2022.3.12 (土)
2022 明治安田生命J1リーグ 第4節
FC東京 × サンフレッチェ広島
( 味の素スタジアム,15:00 )
introduction
- J1のリーグ開幕から早くも1ヵ月を迎えようとしているこの週末、東京もようやくホーム・味スタでの初戦を迎えることとなった。2月にアウェイ・川崎戦で開幕を迎えた東京だが、時期を同じくしてチーム内の選手・スタッフの間で新型コロナウイルスの陽性者が相次いで発生。チームは活動を一時休止せざるを得なくなり、2/23,26に予定していたルヴァンカップとJ1リーグの試合は延期となってしまった。そのため、今節の試合が待望のホーム開幕戦ということになる。個人的にも今季は未だ東京の試合を現地観戦できておらず、今日が2022年最初の観戦となるので、万感の思いだ。
- 今日の東京は最高気温が20℃を上回る天気で、サッカー観戦には最適なコンディション。飛田給の駅では非常に多くのお客さんが下車し、収容人数20,000人とは思えない混雑になっているが、どうやら味スタ隣の武蔵野の森総合スポーツプラザでもイベントが予定されているようだ。観戦・観覧における制約が未だに多い時世ではあるが、各所でこういったイベントが再び行われるようになってきているのを見ると少し安堵する。
- 今日の対戦相手はサンフレッチェ広島だ。前節は神戸を相手に1点を先制される難しい展開だったが、終盤にセットプレイから同点に追いつき、1-1のドローで試合を終えている。今季の広島は縦の崩しをより強く意識した攻撃に取り組んでいる模様で、前節から指揮を執るスキッベ新監督による戦術の落とし込みが、より進んでいることが予想される。
- 一方の東京は、前節のアウェイ・C大阪戦で1-0の勝利。前半に相手陣内でボールを奪ってのショートカウンターから紺野が先制点を奪い、それを守り切っての今季初勝利だった。シーズンの早い段階で勝点「3」を確保できたのはチームにとっても大きい。他方、その試合で青木がレッドカードによる退場処分を受けており、今節は出場停止となっている。発表されたスタメンを見ると、木本がアンカーで試合に出場するようだ。
1st half
- 序盤にリズムを掴んだのは広島。ボールを握ろうとする東京に対して強めのプレスをかけてボールを繋がせず、奪ったら縦のパスを入れて起点を作ってくる。攻撃では両ワイドの藤井と満田が積極的な仕掛け。特に右サイドの藤井のスピードは厄介だ。11分にはその藤井がDFラインの裏に抜け出して強烈なシュートでゴールネットを揺らす。オフサイドディレイのためノーゴールとなるが、広島の狙いが分かる特徴的な場面だ。
- 東京は広島のプレスに苦しみながらボールを繋ごうとするが、人を飛び越した中長距離のパス精度がなかなか良くならず、じりじりとボールを下げさせられて最後に「蹴らされる」場面が多い。守備でもプレスをかけてはいるが、広島の重心が高い攻撃に苦しめられ、バイタルエリアの付近でボールを持たれる場面も少なくない。29分には、またも藤井にカットインからの際どいシュートを許し、広島の時間帯が続いている。
- 33分、東京はディエゴが左サイドに開いて潰れてからアダイウトンがボールを拾い、ドリブルで運んでからクロス。これにファーサイドで待っていた紺野がフリーでトラップ。右足でシュートへ持ち込むが、必死にカバーに入った広島のDFにブロックされてゴールならず。紺野は昨季終盤の広島戦で鮮烈なゴールを決めているだけに、左足は特に警戒されている様子だ。
- 30分を過ぎてからは東京がセカンドボールを拾う流れになるが、依然として広島の縦に速い崩しの脅威があり、攻撃で厚みが出ない。特に渡邊と小川の両SBは、対面の満田と藤井のケアでなかなか高い位置に顔を出すことができず、ベンチサイドに立っている渡邊をスタッフが呼んで指示を出す光景が見られる。ATにはセットプレイから東京がゴール前でスクランブルの場面を作るチャンスを得るが、これも広島が守り切り、0-0で前半終了。内容を考えれば、無失点で終えられてひとまず安堵といったところ。このまま耐えていればチャンスはありそうだが、どこまで我慢できるだろうか。
2nd half
