eigentlich

TOP > football > match notes(2020) > 東京×神戸(12.19)

2020.12.19 (土)
2020 明治安田生命J1リーグ 第34節
FC東京 × ヴィッセル神戸
( 味の素スタジアム,14:00 )

ようやくというべきだろうか、今週末でJ1~J3の各カテゴリーはリーグ戦の最終節を迎えることになった。新型コロナウイルスの感染拡大による4ヶ月以上にわたるリーグ戦中断、大会方式変更、過密日程など、国内のあらゆるカテゴリーのクラブが何らかの影響を受けたであろうシーズンも、どうにかシーズン終了までこぎ着けようとしている。東京にとっても年内最後の公式戦であり、味スタには今季初めて10,000人を超える観客が来場。そのせいか、入場ゲートでは検温にかなり時間を要していた様子で、バックスタンド側ゲートに至ってはスタジアムを半周しそうな勢いで列を成していた。自分は来場時に応援グッズを身に着けないし、来場者特典も不要な人種なので、ガラガラのビジターゲートからサクッと入場したが、ここは来季以降の運営の課題になりそうだ。今節東京がホーム最終戦に迎えるのは、ACL準決勝で敗退し、帰国したばかりの12位・神戸である。残念ながら日本勢のACL制覇はならなかったものの、東京よりも更に1週間長くカタールに残り、戦い続けた神戸の選手たちには、対戦相手とはいえ素直に敬意を表したい。東京と同じく、帰国後にアスリートトラックの特例措置を受けている神戸だが、今節はACL準々決勝で負傷してしまったイニエスタを筆頭に外国人選手は帯同せず、日本人選手のみで最終戦に臨む。一方、現在6位の東京は、ACLでも採用していた森重をアンカーに据える4-1-2-3でスタートするようだ。およそ2週間後の1/4にはルヴァンカップ決勝が控えており、最後の実戦調整の場としても重要な試合である。

前半の入りはアウェイの神戸が攻勢。立ち上がりからボールを支配し、前がかりに人数をかけて攻め込み、5分にはドリブルで持ち込んだ小川が強烈なミドルシュートを放つなどチャンスを作る。東京は紺野とアダイウトンが自陣まで戻ってきて4-5-1で幅を広くとって守備。9分には安部のドリブルでの持ち上がりから得たチャンスで流れを引き寄せ、その後は一進一退の攻防。27分、東京は右CKの流れから紺野が入れたクロスにニアのオマリが頭でコースを変えるが、クロスバーに当たりゴールラインを僅かに超えてバウンドしたボールはゴールが認められず。もしVARが存在していたら、認められていた可能性のある際どい場面だった。その後は東京も両ウイングが高めのポジションをとれるようになるが、相手陣内を押し込むまでは至らず前半終了。後半、東京は紺野をベンチに下げ、トップ下に髙萩を投入。安部が1列下がって森重とほぼ横並びの4-2-3-1となる。開始早々に永井がアダイウトンとのパス交換でシュートに持ち込むチャンスを作るが、神戸もカウンターのチャンスを狙っており、油断ができない。その後も64分に永井、67分にCKからオマリが再びシュートチャンスを得るが、いずれも神戸が良く守ってゴールならず。神戸も61分に古橋、67分に藤本と前線の選手を投入する。68分には古橋が波多野の頭上を超えるロングシュートを放ち、これがクロスバーを直撃。東京にとっては命拾いした場面だった。飲水タイム明けに東京が3枚替えを敢行すると、試合は徐々に縦のスピードが速くなるオープンな展開。ミスをした方が失点して負けるという、綱渡りのような緊張感のある攻防が続く。スコアレスも視野に入り始めた85分、東京は左サイドで得たFKを途中出場の三田が蹴ると、これをニアの永井が頭でコースを変え、更にオマリがフリックしたボールがループシュートのような弾道となってゴールのファーサイドに決まり1-0。終盤に東京がセットプレイで均衡を破る。この日セットプレイで再三チャンスに絡んでいたオマリは、昨季に所属した古巣を相手に「恩返し弾」だ。ATも含めた残りの時間は東京が無難に守り切り、試合終了。東京がホームでの連戦で2連勝を飾り、勝点「57」で6位フィニッシュ。神戸はACL遠征前から続いていた連敗を止められず、勝点「36」の14位で終えることとなったが、シーズンを乗り切った選手たちにはサポーターから拍手が贈られていた。

