2021.11.20 (土)
2021 明治安田生命J1リーグ 第36節
FC東京 × 徳島ヴォルティス
( 味の素スタジアム,14:00 )
introduction
- 2週間前に行われたJ1リーグ戦、東京は横浜Mにアウェイで0-8の大敗。クラブワースト記録となる大量失点を喫した翌日、長谷川健太監督の辞任が発表された。リーグ戦3試合を残して指揮官がクラブを去ったことは、少なからずショックな出来事ではあった。しかし、チームが踏ん張りどころで踏ん張れず、監督の発破もなかなか効かないという硬直した状況に陥っていたことは事実であり、残念だが致し方ない別れだったといえるだろう。
- 長谷川監督の辞任を受け、クラブは森下申一GKコーチを監督に昇格させる人事を発表。短い期間ではあるが、森下新監督には大敗のショックに揺れるチームの立て直しが託されることとなった。幸い、インターナショナルウィークを挟んだ関係で準備期間は1週間以上確保することができた。今節の相手は現在J2降格圏の17位に沈む徳島である。特にこれといったターゲットが存在しない東京に対し、徳島がJ1残留のために必勝態勢で臨んでくることは間違いなく、マインドセットの面でも重要性が問われる一戦だ。
- 既に消化試合となっている試合とはいえ、味スタには12,000人を超える観客が来場。期待に応える試合ができることを期待したい。いつもはバック上層席で試合観戦している自分だが、今日は訳あってメイン下層での観戦。ベンチが比較的近いこともあり、新体制でスタッフ陣がどのような動きをするのかもチェックできそうだ。ビジター席には多くの徳島サポーターが詰めかけ、選手入場時にはフラッグを振ってスタンドの雰囲気を盛り上げていた。
1st half
- 立ち上がりに最初にチェックするのは徳島のシステム。どうやら岩尾をアンカーに据えた4-1-2-3のようだ。4-2-3-1の東京とは中盤の選手の立ち位置ががっちり噛み合うことになり、サイド攻撃も脅威となりそうだ。その見立てどおり、早い時間から徳島が積極的に仕掛ける。開始早々に左サイドの西谷がドリブルで仕掛けてPA内まで押し込んできたのをきっかけに、徳島がセカンドボールを拾ってゲームを支配。東京はボールの奪いどころを設定できなさそうな様子で、苦しい入り方となった。
- 18分、東京は拓海のバックパスを垣田がカットして速攻。鈴木がミドルシュートで狙うが、久々にゴールマウスに入った児玉が弾き出す。続く左CKを岩尾が蹴り、これを福岡に頭で合わされるが僅かに枠の上。ゲームを支配される東京は29分にロングボールをディエゴが収め、PA内でラストパスを受けたレアンドロが仕掛けてシュートを狙うが、枠内に飛ばせず、少ないチャンスを生かせない。
- 東京がややポゼッションを取り戻しながらもチャンスを作れないまま迎えた42分、徳島は中盤の藤田がドリブルで中央突破。PA近くにポジションをとっていた西谷に一度ボールを預け、リターンパスを藤田がそのままシュートに持ち込む。するとブロックに入った東に当たってコースが代わり、ループシュート気味の弾道となったことで児玉が止められず。ここまでゲーム支配を許しながらも無失点で耐えていた東京だが、0-1とリードを許す。せめてスコアレスで前半を乗り切りたかっただけに、あと数分でHTというところでゴールを割らせてしまったのは非常に痛い。
2nd half
- 後半開始早々、東京はディエゴとレアンドロを揃ってベンチに下げ、永井と髙萩を投入。ディエゴもレアンドロも特にパフォーマンスが悪かったようには見えなかったが、やや球離れが悪くなりつつあったのと、前線からのプレスをしっかりかけようというのが狙いだろうか。
- 前線の2枚替えでやや持ち直した東京は58分、渡邊が左サイドから入れたクロスからゴール前で混戦状態になると、最後は浮き球に突っ込んだ安部がPA内で倒され、PKの判定。徳島の選手がクリアしかかった場面だったのでPKかどうかは少し微妙なところだが、ここまで良いところ無しだった東京にとっては「渡りに船」ともいえる判定だ。キッカーは永井。これを決めればひとまず同点・・・というところだが、永井が左に蹴ったキックはGK・上福元がキャッチ。呼吸がぴったり合ってしまったようなPK失敗となり、東京は同点に追いつく絶好機を逃してしまう。
- 飲水タイムを挟んで71分、徳島のポゼッションでリスタートすると、後方から縦パスでつけたところをダイレクトでDFライン裏へ走った垣田にボールが繋がる。抜け出した垣田がゴール左隅にシュートを流し込み0-2。仕切り直しといきたかった飲水タイム後というタイミングも良くない。
- 追う展開となった東京はボールこそ保持できるものの、攻撃の糸口となりそうなのは途中出場でピッチに入ったアダイウトンの単独突破くらい。よほど連携が上手くいっていないのか、最終ラインではオマリと長友が強い口調で何か言い合っていて、口論に近い状態だ。中盤でパスを組み立てようとしても、徳島のプレスが効果的なこともあり、なかなか前を向かせてもらえず。何か手を打つのかと思いベンチの様子も窺ってみるが、監督やコーチングスタッフがピッチサイドに立って指示をするわけでもない。久々にメインスタンドの観戦なので、距離の近いベンチの様子が過剰に気になるだけかもしれないが、不安は募る。
- 結局、徳島のゴール前に攻め込むことすらできないまま時計の針だけが過ぎていき、いつの間にか試合終了のホイッスル。徳島がJ1残留に向けて価値ある勝点3を確保した。ホーム側のスタンドからは形式的な拍手こそ送られていたものの、試合終了を待たずして席を立った観客も多くいたせいか、物寂しい雰囲気の漂う試合後の光景となった。
impressions
