名古屋とのアウェイでの一戦から中3日、J1は平日開催の第8節。ホームに戻った東京は札幌を迎えての一戦となる。今季のナイトゲームは都内に緊急事態宣言が発令されていたこともあって18:00キックオフの試合が続いていたが、その緊急事態宣言も一旦は解除されており、今日は平時と同じの19:00キックオフ。やはりこの時間の方が仕事の調整もしやすいし、余裕を持ってスタジアムに向かうことができるのでありがたい。ビジター席が開放されるのも今季のリーグ戦では初めて。関東にサポーターを多く持つ札幌だけに、ビジター席は上層スタンドまでしっかり埋まっていた。前節、名古屋と0-0の引き分けに持ち込んだ東京は、引き続き守備を引き締めながらゴールを獲り切れるかが課題となる一戦。加えて今週末には暫定首位を快走する川崎とのビッグマッチが控えており、それに繋げる意味でも押さえておきたい試合である。中3日なのでメンバー入れ替えがあるかと思っていたが、スタメンで代わった所は右SBとインサイドの2人のみ。名古屋戦で負傷した帆高はメンバー外だ。一方の札幌は今季負けが先行しているものの、前節はアウェイで福岡に勝利しており、今季初の連勝を睨んでの試合となっている。スタメンをざっと見た感じでは「いつもどおり」という印象のラインナップ。シャドウの位置に入ると思われる小柏がスタメンに入っているのが少し気になるところか。結果的に、この小柏の存在が試合に大きな影響をもたらすことになるのだが・・・。
試合の入りはアウェイの札幌がポゼッションを増やす展開。まずはリスクを冒さずに長いボールを裏に蹴ってくる印象だ。特に2列目の小柏とチャナティップは加速が速く、裏を取られないか心配だ。29分、札幌は中央のチャナティップが裏に出したボールを小柏が追い、マーカーの岡崎の裏をとる。このままだとGKとの1vs1になる「ほぼ決定機」の局面、すぐさまカバーに入った渡辺が身体を当ててファウルで止める。イエローはやむなしという場面だが、荒木主審はレッドカードを提示。スタンドからは大きなどよめきの声が上がる。一発退場となった渡辺自身も「手は使っていない」と抗議するが、ゴール方向にドリブルが始まっていた局面なだけに印象も悪かったか。VARチェックもあってのジャッジなので致し方ないだろう。東京は森重がDFラインに入り、ディエゴを前線に残しての4-4-1で試合続行する。ここからは数的有利になった札幌が攻勢を強めるが、渡辺の退場を誘発した小柏がピッチに足を滑らせて負傷交代を余儀なくされるアクシデントもあり、0-0のままHT。東京は「まずは守備から」の意識で前半を乗り切った印象だ。後半も東京は前線の単独突破に頼る作戦を続行。55分、自陣でルーズボールを拾ったディエゴが単独のドリブルで突進。最終ラインの金眠泰を振り切ってファウルを誘発する。渡辺の退場シーンに近い形となったが、荒木主審の判定はイエローカード。東京の選手は当然のように猛抗議だ。するとここでVARが介入。オンフィールドレビューが行われ、判定がレッドカードに変更。金眠泰も退場となり、ピッチ内は10人vs10人となる。更にこの直接FKを三田が蹴ると、ニアの永井がフリックしてコースを変え、ディエゴが合わせて1-0。相手の動揺に乗じて東京が待望のリードを奪う。更に66分、東京はDFライン裏を狙ったボールに再びディエゴが抜け出し、GKを抜いたところを宮澤に倒されてPK獲得。これをディエゴが冷静に決めて2-0。あっという間にリードを広げることに成功した。ここから札幌が前線の枚数を増やして猛攻を開始。ゲームスピードも上がり、東京は慌ただしい時間が続く。83分、札幌は右サイドからのクロスから菅がシュート。これがロペスに当たって決まり2-1。更に89分、途中出場の高嶺が遠目から左足で狙った強烈なミドルがゴールを襲うが、これは児玉が見事な反応で弾き出す。後半ATは札幌がベテランの小野、そして古巣対決となる柳を投入してクロスの数を増やしてきたが、どうにか凌いで試合終了。終盤の展開はカオスを極めたが、東京が1点差で逃げ切り勝点「3」を確保した。
色々な意味で難しい試合だった。勝てたことに、嬉しさ50%、安堵50%といったところか。渡辺の退場によって内容が激変してしまった試合だったが、基本的な狙いは大きくは変わらなかった。まずは守備を固めて、前線の個の力に託す。スタンスはこれまでと変わらなかったはずだ。むしろ一時的に数的不利となったことでやることが明確になった。そして前半を0-0で凌ぐことができた。これが精神的な安定をもたらし、後半に札幌にも退場者が出た時点では、精神的には優位性を確保できていた。それが先制のセットプレイに繋がったといえるような気がする。渡辺と金眠泰の退場処分の妥当性は良く分からないが、渡辺のファウルが退場ならば、金眠泰のファウルも退場に相当する、ということなのだろう。ジャッジの難しさも感じる試合だった。試合全体を通しては、なんといってもディエゴの活躍に尽きる。味方のサポートが少ない状況にも関わらず、1人で強引に突破し、金眠泰の退場を引き出したドリブルは圧巻だった。退場で1人少なくなったとき、一般的には「割り切って守る」や「前の人数は残す」みたいな戦い方があるが、まさか「相手も1人減らす」という作戦があったとは(笑)。それを狙ったわけではないだろうが、ディエゴの突破力だからこそ実現できたプレイだったのは間違いない。終盤は自陣に戻っての守備にも参加してくれるなど、フルタイムに渡って八面六臂の活躍だった。ディエゴだけでなく、緊急のポジション変更にも関わらず冷静に対処した森重、機を見た攻撃参加や縦パスで攻撃にアクセントを加えた拓海も良かった。終盤は札幌が4-0-5に近い超攻撃的なシステムでゴール前にボールを入れてきたが、岡崎を下げて蓮川を入れた効果も多少はあっただろう。振り返れば、退場者を出した中でも交代枠を使わずに済ませたことが、巡りめぐって終盤の一手に繋がったともいえる。一方、2-0になった時点で「塩漬け」にできなかったのは課題といえそうだ。札幌のシステム変更が相当にリスクを度外視していたのもあるが、こういう大味な展開には苦手な印象がある。特に岡崎は守備面での課題を残した。これまでは周囲のサポートがあってカバーできていたが、今日は渡辺の退場という大きな代償を支払った。リードしている展開でCBの選手を途中交代せざるを得ないのは苦しい。責任あるポジションだけに負荷も大きいが、成長に期待したい。チームとしては至上命題の勝点「3」を確保し、週末の川崎戦に向けて弾みがついた。渡辺の出場停止は痛いが、上昇気流に乗った感覚はあるし、雰囲気は悪くない。シンプルに楽しみだ。