2021.11.14 (日)
2021 明治安田生命J2リーグ 第39節
SC相模原 × ファジアーノ岡山
( 相模原ギオンスタジアム,13:00 )
introduction
- J2は残り4試合とシーズンも大詰め。J1昇格争いは首位・磐田が今節にも昇格を確定させそうな勢いで、2位・京都も久々のJ1復帰に大きく近づいている状況だ。その一方で、最大4チームがJ3に降格してしまうJ2残留争いは未だにカオスを極めている。数字上は14位・山口から下の9チームにJ3降格の可能性があり、気を抜けない状況だ。今週末はJ1の試合が無いため、その残留争い当事者の試合を観に行くことにした。小瀬で行われる「甲府×松本」というカードも気になっていたが、そちらはチケットがあっという間に完売となってしまったため、残った中から近場の「相模原×岡山」をチョイス。今季、クラブ初となるJ2の舞台を戦っている相模原を観に行く。
- ギオンスタジアムは、相模大野からの交通状況次第で所要時間が読めない路線バスではなく、電車と徒歩で行くのが自分にとって気楽だ。相模線を原当麻で降りて徒歩で麻溝台へ向かう。昨季までのJ3時代は、駅で降りてもそれっぽい出で立ちの人はほとんど見られなかったが、今日は結構な数の「それとわかる」雰囲気の人が降りて、徒歩でスタジアム方向で歩いていく様子が見て取れた。スタジアムに着いても、メインスタンドのホーム側は(座席間隔を空けているとはいえ)ほとんどビッシリと埋まっていて、バックスタンドもそれなりに埋まっている。やはりお客さんにとっても、「J2」というのはそれなりのブランド力を持っているのかもしれない。
- ホームの相模原は現在勝点「34」で暫定20位。前節終了時点では19位だったものの、昨日に行われた試合で21位の北九州が勝利したため、順位は1つ後退している。残留ラインの18位・金沢の勝点「37」まで3ポイント差だ。残り試合数を考えると、これ以上勝点差を離されるのは相当苦しい。ましてや残り少ないホームゲームなだけに、今日はなんとしても勝利が欲しいだろう。
- 一方、現在11位と中位につけているアウェイの岡山は、既に昇格や残留を争うマッチレースとは無縁の状況であるが、チームは9/18の第30節からリーグ戦9試合負けなしを継続中。この間、ドローが5試合含まれているため、いかんせん勝点は伸び悩んでいるものの、しぶといサッカーを展開していることは間違いないようだ。今節の試合はインターナショナルウィークに行われる関係で、オーストラリア代表に招集されているデュークは不在。攻撃の牽引役を欠く中、どのような試合運びをするのか注目される。
1st half
- 試合が動いたのはキックオフから僅か4分のこと。相模原は高い位置からのプレスでボールを奪い、左サイドから川上がゴール前へややラフなボールを送り込むと、岡山の最終ラインが処理にもたつく間に再び相模原が人数をかけたプレスでPA内のカオスを作り出す。最後はPA内のこぼれ球を松橋が押し込んで1-0。ホームの相模原にとっては大きな先制点が入る。相手のミスによって生まれた部分も大きかったが、そういったエラーを起こさせるだけの「圧」を感じさせるプレッシングだった。
- 一気に攻めたい相模原は7分にも決定機。左サイドからのクロスに中央の清原がダイレクトで合わせるが、これはGK・梅田の正面を突いてセーブ。完全にフリーの状態だっただけに、梅田が救った形だ。
- すると13分、岡山は右CKからの流れで波状攻撃。セカンドチャンスとなった右サイドからの関戸のクロスをPAの僅かに外で受けた石毛が胸トラップからのボールコントロールで相手のブロックを剥がし、落ち際のボールを右足で振り抜く。これがゴール左隅に突き刺さり1-1。トラップからシュートへ持ち込むまでの一連の動作はまさに美技そのもの。石毛のゴラッソで岡山が早いうちに同点に追いつく。
