2022.5.4 (水)
2022 明治安田生命J2リーグ 第14節
横浜FC × ロアッソ熊本
( ニッパツ三ツ沢球技場,14:00 )
introduction
- 大型連休真っ只中の5/4は昼間がフリーで、久しぶりにマイクラブ以外の試合を観られることになった。さっそく観戦できそうな対戦カードを調べたところ、味スタ(J2・東京V×仙台)、三ツ沢(J2・横浜×熊本)、小瀬(J2・甲府×群馬)、愛鷹(J3・沼津×長野)の4会場が候補に。「遠足先」としては小瀬と愛鷹が魅力的だが、タイムスケジュールがタイトになるため、老体には体力的に難しそう(笑)。対戦カード的には味スタが面白そうだが、せっかく他所のクラブの試合を観るチャンスなのに、いつもの飛田給へ行くというのもなんだか味気ない。・・・ということで、「晴れなら三ツ沢、雨なら味スタ」と決めて天気予報を待つ。前日(5/3)の夜に最後のジャッジを行い、晴れの天気予報を確認して、三ツ沢の「横浜×熊本」のチケットを確保した。
- 連休中の横浜駅近辺の交通事情は気になるところで、気持ち早めに電車で横浜へ向かう。おそるおそる三ツ沢グランド経由の路線バス乗り場に向かったところ、思ったほどの混雑ではなく、ほとんど待たずに市バスに乗ることができた。渋滞も大したことはなく、拍子抜けしながらニッパツ三ツ沢球技場に到着。スタジアム周辺は多くのサポーターや家族連れで賑わっていたが、いざスタンドに入ってみたらスタンドの埋まり具合はそこそこで、後に入場者数は6,772人と発表。運営側からしたらもう少し入れたかったかもしれないが、個人的には三ツ沢はこの程度の入りが最もストレス無く観られてちょうど良いように思う。
- ホームの横浜FCは、今季1年でのJ1復帰を目指してのシーズン。北海道コンサドーレ札幌の世代別カテゴリの監督を歴任してきた四方田修平新監督を招聘し、昨季J1を戦った主力選手の流出も最低限に抑えつつ、補強にも積極的だった。その成果あってか、開幕直後から破竹の勢いで勝点を伸ばし、13試合を終えて8勝5分。未だシーズン無敗で首位をキープしている。ただしここ数試合は開幕直後の勢いに陰りが見えつつあり、前節に行われたザスパクサツ群馬とのアウェイ戦では、前半に3点を先行しながら後半に追いつかれてドロー。直近の3試合で全て勝ち切れていない状況だ。今日はその群馬戦から中2日という日程を考慮したのか、スタメンを8人変更している。
- 対戦相手はロアッソ熊本。2018年シーズンにJ3に降格し、しばらくは低迷していたが、昨季は最終節まで昇格の行方が分からない混沌としたリーグ戦を逆転優勝で制し、今季は4年ぶりとなるJ2でのシーズンを戦っている。前節を終えた時点で順位は15位であるが、戦績は4勝5分4敗とイーブン。中位が混戦となっていることから、順位浮上も充分に可能な位置だ。前節はアウェイでいわてグルージャ盛岡に2-1で勝利しており、今節はアウェイでの連戦となる。熊本も横浜と同様、中2日という厳しい日程だが、前節からのスタメン変更は無し。大木武監督のこだわりを感じるラインナップだ。
- 試合前には、5/1に逝去されたジェフユナイテッド市原(千葉)と日本代表の元監督、イビチャ・オシムさんを偲んで黙祷が行われた。この黙祷は各地のJリーグ会場で行われているようで、オシムさんが日本サッカーに与えた影響の大きさを改めて思い知らされる。一方で、自分の前の席に座っていた家族連れの小学生くらいのお子さんが、「オシムって、だれ?」と父親に尋ねる光景には時の流れの速さを感じる。
1st half
- ホームの横浜は、スタメンの入れ替えは発生しているものの、スタートの立ち位置は今季のベースとなっている「3-4-2-1」。渡邉が1トップに入り、シャドウの位置に伊藤と松浦。ボランチには昨季までのJ1の舞台を経験している安永と手塚のコンビが並んでおり、名前だけならばメンバー入れ替えの影響を感じさせないラインナップだ。一方の熊本は、ここ最近のJリーグでは滅多にお目にかかる機会の無い「3-3-3-1」のシステムを採用(「3-3-1-3」と見る人もいるようだ)。実のところ、この独特なシステムの「運用法」をチェックしておきたい、というのも今日の観戦動機のひとつである。
- 前半に流れを掴んだのはアウェイの熊本。ボール保持時は後方で短いタッチ数でのパス回しが基本だが、前方にスペースがあれば躊躇なくロングパスを入れてくる。そしてこのロングパスを使った攻撃の精度が高い。最初の決定機は14分、カウンターから前線で待つ坂本にロングパスが渡り、ドリブルでの仕掛けからシュートに持ち込む。シュートは僅かにゴールマウスを右に外れるが、サイドアタッカーの存在感が出た場面だ。
