eigentlich

TOP > football > match notes(2021) > 川崎×G大阪(1.1)

2021.1.1 (金)
第100回 天皇杯 JFA 全日本サッカー選手権大会 決勝
川崎フロンターレ × ガンバ大阪
( 国立競技場,14:40 )

元日恒例、天皇杯決勝が今年もやってきた。今回は第100回という節目の大会になるが、何しろ新型コロナウイルスの感染拡大があったため、大会自体が大きく規模を縮小。特にJリーグからはJ1の上位2チームと、J2・J3優勝チームのみしか出場できなかった。ただ、日程面の制約がかなり多かった中で「元日決勝」だけは維持されたわけであり、それだけでも感謝せねばならない。対戦カードは、準決勝からの登場となったJ1上位2チーム、川崎とG大阪の顔合わせ。川崎はJ3・秋田から2-0、G大阪はJ2・徳島から2-0で共に勝利しての決勝進出となっている。J1リーグを圧倒的な成績で制覇した川崎にとってはクラブ史上初の天皇杯優勝&二冠達成がかかるだけでなく、今季限りで引退する中村憲剛の現役ラストゲームでもあるだけに、思い入れはかなり強そうだ。対するG大阪にとっても、リーグ戦の優勝は川崎との直接対決に大敗して目の前で優勝を決められているだけに、「やり返したい」という思いは強いだろう。昨年の天皇杯決勝以来、サッカーの公式戦としては2回目の稼働となる新国立競技場は13,318人という寂しい入りで、ぱっと見で空席が目立つ。新型コロナウイルスの感染再拡大の影響で政府からイベントの人数制限の要請がなされたことによりチケットの一般販売が中止となり、先行販売でチケットを購入できた人しか来場できなかったためだ。自分は幸い先行販売でチケットが当選していたため観戦することができる。改めて、1つ1つの試合の現場に立ち会えることに感謝しなければならないと感じる、2021年1本目の現地観戦だ。

試合はコイントスで選択権を得た川崎がコートチェンジしてキックオフ。西日が差し込む時間帯にGKが逆光になるのを嫌ったか。G大阪は宮本監督就任当初によくコートチェンジしていた時期があるので、むしろやりやすいかもしれない。そのG大阪は、宇佐美とパトリックの2トップで来るかと思いきや、宇佐美が左サイドに回って、倉田がパトリックの背後に立つ4-4-1-1の並び。守備時には右サイドの小野瀬が1列下りてDFラインに吸収され、5-4-1の並びに変わる変則システムだ。川崎の3トップ対策なのは明らかである。5分、宇佐美のドリブルでの仕掛けから得た直接FKを宇佐美自身が蹴り、パトリックが打点の高いヘディングでゴールネットを揺らすが、オフサイドの判定でゴールは取り消し。G大阪にとっては惜しい場面だが、セットプレイに賭ける狙いは間違っていない。しかし試合は徐々に川崎が押す展開になる。16分、ハイプレスからボールを奪ってからの三笘のフィニッシュは僅かにゴール右に外れるが、その後もプレスから素早く繋いでゴールに迫る形で川崎がチャンスを量産。G大阪は東口のセーブや枠外シュートなどに助けられ、命拾いする展開。結局0-0のまま前半終了。G大阪にとってはこれで後半に流れが来るのを祈りたいところだろう。しかし後半に入っても川崎は攻勢を緩めない。55分、川崎は右サイドを起点にして中央のレアンドロダミアンにボールを渡すと、左サイドから中央の動き出しを見せた三笘へ絶妙なスルーパスが通る。三笘がこれをゴール左隅に流し込んで1-0。川崎はなかなかゴールを奪えない展開だったが、ようやくG大阪のゴールをこじ開けることに成功する。なおも川崎は攻め手を緩めず、直後の58分には田中のFKを谷口が完璧なヘディングで合わせるが、東口がスーパーセーブで守り抜き、追加点は許さない。川崎は途中交代で小林や長谷川を投入する盤石の試合運びで時計を進め、G大阪はなかなか攻められない時間が続く。それでも83分、G大阪はゴール前へのラフな放り込みをGK・鄭成龍がファンブル。こぼれ球をパトリックが拾い、押し込もうとするが川崎もゴールライン上ギリギリでクリア。相手のミスのおかげで流れを掴んだG大阪が残された僅かな時間の猛攻でゴールをこじ開けようとするが、川崎がゴール前でしぶとく跳ね返し続け、1-0で試合終了。川崎は今季リーグ戦と天皇杯の「ダブル」を達成してシーズンを終えた。

