この週末の現地観戦の予定はなかなか決まっていなかったのだが、12/2(水)のJ2の試合で首位の徳島が勝利し、3位の長崎が敗戦するという結果が揃い、徳島がJ1昇格に王手。その徳島が日曜日に水戸とのアウェイ戦を迎えることから、首都圏内ならばと足を伸ばして水戸へ行くことに決めた。新型コロナウイルスの第3波と騒がれる感染再拡大の影響もあってか、日暮里から乗車した常磐線下りの車内は週末らしからぬ空きっぷり。今回は初めて赤塚からシャトルバスを利用したが、道路混雑にもそれほど巻き込まれなかった。ケーズデンキスタジアムには2011年の天皇杯で訪れて以来、9年ぶりの訪問である。今節の注目カードということもあり、観客数は3,325人。あまり大した数ではないように見えるが、中断期間明け以降の水戸ホームでは最多の入りだ。制限下の開催にしてはなかなか入った方ではないかと思う。改めて状況を整理しておくと、今節、徳島は勝てば文句なしでJ1昇格決定。引き分け以下でも、3位・長崎の結果次第でやはりJ1昇格が決まるという状況だ。一方の水戸は勝点「52」で12位と中位につけている。昨年はシーズン序盤に一時首位に立つ時期もあった水戸だが、今季は監督も代わり、主力選手の流出もあって、昇格争いに絡めないままシーズン終盤を迎えている。ただ、今節だけはホームチームの意地にかけてなんとしても目前での昇格決定を阻止したいはずだ。
前半、最初に仕掛けてきたのはアウェイの徳島。開始早々の5分、岩尾のロングパスを受けた右サイドの岸本がドリブルでカットインを仕掛け、放ったシュートがゴールポストを直撃。いきなりのビッグチャンスを作ってくる。この場面はサイドバックの岸本によるチャンスメイクだったが、徳島は浜下と西谷の両サイドアタッカーが積極的に中へ仕掛ける姿勢を見せ、この試合で一気に昇格を決めてしまいたいという気持ちがよく伝わってくる立ち上がりだ。ただ、ここであっさり失点しなかったことが逆に水戸に落ち着きを与えたか、その後は水戸が高い位置から効果的なプレスをかけるようになり、流れが変わっていく。27分には水戸の中盤でのパスカットから中山のスルーパスに山田が抜け出し、GKと1vs1の決定機。しかしコントロールして狙ったシュートは僅かにゴールの左を外れてしまい、こちらもチャンスを生かせない。その後も水戸が押し気味に試合を進めるが、無得点のまま前半を終了する。後半、徳島はHT前に負傷した様子の渡井を下げて佐藤を投入。システムも4-2-3-1から4-4-2に変更する。後半の立ち上がりはこの2トップを目がけたクロスが何本か入っていた徳島だが、すぐさま水戸が主導権を奪回。すると62分、ゴールに向かって左寄りの角度で得た直接FKを、平塚が左足でニアハイに決めて1-0。アウトサイドから枠内に入ってくる弾道に上福元も反応したが、僅かに触れるのが精一杯だった。CKも含めてセットプレイが続いていた水戸にとっては、願ったり叶ったりの先制点である。徳島もすぐさま反撃。67分、岩尾のフィードに抜け出した垣田をンドカがPA内のスライディングで倒してしまい、PKの判定。このPKを垣田自身が蹴るが、右を狙ったシュートをGK・牲川が見事にセーブ。水戸が絶体絶命のピンチを切り抜ける。こうなれば残りの時間は「撤収」するだけだ。5-4-1にシステム変更した水戸に対し、徳島も前線に河田を投入するなどテコ入れを図ったものの、水戸の鉄壁のブロックを押し込めず、後半ATのパワープレイから鈴木のシュートのリフレクションがポストを叩くなど、運も味方しなかった。このまま試合終了のホイッスルが吹かれ、ホーム側のスタンドは総立ちの拍手に。他会場では3位の長崎も勝利したため、徳島の今節でのJ1昇格は決まらず。悔しさを押し殺して挨拶に向かう徳島の選手たちに対し、サポーターからは激励の拍手が起きていた。
とにかく、水戸の試合運びの素晴らしさが際立つゲームだった。徳島がどんなサッカーをやってくるかは充分理解していたと思うが、その上で前からプレスをかけに行って安易に繋がせず。前半立ち上がりの時間帯こそ主導権を握られたが、それ以降は終盤のパワープレーを許した時間以外、ほとんど完璧に立ち回った。前線に中山という分かりやすいターゲットを置き、そこにボールを収めることができたていたし、収めきれずにボールを奪われても攻守の切り替えが早く、安易に徳島に流れを渡すことがなかった。セットプレイとはいえ、ちゃんと押し込んでいる時間帯に先制点を取れたのも大きかった。直接FKを決めたボランチの平塚は札幌大学卒業のプロ2年目で、今季になってから出番を増やしている選手。失礼ながら全く初見の選手だったが、強烈なインパクトを残した。先制後の水戸は早いうちにシステム変更で撤退戦に切り替え、これも完遂。PKこそ与えたものの、牲川がよく止めたし、結果的には秋葉監督の判断が吉と出た。敗れた徳島は、フィクサー的な役割を果たしていた渡井がアクシデントで交代を余儀なくされたのが痛かった。後半は2トップに切り替えてゴール前の場面を増やそうとしているように見えたが、住吉・ンドカのフィジカル自慢のCBコンビ相手では少し折り合いが悪かった。今季得点源として活躍している垣田のPK失敗も含め、アンラッキーな要素も含んだ敗戦だったのかなと思う。徳島は次節からホームで千葉・大宮との連戦があり、ここで1つでも勝てば昇格を決められる。優位な立場には変わりなく、ホームで決めるチャンスが出来たことをむしろプラスに捉えるべきだろう。最後に、これは個人的な話だが、水戸といえば2004年の川崎・大宮や、2009年の仙台・湘南など、対戦相手の昇格を見送っているイメージが未だ根強く残っていて、今回もそうなるのかなという「邪念」は少なからず心にあった。だが、今日の水戸は「昇格決定絶対阻止」というのを大きなモチベーションにして結果に代えてみせた。もはや「おくり水戸」という愛称は過去のものなのかもしれないな、と感銘を受けた次第である。消化試合も多くなるシーズン終盤にあって、白熱した試合を見られたのは幸せなことだ。わざわざ水戸まで足を運んで良かった。シャトルバスで水戸市街地まで戻り、少しだけ散歩をして街並みを楽しんでから、大満足で品川行の『ひたち』に乗り込んだ。