- 20分前後からは横浜がセカンドボールを拾える時間帯となるが、中盤の繋ぎの部分でミスが多く、熊本がカウンターに転じる場面が多い。31分には再び熊本にチャンス到来。最終ラインのイヨハからのフィードで左サイドを抜け出した坂本が仕掛けてハーフスペースに侵入し、折り返しを竹本がシュートへ持ち込むが、横浜の守備がブロック。セカンドチャンスとなるクロスからの阿部のシュートもGKの六反がストップしてピンチを逃れる。
- その後も熊本が効果的なカウンターを繰り出す場面が続き、42分には坂本の折り返しに阿部が飛び込むが僅かに合わず、前半は0-0で終了。広範囲に渡るプレスが効果を発揮した熊本が想像以上に横浜の陣内を押し込む場面の多い内容だった。横浜にとってはボールを拾って前に出ていこうとするところでボールを失い、ネガティブトランジションで本来ならば不要なスプリントを要求される厳しい内容だが、選手交代で流れを変えるチャンスは残されている。後半のベンチワークが気になるところだ。
2nd half
- 後半に入って最初のチャンスは熊本。47分、右サイド深くでボールを受けた阿部がクロスを入れると、これが横浜ゴールを強襲する形となり、六反がどうにか触ってピンチを脱出する。この後は横浜もこぼれ球を拾ってポゼッションを増やす時間帯が見られたが、熊本も前半から続くプレッシングで流れを渡さず、再び試合は膠着気味となる。
- 61分、先に動いたのは横浜。渡邉・松浦・高木に代え、小川・長谷川・山下の協力な3人を同時に投入し、試合を動かしにいく。攻撃面で良いカンフル剤となったのは、J1王者の川崎から完全移籍で加入した長谷川だ。前を向いてドリブルで仕掛ける場面になると、熊本は奪いどころがなく、ディレイをかけながら自陣に閉じこもるしかない。横浜としてはそこでゴールをこじ開けたいが、シュートまで持ち込めずにボールを拾われる場面が続き、スタンドの横浜サポーターからは時折溜め息が漏れ聞こえる。
- 劣勢の熊本は、76分にこちらも3枚替え。トップ下の竹本に代えて伊東が入り、両WBも同時にチェンジする。横浜は攻勢を緩めず、左サイドからは山下の縦の突破、右サイドからは途中出場のサウロの中央への仕掛けなどでゴールへ接近を試みる一方、熊本は攻撃を単純化。ボールを奪えば手数をかけずに前線へボールを運び、シンプルにシュートへ持ち込むという形を増やしていく。どちらに1点が入ってもおかしくない展開だ。
- 両者なかなか決定機を迎えられないまま迎えた後半ATは「4分」の掲示。このままスコアレス決着という雰囲気が濃厚になってきた中、熊本はミドルゾーンで河原がボールを奪い、再び速攻が発動。ボックス付近まで攻め上がった河原の縦パスをPA内の藤田が横に流すと、そこに走り込んだ伊東がダイレクトでゴール右隅に叩き込み、0-1。土壇場で熊本が先制する。選手たちが一斉にビジタースタンドへ駆け出し、ゴール裏の熊本サポーターの目前で大きな歓喜の輪が出来る。
- 再開後の横浜はすぐさまパワープレイを開始。山下の折り返しはケアの薄いファーサイドへ流れていくが、そこに飛び込んだイサカのシュートは枠を外れ、この決定機がこの試合最後のプレイとなった。タイムアップのホイッスルと同時に、横浜の選手たちが次々にピッチに崩れ落ちる。今季ここまで無敗をキープしてきた横浜に、遂に黒星が付いた瞬間だった。
impressions
- 「劇的」としか言いようのない結末の試合だった。試合全体としては、横浜が思った以上にやりたいことをさせてもらえず、逆に熊本の方が狙いどおりのサッカーを出来ていた印象。過密日程の中、メンバーを入れ替えて試合に臨んだ横浜と、「いつもどおり」のメンバーにこだわった熊本のどちらが吉と出るかが一つのポイントでもあったように思うが、結果としては熊本の選手起用が当たったことになる。タフな日程でもコンディションを落とさずに戦うことのできた熊本の方を、まずは褒めるべきだろう。
- 横浜は、ゴール前での迫力を作れなかったのが直接的な敗因。スタートの時点では渡邉・伊藤・松浦が実質3トップに近い形で前線に張ったが、チャンスといえるチャンスをほとんど作れなかった。61分の3枚替え以降は攻撃に少しインパクトを与えることはできたが、分かりやすい脅威となっていたのは長谷川の仕掛けくらいで、最前線に入った小川は、今季既に10得点を挙げているJ2得点ランキングトップの怖さを見せることができなかった。
- ボランチの安永と手塚が無効化されてしまい、前後が分断されてしまった点も敗戦の遠因として指摘されるべきだろう。手塚はバックラインに下がってのパスワークや、サイドに顔を出してのサポートなど、重圧に晒される中でも役割を見つけていたが、安永は受け手にも出し手にもなれず。守備でも熊本に効果的な縦パスを何度も入れられてしまった。個人的に安永と手塚のユニットはJ1時代に観て少し気に入っていたので、ここまで仕事をさせてもらえなかったのは意外だし、同時に残念でもあった。
