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2021.4.3 (土)
2021 明治安田生命J1リーグ 第7節
名古屋グランパス × FC東京
( 豊田スタジアム,14:00 )

J1・第7節。「大一番」というには少し気が早いかもしれないが、東京にとっては重要な一戦を迎えた。暫定2位につける名古屋とのアウェイ戦である。名古屋はここまで6試合を消化して6戦全勝。特に1-0での勝利が多く、フィッカデンティ監督指揮のもとで築き上げた手堅い守備が実りの時期を迎えている印象だ。かつての指揮官を相手にしての戦いということもあり、上位争いについていくためにも負けの許されない一戦である。当初、この試合はビジター席のチケット販売が見送られていたこともあり、自分もDAZNでの観戦にするつもりでいたが、Jリーグがこの試合を対象に新型コロナウイルス対策の実証試験を行うことになり、試合3日前になって観客数上限が20,000人へ一気に緩和。併せてビジター席の設置が決定し、更に豊田スタジアムの4階席が2,000円という驚きの値段で急遽販売されることになったため、自分もこの重要な一戦を現地で見届けることにした次第である。国内では緊急事態宣言の解除以降、大都市圏で再び新型コロナウイルス感染者数が増加傾向に転じており、今後は再びビジター席設置を見送る動きが出てくるかもしれない。それだけに「アウェイは行けるうちに行っておきたい」という気持ちが自分の背中を押した面もある。新横浜から久々に乗る東海道新幹線で名古屋に入り、昼食を済ませて豊田市へ。駅前には多くの名古屋サポーターが列をなしてスタジアムへ向かう光景が広がっており、否が応でも気持ちが高まる。豊田スタジアムにはこれまで何度も訪れているが、4階席での観戦は初めて。角度のあるスタンドからピッチを見下ろす様はまるでTVゲームのようだ。発表されたスタメンを見ると、当然のことながら両チーム共にベストメンバー。東京は先週のルヴァンカップでアピールした岡崎が今日もスタメン。このあたりは長谷川監督が「分かっている」なと思う。また、ベンチには自宅謹慎を終えた波多野と安部が復帰。即スタメンとはいかなかったが、貴重な戦力であるし、出番になったら活躍を期待したい。

慎重な入り方になるかと思われた試合だが、開始早々に東京に決定機。5分、左サイドから攻めあがったディエゴがアダイウトンとのワンツーで抜け出し、狭い角度からシュート。しかしランゲラックが弾き、すかさず田川が詰めるがゴールを陥れるには至らない。多くのチャンスが訪れるとは思えない試合だけにワンチャンスで仕留めたかった。序盤はなかなかボールが落ち着かず、名古屋が奪ってスタンドから歓声、東京が奪い返してスタンドから溜め息、という繰り返し。20分、東京はこの日右SBで先発だった帆高が足を痛めた様子で倒れこむと、ピッチに入ったドクターからすかさず「×」のサイン。よもやのアクシデントで拓海に交代となる。まだ多くの時間を残す中、守備で計算の立つ帆高がいなくなるのは痛い。それでも急遽出場となった拓海も守備時には素早い帰陣を意識。サイドのスペースを埋めて名古屋に縦には崩させず、前田やマテウスのカットインも執拗についていき対処。39分には名古屋の右CKからマテウスのパワーシュートがゴールマウスを襲うが、これも児玉が冷静な反応で弾き出し、0-0で前半終了。アクシデントはあったものの、どうにか名古屋の攻撃の第一波は抑えた印象だ。後半も膠着した時間が続き、先に動いたのは名古屋。57分、2列目の交代で、ドリブラーの齋藤と相馬が入る。東京もすかさず63分に永井と安部を投入。高い位置からもう一度プレスをかけ直すのが目的だろう。直後の65分、東京は小川の右CKのこぼれ球をファーサイドの永井がゴールライン際で折り返し。森重が押し込んでゴールネットを揺らすが、永井が触った時点でラインを割っていたというVAR判定によりノーゴール。得点にはならないがセットプレイの形を見せることはできた。ここからしばらく、ハイプレスのギアを入れ直した東京が流れを引き戻し、相手に傾いた流れを一旦食い止める。ただ、名古屋も1トップを柿谷から山﨑にスイッチして再度攻勢。81分、名古屋は左45度の位置で直接FKを獲得し、相馬が右足で「触れば入る」クロスを供給。肝を冷やすクロスだが誰も触れずに危うく右に流れる。東京もカウンターで対抗し勝利を狙う姿勢を見せるが、後半ATにはルーズボールを齋藤に拾われて名古屋の速攻が発動。東京の戻りが遅れて万事休すかと思われたが、あまりに余裕がありすぎたか、齋藤のラストパスがミスとなり、スタンドからはこの日一番の大きな嘆息が響いた。そしてタイムアップのホイッスル。注目の上位対決は0-0のスコアレスドロー。東京の守備が持ちこたえ、名古屋の開幕からの連勝は「6」でストップとなった。

