この週末は、熾烈な昇格争いが続くJ3を観に行く。比較的近場にありながら、なかなか観戦するタイミングが無かった相模原のホームゲームだ。もう師走が近づいている中、キックオフは17時と比較的遅い時間。防寒対策をしっかり整えて現地に向かう。相模大野からの路線バスはたまに時間が読めず、一度痛い目に遭ったことがあるので、それ以来ここに行くときは専ら相模線の原当麻から徒歩だ。薄暮の中、ちょっとしたハイキングに近い気分で麻溝公園までの急坂を登り、ギオンスタジアムに到着。気温は僅かに10℃を上回ったようだが、日没後の試合に加え、風が強めに吹いていたこともあり、体感的には「極寒」そのものだ。防寒装備をしてきたのは大正解である。現在、J3は首位の秋田がJ2昇格とJ3優勝を確定させており、残り5試合でJ2昇格の残り1枠を争う形になっている。そして、その1枠に現時点で最も近いのが、勝点「50」で2位につける相模原だ。相模原は第15節の熊本戦(A)を最後に負けが無く、現時点で14試合連続負けなし。前節のアウェイ・鹿児島戦では、試合終盤まで0-0のまま進んだものの、後半ATに先制点を奪い1-0の勝利。チームの雰囲気は間違いなく良いはずだ。一方の対戦相手は、勝点「47」で6位の鳥取。こちらも相模原を勝点「3」差で追っており、まだ充分に昇格の可能性を残しているが、前節はホームで八戸に1-2と敗戦。しかも退場者を出して敗れており、良い流れが途切れてしまったところでこの重要な一戦を迎えている。鳥取よりは相模原の方にやや心理的余裕がありそうなシチュエーションだが、どうなるだろうか。
試合はコイントスで選択権を得た鳥取がコートチェンジを選択。風の影響を考慮したのかもしれないが、両チームを取り巻く状況を考えれば、少しでも相手の嫌がることをしたいという狙いもありそうだ。ただ、好調の相模原は揺さぶりに全く動じない。立ち上がりからハーフコートゲームに近い猛攻を仕掛け、早くもゲームを支配する。7分のスローインから清原がボレーで合わせた場面を皮切りに、14分に梅井のポストプレイからホムロのシュート、34分に星のカットインからのシュートなどゴールを度々脅かすが、これらのピンチはGK・田尻がどうにかストップ。鳥取はFWの田口まで自陣に戻ってきて守備に参加するなど、徹底防戦が続く。それでも36分、相模原は右サイドの才藤からのクロスを中央の和田が頭で合わせると、これがゴール右ポストに当たって決まり1-0。圧倒的に攻めながらゴールだけが無かった相模原にとって大きな先制点が入り、前半を終える。HT明け、鳥取は右サイドアタッカーの安藤を下げ、今季限りでの現役引退を表明している39歳のフェルナンジーニョを投入。同時にシステムを3-4-2-1へ変更する。この効果は分かりやすい形で表れた。3バックになったことで右SBから右WBにポジションを上げた小牧が高い位置から仕掛けられるようになり、54分にその小牧のクロスを田口が押し込んで1-1。鳥取にとっては起死回生の同点弾だ。相模原ベンチからは鳥取の3バックにプレスをかけるよう指示が飛ぶが、鳥取はそれを上手くかわして攻勢。しかし肝心のフィニッシュに持ち込めず、相模原が持ちこたえながら時計が進む。しばらく膠着状態が続いて迎えた77分、相模原が左サイドを攻め、ハーフスペースまで侵入したホムロがマイナスの折り返し。エリア外に流れかけたところを才藤が落とすと、そこで待っていた梅鉢がミドルシュートを叩き込んで2-1。更に79分、鳥取の自陣での横パスをホムロがカットしてドリブルで持ち込むと、冷静にシュートを右隅に流し込んで3-1。試合終盤に次々と加点し、リードを2点に広げることに成功した。負けられない鳥取はここから猛攻を開始し、後半ATにはゴール前の混戦のこぼれ球を三沢がミドルシュートで押し込んで1点差に詰め寄るが、反撃としてはあまりに時間が遅すぎた。ほどなくして試合終了のホイッスル。相模原が3-2で鳥取を破り、勝点を「53」に伸ばして昇格圏内の2位をキープすることに成功した。
結果的には、チームの勢いの差がそのまま出た試合だったように思う。相模原にとってはJ2昇格に向けて大きな勝利となった一方で、敗れた鳥取はこれで相模原との勝点差は「6」。残り試合数を考えれば、崖っぷちに追い込まれるクリティカルな敗戦と言わざるを得ない。ホームの相模原はこれでリーグ15戦負け無し。この勢いは本物といって間違いなさそうだ。前半立ち上がりからトップギアで鳥取の守備網に圧力をかけ、終始アグレッシブな姿勢でシュートを狙い続けた。しばらくはゴールを割れずにもどかしい時間が続いたものの、しっかり1点を奪って優位性を保つことができた。後半は鳥取のシステム変更もあって一時は追いつかれ、プレスがなかなか機能しない時間帯があったが、最終ラインが持ちこたえ、再び自分たちの時間帯が巡ってくるのを待ち続けたことで、勝ち越しのゴールが生まれたと思うし、直後には焦りの見えた鳥取のパス回しを見逃さずに奪って追加点。いずれの得点にも絡んだホムロの活躍が特に光った試合だったように思う。一方の鳥取は後半からのシステム変更が見事に的中しただけに、悔やまれる敗戦だ。正直、前半の戦い方は機能しているとは言い難いものだったが、むしろ「1失点で済んだ」と逆に前向きに捉えられるくらいの内容だった。そこから後半のシステム変更に踏み切り、一気に流れを奪い返した。前述したように両WBのポジションが上がったことで攻撃面でより関与できていたし、後半から入ったフェルナンジーニョも、今季で引退とは思えないような軽快な動きで攻撃にアクセントを加えていた。ただ、全体的にはゴール前での迫力に乏しく、自分たちの時間帯で逆転まで持っていけなかったのが終盤に尾を引いた。結果的にサイドの裏が空いてボールを入れられて勝ち越しを許してしまい、ミスからの失点も重なって一気に試合を決められてしまった。前節の敗戦によるメンタル的な影響がどの程度あったのかは選手たちにしか分からないが、少なくともチームの勢いの差が出た象徴的な場面だったのではないだろうか。鳥取のJ2昇格の可能性が完全に潰えたわけではないし、残り4試合で何が起こるかは誰にも分からない。ただ、シーズン後に両チームがリーグ戦を振り返った時、この試合が運命の分かれ目だったと言われる可能性は低くないような気がする。