。38分にはゴール正面でボールを受けたディエゴがコントロールショットを狙うが、永石のセーブに遭い得点ならず。結局、前半は0-1で終了。チャンスが無かったわけでないとはいえ、ほぼ一方的といって差し支えないレベルで福岡が支配する展開だった。既に交代枠を1つ使っている東京にとっては、残りの交代をどう使うのかもポイントとなる。
2nd half
- 注目のHT明け、東京は永井を下げてレアンドロを投入。これだけ一方的な内容であれば、レアンドロの個人技に期待を賭けるのは妥当な判断といえるだろう。ディエゴが左サイドに回り、レアンドロが中央に構えるような立ち位置の変更を加えて東京は後半に臨む。
- 効果はすぐに表れた。49分、東京は自陣からの縦のフィードを松木がヘディングでフリックすると、ちょうど良いタイミングで右サイドから裏に動き出していた紺野が抜け出し、GKと1vs1。紺野のパワーシュートは永石がセーブしてチャンスを逃したかに見えたが、こぼれた先に詰めてきたレアンドロが押し込んで1-1。東京が後半の早い時間帯で同点に追いつく。
- タイスコアに戻して一気に逆転といきたい東京だが、この後の時間帯こそが重要だ。福岡も速攻でチャンスを狙う。58分、自陣でのボール回収から東京の後方が手薄とみるや、ロングカウンターが発動。右サイドから顔を出した金森がシュートチャンスを迎えるが、これはスウォビィクがビッグセーブで凌ぎ、勝ち越しを許さない。60分、東京はバングーナガンデの攻撃参加から福岡ゴール前まで人数をかけて攻め込むと、右サイドで細かく繋いでレアンドロが中へ折り返すが、正面でフリーで待っていた渡邊のシュートは大きく枠の上に外れてしまい、チャンスを決めきれない。
- 直後の62分、東京は後半に入って最初のCKを獲得すると、これをレアンドロが蹴る。中央で両チームの選手が競り合い、ボールがこぼれた先に待っていたのは紺野。PA外からボールの落ち際を左足のボレーで振り抜くと、これがぐんと伸びてゴール左上隅に突き刺さり、2-1。スタンドからは歓喜と驚嘆の入り混じった雄叫びが一斉に上がった。紺野の「ゴラッソ」としかいいようのない圧巻の得点により、東京が逆転に成功する。
- 逆転を許した福岡は、直後に田中を下げてフアンマを投入。前線に据えて圧力をかけていく。東京はカウンター中心に攻撃を繰り出すが、71分の速攻の場面でスプリントで攻めあがったディエゴが筋肉系のトラブルで自ら交代を要求。中村に続き、ディエゴもアクシデントでの交代となる。すると3分後に福岡がゴール前で競り合いの場面を作り、PAの左端付近でこぼれ球を追っていたフアンマが後方から木本に倒されて池内主審がPKの判定。ファウルをとられた木本をはじめ、東京の選手たちは一様に抗議をするが、VARのチェックが入ってもなお判定は変わらない。PKを奪ったフアンマ自身がキッカーを務め、ゴール右隅にシュートを沈めて2-2の同点となる。
- 終盤は両チーム共に勝ち越しを狙っての攻防。85分には福岡の左CKから宮が強烈なヘディングでゴールを狙うが、スウォビィクがストップ。VARチェックが重なった関係で10分間と長くとられた後半ATには、東京が途中出場の三田が強引なドリブル突破でPA内を突き進みシュートへ持ち込むが、これも永石がストップ。両チーム共にGKの奮闘もあって得点を許さず、このまま試合終了となり、2-2のドロー決着となった。
impressions
- やはりというべきか、福岡のしぶとさに苦しめられた試合だった。攻撃の糸口を見出せないうちに相手に先制点を与えてしまったことで、試合が難しくなった。HTの交代が奏功して一度は逆転に成功したが、福岡も選手交代で流れを引き寄せ、PKで追いついてきた。勝てない試合ではなかっただけに悔やまれるところだが、安部の欠場や、中村のアクシデントなど、万全でないチーム状況を鑑みれば、総合的にはドローでも致し方無しとすべき試合内容だったのではないだろうか。
- 前半は明らかに福岡が支配したゲームだった。福岡が前節まで採用していた3-4-2-1のシステムを見直し、4-4-2にしてブロックをがっちり固めてきたことで、東京はアタッキングゾーンにボールの出し先を見つけられず、必然的に後方が重くなった。そこに対して福岡がプレスから揺さぶりをかけ、波状攻撃で先制点を奪取。試合の主導権を手にした。東京のシュートチャンスもなくはなかったが、スペースが無い中では紺野や永井のようなタイプはなかなか特徴を出しづらい。座して死を待つわけにもいかず、どこかのタイミングで何らかの手を打つ必要があるのは明らかだった。
- そういった意味で、後半頭から永井を下げてのレアンドロ投入は良い選択だった。レアンドロを中央に据えたことで相手の注意がそちらに向き、紺野がフリーになりやすい状況ができたことで、同点弾のような場面が生まれたのではないかと思う。チームがスタイルの転換を図る中、レアンドロの起用法はなかなか難しいものがある(と個人的には思っている)が、今日のような八方塞がりに近い状況を打破する意味では効果的だと感じた。