- 熊本は、シンプルに言えば「やるべきことをやり続けた」ことが勝利に繋がったといえる。横浜の後方からの組み立てに対して高い位置からしつこくプレスをかけ、攻撃の迫力を出させなかった。上位チームとのアウェイ戦というシチュエーション下においては、えてしてリトリートからのワンチャンス狙いというサッカーになりがちであるが、今日の熊本からは自分たちから奪いに行く意識を感じたし、攻撃にも「鋭さ」があった。とりわけ左のアタッカーを任される坂本の仕掛けは明らかに相手の脅威になっていた。また、この坂本を含む前線の4人が適切な距離感を保ちながら互いをサポートする意識が見られ、それが「鋭さ」の源泉となっているように感じられた。
- また、熊本は中盤の底に入る河原の存在感が大きかった。守備ではボール奪取とカバーリングの意識が共に高く、獅子奮迅の動き回り。決勝点の場面では、中盤でのボール奪取から起点となる縦パスを供給した。1人でこれだけ多くのタスクをこなせる存在は、熊本にとって貴重なはず。味方のサポートも含めて要因は色々あるだろうが、河原1人で前後を繋いだ熊本と、ボランチが2枚いながら前後分断されてしまった横浜とを比較すれば、このような結果になるのは自明だったのかもしれない。
- 試合後、大きな勝点3を手にした熊本の選手たちがビジタースタンド前に整列すると、歌をリードできないサポーターの代わりに、選手たちが発声しながら、勝利のラインダンス「カモンロッソ」が始まった。熊本サポーターにとってはファン冥利に尽きる瞬間だったのではないだろうか。第三者として試合を見届けた自分にとっても、幸せのお裾分けをしてもらったような気分になれた。これだから現地観戦はやめられない。
- J2は今節でリーグ戦全日程の3分の1を消化した。他会場では2位・仙台が敗れたため、横浜は首位をキープすることができたものの、上位の勝点差は更に詰まってきている。今日の勝利で12位に浮上した熊本も含め、J2の順位争いがますます熾烈になることを予感させる一戦だった。
横浜FC |
0 |
0 | 前半 | 0 |
1 |
ロアッソ熊本 |
0 | 後半 | 1 |
|
|
|
| | 得点 | 90+4' | 伊東 俊 |
GK | 44 | 六反 勇治 | GK | 23 | 佐藤 優也 |
DF | 6 | 和田 拓也 | DF | 2 | 黒木 晃平 |
| 22 | 岩武 克弥 | | 5 | 菅田 真啓 |
| 27 | 中塩 大貴 | | 3 | イヨハ 理 ヘンリー |
MF | 19 | 亀川 諒史 | MF | 33 | 阿部 海斗 |
| 10 | 安永 玲央 | | 6 | 河原 創 |
| 30 | 手塚 康平 | | 15 | 三島 頌平 |
| 24 | 高木 友也 | | 18 | 杉山 直宏 |
| 15 | 伊藤 翔 | | 14 | 竹本 雄飛 |
| 7 | 松浦 拓弥 | | 16 | 坂本 亘基 |
FW | 39 | 渡邉 千真 | FW | 9 | 髙橋 利樹 |
GK | 21 | 市川 暉記 | GK | 1 | 田代 琉我 |
FP | 4 | 高橋 秀人 | FP | 4 | 酒井 崇一 |
| 13 | サウロ ミネイロ | | 7 | 田辺 圭佑 |
| 16 | 長谷川 竜也 | | 10 | 伊東 俊 |
| 18 | 小川 航基 | | 11 | 粟飯原 尚平 |
| 20 | イサカ ゼイン | | 28 | 土信田 悠生 |
| 48 | 山下 諒也 | | 32 | 藤田 一途 |
| | | 警告 | 24' | | 髙橋 利樹 |
松浦 拓弥 | | 61' | 交代 | | | |
長谷川 竜也 | | | |
渡邉 千真 | | | |
小川 航基 | | | |
高木 友也 | | | |
山下 諒也 | | | |
| | | 交代 | 76' | | 竹本 雄飛 |
| | | 伊東 俊 |
| | | 阿部 海斗 |
| | | 藤田 一途 |
| | | 三島 頌平 |
| | | 田辺 圭佑 |
伊藤 翔 | | 80' | 交代 | | | |
サウロ ミネイロ | | | |
| | | 交代 | 86' | | 坂本 亘基 |
亀川 諒史 | | 86' | | 粟飯原 尚平 |
イサカ ゼイン | | | 髙橋 利樹 |
| | | | 土信田 悠生 |
| | | 得点 | 90+4' | | 伊東 俊 |