2021.12.4 (土)
2021 明治安田生命J1リーグ 第38節
FC東京 × アビスパ福岡
( 味の素スタジアム,14:00 )
introduction
- J1リーグ最終節。新型コロナウイルスや東京オリンピック・パラリンピックの影響でタイトかつ変則的な日程に苦しめられたシーズンも、ようやく締め括りの日を迎えた。カレンダーも12月に入り、冬を感じる気温の日も多くなってきたとはいえ、この日の味スタの天候はすっきりとした晴れ。厚手のコートだとやや暑く感じるくらいの暖かさとなった。
- 前々節のホーム・徳島戦で全く見せ場を作ることができずに0-2の完敗を喫した東京は、前節にアウェイで広島と対戦。前半にセットプレイで先制を許す難しい試合展開となったが、後半にアダイウトンのワンタッチゴールで追いつくと、終盤に途中出場した紺野が得意の左足で鮮やかなミドルシュートを沈めて逆転に成功。2-1で森下監督体制下での初勝利を飾った。
- 正直なところ、自分は徳島戦での完敗を目の当たりにして気持ち的に少し折れてしまい、最終戦を観に行くことにあまり気乗りしなかったのだが、広島戦の勝利を観てチケットを手元に残すことを決意。めでたく(?)、このシーズン最終戦が今年最後の味スタでの現地観戦である。
- シーズン最後の対戦相手はアビスパ福岡。今季J2から昇格してきたチームであるが、今季はリーグ戦序盤からコンスタントに勝点を積み上げ、前半戦では東京にも1-0で勝利。他にも今季圧倒的な強さでリーグを制した川崎に1-0で勝利を飾るなどの確かな爪痕を残し、2001年以来20年ぶりとなるJ1残留を早々に決めている。シーズン終盤になって勝ちきれない試合が増えてきたとはいえ、チームを率いて2年目の長谷部監督の手腕は確かなものといえるだろう。8位につける福岡に対し、9位・東京は勝点「1」差で追う状況。この試合で東京が勝てば順位が入れ替わるというシチュエーションだ。
- 東京は前節の広島戦でチームに帯同していなかったディエゴとレアンドロが今節もベンチ外。髙萩がトップ下に入り、アダイウトンを前線に据えた4-2-3-1で試合に臨む。ディエゴとレアンドロが不在の理由がコンディション不良なのか、あるいはチーム事情なのかはよく分からないが、個人で局面を打開できる選手が2人不在となっている以上、今節もチームワークでの崩しが求められる一戦となりそうだ。
1st half
- 最初にゲームの流れを掴んだのはアウェイの福岡。4分、金森が志知のクロスにダイレクトで合わせるシュートに持ちこむと、続く5分にも志知にPA内まで割って入られるなど、押し込まれる場面が続く。福岡のプレスが効果的ということもあるだろうが、東京はボールを持ってもすぐに失ってしまい、自分たちで自分たちを苦しめてしまっているような入り方だ。
- その後も福岡の支配は続き、25分にはセットプレイから宮にヘディングを合わされるなど危ない場面がいくつか続くが、ここもどうにか耐える東京。33分には安部の所でボールを奪われてショートカウンターを受け、ゴール正面からフアンマに際どいコースへのミドルシュートを撃たれるが、これも波多野が横っ飛びで弾き出してゴールを割らせない。
- 終了間際の44分、福岡は左サイドからの長い距離のFKを志知が蹴り、再び宮が頭で合わせると、これがループシュートのような弾道となってクロスバーを直撃。こぼれ球に対して両チームの選手が入り乱れる形となり、東京のファウルがあったのではないかとしてPK有無のVARチェックが入る。ヒヤリとする時間ではあったが、幸いお咎めなしとなり、このまま前半終了。福岡の選手は一様に不満の態度を見せていた。東京としてはこれだけ支配されながら無失点で凌ぎきれたのは大きい。
2nd half
- 東京は開始早々の49分にアダイウトンがゴール前のこぼれ球にオーバーヘッドでシュートを試みるなど、積極的な入り方。53分には安部がアダイウトンへの鋭いラストパスを試みるなど、徐々に良い形が増えてくる。
- 55分あたりからは東京がルーズボールを握って相手陣内を窺うロングキープの時間帯。福岡も一旦自陣に撤収して様子見といった雰囲気となる。ここで揺さぶりをかけて1点が欲しい東京は永井を投入してゲームスピードを上げにいくが、決定機までは作れない。
- 飲水タイムを挟み、東京は前節の試合で鮮烈なJ1初得点を決めた紺野を右サイドに投入。前線に永井とアダイウトンを並べた4-4-2となり、縦の速さを意識した戦い方に整理する。一方の福岡は左SHに田邉を投入し、ポゼッションを奪回する構え。ここは両チームの狙いが色濃く表れているが、果たして狙いが当たったのは福岡。飲水タイム以降はボール支配率で挽回し、再び押し返すようになる。
- 東京は78分に左サイドを崩し、長友の折り返しを逆サイドの紺野が押し込もうとするが、やや狭い角度だったこともあり決めきれず。87分にはアダイウトンに代えて特別指定選手の寺山を2列目に投入し、変化を狙ったが、流れを変えるほどの大きな効果は見られなかった。
- 試合終盤の福岡がそれほど積極的にゲームスピードを上げようとしてこなかったこともあり、結局、互いに決め手を欠いたまま0-0で試合終了。東京は勝点で福岡を逆転できず、福岡は勝点「54」の8位でフィニッシュ。東京は勝点「53」の9位でシーズンを終えることになった。
impressions