- 第三者の目線から見れば、徳島の守備が見事に機能した試合だったといえるのかもしれない。特に中盤を逆三角形にした4-1-2-3のシステムにして中盤のマッチアップを明確化し、ボールに対して厳しく当たり続けたことで東京の組み立てを完全に無効化することができた。宮代と西谷の両ウイングが常に前を向いて仕掛け、サイドで主導権を握り続けていたし、上福元のPKストップで東京に傾きかけた流れを寸断できたことで、垣田の追加点へと繋がっていったのも大きかったといえる。徳島とJ1残留を争う清水と湘南が他会場で勝利し、いずれも勝点3を揃えたことで、依然徳島の苦しい戦いは続くが、残り2試合に向けて勢いのつく勝利だったはずだ。
- ただ、いくら徳島の戦い方が機能していたとはいえ、今日の東京の戦いが決して褒められるようなものでなかったことも確かだろう。個人的には、これまでFC東京を観てきた中でも屈指の、特にここ数年の中ではワーストといっても過言ではない程の内容だった。見せ場といえば前半のレアンドロが個人技でシュートに持ち込んだ場面と、後半の永井のPKに関連する場面くらい。それ以外は全くの無風で、徳島のDFラインに対して全くといって良いほど圧力をかけられなかった。
- 前節の大敗、そして長谷川監督の辞任という出来事を受け、チームの立て直しを期待されての一戦だったはずだが、攻守においてちぐはぐな印象が否めず、この1週間余りで一体何の準備をしてきたのか、申し訳ないが全く伝わってこない90分間だった。最終ラインから攻撃のスイッチを入れることができる森重が出場停止だったことの影響もあったかもしれないが、それを差し引いても攻撃の形が全く作れなかった。ディエゴとレアンドロを後半早々に下げるという大胆な采配も見られたものの、代わりに入った永井と髙萩が劇的に流れを変えたとも言い難かった。選手は一生懸命戦ったと思うし、そう信じているが、チームがどういう指針で戦うのかが明確でないと、ここまで上手くいかないものなのかと改めて痛感させられる。
- また、こういう悪い流れのときは、せめて監督なりベンチスタッフなりがピッチサイドまで出てきて指示を出したり、選手を鼓舞したりするものだと思うが、2点をリードされた終盤になってもベンチはあくまで「静観」。今日控えに回っていた波多野が一番声を出していたのではないかと思ってしまうほどの静けさだった。急転直下でチームを預かった森下監督にとって準備期間が少なすぎた点は差し引いて考えるべきかもしれないが、「ポーズ」だけでも戦う姿勢を見せてほしかった。残りシーズンで目指すべき指標もなく、スタイルを築いた前指揮官や中心選手まで不在とあっては、「船頭もマストも羅針盤も無い船」で航海をするようなものなのかもしれない。
- 心の中にぽっかりと穴が空いたかのような、非常に残念な結果に終わったものの、リーグ戦はまだ2試合残っている。こんな状態のままシーズンを終えるわけにはいかない。次節は今季最後のアウェイとなる広島との試合。遠方となり駆け付けることはできないが、何か立て直しのきっかけを掴み、最終節の味スタでの試合に戻ってきてほしい。
FC東京 |
0 |
0 | 前半 | 1 |
2 |
徳島ヴォルティス |
0 | 後半 | 1 |
|
|
|
| | 得点 | 42' | 藤田 譲瑠チマ |
| | | 71' | 垣田 裕暉 |
GK | 1 | 児玉 剛 | GK | 21 | 上福元 直人 |
DF | 22 | 中村 拓海 | DF | 15 | 岸本 武流 |
| 4 | 渡辺 剛 | | 14 | カカ |
| 32 | ジョアン オマリ | | 20 | 福岡 将太 |
| 50 | 長友 佑都 | | 4 | ジエゴ |
MF | 21 | 青木 拓矢 | MF | 8 | 岩尾 憲 |
| 31 | 安部 柊斗 | | 23 | 鈴木 徳真 |
| 10 | 東 慶悟 | | 13 | 藤田 譲瑠チマ |
| 20 | レアンドロ | FW | 11 | 宮代 大聖 |
| 23 | 渡邊 凌磨 | | 19 | 垣田 裕暉 |
FW | 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 24 | 西谷 和希 |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 31 | 長谷川 徹 |
FP | 7 | 三田 啓貴 | FP | 2 | 田向 泰輝 |
| 8 | 髙萩 洋次郎 | | 7 | 小西 雄大 |
| 11 | 永井 謙佑 | | 10 | 渡井 理己 |
| 15 | アダイウトン | | 16 | 鈴木 大誠 |
| 34 | 大森 理生 | | 17 | 一美 和成 |
| 37 | 中村 帆高 | | 45 | 杉森 考起 |
| | | 得点 | 42' | | 藤田 譲瑠チマ |
レアンドロ | | 51' | 交代 | | | |
髙萩 洋次郎 | | | |
ディエゴ オリヴェイラ | | | |
永井 謙佑 | | | |
| | | 警告 | 59' | | ジエゴ |
東 慶悟 | | 63' | 交代 | | | |
アダイウトン | | | |
| | | 得点 | 71' | | 垣田 裕暉 |
青木 拓矢 | | 72' | 交代 | | | |
三田 啓貴 | | | |
| | | 交代 | 79' | | 西谷 和希 |
| | | 杉森 考起 |
三田 啓貴 | | 80' | 警告 | | | |
| | | 交代 | 84' | | 垣田 裕暉 |
| | | 一美 和成 |
| | | 交代 | 90' | | 宮代 大聖 |
| | | 小西 雄大 |