2021.10.17 (日)
2021 明治安田生命J2リーグ 第34節
栃木SC × ジュビロ磐田
( カンセキスタジアムとちぎ,14:00 )
introduction
- 今週末はFC東京の試合が無いため、他所の試合を観戦する。都合の付いた日曜日の日程を調べたところ、J2の「栃木×磐田」と「群馬×京都」というカードが組まれている。いずれもJ2残留争い中のチームがJ1昇格圏内の上位チームを迎える構図で、これはどちらも面白そうだ。どちらを観るかしばらく検討した末、最終的には今季2回目のカンセキスタジアム訪問に決定。キックオフ時間やアクセス面の違いも比較材料にはなったが、一番の理由は、直感的に「何か起こりそう」な気がしたからだ(笑)。
- 5月の前回訪問時は東武宇都宮線を使って西川田から歩いたが、今回は都内からの所要時間を重視。湘南新宿ラインに乗ってJR宇都宮線を下り、雀宮で降りる。「休日おでかけパス」を使って自治医大からのエリア外乗り越し分を精算するのはもはや恒例だが、改札口はなんと無人。精算用のインターホンには、同じ目的の客でちょっとした行列ができていた。精算機を使えないこの切符の仕様はいい加減どうにかならないものか。駅東口からのシャトルバスで栃木県運動公園に向かった。
- J2残留争い中のホーム・栃木は、現在勝点「36」で14位。前節はJ2残留争いのライバルでもある松本とアウェイでの一戦だったが、PKによる1点をしぶとく守り切って貴重な勝点「3」を獲得。J3降格圏の19位・松本との勝点差を「5」に広げており、J2残留に向けてやや光明が見えつつある状況だ。一方、現在勝点「72」で首位を快走する磐田は、7月の山形戦以来、ほぼ3か月近く負けなしを継続中。前節も残留争い中の北九州を4-1と圧倒してリーグ戦3連勝中であり、昨季達成できなかったJ1復帰に向けて視界は良好だ。
- 栃木サポーターはもちろん、磐田サポーターもビジター席の一角をサックスブルーに染め、8,209人の観衆を集めたスタジアムの雰囲気は良好。J2残留とJ1昇格という互いのターゲットに向けた一戦が始まった。
1st half
- 立ち上がりは磐田が長いボールを使いながら様子を見る慎重な入り方。栃木は自陣で厳しめに当たり、FKやCKを与えてしまう場面が続くが、それほど危険な場所ではない。すると徐々に栃木の前線からのプレスが効き始める。豊田と畑の2トップに加え、矢野と谷内田の両SHがFWとほぼ同じラインでの位置取りでボールに対してアプローチ。磐田には軽率なミスは見られないが、後方でのボール回しが少し落ち着かない。
- 先制点は17分。栃木が相手陣内左サイドでの競り合いでファウルを貰い、これを谷内田が蹴る。ゴールに向かう対応の難しい弾道のクロスが入ると、密集を抜け出した柳が頭でコースを変え、これがゴール左隅に決まって1-0。守備側よりもやや早いタイミングで抜け出したように見えたが、副審は旗を揚げずにオンサイドのジャッジ。磐田の選手たちは一様にオフサイドをアピールして抗議するが、J2はVARが無いので判定は覆らない。
- 30分を過ぎると徐々に磐田がルーズボールを拾うようになり、ワンサイドゲームの様相。37分には右サイドでボールをキープした山田のクロスをPA内でルキアンが収めて粘り、最後は落としたボールを大津がプッシュするが、栃木の選手に当たったシュートはクロスバーを叩いてゴールならず。磐田が再三にわたって押し込むが、栃木のゴールが割れない。
- それでも44分、磐田は左CKが右サイドへ流れたところを拾った鈴木がドリブルでハーフスペースまで侵入し、マーカーとの駆け引きに勝ってゴール正面にクロスを入れる。これを攻め残っていた大井が頭で押し込んで1-1。ハーフタイムまであと僅かというところで磐田が同点に追いつく。栃木にとってはあと数分耐えていればリードして前半を終えることができていただけに悔やまれる失点だ。前半はこのまま1-1で折り返す。
2nd half
- ハーフタイム明け、いきなり磐田が猛攻を仕掛ける。49分、ルキアンが右サイドに流れて起点となった流れから、そのサイドを深くまで抉った山本(義)がクロスを入れるが、ポジションを取り直してゴール正面で待っていたルキアンの絶好のヘディングシュートはGK・オビの正面。序盤は栃木がやや耐える時間帯となる。
- 62分、磐田は攻撃的な位置の大津を下げて金子を投入。今夏にライバルチームの清水からレンタルで加わったドリブラーだ。周囲とはややタイプが異なる選手が入ったことで、磐田の攻撃は更に活性化。特に左サイドでは金子がドリブルで仕掛けたり、左WBの松本との連携で裏に走ったりと積極的なアクションを見せ、再三に渡りアタッキングゾーンに侵入。しかし栃木も簡単には中を割らせない。77分には左サイドで獲得した直接FKを遠藤が狙うが、これも枠を捉えられず。1-1の拮抗した時間が続く。
- 80分、磐田は小川(大)とゴンザレスの2枚を同時に投入。ルキアンとゴンザレスが前線に2枚残り、遠藤を1列上げた3-5-2に近いシステムで勝負に出る。しかしこれは逆効果だった。前線に有馬とジュニーニョというフレッシュな選手を並べて縦に早い攻撃を意識する栃木の速攻に対し、磐田は後方での対応人数が減ったことで逆にピンチを招く場面が出てくる。栃木にも勝つチャンスがありそうに見えるが、人数をかけた攻撃はせず。時間を使えるところでは使い、残された時間を耐え抜いた。1-1のまま試合終了となり、残留争い中の栃木が首位チームから大きな勝点「1」を獲得している。
