水曜日に行われたルヴァンカップのホーム開幕節から中2日、リーグ戦のホーム開幕を迎えた。デーゲームでの開催となるが、天候も快晴に恵まれ、気温も20℃を超える暖かいコンディション。観る側にとっては絶好の観戦日和であり、いよいよ本格的にシーズンが始まるなという気持ちになる。緊急事態宣言中に伴い5,000人の観客上限が設定されている中ではあるが、チケットは早々に完売。上限近い4,768人の観客が味スタに駆け付けた。クラブの営業面を考えればもっと多くのファンに来場してほしいのが本音だろう。3/7で解除されるはずだった緊急事態宣言が2週間延長されることになり我慢の時期は続きそうだが、ファンの立場としては、少しでも早く平時の観戦環境が戻るように粛々と感染対策を続けるしかない。ルヴァンカップでは勝利スタートとなった東京だが、リーグ戦の開幕節は浦和と1-1で引き分けており、まずはリーグ戦での初勝利が欲しいところ。迎える相手は、水曜日にもリーグ戦を戦って既に2試合を消化しているC大阪だ。開幕戦では2-0で柏を下し、水曜日の試合では昨季王者の川崎を相手に2-3の接戦を演じている。今季からC大阪で8年ぶり4度目の指揮となるクルピ監督には、過去の対戦で何度も煮え湯を飲まされてきた印象があり、侮れない相手だ。東京のスタメンは先週末の浦和戦とほぼ同様となったが、ルヴァンカップで決勝点を挙げた田川がスタメンを獲得。C大阪は開幕2試合で3得点と絶好調の大久保が今日もスタメンだ。
スタートの並びを見ると、東がアンカー、アルトゥールがその前のインサイドの立ち位置。浦和との開幕戦とは逆の配置だ。その試合で相手のアグレッシブな守備に苦しみ、ゲームの組み立てに苦慮したことを踏まえての対応だろう。このポジション変更が「化学反応」を生むかどうか期待をしながらの立ち上がりだが、残念ながらそう甘くはいかない。14分、C大阪は右サイドから切れ込んだ坂本が速い浮き球のクロスをPA内に送り込む。触れても触れなくてもそのままゴールマウスに向かってくる難しいボールに、帆高の死角から前に抜け出た大久保が頭でコースを変える。これに波多野が反応しきれず0-1。大久保の開幕3戦連続となるゴールでアウェイチームが先手を奪う。リードを許した東京も反撃に出たいところだが、飲水タイムでの仕切り直しなどを挟んでも、C大阪の厳しいボールへのアプローチもあってビルドアップがなかなか上手くいかず。東をアンカーに据えた効果が出ているようには見えない内容のまま前半を終える。1点差ながら閉塞感の漂う中のHT明け、東京はオマリを最終ラインに投入し、森重がアンカーに移動。昨季終盤でもよく見られた形だ。するとこれで試合内容が一変する。周囲へのボール配給だけでなく、積極的に高い位置でもボールに絡む森重の働きによって、全体を押し上げることに成功した東京が主導権を奪回。54分、C大阪は東京のハイプレスに対して西尾がバックパスをすると、GKの金鎭鉉がよもやのトラップミス。猛然とプレスをかけていた田川がこぼれたボールを押し込み、1-1の同点。相手のミスを誘発した東京がタイスコアに戻す。58分、C大阪は大久保が右サイドのハーフスペースまで切れ込み、中央へ戻したボールを原川がダイレクトでゴール左隅に叩き込み1-2。C大阪がすかさず勝ち越しに成功するが、東京は攻撃の手を緩めない。69分、ドリブルで中央へボールを運んだ安部がファウルを誘ってゴール正面で直接FKを獲得すると、レアンドロが得意の右足でゴール右隅に沈め、再び2-2の同点。その後も東京が攻め続け、83分には速攻からアダイウトンの折り返しを永井のヘディング、更にこぼれ球をレアンドロがプッシュするが、いずれも見事な守備で防がれてしまう。しかし同点どまりかと思われた後半AT、左サイドを1人で崩したアダイウトンが得た直接FKをレアンドロが蹴ると、ニアで森重が頭でコースを変え、これが決まって3-2。土壇場で東京が逆転に成功した。そして試合終了のホイッスル。勝った・・・。歓喜と安堵の入り混じった大きな息をつき、肩の力が抜けていくのを感じていた。
2度にわたってリードを許す苦しい内容だっただけに、価値のあるリーグ戦1勝目といえるのではないか。前半はとにかく課題だけが浮き彫りになる内容だった。東のアンカー起用という試み自体を責めるつもりはないが、それが機能しなかったことは厳粛に受け止める必要があるだろう。相手のプレスが厳しく、なかなか仕事をやらせてもらえない内容は、前節の浦和戦と同じ。そのまま相手に中盤を支配され、先制点を許してしまった。C大阪はリーグ開幕から2試合連続で右サイドを起点に大久保が得点を奪っており、坂本・松田の右サイドユニットと、ゴール前の大久保との連携がストロングポイントであるのは明らかだったが、そのホットラインを今日も開通させてしまった。後半の原川の勝ち越し点の場面でも、大久保には右サイドから起点となるボールを入れさせてしまっている。昨季J2でも出場機会が無く、現役引退の可能性もあったという大久保のカムバックには敬意を払いたいが、相手の狙い通りにやらせてしまったことは反省材料だ。ただ、後半からの森重のアンカー起用は的確だった。中盤の底を1人で支えることになるため、ポジションを捨てることには相応のリスクが伴うところだが、それを厭わずに数多くのビルドアップの場面に顔を出し、主導権奪回に大きく貢献していた。田川はルヴァンカップとの2試合連続で相手のミスに付け込んでの得点。形はどうあれ、FWは点を獲るのが仕事であり、逆転勝利の立役者になってくれた。終盤はC大阪の粘り強い守備に跳ね返されながらも、セットプレイから2得点。いずれもレアンドロのFKによってもたらされたもので、今季も困った時の武器として彼の右足に頼る場面が多くなりそうだ。途中交代も含めた選手起用が的確だったことは間違いないが、他方で、森重のアンカー起用は「ジョーカー的要素」のある采配だと個人的には思う。手薄なポジションであるだけに、新加入の青木や、若手選手の台頭を期待したいところだが、まだ森重の起用の方が計算できるということなのだろう。DFと比べて消耗の激しいポジションなだけに、森重以外の選手も含め、誰をどの程度起用していくか注目して観ていきたい。次節は中3日で神戸とのホーム連戦。シーズン序盤のスタートダッシュを成功させるためにも、今日の勢いを持続して臨んでほしい。