2021.10.10 (日)
2021 Jリーグ YBCルヴァンカップ 準決勝 第2戦
FC東京 × 名古屋グランパス
( 味の素スタジアム,14:00 )
introduction
- インターナショナルウィークによるリーグ戦中断の間、ルヴァンカップは準決勝が行われている。2戦目の逆転劇で準々決勝を勝ち上がった東京は、現在リーグ戦でも絶好調の名古屋と決勝進出を賭けての対決だ。10/6に豊田スタジアムで行われた第1戦は、ホームの名古屋が3-1で先勝。柿谷と木本の得点で2点をリードして逃げ切りを図った名古屋に対し、東京はアダイウトンが後半ATに貴重なアウェイゴールを奪って1点差としたが、すぐさまマテウスに追加点を奪われてしまうという敗戦だった。
- 状況は厳しい。アウェイゴールを奪っての1点差ならば条件としては悪くなかったのだが、追加点を与えたことにより「2点差での勝利」がマストとなってしまったのは非常に重い。可能性が残っている以上、東京の選手たちには当然頑張ってほしいが、決勝進出への道が極めて険しいものであることもまた事実。試合後に広がる光景を想像すると、味スタへと向かう足取りも心なしか重く感じる。
- 10月に入って最初の味スタでのホームゲームは、観客数の上限が10,000人に緩和されての試合。チケットは完売となった。スタジアム全周をびっしりとお客さんが間隔を空けて座っているのを見ると、本当に10,000人も入っていないのか疑わしく感じてしまう。ビジター席も久々に開放されており、名古屋サポーターも多数(?)来場。アウェイサポーターの存在も、雰囲気づくりには欠かせない。入場するまでは気分的にあまり乗れていなかったが、座席に腰を落ち着けて選手紹介を観ていると、「何かが起きるんじゃないか」と期待をしてしまう。ファンとしての悲しい性だ(笑)。
1st half
- 東京のキックオフで始まった試合だが、早々にルーズボールを奪取したマテウスがドリブルで仕掛けてシュートを放ってくる名古屋。さっそく「凶器」をちらつかせてきた相手に対して、東京はテンション高めにハイプレスを敢行して流れを掴む。すると15分、右CKをショートコーナーでリスタートし、髙萩がダイレクトでゴール前にクロスを入れると、これにアダイウトンがヘディングで合わせて叩き込み1-0。2戦合計2-3と1点差に詰め寄る。多くのチャンスが望めそうにない試合だけに、最初に掴んだ流れの中でまず先制できたのは非常に大きい。
- 未だ優位な立場とはいえ、難しい展開となった名古屋はすぐに反撃。23分には稲垣が中盤でボールを奪い、左サイドのマテウスへ展開。グラウンダーのクロスに前田がフリーで飛び込むが、ダイレクトで合わせたシュートはゴールの左へ。東京にとってはリードした直後の最も警戒すべき時間帯で迎えた大ピンチだが、どうにか命拾いして飲水タイムとなる。
- 一度落ち着く時間を挟んだ影響か、ここからは東京が再び主導権を握る。特に良い働きを見せているのは、1トップに入った永井だ。豊富な運動量でワイドの位置にも顔を出し、泥臭くボールを追う。怪我人の続出により本職のSBでは唯一稼働できる状態の拓海と、全く本職でないにも関わらず左SBで起用された渡邊が、積極的にボールを狩りに行く姿勢と高い位置取りで後方を押し上げてくれるのも心強い。
- 35分、永井が左サイドに流れてボールを受けて中のディエゴへ繋ぎ、ディエゴがマークを背負いながらも見事な技術でシュートへ持ち込むが、ランゲラックが片手で弾き出すスーパーセーブでゴールを許さず。40分にも渡辺から永井への意表を突く縦パスを起点として狭いエリアを繋ぎ、最後はディエゴがシュートへ持ち込むが、これも決まらず1-0で前半終了。今日もランゲラックの牙城が堅いが、勢いは東京にある状況だ。
2nd half
- 55分、東京は右サイドでボールを受けたディエゴがドリブルを開始、勢いに乗ってハーフスペースへ侵入。マークを強引に振り切り、折り返しのラストパスを中に送り込む。するとゴール至近距離の絶好の位置で待っていた永井がダイレクトでシュート。これは中谷にブロックされるが、こぼれ球にすかさず詰めた髙萩が豪快に押し込んで2-0。これで2戦合計3-3、更にアウェイゴールを1点取っている東京が、ビハインドを覆して遂にアドバンテージを奪う。密集したゴール前の狭いエリアを強引にこじ開けての「逆転劇」に、スタンドからも溜まらず大歓声だ。
- 逆転での決勝進出が現実味を帯びてきた東京だが、名古屋もここから反撃の一手を打つ。69分、マテウスを下げてシャビエルを投入。後半早々に3トップの中央に投入されたシュヴィルツォクがシャビエルとセンターラインで縦関係を組み、正々堂々、中央をこじ開けようという狙いだ。東京も自陣でのボール奪取からある程度カウンターは撃てており、背後を警戒させたいところだが、中谷を中心とした名古屋のDFラインの対応が早く、徐々に手数で名古屋が上回る展開に。東京はじりじりと重心を後ろに下げていく。75分にはこぼれ球の処理を誤って足をとられた様子の渡辺が倒れ込み、プレーを続行できずにウヴィニと交代。旗色は悪くなる一方だ。
- 80分、名古屋は左サイドの吉田のクロスからゴール前にスクランブル状態を作り出し、シュヴィルツォクのシュートのこぼれ球を稲垣がプッシュ。一度は森重がゴールラインぎりぎりでボールを掻き出そうとするが、稲垣がしぶとく頭でねじ込み2-1。これで2戦合計3-4、名古屋がアドバンテージを奪回する。久々にアウェイサポーターの入ったビジター席からは地鳴りのような大歓声だ。決勝進出に賭ける思いは相手も変わらない。
