2022.5.29 (日)
2022 明治安田生命J1リーグ 第16節
FC東京 × 鹿島アントラーズ
( 味の素スタジアム,15:00 )
introduction
- 先週土曜日の柏戦に続き、2週連続となる週末のホームゲーム。水曜日開催となった前節の試合、東京はアウェイで清水エスパルスに3-0と完勝。5試合ぶりとなるリーグ戦勝利で、ようやく息を吹き返した。前々節、スコアレスドローに終わった柏戦の試合内容が良かったため、それほど心配はしていなかったが、それでも実際に勝ってくれると安心する(笑)。しかしこの勢いを更に加速させるには、ホームに戻ったこの試合で勝利し、連勝することが重要だ。まして今節の相手は現在リーグ首位の鹿島アントラーズ。既にリーグ戦は折り返し地点が近づいており、今日の鹿島との試合は、リーグ前半戦最後の山場といえる大一番となった。
- 今日はとにかく暑い。関東地方ではフェーン現象の影響で最高気温が30℃を超える地点が多いとの予報が出ていたため、夏場の服装に加え、水筒も携えて飛田給へ向かうが、既に味スタに着く頃には身体中から汗が吹き出しそうな勢いだ。今日は試合前から広場で音楽ライブが開催されるなど催し物も満載で、チケットの売れ行きも良好な様子。特に西日の当たるバックスタンドは日向を避けて上層席が早く埋まると読み、少し早めに到着して座席を確保した。試合が始まる頃には上層席はゴール裏寄りの端までびっしりと埋まっていたので、この判断は我ながら良かったと思う。
- 対戦相手の鹿島は、今季はクラブ史上初となる欧州出身の指揮官であるヴァイラー新監督のもと、リーグ序盤戦から手堅く勝点を伸ばしている。前節にはそれまで首位を守っていた川崎に勝点で並び、得失点差でトップに立った。その一方で、前節はホームでサガン鳥栖を相手に4-4という壮絶なドロー。0-3の展開から後半ATまでに一度逆転に成功したものの、ラストプレイで再びタイスコアに戻されるという、したたかさが売りの鹿島らしからぬ大味なスコアだった。東京としては鹿島の守備の乱れに付け込めるかが勝敗の鍵となるだろう。
- 対する東京は、前節からスタメンを3人変更。連戦の疲労も考慮しつつではあるが、最低限のターンオーバーで試合に臨む。ここ数試合のメンバー構成を考えれば特に大きなサプライズはないが、ベンチに山下が帰ってきたのは交代の選択肢を増やすことになるだけに心強い。また、今夏の移籍市場でポルトガル1部のヴィトーリアに期限付き移籍することが決定した小川は、この試合がリーグ戦のホームゲームで最後のプレイとなる。
1st half
- 試合の立ち上がりは両者様子見の空気が漂う、少し重たい内容。どちらかといえば鹿島の方が強めにプレスをかけてくるが、本来のポジションを放棄するほどのリスクは冒してこない。東京も「まずは受ける」といった感じのスタンスで、印象に残るような攻防は、14分にゴール正面に蹴られてこぼれたボールをファンアラーノが回収し、その流れからアルトゥールカイキがシュートを狙ってきた場面くらいか。暑さの影響もあるのだろうか、20分すぎの飲水タイムを挟むまでは、ほぼ無風の試合展開だ。
- 鹿島の圧力を感じながらの時間を過ごしていた東京だが、26分に左サイドのアダイウトンがインナーラップを仕掛けて松木にヒールパスを出すと、松木からディエゴを経由して渡邊がシュート。これは枠を外れてしまうが、ひとつ良い形の攻撃を作れたのを境に、東京が中盤のやや高い位置でボールを持てるようになり、主導権を引き寄せ始める。
- 33分、東京は小川が左サイドでボールを持ちあがると、ゴール正面のエリアまで顔を出していた渡邊にパス。渡邊がダイレクトでディエゴに繋ぎ、ディエゴは再びダイレクトでPA内を右から回り込んだ渡邊にリターンパスを送りシュートチャンス。渡邊がニアサイドのゴール右隅に決めて1-0。見事なダイレクトのパス交換でゴールを陥れた東京が先にリードを奪う。
- その後も東京は攻め手を緩めない。40分にはミドルゾーンから松木が左サイドのオープンスペースにスルーパスを送り込み、アダイウトンが俊足を飛ばして追いつき決定機を迎えるが、GK・権純泰がセーブ。これは決まらないものの、直後の42分には小川のパスを受けたアダイウトンがマーカーのブエノを強引に振り切り、再び左サイドを独走。中へのパスをディエゴがキープして、右サイドから中に入ってきた渡邊へ流す。渡邊がダイレクトでゴール左隅へシュートを叩き込み2-0。先制点と似たような局面で、今度は逆を突いた形だ。アダイウトンの個人技から完成した鮮やかな速攻により、スタンドは大きく盛り上がる。
- 前半はこのまま2-0で終了。チームの勢いを感じる素晴らしい内容だ。とはいえ相手は鹿島であり、このまま試合が終わるとは到底思えない。後半にどのような出方をしてくるか、まだ警戒が必要だ。
2nd half