- 無失点で終えられたことは評価すべきとしても、やはり勝ちきれなかったことへの悔しさの方が大きいシーズン最終戦だった。前半をどのようなゲームプランで臨んだのかは分からないが、結果的には福岡に主導権を握られる形となった。東京が守備から攻撃に切り替えようとするところで福岡の最初の守備が厳しく当たってきて前を向かせてもらえず、どうしても自陣で過ごす時間が多くなってしまった。結果的に無失点で前半を終えられており、それ自体は良かったと思うが、おそらく「100%狙い通り」という展開ではなかったのではないかと想像する。
- スコアレスで折り返した後半は、ある程度ボールを持てるようになり、じわじわと押し込む展開。この時間帯では2~3分程度にわたるロングキープを見せる場面もあり、従来のサッカーとは異なるスタイルも垣間見えた。
- 64分の髙萩→永井の交代でシステム変更してからは、更に縦の突破力を追加したかったように見えたが、やはり髙萩がいなくなることでチーム全体でのキープ力は落ちると言わざるを得ない。飲水タイムを挟んでからは福岡が勢いを取り戻し、東京のチャンスは散発的となった。福岡の忍耐力を褒めるべきかもしれないが、東京としてはこの後半の早い時間帯でリードを奪えなかったのが勝ち切れなかった要因といえるだろう。
- 東京は森下監督が指揮した3試合で1勝1分1敗という五分の成績。初采配となった徳島戦の試合内容は酷いものだったが、髙萩をトップ下に据えた広島戦と今節の福岡戦に関しては、自分たちでボールを保持しながらチャンスを窺おうとする姿勢が色濃く出ていた。ただ、ブロックを固められるとなかなかゴールをこじ開けられなかった点については課題として残った。
- 試合後のセレモニーで、短期間ながらチームを指揮した森下監督とキャプテンの東は、前任者である長谷川監督の功績への感謝の言葉を口にしながら、同時に、リーグタイトルに遠く及ばなかった今季の成績への悔しさを口にしていた。「来年こそ」という意気込みはもはや味スタでのホーム最終戦における常套句となりつつあるが、「来年こそ」と思っているのは、東京だけでなく他のリーグタイトルを逃したクラブにとっても同じ。移籍で抜けた穴を埋めるだけの補強や、現有戦力のバランスを考慮しないスタイルの転換だけでは限界がある。もちろん東京は東京のやり方で、というスタンスでも自分は応援するが、それで毎年のように優勝、優勝と喧伝しても、ファンをはじめとした利害関係者の同意は得られにくいように感じる。
- 来季については既にミクシィが東京ガスに代わる筆頭株主となって経営権を取得することが発表されており、次期監督についても既に各種メディアから報道が出ており、色々な変化が訪れることは間違いなさそうだ。オフをほとんど取れなかった昨季と比べ、今年はある程度充電できるだけの期間が用意されている。選手たちにはじっくり休んで、来季以降の新たなサッカーに心機一転して取り組むだけの体力・気力を養ってほしい。
FC東京 |
0 |
0 | 前半 | 0 |
0 |
アビスパ福岡 |
0 | 後半 | 0 |
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| | 得点 | | |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 31 | 村上 昌謙 |
DF | 14 | 内田 宅哉 | DF | 2 | 湯澤 聖人 |
| 4 | 渡辺 剛 | | 33 | ドウグラス グローリ |
| 3 | 森重 真人 | | 5 | 宮 大樹 |
| 50 | 長友 佑都 | | 13 | 志知 孝明 |
MF | 21 | 青木 拓矢 | MF | 14 | ジョルディ クルークス |
| 31 | 安部 柊斗 | | 40 | 中村 駿 |
| 10 | 東 慶悟 | | 6 | 前 寛之 |
| 8 | 髙萩 洋次郎 | | 8 | 杉本 太郎 |
| 23 | 渡邊 凌磨 | FW | 37 | 金森 健志 |
FW | 15 | アダイウトン | | 9 | フアンマ デルガド |
GK | 1 | 児玉 剛 | GK | 41 | 永石 拓海 |
FP | 5 | ブルーノ ウヴィニ | FP | 3 | エミル サロモンソン |
| 11 | 永井 謙佑 | | 10 | 城後 寿 |
| 28 | 鈴木 準弥 | | 17 | 渡 大生 |
| 30 | 寺山 翼 | | 19 | 田邉 草民 |
| 34 | 大森 理生 | | 25 | 北島 祐二 |
| 38 | 紺野 和也 | | 44 | 森山 公弥 |
髙萩 洋次郎 | | 64' | 交代 | 64' | | ジョルディ クルークス |
永井 謙佑 | | | 渡 大生 |
安部 柊斗 | | 68' | 警告 | | | |
内田 宅哉 | | 70' | 交代 | | | |
鈴木 準弥 | | 70' | | 杉本 太郎 |
東 慶悟 | | | 田邉 草民 |
紺野 和也 | | | | |
| | | 交代 | 81' | | フアンマ デルガド |
| | | 城後 寿 |
| | | 金森 健志 |
| | | 北島 祐二 |
アダイウトン | | 87' | 交代 | | | |
寺山 翼 | | | |