スコアこそ1-0という僅差だが、試合内容を通しては川崎の強さを実感させられる決勝戦だった。G大阪の守備対策に対してアジャストするまでに多少の時間は要したものの、前半途中からは完全にゲームを支配。守備では前からプレスが連動してG大阪のパスコースを次々に寸断しミスを誘い、攻撃では速攻・遅攻共に崩す形を持っていた。家長・レアンドロ・三笘の3トップは個人での打開力もあるし、中盤の守田・田中・大島が絶えずサポートに入るため、延々と「川崎のターン」が続く展開。前半こそG大阪が0-0で持ちこたえ、後半に流れが変わる可能性もあったが、全く流れを渡さずに攻め続け、三笘の先制点に繋げてみせた。今季Jリーグの新人賞にも輝いた三笘のカットインは、5バックを敷いてスペースを埋めようとしていたG大阪の守備を翻弄。先制点の場面もレアンドロとの連携で中央を完全に崩しきっており、もはや川崎相手の対策など意味を成さないのではと思わせるほど、攻撃の質の高さを突き詰めた感のある場面だった。敗れたG大阪だが、山根の攻撃参加を牽制する意味での宇佐美を左サイド配置や、小野瀬をDFラインに加えた5バックでのスペースを埋める戦いで、前半は0-0で抑えている。試合終盤まで0-0で耐えていればワンチャンスはあり得たと思う。ただ、川崎の攻撃の精度がそれ以上だった。G大阪の5バック対策にしても、所詮は理屈にすぎず、マークの受け渡しの際にちょっとした隙は当然起こりうる。そして川崎はその隙を確実に突いていた。攻撃でも中盤の山本が何度か右サイドに大きく開いて局面打開を試みようとしたが、小野瀬のスタートポジションが低すぎるがゆえにボールに追いつけない場面が何度かあった。攻撃面の犠牲は承知の上だったと思うが、惜しまれる部分だ。終盤は川崎のミスも絡んでG大阪が押し込む時間が続いたが、川崎はシーズンを通して鉄壁の守備を築いたジェジエウ・谷口のCBコンビがゴールを割らせず。余裕のある展開ならば中村を投入する選択肢もあっただろう鬼木監督も、最後の交代カードに脇坂を選んでの撤収を選択した。試合後のインタビューによれば、同点にされて延長戦に突入した場合の「切り札」として、中村は使わなかったのだそう。現実には逃げ切りに成功したが、そこまで見越した采配には凄味を感じた。そんな盤石の強さを誇る川崎も、中村の引退に加えて守田に海外移籍の噂が出るなど、オフには人の動きがありそうだ。この川崎を止めるチームが現れるか。次のシーズンに期待したい。

川崎フロンターレ
J1
1 0前半0 0 ガンバ大阪
J1
1後半0
三笘 薫55'得点

GK 1鄭 成龍 GK 1東口 順昭
DF 13山根 視来 DF 27髙尾 瑠
4ジェジエウ 5三浦 弦太
5谷口 彰悟 19金 英權
30旗手 怜央 4藤春 廣輝
MF 6守田 英正 MF 8小野瀬 康介
25田中 碧 29山本 悠樹
10大島 僚太 21矢島 慎也
FW 41家長 昭博 33宇佐美 貴史
9レアンドロ ダミアン FW 10倉田 秋
18三笘 薫 18パトリック

GK 27丹野 研太 GK 16一森 純
FP 7車屋 紳太郎 FP 13菅沼 駿哉
8脇坂 泰斗 14福田 湧矢
11小林 悠 26奥野 耕平
14中村 憲剛 30塚元 大
16長谷川 竜也 34川﨑 修平
34山村 和也 39渡邉 千真

鬼木 達 宮本 恒靖

警告HTパトリック
三笘 薫55'得点
交代74'藤春 廣輝
福田 湧矢
山本 悠樹
渡邉 千真
三笘 薫79'交代
長谷川 竜也
レアンドロ ダミアン
小林 悠
交代80'小野瀬 康介
塚元 大
旗手 怜央86'交代
車屋 紳太郎
大島 僚太89'交代
脇坂 泰斗

木村 博之

13,318人