- 後半に入っても東京の攻撃は続く。50分、ディエゴが松木からの縦パスを左サイドのアダイウトンにダイレクトで渡すと、アダイウトンがドリブルで一気に加速。そのままPA内に侵入すると、マークについていたブエノが溜まらず倒してしまい、木村博之主審はPKの判定。完全に個人の力で奪い取ったPKであり、もはや笑うしかないレベルだ。キッカーはしばらく得点から遠ざかっているディエゴ。得意のゆったりとしたステップから権純泰のタイミングを外してゴール左隅に蹴り込み、3-0。後半も東京が先に1点を奪う。
- さすがに3点差ならば安全圏か・・・と安堵の空気が味スタのスタンドを支配するが、鹿島もこのままでは終わらない。直後に右サイドのアラーノを下げて和泉を投入すると、直後の54分、左サイドのアルトゥールが攻め上がってPA内にパス。和泉がダイレクトで背後にボールを流し、そこに走り込んできた上田が左隅にシュートを叩き込み3-1。ホーム側スタンドの「楽勝ムード」に冷や水を浴びせかける。東京は投入されたばかりの和泉への対応が少し遅れたのが失点に繋がった。リードを広げた直後の失点は勿体ない。
- この後はしばらく鹿島がボールを支配して攻め込む時間帯。特に鈴木が左サイドに開いてボールを受けて起点になる形が多く、明らかに東京の右サイドが「狙い目」になっている。この状況を見てアルベル監督も手を打つ。61分に渡邊と長友を下げ、永井と中村を投入。右サイドのユニット同時交代は柏戦でも見られた采配だ。果たして、この交代策は見事に効果を発揮。特に長友に代わって右SBに入った中村は安定した守備対応。ボールがタッチを割ってマイボールのスローインとなった際には、テキパキとボールを投げ入れようとするボールパーソンに対し、ジェスチャーで「すぐに投げない」よう要求するなど、クレバーな振る舞いも目立つ。
- 東京が守備から落ち着きを取り戻した後は、カウンターの精度も向上。特にアダイウトンはこれまで充分すぎるくらい走っているにも関わらず、運動量が一向に落ちないので、「行ってこい」のロングパスを裏のスペースに蹴れるのが大きい。71分には松木のパスを起点にアダイウトンを経由してディエゴがシュートに持ち込むが枠の右。83分にもアダイウトンが速攻から抜け出してGKと1vs1の局面となるが、権純泰に止められてしまい、試合を決める1点がなかなか入らない。
- 終盤は鹿島の攻撃の波が再び押し寄せるが、ボールタッチ数が多い分、球際で上手くファウルを引き出す東京が着々と時間を消化していく。後半AT目前には小川がPA内で鈴木を倒してしまい、あわやPKかと思われたが、木村主審はノーファウル。鹿島の選手が一斉に主審を取り囲み、判定に納得のいかない鈴木はウォーターボトルをピッチに叩きつけて警告を受けるなど、苛々しているのが明らかに見てとれた。結局、スコアはこのまま動かずに3-1で試合終了。1点こそ返されたものの、無事逃げ切りに成功した東京がリーグ戦2連勝となった。
- 選手挨拶後には、6月の試合を終えた後にポルトガルへ渡る小川のセレモニーが行われた。2015年に高卒でチームに加わってから着実に成長し、海外移籍まで勝ち取った小川のステップアップは素直に嬉しいし、東京のファンとして誇らしく思う。海外での更なる成長に向けて決意を語った小川に対し、スタンドからは激励の拍手が贈られていた。
impressions
- 東京にとっては会心のゲームだったといえるのではないか。試合の序盤は相手の出方もあって慎重な入り方となったが、良い形の攻撃ができてから主導権を握り、その時間帯に先制に成功。前節の清水戦もそうだったが、やはり先に点を取れたことが大きかった。更に前半の終盤、後半の立ち上がりと、互いに集中を要する時間帯に相次いで追加点を奪えたことで、試合運びが圧倒的に楽になった。チームとして自信を取り戻しつつあることが、試合を観ていても手に取るように分かった。逆に、鹿島は前節の鳥栖戦で露呈した失点癖を修正することができず。DFラインのスタメンを変更して臨んだ今日の試合だったが、その采配も裏目に出てしまった。
- 試合の勝利を大きく決定付けたのは、前半の渡邊の2得点だった。ここまでのシーズンの渡邊は、SBでの起用だったり、あるいは試合途中からの出場だったりと、プレイエリア・プレイタイム共になかなか本領を発揮しづらい起用だった印象があるが、その限られた中でも与えられた役割を続け、この重要な一戦で、得意なサイドアタッカーでのスタメン起用。左サイドに攻撃の起点ができると積極的にセンターラインまで顔を出し、ディエゴとの距離を縮めて見事な連携を見せ、複数得点を挙げる大活躍を見せてくれた。チームとしてまたひとつ大きな武器のオプションを手に入れた感があり、これからが楽しみでもある。
