2021.10.30 (土)
2021 明治安田生命J2リーグ 第36節
ザスパクサツ群馬 × 松本山雅FC
( 正田醤油スタジアム群馬,14:00 )
introduction
- 今週末はルヴァンカップの決勝戦が開催される関係で、J1リーグ戦の開催は無し。その決勝戦を観に行くか少し悩むところだが、同日にJ2の試合も多く組まれていることから、日帰りで行くことが可能であり、かつ注目カードのひとつでもある「群馬×松本」を観戦することに決定。新宿から湘南新宿ラインを使って前橋へと向かう。今日の関東地方は秋晴れに恵まれ、スポーツ観戦に限らず絶好の行楽日和。新宿から乗車した高崎行の特別快速も、最後まで座席はほぼ埋まりっぱなしだった。
- J2はここまで35試合を消化し、リーグ戦は残り7試合。J1昇格争いは依然として磐田と京都の「2強」がリードする展開が続いているが、一方で4チームがJ3降格の憂き目に遭うJ2残留争いは、かなり熾烈な接戦となっている。というのも、勝点34の16位・山口から、勝点30の最下位・相模原まで、僅か4ポイントの間に7チームが団子状態となっているのだ。そんな中迎えた今節は、17位・群馬(勝点34)が、21位・松本(勝点31)を迎えての試合。両者の勝点差は「3」ポイント、まさに生き残りをかけたシックスポインターである。
- ホームの群馬は、「ザスパ草津」時代からのクラブのレジェンドでもある奥野監督が今シーズンから監督としてチームに復帰していたが、結果はなかなかついてこず、J3降格圏に沈んだ7月上旬に解任。現在はコーチから昇格となった久藤監督が指揮を執る。一方の松本も、昨季途中からチームを引き継いだ柴田監督が続投してシーズンインしたが、目標でもあったJ1昇格争いからは早々に脱落。6月に解任された柴田監督の後任として招聘された名波監督が残留に向けて立て直しを図っているが、苦しい戦いが続いている。
- 群馬は直近5試合勝利無し、松本も4試合勝利無し。共に勝利からしばらく見放されているものの、ここで勝利すればチームに勢いがつくことは間違いない一戦。ホームの群馬サポーターはもちろん、松本サポーターも多くスタジアムに駆け付け、ビジター自由席のチケットは完売。チケット枚数を抑えての販売のため、観客数は3,000人余りと物足りなさはあるが、緊張感の漂う雰囲気の中でキックオフのホイッスルが吹かれた。
1st half
- 立ち上がりに仕掛けたのはアウェイの松本。4分、左CKをショートコーナーでリスタートすると、下川の速いクロスをニアの常田が頭で合わせる。枠内を捉えた鋭いヘディングだったが、これは群馬のGK・清水がセーブし、最初のピンチを脱出。この一戦に勝利して勝点で群馬に並びたい松本が、前進的な守備でボールへ積極的にアタックし、良い入り方を見せる。
- 群馬もやられっぱなしではない。15分あたりから松本のDFラインの裏へボールを蹴り、そこに選手を走らせる形で勝負する。特に2トップの一角をなす青木が鋭い飛び出しを見せている。松本はどうにか跳ね返すが、こぼれ球も拾うことができず、気が付けば群馬がほぼ一方的に押す展開だ。
- 飲水タイムを挟んで迎えた31分、群馬は中盤でフリーでボールを受けた加藤がDFラインの裏への動き出しを見せた青木にスルーパスを出す。青木はそのままPA内に侵入。マークについていた星がスライディングでボール奪取を試みるが、これに青木が倒されて清水主審はPKのジャッジ。集中的に青木にパスを預けた群馬の狙いが的中する。キッカーの大前がGKの動きの逆をとって冷静に右隅に決め、1-0。群馬が大きな先制点を挙げる。
- 畳みかけたい群馬は44分にもチャンス。小島が味方とのワンツーから右サイドのハーフスペースまで侵入し、中央へのラストパスに大前がダイレクトで合わせるが、松本の選手がカバーに入りシュートは枠の上へ。崩しの形が良かっただけに、これは獲りたかった。結局、1-0のまま前半終了。松本は終盤にかけて左サイドの下川がフリーとなる局面が多く、ここからチャンスメイクできそうだが、群馬の堅い守備がなかなか開かない。
2nd half
- 早く1点が欲しい松本は、HT明けから2枚替え。前半存在感が薄かった鈴木に代えてセルジーニョ、そして前半に痛恨のPKを献上した星に代えて野々村を投入する。この交代はある程度は上手くいった。51分にはセルジーニョの左CKからゴール至近のPA内でスクランブル状態となるが、群馬がどうにかクリアしてピンチを凌ぐ。松本はこの流れを続けたい。
- 表原と下川の両WBの高い位置取りが続く松本に対し、群馬は66分に今日大活躍の青木が交代でアウト。代わって内田が中盤インサイドに入り、岩上をアンカー、大前を頂点に置いた4-1-4-1にシステム変更する。逃げ切りを視野に入れた守備固めの交代といったところか。この作戦が上手くいくかは分からないが、久藤監督の采配に込められたメッセージは伝わってくる。
- 飲水タイムを挟んで試合が佳境に入ってくると、松本は前線にてこ入れ。中盤を削ってゴールゲッターの山口をシャドーの位置に投入。更に75分には前線に榎本、左WBに田中を投入し、長いボールを織り交ぜながらチャンスを窺う。79分には再三のフィードからこぼれ球をセルジーニョがPA内で拾い、フィニッシュに持ち込むが、シュートはこれも群馬のブロックに遭い、枠内に飛ばない。松本は徐々に焦りが出てくる。