- 立ち上がりこそプレスが良くかかっていた相模原だが、同点となってからはそのプレスの網を岡山が突破し、ゴール前まで運んでくる場面が頻出。相模原にとっては耐える時間が続く。30分を過ぎたあたりから平松・清原・松橋の1トップ2シャドウが下りてきてボールを受ける場面が増え、相模原がやや落ち着きを取り戻した。前半はこのまま1-1で終了。早い時間帯にスコアが動いたが、そこからは膠着気味だ。この均衡がどこまで続くか。
2nd half
- 後半開始から相模原は選手交代で2列目の清原を下げ、同じポジションに安藤を投入。すると50分、相模原は左サイドを押し込み、ボールの奪い合いになると人数をかけたプレスで圧力をかける。そして松橋がコーナー付近から中へパスを入れると、これを奪おうとした岡山の守備がお見合いするような形となり、転がったボールはゴール正面に詰めていた安藤の足下へ。GKの動きを冷静に見計らって安藤がシュートを叩き込み2-1。安藤はゲームに入って早々の大仕事だ。前半の先制点と似たような相手陣内で相手のミスを誘う形により、相模原が再びリードを奪う。
- 再び追う展開となった岡山は、63分に木村と李勇載を同時に投入。2人共に攻撃の選手で、ゴールを獲りに行けという指示だろう。その直後のリスタートは岡山の右CK。ゴール正面でいきなり競り勝った李勇載が強烈なヘディングシュートを放つが、これはGK・三浦の正面。相模原にとっては命拾いの場面だったが、これは岡山が猛攻を始めるほんの合図でしかなかった。
- 67分、岡山は右サイドに入った木村がドリブルでカットイン。ゴール正面のPA付近のシュートレンジまで運び、最後はボールを引き取った石毛が強引にシュートへ持ちこむ。するとボールが味方の李勇載に当たり、偶然にも李勇載自身の足下にこぼれ、期せずしてGKと1vs1の局面に。李勇載が冷静にシュートを決めて2-2。投入から僅か3分で交代選手2人が得点に絡み、岡山が試合を振り出しに戻す。
- 79分、右サイドの木村が今度はDFライン裏のスペースに浮き球のパスを送り込み、これに李勇載が飛び出す。三浦が飛び出してシュートコースを塞ぐものの、三浦と李勇載の競り合いから右サイドに流れたボールを右SBの河野がマイナス方向へグラウンダーで折り返し、フリーで待っていた上門がダイレクトで蹴り込み2-3。終盤で遂に岡山が逆転に成功する。
- 逆転を許した相模原はすぐさま選手交代で梃子入れ。一方の岡山はこれを受けて87分にDF2人を投入し、徹底した守備固めに入る。相模原は最後の交代でDF登録の後藤を前線に投入してパワープレイを試みるが、中央を固めた岡山の守備をこじ開けられずに試合終了。シーソーゲームの末、アウェイの岡山が勝点3を確保し、これでリーグ戦10試合負け無しとなった。
impressions
- 岡山の選手交代が見事に的中したゲームだった。相模原のプレスに対して最終ラインが浮足立った対応を見せてしまい、前後半共に立ち上がりに失点。点の奪われ方と時間帯はいずれも決して良いものではなく、勝つのは容易ではない展開だった。
- しかし、63分の2枚替えで劇的に内容が変わった。李勇載は最前線で精力的に動き回ってボールを引き出し、2-2に追いつく貴重な同点ゴールを決め、逆転となった場面ではGKをゴールマウスから引きずりだす形で貢献。また右サイドに入った木村はドリブルでの仕掛けで相模原の脅威に。それまで右サイドに入っていた石毛とは別のタイプの選手が入ったことで、相模原の守備は明らかに掴まえどころを失っていた。ちなみに、試合後に調べたところ、李勇載はようやくの今季初ゴールだったらしく、追いかける展開でもなお彼に試合を託した有馬監督の采配は見事といえるだろう。
- 相模原にとっては、2度もリードに成功しながら最終的には勝点1すら確保できないという、非常に厳しい結末となった。前後半共に、立ち上がりでゴールを奪うことができたのは大きかった。ハイプレスから岡山の選手に対してプレッシャーをかけ、結果的にミスを誘ったのは見事だった。