impressions
- どちらかといえば、栃木にとって意味のある勝点「1」だったといえるのではないか。立ち上がりから後方でゲームを組み立てようとする磐田に対し、積極的にボールを奪いにいったことで流れを引き寄せることができた。前節からスタメンを若干変更し、守備でしっかりボールを追うことのできる矢野を右サイドに置いたのが機能したし、FWで先発した畑も何度か良いプレスバックを見せていた。その流れから先制点を奪えたのは大きかった。ディフェンスリーダーでもある柳のセットプレイでの強さは光る。
- 栃木にとって悔やまれるのは、前半の「終わらせ方」だろう。磐田にセカンドボールを制圧され、完全なワンサイドゲームになってしまった。クロスバーに助けられる場面もあり、今日は栃木に風が吹いているかと思ったが、ボールを左右に動かされ続ける展開の中で、最後は持ちこたえられず。時間帯を考えれば勿体ない失点だった。後半は序盤からチャンスを作られ、守備陣にとっては時間が長く感じられたかもしれないが、集中して守っていたように思う。残留争いに置かれている状況には変わりないが、耐えきって得られた勝点「1」がシーズンの最後に大きな意味を持つかもしれない。
- 磐田は勝利こそならなかったが、アウェイで最低限のドロー。しかも追いついての勝点「1」であり、悪い結果ではないと思う。前半は後方でのパスワークに対して栃木に厳しくケアをされ、先制点も奪われてリズムを掴むことができなかったが、そこで焦らずにサイドからじっくりと攻略することができていた。大井の同点弾をアシストした右WBの鈴木、そして縦の突破で相手の脅威となっていた左WBの松本の存在感が光る内容で、前半のうちに同点にしてくるところはさすがだと感じた。
- 後半は金子の投入で勝負を仕掛け、あと少しで逆転という状況まで持っていった磐田だが、80分の2枚替えで2トップにしてからは栃木に裏を狙われるようになり、逆にバランスを崩してしまった印象。そこは残り試合の課題といえそうだが、むしろ首位を走っている余裕があるからこそ冒すことのできたリスクテイクのようにも見えた。
- J2の残り試合は8試合で、いよいよシーズンも大詰め。毎週のように緊張感の高い試合が続く状況であるが、今日は栃木も磐田も手応えのある内容・結果を得られたように見えた。次節以降、両チームがどのような積み上げを見せてくれるか、楽しみにしたい。
栃木SC |
1 |
1 | 前半 | 1 |
1 |
ジュビロ磐田 |
0 | 後半 | 0 |
|
|
|
柳 育崇 | 17' | 得点 | 44' | 大井 健太郎 |
GK | 50 | オビ パウエル オビンナ | GK | 36 | 三浦 龍輝 |
DF | 33 | 黒﨑 隼人 | DF | 38 | 山本 義道 |
| 5 | 柳 育崇 | | 3 | 大井 健太郎 |
| 36 | 乾 大知 | | 6 | 伊藤 槙人 |
| 49 | 溝渕 雄志 | MF | 17 | 鈴木 雄斗 |
MF | 29 | 矢野 貴章 | | 23 | 山本 康裕 |
| 14 | 西谷 優希 | | 50 | 遠藤 保仁 |
| 25 | 佐藤 祥 | | 14 | 松本 昌也 |
| 44 | 谷内田 哲平 | | 10 | 山田 大記 |
FW | 32 | 畑 潤基 | | 4 | 大津 祐樹 |
| 31 | 豊田 陽平 | FW | 11 | ルキアン |
GK | 1 | 川田 修平 | GK | 1 | 八田 直樹 |
FP | 11 | ジュニーニョ | FP | 5 | 小川 大貴 |
| 19 | 大島 康樹 | | 8 | 大森 晃太郎 |
| 20 | 三國 ケネディエブス | | 25 | 森岡 陸 |
| 23 | 植田 啓太 | | 28 | 鹿沼 直生 |
| 34 | 有馬 幸太郎 | | 29 | ファビアン ゴンザレス |
| 41 | 松本 凪生 | | 40 | 金子 翔太 |
柳 育崇 | | 17' | 得点 | | | |
| | | 警告 | 28' | | 山本 義道 |
| | | 得点 | 44' | | 大井 健太郎 |
乾 大知 | | 45+1' | 警告 | | | |
| | | 交代 | 62' | | 大津 祐樹 |
| | | 金子 翔太 |
豊田 陽平 | | 73' | 交代 | | | |
有馬 幸太郎 | | | |
谷内田 哲平 | | | |
ジュニーニョ | | | |
| | | 交代 | 80' | | 鈴木 雄斗 |
| | | 小川 大貴 |
| | | 山田 大記 |
| | | ファビアン ゴンザレス |
有馬 幸太郎 | | 81' | 警告 | | | |
| | | 警告 | 83' | | 金子 翔太 |
畑 潤基 | | 90' | 交代 | | | |
大島 康樹 | | | |
溝渕 雄志 | | 90+5' | 交代 | | | |
三國 ケネディエブス | | | |