- 紺野のパフォーマンスも圧巻だった。レアンドロが入って早々にオフサイドラインを抜け出す動きで決定機を迎え、自らのシュートは防がれたものの、レアンドロの同点弾を演出。その後には、CKのこぼれ球を得意の左足で叩きつけて圧巻のゴールを決めてみせた。簡単には再現するのが難しいゴールであり、年に1回決まるかどうかというようなボレーシュートだったが、それを今日のような競った展開で決められるのは凄いことだ。
- 逆転した後の試合運びに関しては、やや勿体ない気持ちはある。福岡がフアンマを投入し、ゴール前にボールを集める場面を増やしてきたのは想定内だったと思うし、それなりに対応できていたが、PKを与えてしまった場面に関してはフアンマに一本取られた印象だ。倒した木本にとっては、PA内でゴール方向へターンさせないためにコンタクトを図ったのだと思うが、ファウルを貰う巧さのあるフアンマ相手にはやや軽率だったかもしれない。
- チームとしては6月の中断明けから未だに勝ち無しの状況が続くことになったが、前節の鳥栖戦で見られた破滅的な内容からは、かなり持ち直した印象を受けた。また、もし今日の試合を落として3連敗となっていたら、そろそろ順位表の「上」ではなく「下」の方を真剣に意識せざるを得ない状況となっていただろう。その意味でも、連敗を止めたことは安心材料だ。負傷者の状態に関しては心配だが、次の試合はすぐにやってくる。次節は中3日で北海道コンサドーレ札幌とのホームゲームが待っている。平日のナイトゲームとなるため、残念ながら自分は観戦は見送る予定だが、どうにか勝点3を持ってこれることを期待したい。
FC東京 |
2 |
0 | 前半 | 1 |
2 |
アビスパ福岡 |
2 | 後半 | 1 |
|
|
|
レアンドロ | 49' | 得点 | 16' | ルキアン |
紺野 和也 | 63' | | 78' | フアンマ デルガド(PK) |
GK | 24 | ヤクブ スウォビィク | GK | 41 | 永石 拓海 |
DF | 37 | 中村 帆高 | DF | 29 | 前嶋 洋太 |
| 30 | 木本 恭生 | | 3 | 奈良 竜樹 |
| 3 | 森重 真人 | | 5 | 宮 大樹 |
| 5 | 長友 佑都 | | 13 | 志知 孝明 |
MF | 10 | 東 慶悟 | MF | 14 | ジョルディ クルークス |
| 23 | 渡邊 凌磨 | | 19 | 田邉 草民 |
| 44 | 松木 玖生 | | 6 | 前 寛之 |
FW | 17 | 紺野 和也 | | 39 | 田中 達也 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | FW | 17 | ルキアン |
| 11 | 永井 謙佑 | | 11 | 山岸 祐也 |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 31 | 村上 昌謙 |
FP | 7 | 三田 啓貴 | FP | 2 | 湯澤 聖人 |
| 15 | アダイウトン | | 7 | 金森 健志 |
| 16 | 青木 拓矢 | | 9 | フアンマ デルガド |
| 20 | レアンドロ | | 15 | 熊本 雄太 |
| 29 | 岡崎 慎 | | 16 | 渡 大生 |
| 49 | バングーナガンデ 佳史扶 | | 40 | 中村 駿 |
中村 帆高 | | 10' | 交代 | | | |
バングーナガンデ 佳史扶 | | | |
| | | 得点 | 16' | | ルキアン |
| | | 警告 | 29' | | ジョルディ クルークス |
永井 謙佑 | | HT | 交代 | HT | | ジョルディ クルークス |
レアンドロ | | | 金森 健志 |
レアンドロ | | 49' | 得点 | | | |
森重 真人 | | 52' | 警告 | | | |
紺野 和也 | | 63' | 得点 | | | |
| | | 交代 | 66' | | 田中 達也 |
| | | フアンマ デルガド |
ディエゴ オリヴェイラ | | 71' | 交代 | | | |
アダイウトン | | | |
| | | 得点 | 78' | | フアンマ デルガド(PK) |
| | | 交代 | 82' | | ルキアン |
| | | 渡 大生 |
東 慶悟 | | 86' | 交代 | | | |
青木 拓矢 | | | |
紺野 和也 | | | |
三田 啓貴 | | | |
| | | 交代 | 88' | | 田邉 草民 |
| | | 中村 駿 |