- しかし相模原は、後半の岡山の選手交代に対して明確な対策を打つことができなかった。特に木村に対しては後手を踏み続けた。終盤に入って徐々に体力が消耗し、ついていけなくなったという理由もあるだろうが、それならば尚更早めの対策が必要ではなかったか。最悪でも勝点1は確保しなければならない試合内容だっただけに、この敗戦が最終的に大きく効いてくる可能性もありそうだ。
- 他会場では21位の愛媛と22位の松本が共に敗れ、J3降格圏内に沈むチームでは今節は北九州だけが独り勝ちした形となった。相模原は次節に愛媛、更に次々節には松本と、残留を賭けた直接対決2連戦が待っている。J2残留争いの鍵を握っているのは、間違いなく相模原だろう。残りは3試合。最終的にJ2はどこが生き残るのか、最後まで目が離せなくなりそうだ。
SC相模原 |
2 |
1 | 前半 | 1 |
3 |
ファジアーノ岡山 |
1 | 後半 | 2 |
|
|
|
松橋 優安 | 4' | 得点 | 13' | 石毛 秀樹 |
安藤 翼 | 50' | | 67' | 李 勇載 |
| | | 79' | 上門 知樹 |
GK | 16 | 三浦 基瑛 | GK | 31 | 梅田 透吾 |
DF | 35 | 藤原 優大 | DF | 16 | 河野 諒祐 |
| 31 | 木村 誠二 | | 5 | 井上 黎生人 |
| 30 | 川﨑 裕大 | | 22 | 安部 崇士 |
MF | 2 | 夛田 凌輔 | | 11 | 宮﨑 智彦 |
| 15 | 川上 竜 | MF | 48 | 石毛 秀樹 |
| 38 | 成岡 輝瑠 | | 17 | 関戸 健二 |
| 26 | 兒玉 澪王斗 | | 7 | 白井 永地 |
| 7 | 清原 翔平 | | 41 | 徳元 悠平 |
| 39 | 松橋 優安 | FW | 14 | 上門 知樹 |
FW | 23 | 平松 宗 | | 15 | 山本 大貴 |
GK | 1 | アジェノール | GK | 13 | 金山 隼樹 |
FP | 9 | ユーリ | FP | 2 | 廣木 雄磨 |
| 13 | 石田 崚真 | | 4 | 濱田 水輝 |
| 14 | 安藤 翼 | | 9 | 李 勇載 |
| 29 | 後藤 圭太 | | 24 | 下口 稚葉 |
| 33 | 梅鉢 貴秀 | | 27 | 木村 太哉 |
| 40 | 児玉 駿斗 | | 28 | 疋田 優人 |
松橋 優安 | | 4' | 得点 | | | |
| | | 得点 | 13' | | 石毛 秀樹 |
清原 翔平 | | HT | 交代 | | | |
安藤 翼 | | | |
安藤 翼 | | 50' | 得点 | | | |
| | | 交代 | 63' | | 山本 大貴 |
松橋 優安 | | 63' | | 李 勇載 |
ユーリ | | | 関戸 健二 |
| | | | 木村 太哉 |
| | | 得点 | 67' | | 李 勇載 |
ユーリ | | 68' | 警告 | | | |
| | | 交代 | 74' | | 宮﨑 智彦 |
| | | 疋田 優人 |
| | | 警告 | 77' | | 疋田 優人 |
| | | 得点 | 79' | | 上門 知樹 |
川﨑 裕大 | | 82' | 警告 | | | |
川﨑 裕大 | | 82' | 交代 | | | |
児玉 駿斗 | | | |
川上 竜 | | | |
梅鉢 貴秀 | | | |
| | | 交代 | 87' | | 上門 知樹 |
| | | 濱田 水輝 |
| | | 石毛 秀樹 |
| | | 下口 稚葉 |
成岡 輝瑠 | | 90' | 交代 | | | |
後藤 圭太 | | | |