今日は計画の段階から楽しみにしていた観戦予定を決行する。昨年にオープンしたばかりのJ2・栃木SCのホームスタジアム、カンセキスタジアムとちぎ(新・栃木県総合運動公園陸上競技場)への初訪問だ。来年に行われる栃木国体を見据え、宇都宮競輪場跡地に建てられた新スタジアム。球技専用でないとはいえ、やはり新スタジアムと聞けば現地観戦マニアにとって行かないわけにはいかない(笑)。往路はやはり公共交通機関で行く。最寄り駅の東武宇都宮線・西川田駅から徒歩だ。駅前は国体を控えていることもあってか、道路が整備されて綺麗になった印象。総合運動公園に着くと、緩やかなデッキの上り坂を歩いてスタジアムへアプローチ。遠景から見渡せるスタジアムが徐々に近づいてくる感じがワクワク感を掻き立ててくれる。ホーム席の入口は栃木側のゴール裏になっていて、入場するやいなや、すぐに栃木サポーターの熱気を感じられるようになっている設計なのも見事だ。下層席は陸上トラックを挟んでいることもあり、少しピッチが遠く感じるのは致し方ないが、自分がチケットを押さえた上層席は非常に眺めが良く、球技専用スタジアムと比較してもそれほど見づらさは感じない。栃木県は新型コロナウイルスの影響に伴う観客数上限が10,000人までに緩和されており、観客も7,461人という上々の入りだ。現在J2で17位につけている栃木の対戦相手は、12位の松本。共にJ2の中位に位置しているチーム同士の対戦だ。今季のJ2は中位から下位にかけて大混戦となっており、7位の水戸(勝点「18」)から最下位の北九州(勝点「11」)までの8ポイント差の中に16チームがひしめき合う事態となっている。今季は例年と異なり下位4チームがJ3降格となるだけに、どのチームも勝点を奪いあうのに必死だ。今日対戦するこの2チームも、この状況は不本意だろうが同様だろう。じりじりとした日差しが照り付けて少し蒸し暑さも感じる中、前半のキックオフとなった。
先にスコアを動かしたのは栃木。4分、左CKを菊池がショートコーナーでリスタートすると、ジュニーニョからのリターンパスを菊池がクロス。ファーサイドの死角からゴール正面に出てきた柳が相手選手よりも僅か先に頭で合わせて1-0。ホームチームが幸先良くリードを奪う。直近の5試合で負けが無い松本だが、今季先制を許した試合で逆転勝利を挙げたのは僅か1試合。難しい展開となった。好スタートを切った栃木は中盤の高い位置から積極的にプレス。ここ8試合勝利が無いとはいえ出足の良い守備が続く。一方の松本は後ろでじっくりと繋いで起点を作りたいように見えるが、栃木のプレスが厳しく、また球際の当たりも激しいため、なかなか流れを作れない。前半は1-0のまま終了。松本にも全くチャンスが無いわけではなかったが、栃木の守備を混乱させられているようには見えず、ここまでは栃木がほぼパーフェクトに近い内容といえるだろう。後半は静かな立ち上がりとなり、なかなか両者にチャンスが生まれないが、徐々に松本の組み立てにダイレクトプレーが増えてきて、ようやく流れを握りかける展開。ここが勝負どころと見たか、柴田監督は63分に3枚替えを決断。右サイドに田中(淳)、前線に戸島と横山を入れ、システムを3-3-2-2に変更して勝負を賭ける。一方の栃木も、ここまで前線のプレスで貢献していた有馬と山本を下げ、矢野と松岡を投入。こちらも前線に強力なカードを投入して仕掛けてきた感がある。緊迫した状況がどちらに転ぶか注目される中、次の1点が入ったのは71分。栃木が前線の矢野にボールを収めて時間を作ると、矢野の落としを受けた松岡がドリブルで中へ仕掛け、得意の左足でミドルシュート。このシュートはクロスバーに当たって跳ね返される。惜しいと思ったのも束の間、この跳ね返りの落ち際に詰めていた森がダイレクトでプッシュ。意表を突くタイミングで飛んできたシュートに村山が反応できず、ゴール左隅に決まって2-0。栃木にとっては交代の采配がズバリ的中しての追加点だ。更に84分、菊池が蹴った右CKをファーサイド寄りで待っていた柳が頭で合わせ、この試合2点目を決めて3-0。CKから同じ選手が2発というのはあまり観ないだけに、松本に対してはクリティカルな1点といえるだろう。後半から徐々に立ち直りの兆しが見えつつあった松本だが、追加点を許してからは意気消沈してしまったか、決定機を作ることができないままタイムアップのホイッスル。栃木が9試合ぶりの勝点「3」を獲得した。
両チームの直近の戦績を考えればやや松本に分があるかと思っていたが、その予想が完全に裏切られる形となった。栃木の完勝といって良いだろう。開始早々の先制点が大きかった。セットプレイ時における柳の勝負強さは知っていたが、今日はまさに面目躍如といえる2得点。チーム加入して間もない中、いきなりフィットしていた三國の存在感もあって、マークが分散した影響もあるだろう。得点はセットプレイからによるものだったが、アドバンテージを得たことによって、まずは守備でハードワークという意識統一ができたのではないだろうか。その証拠に、1トップで今季2試合目のスタメンとなった有馬などは高い位置でプレスをかけ続け、松本のバックラインでのパス回しに対して強烈なプレッシャーを与えていた。厳しすぎるくらいのアプローチを栃木が仕掛けていたため、試合が止まりがちになり両チームの選手がヒートアップする場面も少なくなかったが、栃木にとっては勝利を得るためにこれくらいの厳しさが必要だったのだろう。試合後のフラッシュインタビューでも、田坂監督が守備の厳しさについて言及していたのを見るに、狙いどおりの試合だったといえるのではないか。途中から投入された矢野と松岡も2点目に絡む活躍を見せ、交代策もピタリと的中した。なお、FC東京下部組織出身でもある松岡のシュートがクロスバーに当たった時は思わず天を仰いでしまったのだが、それでピッチから目を離した次の瞬間に森のゴールが決まり、唖然としてしまったのはここだけの話にしておきたい(笑)。一方、敗れた松本は、久々に先制点を許してしまったことで面食らってしまったのか、最後まで攻め手を見出せないまま終わってしまった印象。後ろで起点を作りたいという意図は分かったが、栃木のハイプレスに苦しんでなかなか良いパスが前線に出てこなかった。2列目の河合・鈴木は良い動き出しを何度か見せていたような気がするが、味方のサポートが乏しく、結果的に孤立してしまった感は否めなかった。結局は「個」で打開するのか、そうじゃないのかが良く分からなかったというのが率直な感想で、松本にとっては次節以降に大きな課題を残す試合となった。栃木にとっては4/4の山口戦(A)以来、ほぼ1ヶ月半ぶりの勝点「3」獲得であり、混沌とした順位争いについていくための足がかりとなる大きな1勝となったはず。明暗がくっきりと分かれたこの結末が今後の両チームにどのような影響を及ぼすか、今後の行方が気になる一戦だった。