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2020.11.22 (日)
2020 明治安田生命J1リーグ 第28節
浦和レッズ × ガンバ大阪
( 埼玉スタジアム2002,16:00 )

11/18のリーグ戦を最後に、FC東京がACL遠征のため日本を離れたことで、当面の間はマイクラブの観戦予定が無い。ちょうど良い機会なので、今節は他所のJ1の試合を観に行くことに決定。都合をつけることのできる日曜に組まれていた唯一のJ1のカード、浦和×G大阪の試合を観戦することにした。遅まきながら今季初となる埼玉スタジアム訪問だが、新型コロナウイルスの影響もあり、いつも使っているシャトルバスの運行は無し。電車で浦和美園へ向かい、徒歩で現地到着。他のスタジアムと同様、座席間隔を空けてのチケット販売となっている埼玉スタジアムだが、下層席はもちろん、上層席にもそれなりに観客が入っていて、試合中に発表された観客数は20,288人。全国的にプロスポーツの観客動員が落ち込む中、この動員力はさすが浦和だなと思わされる。G大阪サポーターの陣取るビジター席も上段の方まで入っていた。なにせ、このゲームはかなり重要な意味合いを持っている。現在、勝点「72」で首位を独走する川崎が優勝に王手をかけている状況だが、昨日に行われた試合で川崎が大分に0-1と敗れ、優勝決定ならず。今節、勝点「58」で2位につけるG大阪が勝利すれば、優勝決定は次節に持ち越しとなる一方、引き分け以下ならばその時点で川崎の優勝決定ということになる。次節には川崎とG大阪の直接対決が予定されており、G大阪にとっては自力で一気に勝点差を「6」詰めるチャンスが目前にあるだけに、ここは勝負どころといえるだろう。そんなテンションの高い2位チームを迎える浦和は、現在勝点「45」の暫定8位と苦しんでいる。今季はタイトル奪回に向けたチーム再建の途中段階とはいえ、浦和サポーターからすれば少し納得しがたい順位かもしれない。ただ、チームを率いる大槻監督の紹介時にはスタンドから大きな拍手。「現場」に低迷の責は無いということなのだろう。

前半は浦和とG大阪のどちらにもチャンスがあり、ほぼ互角の内容。ゴール前まで攻め込むスピードの速さで、僅かに浦和が勝っている。26分、浦和は長澤のスルーパスに興梠が抜け出し、この試合最初のビッグチャンス。しかしこれは東口がセーブしてピンチを逃れる。一方のG大阪もセットプレイでチャンスメイク。40分に得た左CKは、ニアの競り合いで興梠の頭に当たったボールがファーサイドのゴールポストに跳ね返り、あわやオウンゴールという場面。続く43分に再び左CKの流れから宇佐美がハーフスペースの狭い角度から意表を突くパワーシュートを放つものの、西川が冷静に弾いてゴールを割らせず。互いにチャンスはあったが、0-0のまま前半を終える。後半開始早々の47分、浦和は高い位置でのボール奪取から長澤のロングシュートがクロスバーを直撃。55分にはレオナルドのシュートが僅かに枠の左に外れるなど、にわかにゴールの匂いが漂い始める。流れを握っている時間帯に1点が欲しいホームチームにとって待望の場面は62分に訪れる。セットプレイ崩れのセカンドチャンスを山中がゴール前に放り込むと、ファーサイドでフリーで待っていたデンが頭で折り返し、ゴール正面に詰めた槙野が押し込んで1-0。セットプレイの流れだからこそ実現可能な、CBコンビ2人の絡みで浦和がリードを奪う。勝利がマストという条件のG大阪にとって手痛い失点だ。しかし66分、G大阪は右サイドを押し込んで深さを作ってからゴール前にボールを入れると、小野瀬に代わって途中出場していた福田のシュートのこぼれ球を宇佐美が拾い、コンパクトに右足を振り抜くシュートでゴール左隅に流し込み1-1。先制を許してからものの数分でG大阪がタイスコアに戻す。これで再び息を吹き返したG大阪はルーズボールを支配する時間が続き、迎えた81分、山本の左CKをゴール正面の髙尾が頭で押し込み、終盤で1-2と逆転に成功。密集地帯で長身の昌子・パトリックが先に競り、髙尾がその背後で流れてくるのを待っていたのが奏功した形だ。逆転を許した浦和は後半ATに杉本がDFラインの背後を取って決定機を迎えるものの、丁寧に持ち直して放ったシュートを東口がキャッチしてゴールを許さず、試合終了。しぶとく逆転に持って行ったG大阪の勝利により、今日の川崎のリーグ優勝決定を阻止。優勝争いの行方は、3日後に等々力で行われる1位・2位の直接対決まで持ち越しとなった。

