2021年シーズンのJリーグは2月末に開幕。昨季にルヴァンカップを制した東京にとっては、長谷川監督4年目の指揮となるシーズンが始まった。悲願のJ1リーグ制覇に向けて補強も行った東京ではあるが、シーズンオフが短かったこともあり、外国籍選手を中心にややコンディション調整に遅れも出ている様子。2/27に行われた開幕節では、アウェイで浦和との一戦を行い、1-1のドロー。後半にセットプレイで先制を許す展開の中、東京も三田のFKに森重が合わせて追いついての勝点「1」確保となっている。そのリーグ初戦から中3日を置いてルヴァンカップが開幕。東京はホームに今季昇格組の徳島を迎えての試合となった。リーグ戦よりも前にカップ戦でホーム開幕を迎えてしまうのは違和感もあるが、昨年から1年延期となっているオリンピックの開催日程にも配慮する必要があり、致し方ないのかもしれない。昨年末から新型コロナウイルスの感染者数が急増した影響により、東京都は1月から緊急事態宣言が再発令。観客数は5,000人の上限が定められており、ビジター席の設置も見送られ、試合開始も19時から1時間前倒しの18時に変更。どうにか仕事を早めに切り上げ、試合開始に間に合った。平時のサッカー観戦に戻るまでにはまだまだ時間がかかりそうだが、まずは味スタで変わらず試合を観られることに感謝しなければならない。東京は先週末のリーグ戦からスタメン11人全員を入れ替え。新戦力の中では大卒ルーキーの蓮川、浦和から獲得した青木がピッチに立つ。対戦相手の徳島も、開幕節の大分戦(A)からスタメン11人全員を入れ替え。今季から招聘されたポヤトス新監督が感染症対策のための措置により未だ来日できておらず、甲本ヘッドコーチが暫定的にチームの指揮をとっている。
試合は静かな立ち上がり。アウェイの徳島はオーソドックスな4-4-2の布陣。自陣にブロックを構築しつつ2トップの佐藤と河田へ長いボールを入れてくる、リスクを冒さない戦い方だ。東京はアグレッシブな守備を見せてボールを確実に刈り取っていくが、いざ攻撃となると、なかなかスイッチが入らない状況。決定機の生まれないまま前半の飲水タイムを挟み、時計が進んでいく。35分、東京は三田のFKがゴール前で空中に跳ね返ったところに蓮川が詰めてヘディングシュートを放つものの、これはクロスバーに弾かれて得点ならず。結局、前半のチャンスといえるチャンスはこの場面だけだった。前半の終盤には徳島も少しずつ前に出てきてチャンスを窺うが、スコアに動きはなくハーフタイムとなる。徳島は後半の頭から交代カードを2枚切り、4-2-3-1にシステム変更。渡井がトップ下に入り、より攻撃で存在感を出しやすい位置どりとなる。48分、徳島は高い位置でボールを持った川上がドリブルで左サイドを深くまで切れ込み、グラウンダーの速いクロスをゴール前で河田がダイレクトで合わせる決定機を迎えるが、これはGKの児玉が足でセーブしてゴールを割らせず。東京は九死に一生を得た形だ。このチャンス以降、ゲームにスピード感が生まれ、東京が徐々に徳島の陣内へ繰り返し攻め込む展開となる。59分、東京は右サイドでボールを受けた永井がスピードのあるクロスを中へ入れると、ファーサイドで待っていた徳島DFのクリアミスがゴール正面にこぼれる。そこに詰めていた田川がすかさずダイレクトでシュートを叩き込み1-0。相手のミスによるチャンスだったとはいえ、攻め込む時間帯で東京がリードを奪った。この後、東京はアダイウトンと髙萩を順次投入してシステムを4-2-3-1に変更。ボランチの枚数を増やしてスペースを埋め、堅守速攻の態勢を整える。徳島も杉森や垣田の投入で前線の顔ぶれを変更し、流れを変えようと試みるが、85分に杉本が左サイドで入れ替わってドリブルで切れ込んだチャンスの場面も、シュートは弱く決定機とはならず。残りの時間を手堅く守り切った東京が1-0のまま逃げ切りに成功。カップ戦初戦、そして今季味スタでの最初のゲームを無事に勝利で飾った。
東京にとってまだまだ本調子とは言い難い低調な内容ではあったが、それでも最低限の結果だけは出したというゲームだった。リーグ戦からメンバーを入れ替えての試合だったため、同じクオリティを求めるのは難しいのかもしれないが、守備から攻撃へのスイッチがなかなか入れられず、徳島の守備を前になかなか手を出せない時間が続いた。今季J1二度目の挑戦となる徳島は、トッププライオリティではないと思われるカップ戦ながら、しっかりした守備を構築していた。攻撃はFWにボールを預けるシンプルな形だったが、アウェイの状況ならば妥当な戦い方だし、後半のシステム変更でトップ下にポジションを移した渡井や、左サイドの川上、後半から投入の鈴木の縦への仕掛けなど、特徴のある選手を並べていて興味深かった。ゲームの転換点となったのは、後半開始直後の徳島の決定機だった。サイドを深く抉られてフィニッシュに持ち込まれた場面だったが、これを児玉が防いだことで東京に流れが来た。55分あたりからは高い位置でセカンドボールを拾い、攻撃の手数が増えてきた。この時間帯で1点を取りきれたことが最大の勝因だろう。田川のゴールシーンは完全に相手のミスによるプレゼントされたチャンスではあったが、それだけ徳島の守備を追い詰めていたことの証明ともいえるし、ボールがこぼれた所に田川がしっかえい詰めていたことは評価すべき点だ。守備についても、1回決定機を与えてしまった点を除けば充分な出来といえるのではないか。トップチームで初スタメンとなった蓮川は全く不安を感じさせなかったし、前半にはセットプレイであわやゴールという場面も作った。アンカーの位置でスタメンとなった青木は、存在感は薄かったが黒子に徹して守備に貢献していたと思う。髙萩の投入でゲームを落ち着かせるベンチワークも的確だったし、カップ戦の初戦としては及第点の出来だったのではないだろうか。今週末にはリーグ戦のホーム初戦となるC大阪戦が控えている。まずはこの良い流れを継続していってほしい。