- 試合終盤、なんとしても1点が欲しい松本はロングボール攻勢で頼みの空中戦に託す。しかしクロスボールに味方がなかなか競り勝てない。ゴール真正面ではなく、ハーフスペース付近に一度蹴って味方の折り返しを狙う工夫も何度かは見られるが、結局は群馬のクリアに遭い、シュートまで持ち込めず。群馬は試合終盤に渡辺を最終ラインに投入して守備の枚数を増やす冷静な采配も見せ、結局1-0のまま試合終了。群馬が重要な一戦で大きな勝点「3」を獲得し、勝点を37に伸ばした。
impressions
- 終わってみれば、群馬が先制点を奪った時点で、ある程度予想された結末になったな、という印象だ。群馬は狙いが明確だった。勝利を見据えて試合に臨んできた松本の出会い頭の攻勢を一旦受け、その後に確実に流れを手繰り寄せた。その中心にいたのが青木だ。松本がやや高めにDFラインを設定している裏を狙い、後方から効果的なフィードを引き出した。この攻撃に対して松本は明らかに対応が遅れていた。後半に入ってからは松本がある程度立て直すことはできていたが、群馬がシステム変更などの采配で早めに「撤収」の構えを見せたこともあり、1点が遠かった。
- 松本の交代策もあまり的確とは言い難かった。HT明けのセルジーニョの投入はある程度の効果はあったが、その後の交代で入った選手が持ち味を出しきれていなかったように思う。今季に水戸から加入した山口は得点能力は高い印象だが、シャドウの位置でゴールから離れた場所でのプレイを余儀なくされていたし、切れ味のある仕掛けがウリの河合も、時間の経過につれて低い位置でボールを貰いにいくような場面が目立った。怖い選手をゴールから遠ざけてしまう采配はどうなのかと考えさせられた。
- 今日、他会場で最下位の相模原が勝利したことにより、松本は相模原にも勝点で追い抜かれ、いよいよJ2最下位に転落した。既にシーズンは終盤戦に入っており、ここから何かを根本的に変えるのも難しい。かといって、「原点」のような場所へ立ち返ろうにも、かつて松本のストロングポイントでもあった空中戦に勝てていないのが気になった。残留争いの混戦模様はまだまだ続きそうな様子であり、松本の再浮上の可能性も充分にあるが、明るい材料に乏しい試合内容であったことは間違いない。
- 試合全体を通しては、PKによる1点だけで、派手さには欠ける試合内容だったが、1点を巡るギリギリの攻防を最後まで観ることができ、降格の無かった昨季には無かった緊張感を味わうことができた。今季のJ2残留争いは最後にどこが生き残り、どこが落ちるのか全く読めない展開になりそうなので、残り試合の推移も注目していきたい。
ザスパクサツ群馬 |
1 |
1 | 前半 | 0 |
0 |
松本山雅FC |
0 | 後半 | 0 |
|
|
|
大前 元紀(PK) | 33' | 得点 | | |
GK | 1 | 清水 慶記 | GK | 1 | 圍 謙太朗 |
DF | 25 | 小島 雅也 | DF | 37 | 宮部 大己 |
| 40 | 大武 峻 | | 2 | 星 キョーワァン |
| 3 | 畑尾 大翔 | | 43 | 常田 克人 |
| 24 | 光永 祐也 | MF | 17 | 表原 玄太 |
MF | 11 | 田中 稔也 | | 4 | 安東 輝 |
| 8 | 岩上 祐三 | | 28 | 小手川 宏基 |
| 41 | 中山 雄登 | | 27 | 下川 陽太 |
| 7 | 加藤 潤也 | | 14 | 鈴木 国友 |
FW | 50 | 青木 翔大 | | 8 | 河合 秀人 |
| 10 | 大前 元紀 | FW | 15 | 伊藤 翔 |
GK | 21 | 松原 修平 | GK | 16 | 村山 智彦 |
FP | 6 | 内田 達也 | FP | 7 | 田中 パウロ淳一 |
| 9 | 北川 柊斗 | | 10 | セルジーニョ |
| 15 | 金城 ジャスティン俊樹 | | 25 | 榎本 樹 |
| 16 | 久保田 和音 | | 38 | 佐藤 和弘 |
| 19 | 白石 智之 | | 44 | 野々村 鷹人 |
| 32 | 渡辺 広大 | | 45 | 山口 一真 |
大前 元紀(PK) | | 33' | 得点 | | | |
| | | 交代 | HT | | 鈴木 国友 |
| | | セルジーニョ |
| | | 星 キョーワァン |
| | | 野々村 鷹人 |
青木 翔大 | | 66' | 交代 | | | |
内田 達也 | | | |
| | | 交代 | 69' | | 小手川 宏基 |
| | | 山口 一真 |
| | | 警告 | 72' | | 宮部 大己 |
| | | 交代 | 75' | | 伊藤 翔 |
| | | 榎本 樹 |
| | | 表原 玄太 |
| | | 田中 パウロ淳一 |
田中 稔也 | | 78' | 交代 | | | |
白石 智之 | | | |
大前 元紀 | | 90+1' | 交代 | | | |
北川 柊斗 | | | |
中山 雄登 | | | |
渡辺 広大 | | | |