どちらが制しても全くおかしくない内容だったが、紙一重の差でG大阪が押し切った試合だった。勝たなければならない状況のG大阪は、前半からルーズボールを多く拾い、ボールの支配という点においては悪くない内容だった。しかし浦和も縦に速い攻撃で見せ場を作ることができており、どこかで潮目が変われば先制できそうな空気があった。実際、その変わり目はHTを挟んだ後半に訪れ、浦和がゴール前まで攻め込む場面が増加。セットプレイからの流れとはいえ、浦和が先制したのは当然の流れだったのではないかと思う。ただ、今日に関しては、そこからG大阪がすぐに1点を返して同点に追いついたのが大きかった。宇佐美の同点ゴールに繋がった攻撃は、人数をかけて右サイド深くまで侵入し、そこから中にボールを入れてこじ開けたもの。勝たなければならない試合で先制を許してしまい、焦りでロングボール一辺倒になってしまったり、ミスが増えたりする例は枚挙に暇がないが、今日のG大阪はそんな焦りを一切見せず、しかし確実にパス回しのギアを上げてサイドから崩しにかかった。同点にした後もボールを保持しながら左右の幅を使って浦和の陣内を攻め立て、最後はセットプレイで逆転。殊勲の1点を挙げた髙尾はこれがJ1初ゴールであり、重要な局面で大きな仕事をやってのけた。髙尾に限らず、途中出場で福田・川﨑・奥野・唐山といった若手選手を次々に投入しながら、握ったゲームの流れを手放さなかったのを見ると、G大阪の世代交代が着実に進んでいるのを実感させられる。中でも特筆すべきは、大卒1年目のルーキー・山本悠樹の存在感だ。終盤の攻勢の中で多くの局面に顔を出してボールを味方に繋ぐだけでなく、守備でも厳しくボールにアプローチできていた。関西学院大在学時にインカレの試合で一度観て、「この選手は只者ではないな」と思ったのがつい1年前の出来事だが、G大阪に入っていきなり、かつて遠藤や今野がやっていた仕事を淡々とこなしているのは驚きでしかない。改めて凄い選手が出てきたなと思う。結果としてはG大阪が勝利したことで、リーグの優勝決定は次節に持ち越し。今節敗れた川崎が試合日以外に優勝決定というのも決まり方としては微妙だし、直接対決で雌雄を決することになったのはこの上ないシナリオではないか。若い世代の台頭が著しいG大阪がどこまで川崎に食い下がれるか、次節が楽しみになる一戦だった。

浦和レッズ 1 0前半0 2 ガンバ大阪
1後半2
槙野 智章62'得点66'宇佐美 貴史
81'髙尾 瑠

GK 1西川 周作 GK 1東口 順昭
DF 27橋岡 大樹 DF 27髙尾 瑠
20トーマス デン 3昌子 源
5槙野 智章 19金 英權
6山中 亮輔 4藤春 廣輝
MF 11マルティノス MF 8小野瀬 康介
16青木 拓矢 29山本 悠樹
7長澤 和輝 21矢島 慎也
24汰木 康也 10倉田 秋
FW 30興梠 慎三 FW 18パトリック
45レオナルド 33宇佐美 貴史

GK 36鈴木 彩艶 GK 16一森 純
FP 3宇賀神 友弥 FP 13菅沼 駿哉
8エヴェルトン 14福田 湧矢
9武藤 雄樹 26奥野 耕平
14杉本 健勇 34川﨑 修平
31岩波 拓也 38唐山 翔自
39武富 孝介 39渡邉 千真

大槻 毅 宮本 恒靖

交代24'小野瀬 康介
福田 湧矢
槙野 智章62'得点
得点66'宇佐美 貴史
交代68'藤春 廣輝
川﨑 修平
レオナルド70'交代
武藤 雄樹
興梠 慎三
杉本 健勇
交代79'矢島 慎也
奥野 耕平
山中 亮輔79'宇佐美 貴史
宇賀神 友弥渡邉 千真
倉田 秋
唐山 翔自
得点81'髙尾 瑠
長澤 和輝85'交代
エヴェルトン
汰木 康也
武富 孝介

家本 政明

20,288人