2022.4.29 (金)
2022 明治安田生命J1リーグ 第10節
FC東京 × ガンバ大阪
( 国立競技場,19:00 )
introduction
- 今年はカレンダーの並びが非常に良く、暦上の平日である5/2(月)に休みを取れさえすれば、4/29から5/8まで10連休を確保することが可能。自分もその恩恵に預かることができ、ありがたい限りだ。そんな大型連休の初日である今日(4/29)は、J1のリーグ戦が組まれている。この連休中ではJ1のマッチデイが3つ組まれており、東京は連休初日の今日と、連休最終日の5/8にそれぞれホームゲームがある。一時のピークこそ過ぎたとはいえ、未だ新型コロナウイルスの猛威が衰えない中で遠出や旅行を控える人も多いだろうし、クラブにとってはここは大きな集客チャンスといえるだろう。
- 今日の試合会場は、オリンピック開催に伴う改築後初めてのJ1リーグ戦開催となる国立競技場だ。FC東京としては昨年1月のルヴァンカップ決勝で試合を行っているが、リーグ戦のホームゲームをこの地で開催するのは2014年4月29日の名古屋戦以来、実に8年ぶりのこと。記念すべき試合ということもあり、クラブもプロモーションには相当力を入れていたようだ。自分はナイトゲームということもあって当初は都合が付かず、チケットを一度リセールに出して売ってしまったのだが、売れた矢先に急遽行けることになり、再びチケットを買いなおすというドタバタぶりであった(笑)。
- 定刻よりやや遅れての運転となっていた大江戸線の車両は平日の通勤ラッシュ時を思わせるような混雑ぶりで、国立競技場駅に到着すると、その乗客の大半が一斉に降りていく。これはかなりの入場者数になりそうだ。駅を出ると、外はかなりの強い雨。昼頃から崩れ始めた空模様は悪化の一途を辿り、「土砂降り」とまではいかないものの、それに近い体感の強さだ。それゆえ入場にも手間取るかと思われたが、入場ゲートが屋根下にあり、チケットチェックのレーンも多く開放されていたためか、実にあっさりと入場。クラブとしても未経験のオペレーションが多く想定されるだけあって、サービスレベルには正直期待していなかったので、呆気に取られてしまう。入場してすぐの上層席に上がる階段は間口が狭いこともあってかなりの混雑になっていたが、これもゴール裏の上りエスカレーターまで迂回すればガラガラ。おかげでストレス無く3層目の自分の席に着くことができた。
- ざっとスタンドの埋まり具合を見渡すと、1,2層目はほぼ満席。3層目はバックスタンドとゴール裏が半分程度の入りで、メインスタンドの3層目は開放されず。そのため少し空席が目立ったが、のちに発表された入場者数はなんと43,125人。味スタでチケットがソールドアウトしても届くかどうかというレベルの大入りとなった。かなりの枚数の招待券を配ったようなので、有料入場者数は通常時よりも少し多いくらいの数なのだろうが、せっかくの国立開催で空席が目立つよりは、見栄え重視で良いのかもしれない。スタメン発表や選手入場の際には、スタンドの照明を落としてライティングや花火を使っての派手な演出。よくぞここまで仕込んだものだと感心する一方、どれだけのお金が掛かったんだろう・・・という下世話な心配もしてしまうところが貧乏性の悲しいところだ(笑)。
- 今日の対戦相手はガンバ大阪である。昨季まで大分トリニータの指揮を執った片野坂知宏監督がチームを率いて最初のシーズン。今季は開幕早々にチームの主軸でもある東口や宇佐美を負傷による長期離脱で失うなどの苦しい台所事情もあり、ここまでは2勝4分3敗の12位と中位につけている。メンバーを見るとここ数年で出てきた若手選手が多く名を連ねており、G大阪らしからぬ(?)フレッシュな印象を受けるが、どのポジションにも外国籍選手や日本代表経験者がおり、やはり侮れない相手だ。