- また、今日は得点こそなかったが、アダイウトンのパフォーマンスは傑出していた。2点目の場面は、自陣でマーカーのブエノを背負いながら鮮やかな反転で前を向き、圧倒的な加速でボールを奪い取ってサイドを独走。この一連のプレイは、少なくとも国内ではアダイウトン以外の誰にも再現できないだろう。3点目に繋がるPK奪取もサイドをドリブルで仕掛けてブエノのファウルを誘ったもので、対戦相手ながらブエノが気の毒になるくらいだった。来日してからのプレイを全て見ているわけではないが、今のアダイウトンの状態はキャリアのピークといっても差し支えないところにまで達しているのではないか。「味方で良かった」。それが今の率直な気持ちである。
- これだけの内容で、文句のつけどころなど無いようにも思えるが、やはり失点したことは課題だろう。リードを3点に広げ、このまま撤退戦に入れば文句なしの完勝が見えてくるところだったが、あっさりと上田をフリーにしてしまった。やはり「得点直後の失点」というのは空気を一変させてしまう怖さがある。実際、1点を返されてからの鹿島の攻撃は迫力があった。今日は時間の使い方が上手かったため問題なく逃げ切れたが、勝っている状況で無駄に出入りの多い展開にすることは、個人的には好みではない。
- パーフェクトな試合内容ではなかったが、それでもこの勝利が大きな意味を持っていることに変わりは無い。他会場では鹿島だけでなく、勝点で並走する川崎フロンターレも敗戦。代わりに横浜F・マリノスが勝利して首位に立っている。東京は首位に6ポイント差の暫定6位。結果第一のシーズンでないとはいえ、「追いかける背中が見えている」という状況がマイナスに作用することは無いはずだ。インターナショナルウィークの関係もあり、リーグ戦はここから3週間の中断となる。小川の海外移籍によってSBのポジションに空きができることを考えれば、7月以降の戦い方を探るちょうどよいタイミングともいえるだろう。この中断期間を有効に使いたいところだ。
FC東京 |
3 |
2 | 前半 | 0 |
1 |
鹿島アントラーズ |
1 | 後半 | 1 |
|
|
|
渡邊 凌磨 | 33' | 得点 | 54' | 上田 綺世 |
渡邊 凌磨 | 42' | | | |
ディエゴ オリヴェイラ(PK) | 52' | | | |
GK | 24 | ヤクブ スウォビィク | GK | 1 | 權 純泰 |
DF | 5 | 長友 佑都 | DF | 32 | 常本 佳吾 |
| 30 | 木本 恭生 | | 15 | ブエノ |
| 3 | 森重 真人 | | 6 | 三竿 健斗 |
| 6 | 小川 諒也 | | 2 | 安西 幸輝 |
MF | 16 | 青木 拓矢 | MF | 7 | ファン アラーノ |
| 31 | 安部 柊斗 | | 14 | 樋口 雄太 |
| 44 | 松木 玖生 | | 21 | ディエゴ ピトゥカ |
FW | 23 | 渡邊 凌磨 | | 17 | アルトゥール カイキ |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | FW | 18 | 上田 綺世 |
| 15 | アダイウトン | | 40 | 鈴木 優磨 |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 31 | 沖 悠哉 |
FP | 10 | 東 慶悟 | FP | 5 | 関川 郁万 |
| 11 | 永井 謙佑 | | 8 | 土居 聖真 |
| 17 | 紺野 和也 | | 11 | 和泉 竜司 |
| 19 | 山下 敬大 | | 19 | 染野 唯月 |
| 29 | 岡崎 慎 | | 22 | 広瀬 陸斗 |
| 37 | 中村 帆高 | | 34 | 舩橋 佑 |
渡邊 凌磨 | | 33' | 得点 | | | |
渡邊 凌磨 | | 42' | 得点 | | | |
| | | 警告 | 50' | | ブエノ |
ディエゴ オリヴェイラ(PK) | | 52' | 得点 | | | |
| | | 交代 | 53' | | ファン アラーノ |
| | | 和泉 竜司 |
| | | 得点 | 54' | | 上田 綺世 |
長友 佑都 | | 61' | 交代 | | | |
中村 帆高 | | | |
渡邊 凌磨 | | | |
永井 謙佑 | | | |
| | | 警告 | 63' | | 和泉 竜司 |
| | | 警告 | 67' | | 三竿 健斗 |
| | | 交代 | 71' | | ディエゴ ピトゥカ |
| | | 土居 聖真 |
ディエゴ オリヴェイラ | | 80' | 交代 | | | |
紺野 和也 | | | |
木本 恭生 | | 84' | 交代 | | | |
岡崎 慎 | | | |
松木 玖生 | | | |
東 慶悟 | | | |
| | | 交代 | 86' | | 安西 幸輝 |
| | | 染野 唯月 |
| | | 三竿 健斗 |
| | | 関川 郁万 |
| | | 警告 | 90+3' | | 鈴木 優磨 |