ルヴァンカップのグループステージ最終節。東京にとっては、4/24に行われたJ1リーグ・鳥栖戦以来の観客を入れての味スタでのホームゲームになる。新型コロナウイルスの感染再拡大による東京都の緊急事態宣言発令に伴い、5月の大型連休中は都内でのイベントは無観客での開催が決定。東京もそのあおりを受け、5/1の味スタでのリーグ戦は今季初の無観客開催を余儀なくされた。またアウェイでの試合も、5/5のルヴァン・神戸戦が無観客試合、5/9の鹿島戦と5/14の柏戦は共にビジター席の設置が見送りとなった。リーグ戦では5月に入ってからも連敗が続き、DAZNの画面越しに何度も歯痒い気持ちにさせられたが、先週末の柏戦は久々に4-0と大勝。ようやく「重たい荷物」を下ろすことができたように感じる。そして中3日で迎えるルヴァンカップの試合。Bグループの東京は第3節から第5節までアウェイ3連戦となっていたが、ここを全て無敗で乗りきり、1試合を残してグループ首位通過が確定。味スタで行われる今日の試合は、負けても全く失うものが無い、様々なトライが可能なシチュエーションとなった。一方、対戦相手の大分にとってはグループステージ突破がかかった重要度の高い一戦。単なる「消化試合」でないところは、東京にとってもチームの底上げに絶好の条件である。試合前から長谷川監督はリーグ戦ではできないようなチャレンジをするつもりだとメディアを通して宣言していたが、発表されたスタメンを見ると、やはりリーグ戦からは全員を入れ替え。それでも前線には永井・東・三田といった強力な選手が揃っている。一方の控えメンバーは、長野から獲得したベテランGKのアベノブとプロ1年目の大森を除けば全て下部組織(U-18)に所属する選手で占められた。彼らの出番にも期待したい。昼間に降っていた雨は夕方には上がり、日没頃には少しだけ晴れ間も差し込む天気。ピッチ状態も問題なさそうで、久々の味スタ観戦としては上々のコンディションだ。
スタートの並びを確認すると、東京は直近のリーグ戦と同じ4-2-3-1。ただし選手の配置はいつもと少し変わっている。特徴的なのは拓海が右のサイドアタッカーの位置に入っていることだろう。ボールを持つタイプの選手が2列目に多いこともあってか、ラフなボールは多用せずに繋いで崩していこうという狙いが見えるが、大分も跳ね返して速攻の意識がある様子。シャドーの位置にいる屋敷は大分U-18所属の2種登録選手ながら積極的に仕掛ける姿勢が見え、東京も人数をかけて攻めるのはリスクが高そうだ。互いにチャンスの無いまま迎えた32分、東京は自陣から痺れを切らしてドリブルで攻めあがろうとしたオマリがボールを奪われ、藤本がドリブルで持ち出してGKと1vs1。ミスからの大ピンチだったが、猛ダッシュで戻った蓮川がフィニッシュ寸前でカバーに入りカット。ここは難を逃れるが、0-0のままHTに入るかと思われたAT3分、大分は波状攻撃から弓場の放ったシュートがバングーナガンデに当たってコースが変わり、これが決まって0-1。良い時間帯に大分が先制に成功し、前半を終える。前半にこれといったチャンスを作れなかった東京は、HT明けからU-18の安田を投入。前線の並びを変えてチャンスを窺う。後半最初のチャンスは50分の大分。後半頭から出場の渡邉がPA内まで運びシュートを狙うが、これを野澤(大)が好セーブで凌ぐと、徐々に東京がルーズボールを拾う展開。63分、東京は中央でボールを持った品田が相手の意表を突く縦パスをPAの永井に供給。永井が収めたボールを一旦東が引き受けると、そのリターンを受けた永井が左45度の位置からゴール右隅を狙ったコントロールショットを沈めて1-1。ここまで持ち味を出せていなかった品田のパスを起点に東京がタイスコアに戻す。この後は両チーム共に選手を入れ替え。東京は66分にU-18の梶浦と野澤(零)を含む3枚替え。飲水タイム明けの74分には更にU-18の森田も入り、システムを3-4-2-1に変更。一気にピッチ内の年齢が若返った影響か、終盤はやや大分に押される場面が続いたが、まずまず戦えている印象だ。後半ATには大分GK・高木のクリアミスを野澤(零)が拾ってチャンスとなるが、シュートまでは持ち込めず。そのまま1-1で試合終了となった。他会場で大分と同勝点だった神戸が徳島に勝利したため、神戸がグループ2位でプレーオフに進出。勝ち切れなかった大分はグループ敗退が決定した。
総合的な感想としては、まずまずといえる内容だったのではないか。リーグ戦と同じシステムながら、出番の少ない選手を積極的に起用。ビハインドの展開ながら同点に持ち込むしぶとさを見せることはできた。同点となった永井の得点は、永井のシュートセンスもさることながら、やはり品田の縦の楔のパスが見事だった。それまではボランチでコンビを組むアルトゥールが攻撃参加に色気を見せていたこともあり、低い位置でバランスをとる役割が主体だった品田だが、時間が進んでピッチ内の年齢が低くなっていくにつれ、責任感のあるプレーが多く見受けられるように見えた。試合後のインタビューによれば、ビハインドで迎えたHTに永井から「ミスしても良いから縦パスを入れてくれ」という要求があったらしく、そのリクエストに品田が応えたことになる。ゴールを決めた永井のセンスも見事だった。守備は全体的に慌てることなく対応できていた印象で、特に前半のオマリのミスをカバーした蓮川の対人プレーや、トップではJ3でのU-23チームでの起用を除いて初スタメンとなった野澤(大)のセービングなど、悪くないパフォーマンスだった。課題を挙げるならば、やはり前半の戦い方だろう。中途半端にボールを奪われて大分に速攻を食らう場面が多く、単発のパンチを浴び続ける展開となってしまい、最終的にはATに失点という結果になってしまった。拓海の右サイドアタッカー起用もチームとしては初めての試みだったが、率直に言って効いていたとは言い難い。久々の右SB起用となった岡崎もあまり目立っていた印象は無く、持ち味のロングフィードも見られなかった。今後チームの主軸を担うであろう世代と、現時点でのレギュラーメンバーとの力量差が見えてしまったというのは事実だろう。U-18の安田・梶浦・野澤(零)・森田の4人は、さすがに多くを期待するのは難しそうだったが、特に違和感なくピッチに立てていたように思う。まだまだ若いし、今後の成長に期待したい。チームとしてはグループステージ6試合を無敗で乗り切り、次はプライムステージ進出をかけた湘南とのプレーオフが待っている。今日出場した選手にとっては再びアピールの場になるだろうし、プレーオフの戦いも楽しみにしたい。