- HT明け、東京は交代カードを切る。渡邊とエンリケの2人が下がり、代わりに長友と三田がピッチイン。木本がCB、安部と松木がボランチに1列ずつ下がり、三田がトップ下に入ることで4-2-3-1へシステム変更する。相手が主導権を握る展開だったとはいえ、「思い切った」感のある変更だ。
- どちらかといえば攻撃よりも守備を意識した変更を行った東京だが、後半の立ち上がりも試合の主導権はなおも広島。53分には森島にミドルシュートを撃たれてスウォビィクがCKに逃げるなど、受けに回る場面が続く。
- しかし58分、東京は左サイドでパスを受けた小川が倒されて直接FKを獲得。これを三田がセットしてゴール前に蹴り込み、森重が相手選手との競り合いを制してヘディング。これがゴール左隅に吸い込まれて1-0。セットプレイから東京が先制に成功する。後半に入ってからも広島の支配が続き、東京は特にチャンスが無かったので、スタンドからも「まさか入るとは」という驚きの入り混じった歓声が上がる。ラッキーな先制点だ。
- そして、この東京の先制点は広島に少なからず動揺を与えたようだ。再開直後の62分、広島の中盤でのボール保持に対して東京は組織的なプレスを仕掛けて紺野がボールを奪取。こぼれ球を繋いで安部がドリブルで運び、シュートまで持ち込む。これはGK・林が弾くものの、こぼれた先に待っていたアダイウトンがコースを狙ったシュート。広島の選手のカバーも間に合わずにゴールイン。先制点から僅か1分、2-0と東京がリードを広げる。
- リードを広げられた広島は、後半に入ってから前線での存在感が薄くなってきていたサントスと浅野を下げて鮎川と柴﨑の2枚を同時に投入。この効果はすぐに出る。74分、中盤での空中戦の競り合いのこぼれ球を塩谷が拾い、入ったばかりの鮎川へ絶妙なスルーパスが通る。スウォビィクがすかさず飛び出してシュートコースを消しに行くが、この1vs1を鮎川が冷静に流し込んで2-1。広島が1点差に詰め寄る。東京としては中盤でハードに狩りに行ったのをかわされたことでピンチを作ってしまった。
- 15分ほど時間を残す中、1点を守り切りたい東京にとっては、ゴール前でブロックを固めて撤収を図るか、あるいはあくまで高い位置からプレスを掛けに行くか、選択を迫られる難しい状況だ。そして今日の東京が選んだのは後者の戦い方。80分にはアダイウトンを下げて東を右サイドに投入し、出どころを潰しに行く。何度か広島にプレスの網を突破されてピンチになりかける場面もあったが、最終ラインがどうにか跳ね返し続け、決定機までは作らせず。どうにか耐えきり、2-1のまま試合終了となった。
impressions
- 最後まで気の抜けない試合展開だったが、ホーム開幕戦で無事に逃げ切っての勝利。まだ試行錯誤の段階とはいえ、リーグ戦3試合目で連勝を達成できたのは、素直に嬉しく思う。シーズン開幕早々に「チーム活動休止」というハンディキャップを背負ったにも関わらず、早くも結果が出ているのは良い意味で「予想外」。それだけチームに勝ちきれるだけの「土台」が備わっていることを確認することのできた試合だった。
- 前半は非常に難しい内容だった。広島のしつこいプレスに対してボールの出しどころを見つけられず、特に中長距離のパス精度を欠いた。味方がフォローに回ろうと下がってくる分、全体が押し下げられてしまった。広島の1トップ2シャドウへの対応も難しかった。4-1-2-3の場合、どうしてもアンカーの両脇が「泣きどころ」となるので、それもまた広島の支配を許した要因といえるだろう。今日に関しては青木の出場停止という問題があったが、もし仮に青木がいたとしても、苦戦は免れなかったように思う。
- そういう意味で、後半の4-2-3-1へのシステム変更は、大きなターニングポイントだったかもしれない。ボランチを2枚に増やしたことで、広島の浅野・森島の2シャドウに対応しやすくなった印象がある。特に浅野は前半は怖い存在だったが、後半は危険なプレイを許した印象が無い。「対3-4-2-1」におけるマークの噛み合わせへの課題は残したが、現実的な対処を選択して結果に繋げたことに関しては、大きく評価すべきだと考える。
