苦しい状況下でホームゲームの日がやってきた。前回のホームゲームでは、首位を走る川崎に実力の違いをまざまざと見せつけられて2-4の大敗。仕切り直しを狙って臨んだ前節のアウェイ・福岡戦も、なかなか攻撃のリズムが上がらず、ふわっとした失点によるビハインドをひっくり返せないまま0-1の完封負け。チームの状況はあまり良いとは言えない。どうにか今節で連敗を止めたいところである。そんな今節の相手は、現在暫定3位につける鳥栖。消化試合数に差はあるが、勝点差を「5」ポイント付けられている相手であり、ここは引き分けではなく勝利で勝点差を詰めたいシチュエーションである。「苦しい状況」にあるのは現場だけではない。3月下旬からの新型コロナウイルスの感染再拡大により東京都にまん延防止措置が発令されている関係で、観客上限が5,000人に変更。ビジター席の設置もなくなり、賑わいを取り戻しつつあったスタジアムは再び以前の静かな雰囲気に逆戻りすることになった。しかも昨日には、4/27から東京都を対象に3度目の緊急事態宣言が発令されることが決定。今回は1月に発令された2度目の緊急事態宣言とは異なり、スポーツイベントの中止や延期、無観客試合などが要請されるという。クラブからの正式な発表はまだ無いが、5/1に予定されている次節のホームゲームも無観客試合となる可能性は高い。またしばらく東京の試合を観られなくなるかもしれないだけに、今日は良い試合を観て帰りたい。リーグ戦では連敗している東京だが、ミッドウィークに行われたルヴァンカップではアウェイで大分に1-0で勝利。グループステージ突破に王手をかけてのリーグ戦という流れになっており、どうにか勢いをリーグ戦にも持ち込みたいところだ。スタメンにはしばらく正GKを外れていた波多野が復帰。ルヴァンカップでゴールを決めた永井もスタメンに入っている。
これ以上の連敗はできないという気持ちの表れか、立ち上がりから東京が高い位置からプレスをかけてボールを奪いに行くテンション高めの入り。11分に永井、15分に東がそれぞれシュートチャンスを迎えるが、いずれも鳥栖のシュートブロックに遭って得点には繋がらない。18分、鳥栖が東京の陣内でボールを奪うと、パスを回して様子を窺いながら最後は右サイド寄りに張っていた樋口が左足でクロス。素早い動き出しで岡崎の前を取った酒井が頭でコースを変え、これが決まって0-1。鳥栖がこの試合最初のチャンスを決めて先制に成功する。東京はまたしても先に点を許してしまい、早くも難しいゲームとなった。鳥栖は基本的なシステムは3-3-2-2のようだが、守備時は飯野がDFラインに吸収されて4-4-2に変化することのできる可変システムで、サイドを埋めてくるのでなかなか攻めどころがない。34分、東京は自陣でボールを受けた森重がプレスをかけられボールを失うと、速攻からボールを持った樋口がドリブルで持ち運び、右足で強烈なミドルシュート。これがゴール左隅に突き刺さるゴラッソとなり0-2。樋口の2得点に絡む活躍により、鳥栖が2点をリードして前半終了。鳥栖の思い通りの展開といった感じで、東京にとっては破滅的な内容の前半だった。後半、東京は2枚替えで内田と青木を投入し、4-4-2にシステム変更。ディエゴと永井の2トップにして仕切り直す。53分、東京が左CKを獲得すると、このキックにゴール正面の森重が競り勝ち、ヘディングがゴール左ポストに跳ね返りながらも決まって1-2。武器のセットプレイで1点差に詰め寄る。ここからは東京が猛攻を仕掛ける展開。直後の55分にディエゴが単独のドリブル突破でシュートへ持ち込む場面を作ると、60分に内田→青木→ディエゴ→永井→アダイウトンとPA前で細かく繋ぎ、最後は小川がフリーでシュートに持ち込むが、GK・朴一圭がストップ。68分には左サイドから小川が切れ込んで入れたクロスに永井がフリーでヘディングシュートに持ち込むが、僅かにゴールの左。あと一歩のところをこじ開けられない。その後も次々に攻撃的な交代カードを切る東京だが、鳥栖もDFの田代を最終ラインに投入して撤退戦に切り替え。後半ATには途中出場のレアンドロがフリーでミドルシュートを放つが、これも朴一圭の好セーブに防がれた。結局1-2のまま試合終了。東京は後半に再三のチャンスを掴んだがあと1点が遠く、前半のビハインドを取り返せずに痛恨のリーグ戦3連敗となった。
鳥栖の狙いが見事にはまった試合だった。今季の鳥栖が3-3-2-2をベースにしているのは知っていたが、実際に観てみると4-4-2と使い分けのできる非常に柔軟なシステムだった。右サイドの飯野が猛烈な運動量でアップダウンを繰り返すことで実現しているシステムではあるが、これによって隙の無い守備と人数をかけた攻撃が実現できている。特に飯野の攻撃参加によって、樋口が1つ内側のレーンでプレイできるのが強みだと感じた。最終ラインも黄錫鎬とエドゥアルドの牙城が堅く、試合終盤には田代という撤退戦用のカードもある。今季の鳥栖の守備の堅さは本物といって良いだろう。他方で、今日の東京の敗因を「鳥栖が良かった」だけに求めるのも違うはずだ。とにかく前半の2失点があまりに重すぎた。いずれの失点に関しても言えることだが、「ボールホルダーに厳しくアプローチする」という守備の基本が疎かになって失点が続くのは如何なものか。特に今日大活躍した樋口は、昨年のホーム・鳥栖戦でも得点に絡む活躍を許しており、痛い目に遭っている。また、酒井に許した1点目は、第2節のC大阪戦で大久保に許した得点とほとんど同じ形だ。4-1-2-3のシステムの泣き所を研究され、そこを相手が的確に突いているともいえるが、チームの目指すところを考えれば、例え弱点であったとしても何らかの対策が講じられるべきで、その形跡が見られなかったのは残念だ。昨年から取り入れた4-1-2-3のシステムだが、今日の内容を観る限り、少し厳しくなってきたのではないか?というのが率直な感想だ。長谷川監督の強いこだわりもあって続けてきたシステムだと思うが、森重のアンカー起用など一時的には抜群の効果を発揮しても、高いパフォーマンスを継続できているかは疑問に感じるし、今日のように森重の所が相手の「狩り場」になってしまっているのも事実。後半に4-4-2に戻して、ディエゴと永井がひたすら前から追うサッカーに切り替えてから内容が劇的に良くなったのも、負けた今となっては皮肉でしかない。このまま4-1-2-3を続けるのか、それともシステムを見直すのかは現場の判断を尊重したいと思うが、上位争いになんとしても食らいついていくならば、一旦夢から覚めるべきではないか。次節は好調の横浜Mをホームに迎えての一戦、ここが本当の正念場になる。残念ながら無観客試合の可能性が高そうだが、願わくばこの重要局面に立ち会えるよう祈りたい。