試合内容を考えれば、ただの勝点「1」以上の価値があるゲームだったのではないだろうか。とにかく守備が良く踏ん張った。リーグ戦6試合を消化して全ての試合で失点を喫していたが、今季初めてリーグ戦での無失点を達成。時計が進めば進むほど名古屋の攻撃が厚みを増してきたが、集中を切らさずに守り切ることができた。前半の早い時間で帆高がアクシデントに見舞われ、拓海を急遽起用せざるを得なくなったものの、終わってみれば右サイドで決定的な破綻をきたすことは無かった。ドリブラーの多い名古屋の攻撃陣だが、あまり小細工せずに直線的に仕掛けてくる場面が多かったこともあり、しっかりボールにアプローチすれば防げた場面が多かった印象だ。高い位置からのプレスも試合を通して効果的だった。後半は名古屋が選手交代でギアを入れてきたが、永井と安部の投入が的確だった。しっかり前からプレスをかけてくれる永井、そして中盤でハンターの役割を担い、ボールを奪えばリンクマンとして機能してくれる安部のおかげで、一時的ではあったが相当試合運びは楽になった。試合終盤は押し込まれたが、慌てずに対応できていたし、こぼれ球への対応も明確。稲垣などのシューターにもしっかりケアが出来ていた。先週のルヴァンカップの試合を無失点で抑えた良い流れを今日の試合にも持ち込むことができたように思う。これは今後の試合にも繋がるだろう。攻撃に関しては、前半立ち上がりに迎えたチャンスがこの試合唯一にして最大の決定機だった。アダイウトンとディエゴは個の力で何度か打開を試みていたし、先週の試合に続きスタメンでピッチに立った岡崎も縦のボールを何度かつけてくれてはいた。しかし、名古屋も中盤で米本、最終ラインで丸山と、古巣対決となった相手プレイヤーの守備が効いていて、得点はおろかチャンスといえる場面を作ることにすら難儀した。このような難しい試合を勝ち切るには、チャンスは一発で仕留めなければならないということだろう。勝てない試合でなかった分、当然悔しさはあるが、今日に関してはアウェイということもあり、負けずに最低限の勝点「1」を持ち帰れたことは前向きに捉えて良いと思う。個人的にも緊迫した攻防を観ることができたし、チケットを押さえて新幹線に乗ってきた甲斐のあるアウェイ観戦だった。次は中3日でホームに戻っての札幌戦、そして更に中3日で川崎戦と連戦が続く。怪我となった帆高の状態は気になるが、まずは次節の勝利に全力注入してほしい。

名古屋グランパス 0 0前半0 0 FC東京
0後半0
得点

GK 1ランゲラック GK 1児玉 剛
DF 6宮原 和也 DF 37中村 帆高
4中谷 進之介 4渡辺 剛
3丸山 祐市 29岡崎 慎
23吉田 豊 6小川 諒也
MF 15稲垣 祥 MF 3森重 真人
2米本 拓司 7三田 啓貴
25前田 直輝 10東 慶悟
10ガブリエル シャビエル FW 27田川 亨介
16マテウス 9ディエゴ オリヴェイラ
FW 8柿谷 曜一朗 15アダイウトン

GK 21武田 洋平 GK 13波多野 豪
FP 5長澤 和輝 FP 2アルトゥール シルバ
9山﨑 凌吾 11永井 謙佑
11相馬 勇紀 14内田 宅哉
14木本 恭生 22中村 拓海
17森下 龍矢 25蓮川 壮大
19齋藤 学 31安部 柊斗

マッシモ フィッカデンティ 長谷川 健太

交代22'中村 帆高
中村 拓海
吉田 豊49'警告
前田 直輝57'交代
齋藤 学
ガブリエル シャビエル
相馬 勇紀
交代63'田川 亨介
永井 謙佑
三田 啓貴
安部 柊斗
柿谷 曜一朗78'交代
山﨑 凌吾
米本 拓司
木本 恭生
警告81'渡辺 剛
交代82'東 慶悟
内田 宅哉
マテウス86'交代
長澤 和輝
木本 恭生90+5'警告

西村 雄一

15,035人