- 東京はリーグ戦に限定すれば直近の3試合で0-0のスコアレスドローが続いており、チームとしては我慢の状況が続いている。得点力に関しては課題が残るものの、守備で無失点が続いていることはプラスに捉えることができるだけに、今日もその堅守を続けたいところ。今日は4/20の名古屋戦の試合中に腰を痛めた森重がメンバー外で、木本とエンリケがCBを組む。また負傷離脱していたレアンドロがようやく戦列に復帰し、今日はベンチスタート。試合展開にとってはレアンドロの起用法も重要になりそうだ。
1st half
- 試合の立ち上がりはややG大阪の方がボールに対する出足が良いように見えるが、東京もプレスがしっかりとかかっており、特に心配な場面は見当たらない。最初のチャンスは7分。東京はアダイウトンが左サイドでドリブルを開始し、一気にアタッキングゾーンに侵入。カットインを試みてこぼれた球を安部が回収してフィニッシュに持ち込むが、GK・一森が僅かにボールに触ってCKに逃れる。東京は早くも攻撃で持ち味が出た形だ。
- しかしその後は互いに決め手を欠く内容。G大阪はどちらかといえば短いパスを素早く繋いで攻め込みたいという意図を感じるが、雨の影響でボールタッチに多少の影響はあるようで、パスの精度やトラップの部分でやや難しさを抱えているように見える。一方の東京はG大阪のプレスに対してロングパスを蹴って局面を変えていくサッカーで対抗。こちらも精度の部分で多少のズレはあるが、相手のプレスを無効化できる点では効果大だ。
- 35分、G大阪は右サイドの小野瀬がドリブルで縦に仕掛けてアタッキングゾーンまで攻め込み、齊藤のクロスからのゴール前の競り合いの末、こぼれ球を拾った山見がコントロールショットでゴール右隅を狙う。これは僅かにゴールマウスを右に外れるが、ヒヤリとする場面だった。
- 37分、東京は相手ゴール前の競り合いからボールを拾ったアダイウトンが強引にフィニッシュへ持ち込み、相手に当たってCKを獲得。右CKを小川が蹴ると、ゴール前で空中戦に競り勝ったエンリケがヘディングシュート。クロスバーを直撃してゴールとはならないが、ボールがこぼれた先に待っていたアダイウトンがダイレクトで右足を振り抜くと、これがカバーに入ったG大阪の選手の隙間をすり抜けるようにしてゴールに突き刺さり、1-0。東京がセットプレイで先制に成功する。試合時間にして実に「332分ぶり」となる得点シーンだ。流れの中ではなかなかチャンスが作れていなかった分、セットプレイで先行できたのは大きい。
- 先制を許したG大阪は43分に左サイドからハーフスペースに侵入し、速いクロスに中央のペレイラが飛び込むが、僅かにタイミングが合わず東京はピンチを逃れ、1点リードして前半を終える。形はどうあれリードして折り返すことができたのは大きい。互いにゴール前のクオリティでは苦しんでいるだけに、このリードを大切にしたいところだ。
2nd half
- G大阪は後半の頭から選手交代し、坂本を下げて中村を投入。基本システムは変わらないが、前線の顔ぶれを変えて東京に揺さぶりをかけるのが狙いだろう。49分、G大阪は右サイドから攻勢をかけると、クロスボールが正面にこぼれたところをボランチのダワンが強烈なミドルシュート。これがクロスバーを直撃し、スタンドからは大きなどよめきが起きる。
- 東京は57分に相手のパスカットに対して長友がすかさずプレスをかけて奪い返し、ゴール正面にこぼれたところをフリーの松木がシュートするが、これも一森に弾かれてゴールならず。前半に比べて雨脚が少し弱まってきた影響もあるのか、ゲームスピードが上がってきた感がある。安易に押し込まれたくない東京は、63分にアダイウトンを下げてレアンドロを投入。ボール保持によって時間を作りたいという意図の見える交代だ。
- するとこの直後に再び試合が動く。65分、東京はハーフウェイ付近でディエゴがプレスをかけると、引っかけたこぼれ球を回収したレアンドロがドリブルを開始。マーカーのダワンが手を使って強引に止めようとするが、スピードに乗ったレアンドロはゴリゴリと前進。そのままPA内に侵入すると対面の三浦のタイミングを外して滑らせ、最後はシュートを落ち着いて左隅に突き刺し、2-0。復帰早々のレアンドロのゴラッソが決まり、東京がリードを2点に広げる。レアンドロがゴール裏スタンドに駆け寄り、大きな歓喜の輪が出来上がると、スタンドからも大きな拍手が沸き起こった。