- 失点直後の83分、東京は三田と紺野の2人を同時に投入。3月の試合で大怪我を負い、長期離脱していた紺野が久々の登場だ。残り時間はディエゴと永井の2トップを前線に並べ、最終盤にはウヴィニも前線に上げて総攻撃を仕掛けるが、効果は薄い。89分には紺野が果敢なドリブル突破からディエゴとのワンツーでシュートに持ち込むものの、枠には飛ばせず。結局、2-1でこのまま試合終了。東京は第2戦こそ勝利したものの、2戦合計スコアで1点及ばず敗退決定。この瞬間、今季全てのタイトルの可能性が消滅した。長谷川監督をはじめとしたベンチスタッフ全員が選手と一緒にスタンド挨拶に向かう光景が印象的だった。
impressions
- 今日の試合に関しては、選手たちは最後までよく戦ったと思う。「可能性はあっても、難しいだろうな」と半ば決勝進出を諦めていた自分を、今となっては恥じ入るばかりだ。ベンチ入りを含めたメンバー18人を揃えるだけでも大変だった中、やれることはやり尽くした。拓海と渡邊という今季初めての組み合わせとなった両SBは攻撃面で持ち味を出していたし、ディエゴを右サイドのアタッカーの位置に配してドリブルで中を窺う戦術も、2点目の場面で見事に結果に繋がっている。永井も1トップで多くの役回りを背負いながらフルタイムで走り回った。第1戦でのビハインドを跳ね返して2-0としたときは、決勝へと繋がる「扉」に間違いなく手は掛かっていた。
- ただ、アドバンテージを握って以降、途中から入ったシュヴィルツォクとシャビエルの縦ラインを強化してきた名古屋に対して、東京は充分に押し返すことができなかった。特にシャビエルが持った時にボールの奪いどころを明確にできず、PA付近まで容易に侵入を許してしまった。ここは采配やスキルの課題もあると思うが、シンプルに「押し負けた」と言わざるを得ない。渡辺のアクシデントによる交代も多少は影響しただろうが、もはや気持ちだけでどうにかなるような展開ではなかった。第1戦の「安い失点」が最後に効いてきたことが悔やまれる。180分トータルでの試合運びという点で、チームとしての実力不足を認めるしかない。
- これで今季は全てのタイトルを逃すことが確定し、シーズンも残すはリーグ戦6試合のみ。ACL出場権を得られる3位以内も少し厳しい状況であり、残り試合に対してのモチベーションの維持は難しそう。いわゆる「燃え尽き」のようなチーム状態になってもおかしくない局面だ。しかし、こういう状況でこそ、来季を含めた今後に繋がるものをピッチに残し続けるのが必要なことではないだろうか。今日の東京のパフォーマンスは観ている側に勇気を与えてくれるものだったし、こういった試合をシーズン終了まで観られるのならば全く文句は無い。来週末は試合が無いので、まずは一度フィジカルとメンタルを共にしっかり休めて残り試合に臨んでほしい。
FC東京 |
2 |
1 | 前半 | 0 |
1 |
名古屋グランパス |
1 | 後半 | 1 |
|
|
|
アダイウトン | 15' | 得点 | 80' | 稲垣 祥 |
髙萩 洋次郎 | 55' | | | |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 1 | ランゲラック |
DF | 22 | 中村 拓海 | DF | 17 | 森下 龍矢 |
| 4 | 渡辺 剛 | | 4 | 中谷 進之介 |
| 3 | 森重 真人 | | 20 | 金 眠泰 |
| 23 | 渡邊 凌磨 | | 23 | 吉田 豊 |
MF | 21 | 青木 拓矢 | MF | 14 | 木本 恭生 |
| 31 | 安部 柊斗 | | 15 | 稲垣 祥 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 5 | 長澤 和輝 |
| 8 | 髙萩 洋次郎 | FW | 25 | 前田 直輝 |
| 15 | アダイウトン | | 8 | 柿谷 曜一朗 |
FW | 11 | 永井 謙佑 | | 16 | マテウス |
GK | 1 | 児玉 剛 | GK | 21 | 武田 洋平 |
FP | 5 | ブルーノ ウヴィニ | FP | 10 | ガブリエル シャビエル |
| 7 | 三田 啓貴 | | 11 | 相馬 勇紀 |
| 10 | 東 慶悟 | | 13 | 藤井 陽也 |
| 18 | 品田 愛斗 | | 26 | 成瀬 竣平 |
| 34 | 大森 理生 | | 40 | シュヴィルツォク |
| 38 | 紺野 和也 | | 44 | 金崎 夢生 |
アダイウトン | | 15' | 得点 | | | |
| | | 交代 | 51' | | 前田 直輝 |
| | | シュヴィルツォク |
髙萩 洋次郎 | | 55' | 得点 | | | |
アダイウトン | | 66' | 交代 | | | |
東 慶悟 | | | |
| | | 交代 | 69' | | マテウス |
| | | ガブリエル シャビエル |
渡辺 剛 | | 75' | 交代 | | | |
ブルーノ ウヴィニ | | | |
| | | 得点 | 80' | | 稲垣 祥 |
髙萩 洋次郎 | | 83' | 交代 | | | |
三田 啓貴 | | | |
青木 拓矢 | | | |
紺野 和也 | | | |
| | | 交代 | 89' | | 柿谷 曜一朗 |
| | | 相馬 勇紀 |