- 攻撃に関してはこれといったチャンスをなかなか作らせてもらえない試合だったが、それだけにセットプレイでの先制点は大きかった。ホーム開幕戦での最初の得点が、今季キャプテンを務める森重だったというのも嬉しいポイント。また、先制した直後に守備のギアを更に上げてボールを奪い、電光石火の2点目に繋げたのも素晴らしかった。守備のしつこさに関しては今季のチームの特徴のひとつといえるが、その効果が表れた場面だった。
- 鮎川に追撃弾を許してからは耐える時間が続いたが、東を投入してあくまで前からもプレスをかけにいく姿勢を見せたのも、昨季までの東京との違いを感じさせる光景だった。当然、中盤でのプレスをひっくり返されればピンチを招くリスクはあるが、今日に関しては最終ラインの踏ん張り、そしてスウォビィクの好セーブもあってチャンスを作らせなかった。後半にシステム変更せざるを得なかった件も含め、まだ覚束ない部分はあるのだろうが、試合をこなしながら対応できるようになることを期待したい。
- まだシーズンは始まったばかりであり、しばらくはリーグ戦とルヴァンカップを並行して消化していく日程となっている。戦力を見極める重要な時期でもあるだけに、どちらも楽しみにしながら見守ることにしたい。
FC東京 |
2 |
0 | 前半 | 0 |
1 |
サンフレッチェ広島 |
2 | 後半 | 1 |
|
|
|
森重 真人 | 60' | 得点 | 74' | 鮎川 峻 |
アダイウトン | 61' | | | |
GK | 24 | ヤクブ スウォビィク | GK | 1 | 林 卓人 |
DF | 23 | 渡邊 凌磨 | DF | 2 | 野上 結貴 |
| 3 | 森重 真人 | | 4 | 荒木 隼人 |
| 50 | エンリケ トレヴィザン | | 19 | 佐々木 翔 |
| 6 | 小川 諒也 | MF | 15 | 藤井 智也 |
MF | 30 | 木本 恭生 | | 3 | 塩谷 司 |
| 31 | 安部 柊斗 | | 7 | 野津田 岳人 |
| 44 | 松木 玖生 | | 39 | 満田 誠 |
FW | 17 | 紺野 和也 | | 16 | 浅野 雄也 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 10 | 森島 司 |
| 15 | アダイウトン | FW | 37 | ジュニオール サントス |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 38 | 大迫 敬介 |
FP | 5 | 長友 佑都 | FP | 6 | 青山 敏弘 |
| 7 | 三田 啓貴 | | 18 | 柏 好文 |
| 10 | 東 慶悟 | | 21 | 住吉 ジェラニレショーン |
| 11 | 永井 謙佑 | | 23 | 鮎川 峻 |
| 19 | 山下 敬大 | | 27 | 川村 拓夢 |
| 37 | 中村 帆高 | | 30 | 柴﨑 晃誠 |
エンリケ トレヴィザン | | HT | 交代 | | | |
三田 啓貴 | | | |
渡邊 凌磨 | | | |
長友 佑都 | | | |
三田 啓貴 | | 49' | 警告 | | | |
| | | 警告 | 59' | | 藤井 智也 |
森重 真人 | | 60' | 得点 | | | |
アダイウトン | | 61' | 得点 | | | |
紺野 和也 | | 63' | 交代 | | | |
永井 謙佑 | | | |
| | | 交代 | 69' | | 浅野 雄也 |
| | | 柴﨑 晃誠 |
| | | ジュニオール サントス |
| | | 鮎川 峻 |
| | | 得点 | 74' | | 鮎川 峻 |
アダイウトン | | 80' | 交代 | | | |
東 慶悟 | | | |
| | | 交代 | 82' | | 満田 誠 |
| | | 川村 拓夢 |
| | | 野上 結貴 |
| | | 青山 敏弘 |
ディエゴ オリヴェイラ | | 90+1' | 交代 | | | |
山下 敬大 | | | |