- 2点を追うG大阪はすぐさまパトリックを最前線に投入し、中村と小野瀬がそれぞれ1列ずつ下がる。ペレイラとの2トップにして、「飛び道具」も使おうという狙いだろう。73分には左サイドを突破した藤春がそのパトリックへ鋭いクロスを供給するが、東京がすんでのところで先にカットするなど、ギリギリながら的確な対応でシュートを許さない。
- 76分、G大阪は最終ラインの三浦がボールを持ったところに永井がタックルを仕掛けてボールを奪取。一瞬にしてGKと1vs1の局面となる。すかさずサポートに入ったレアンドロに対して永井がラストパスを出し、レアンドロが悠々と流し込んで3-0のリードかと思われたが、すぐさまVARが介入してレビューを実施。結局永井のタックルがファウルと認定されてゴールは取り消しとなるが、この時間になっても全力で走ってプレスをかけにいく永井の献身性が光った場面だった。
- 82分、今度はG大阪が右サイドからのFKをパトリックが頭で叩き込み、1点差に詰め寄ったかに見えたが、副審がオフサイドフラッグを上げて得点は認められず。VARチェックも入ったが、オフサイドのジャッジが支持されてG大阪の得点も取り消しに。この得点が認められていたら試合の流れが一気に変わるところだっただけに、危ないところだった。
- その後もG大阪が攻勢を仕掛ける場面が続いたが、この80分前後の攻防を乗り切ってからは東京の守備も落ち着きを取り戻し、終盤は淡々とクロスボールを跳ね返す場面が続いた。結局、2-0のまま試合終了。東京が第7節の神戸戦以来、4試合ぶりの勝点3を確保することに成功している。
impressions
- 勝利したので当然嬉しいのだが、それ以上に「安心した」という気持ちの方が大きい試合だった。リーグ戦で0-0の試合が3試合も続き、失点はしていないものの得点も出来ていないという状況が長かったため、多少なりともストレスは抱えていたはず。そういった中で先にゴールを奪えたことで、気持ち的にもかなり楽になったのではないだろうか。
- 雨の影響でスリッピーなピッチコンディションとなったこともあり、特に前半は両チーム共に時折ボールタッチのミスが出る展開。ピッチがよほど水を含むような状況になれば守備側にとっても対応が難しくなるところだが、今日に関してはどちらかといえば攻撃側にとって難しいコンディションだったように感じた。こういう時にこそ物をいうのがセットプレイだ。先制点の場面はエンリケの空中戦の強さが出ていたし、こぼれ球に対するアダイウトンのシュートも、押さえが効いていて良かったと思う。
- 後半は試合の流れが速くなってきて注意が必要な展開となったが、怪我から復帰したばかりのレアンドロが大仕事をやってのけた。やはりこの男にフリーでボールを持たせたら何かを起こしてくれる。マークを振りほどく身体の強さ、シュートチャンスで対面の相手が滑るのを待てる冷静さを兼ね揃えた見事なゴールだった。相手のマークを分散させる目的でサポートをした安部のフリーランニングも効いていた。
- 守備は無失点という結果が示すとおり、終始安定していた。サイドの守備ではたびたびハーフスペースまで侵入される場面はあったものの、折り返しのボールへの対処はほぼパーフェクト。木本とエンリケが何度も跳ね返して相手の攻撃を食い止めていた。森重が離脱して不在の中、どれだけ戦えるか不安だったが、全くの杞憂に終わったといえるだろう。気がかりなのは試合終了間際にエンリケが負傷し、試合終了後の整列に加わらずにドレッシングルームに戻ったことか。これ以上CBに離脱者が出ると大きな戦力ダウンと言わざるを得ないので、どうか軽傷であることを祈りたい。