長いシーズンを戦ってきて蓄積した疲労を隠せない内容ではあったが、それでも勝てたことに意味のある試合だったのではないか。試合の入りに神戸の方がアグレッシブな姿勢を見せてきて、受け身に立つ時間帯もあったが、持ち味の速攻を見せることはできていた。後半に神戸が攻撃的な選手を入れてきて、再び守勢に回ることになってしまったが、そこで耐えたことで終盤の決勝点に繋がったと思う。殊勲の決勝点を挙げたのは、1月に神戸から獲得したオマリだった。シーズンスタート時は「ACL要員」という感じの存在だったオマリだが、日程の大幅な見直しが入ったことで森重と渡辺の2人だけではCBが回らなくなり、結果として出番が増え、チームに大きく貢献してくれた。昨季の神戸在籍時にはアウェイでの試合でオマリにセットプレイから1点決められており、空中戦に強いイメージが残っている東京ファンは多いと思うが、今日のパフォーマンスはまさにイメージどおりだった。ACLから採用した森重をアンカーに置くシステムについては、個人的には評価は保留。攻撃時に森重の視野の広さを生かせるのはプラス要素だが、守備への切り替えのスピードで対応できない局面が出てくるように感じるからだ。今日に関しては、4-2-3-1にシステム変更をして、安部がサポートしやすくなったことで、後半のオープンな展開にも対応できたと思う。今季から採用した4-1-2-3のシステムは、橋本の海外移籍もあり、アンカー役を固定できなかったことが少なからず成績に影響した。来季以降も4-1-2-3を継続するのならば、まずアンカーを固定するのが先決であり、戦力補強も視野に入れるべきだろう。今日に関しては、ひとまず勝てて良かった。押さえるべきところを押さえて最少得点で逃げ切ることで、「東京はこうやって勝つ」というのを最終戦で示すことができたのは来季に繋がるはずだ。最終勝点も「57」を積み上げており、昨季の勝点が「64」だったことを考えれば、一歩後退したとはいえ充分合格点といえる数字だ。今季の残り試合は、ルヴァンカップ決勝のみ。これだけ頑張って1年を戦ってきたのだし、最後はもうひと踏ん張りして、「タイトル」という目に見える結果を残して終わりたい。試合後のセレモニーで長谷川監督も決勝への決意を語っていたが、最高の準備をして決戦に臨んでほしい。

FC東京 1 0前半0 0 ヴィッセル神戸
1後半0
ジョアン オマリ85'得点

GK 13波多野 豪 GK 1前川 黛也
DF 22中村 拓海 DF 23山川 哲史
4渡辺 剛 17菊池 流帆
32ジョアン オマリ 25大﨑 玲央
6小川 諒也 24酒井 高徳
MF 3森重 真人 MF 5山口 蛍
10東 慶悟 27郷家 友太
31安部 柊斗 14安井 拓也
FW 38紺野 和也 FW 13小川 慶治朗
11永井 謙佑 21田中 順也
15アダイウトン 41小田 裕太郎

GK 1児玉 剛 GK 28吉丸 絢梓
FP 7三田 啓貴 FP 9藤本 憲明
8髙萩 洋次郎 11古橋 亨梧
24原 大智 19初瀬 亮
28内田 宅哉 31中坂 勇哉
37中村 帆高 38佐々木 大樹
44品田 愛斗 44藤谷 壮

長谷川 健太 三浦 淳寛

紺野 和也HT交代
髙萩 洋次郎
交代61'小川 慶治朗
佐々木 大樹
小田 裕太郎
古橋 亨梧
警告62'酒井 高徳
交代67'田中 順也
藤本 憲明
東 慶悟70'交代
三田 啓貴
中村 拓海
中村 帆高
アダイウトン
原 大智
交代75'安井 拓也
中坂 勇哉
警告81'菊池 流帆
ジョアン オマリ85'得点
永井 謙佑90'交代
内田 宅哉

荒木 友輔

14,373人