- 久しぶりとなる国立競技場での試合ということで、いつもと異なる独特な雰囲気の中で試合ができたのも良かった。特にチームにとってプラスに働いたのはピッチコンディションだ。最後までピッチの水はけが良く、水溜まりができなかったため、取り組むサッカーの内容を変えずに最後までプレイすることができた。もし味スタだったら、あそこまでピッチコンディションが安定していたとは考えにくく、内容も結果も違ったものになっていたかもしれない。改築に伴う諸々の(主に費用面での)トラブルから、何かと「負の遺産」のシンボルとされがちな今の国立競技場であるが、雨に濡れにくい観客の動線も含め、雨天時を考慮した設計には感心させられた一日だった。
- 個人的には味スタの方が近所ということもあるし、毎度毎度ド派手な演出をされても食傷気味になるだけなので、当面は味スタをメインに、節目の試合で国立を使用する程度が良いかと思っているが、都心近辺のファンを増やす上で、国立開催が重要であることも理解している。しばらくはクラブがどれくらいの頻度で国立での試合を行うのか注視したい。
- 今節の試合を終えてJ1全18チームの消化試合数が10試合で揃い、東京は勝点を「18」に伸ばして4位に浮上。今節首位に浮上した鹿島との勝点差は4ポイントだ。ここまでで戦績が抜きんでているチームが無いことも手伝い、望外の好位置につけることになった東京だが、クラブとしての今季の目標はリーグ優勝ではないと承知しており、順位表は気にせず1つ1つの試合を手堅く戦っていくことが肝要といえるだろう。次節は中3日でアビスパ福岡とのアウェイ戦が控えている。少し厳しい日程ではあるが、良い結果を残して次のホームゲームに戻ってきてくれることを期待したい。
FC東京 |
2 |
1 | 前半 | 0 |
0 |
ガンバ大阪 |
1 | 後半 | 0 |
|
|
|
アダイウトン | 38' | 得点 | | |
レアンドロ | 65' | | | |
GK | 24 | ヤクブ スウォビィク | GK | 22 | 一森 純 |
DF | 5 | 長友 佑都 | DF | 26 | 柳澤 亘 |
| 30 | 木本 恭生 | | 5 | 三浦 弦太 |
| 50 | エンリケ トレヴィザン | | 3 | 昌子 源 |
| 6 | 小川 諒也 | | 4 | 藤春 廣輝 |
MF | 16 | 青木 拓矢 | MF | 8 | 小野瀬 康介 |
| 31 | 安部 柊斗 | | 15 | 齊藤 未月 |
| 44 | 松木 玖生 | | 23 | ダワン |
FW | 11 | 永井 謙佑 | | 37 | 山見 大登 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | FW | 32 | 坂本 一彩 |
| 15 | アダイウトン | | 9 | レアンドロ ペレイラ |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 25 | 石川 慧 |
FP | 8 | 髙萩 洋次郎 | FP | 11 | ウェリントン シウバ |
| 17 | 紺野 和也 | | 17 | 奥野 耕平 |
| 19 | 山下 敬大 | | 18 | パトリック |
| 20 | レアンドロ | | 20 | 権 敬源 |
| 37 | 中村 帆高 | | 24 | 黒川 圭介 |
| 49 | バングーナガンデ 佳史扶 | | 41 | 中村 仁郎 |
安部 柊斗 | | 34' | 警告 | | | |
アダイウトン | | 38' | 得点 | | | |
| | | 交代 | HT | | 坂本 一彩 |
| | | 中村 仁郎 |
アダイウトン | | 63' | 交代 | | | |
レアンドロ | | | |
レアンドロ | | 65' | 得点 | | | |
| | | 交代 | 70' | | 柳澤 亘 |
| | | パトリック |
永井 謙佑 | | 80' | 交代 | 80' | | 山見 大登 |
髙萩 洋次郎 | | | ウェリントン シウバ |
ディエゴ オリヴェイラ | | | 齊藤 未月 |
山下 敬大 | | | 奥野 耕平 |
ヤクブ スウォビィク | | 90+5' | 警告 | | | |