全国地域サッカーチャンピオンズリーグは、11/6~8に行われた1次ラウンドを勝ち抜いた4チームによる決勝ラウンドが本日からスタート。昨年は福島県のJヴィレッジで行われた決勝ラウンドだが、今年は一昨年までと同様、千葉県市原市のゼットエーオリプリスタジアムでの開催だ。前日にプラスタ→ユアスタというハードなハシゴ観戦を日帰りで決行し、帰宅が午前様だった自分にとっては、2日連続で2試合観戦というタフな観戦日程。しかしいずれも楽しみにしていたカードであり、短時間睡眠での早起きも苦ではない。朝の通勤ラッシュに揺られながら五井へ。平日開催ということもあり、駅前は閑散。のんびり徒歩でスタジアムへ向かう。今年の決勝ラウンドは、新型コロナウイルス感染防止のため入場制限を設けての開催。各クラブ500人を上限として応援席を設置し、試合ごとに体調管理チェックシートを記入・提出のうえ、決められたエリアで観戦するという形式だ。まずは第1試合、Cグループを首位通過で勝ち上がってきた関西1部のFC TIAMO枚方と、Aグループの2位ながら、ワイルドカードで決勝ラウンド進出を決めた北海道十勝スカイアースの試合である。下野でのAグループ第1日で存分に楽しませてもらった立場の人間として、第1試合はやはり十勝の応援席を選択。第1試合の応援席は両チーム共にバックスタンドとなる。一部界隈で「神殿」とも称される臨海競技場のバックスタンドに座るのは実は初めてなのだが、陸上競技場の観客席としては非常にピッチが見やすくて良い感じだ。気持ち早めに来たつもりだったが、チェックシート記入などの手続きで時間が掛かったこともあり、着席して落ち着く間もなく選手入場。いよいよJFL昇格の2つのイスを賭けた勝負の決勝ラウンドが始まった。
試合は立ち上がりから枚方が押し込む展開。枚方は選手層が豪華で、特にセンターラインには元・東京Vのキローラン菜入、元・神戸の田中英雄、元・鹿島の野沢拓也、そして韓国代表経験のある曺永哲と、地域リーグでは規格外といえるラインナップだ。もちろん「経歴が試合をする」わけではないのだが、経験豊富な選手が中心なだけに、早々に中盤を支配して試合をコントロールする。十勝は1トップで先発の高瀬にボールを入れたいが序盤は思うように繋がらず、しかし最終ラインはどうにか耐えながら時間を進めていく。飲水タイム明けは少し十勝が盛り返す場面もあり、枚方はチャンスを掴みながらも1点をなかなか奪えない展開。このまま0-0でHTに入れば後半に流れが変わるかもしれない中で迎えた前半AT、枚方は右サイドでボールを受けた野沢のクロスをファーサイドで待っていた木田が頭で折り返し。この横の揺さぶりに十勝のDF陣が対応できず、最後はフリーでボールを受けた曺永哲が難なく押し込んで1-0。枚方にとっては「ようやく」という感じの先制点だ。十勝にとってはHTが目前に迫っていただけに、ここでDFが揺さぶられての失点は動揺が大きいかもしれない。HTを挟んで迎えた後半は開始直後こそ十勝が攻勢を見せるが、51分に十勝のCKのこぼれ球を回収した野沢を起点に枚方のカウンターが発動。パスを受けた木田の仕掛けから、最後はボールを引き取った佐藤が決めて2-0。鮮やかな速攻で枚方が十勝を突き放す。枚方は更に曺永哲の追加点でリードを広げ、やや余裕の出てきたところで飲水タイム明けに3枚替え。野沢・木田・曺永哲と、ここまで得点に絡んでいる3人を下げる。代わりに入るのは二川・岡本など、これまたJリーグでの実績がある強力なカードだ。十勝もサイドに黒川を投入して打開を試みるが、枚方の守備は全く動じない。逆に87分、枚方は二川のボールキープから岡本に繋ぎ、スルーパスに抜け出した途中出場の福森が流し込んで4-0。90分には十勝のGK・曵地のキックミスを佐藤がカットし、ラストパスを受けた福森が再び決めて5-0。終盤の十勝は少しメンタル的に切れてしまったような感じだった。結局、終わってみれば5点もの大差がついて試合終了。決勝ラウンドの大事な初戦をゴールラッシュで制した枚方が、悲願のJFL昇格に向けて大きな一歩を踏み出した。
スコアほど大きな実力の違いは感じなかったが、重要な時間帯をきっちり押さえてきた枚方が着実にゴールを重ね、結果的に大量得点が生まれた試合だった。前半は枚方が支配はしていたが、十勝もよく守っていた。下野での1次ラウンドでの成功体験もプラスに働いていたのではないかと思う。まずは前半を耐えることで、必ず自分たちの時間帯がやってくる―。そんな気持ちで戦えていたのではないかと推測するが、その目論見はHTの寸前で瓦解してしまった。枚方の先制点は、それまで中央でのプレーが多かった野沢がサイドに流れて上げたクロスに対して十勝が揺さぶられてしまったのが原因。この1点の重みは強力だった。後半に入り、前に出ていかざるを得なくなった十勝に対して、枚方はしっかりカウンターという2本目の矢を放ってきた。それが決まったのが51分という早い時間帯だったことで、十勝はますます焦りが出てしまったのではないか。前線の顔ぶれを代えて攻勢を緩めなかった枚方の交代策は、そんな十勝を手玉にとるパーフェクトな采配だった。現役引退から間もない身でありながら、チームを率いる小川佳純監督の流れの読み方が上手かったということなのだろう。僅か3試合での勝点を競う以上、ここで得失点差「+5」を確保できたことの価値は大きいといえるのではないか。敗れた十勝は、試合を通じてサイドは比較的攻め込むことができていたが、そこからなかなか中央に効果的なボールを入れることができずに苦労した。1次ラウンドで観た時には脅威となっていた高瀬と松尾のセンターライン、そして切り札の黒川も封じ込まれたのは痛かった。枚方にリードを広げられたことで焦りが生まれ、更に鋭いカウンターを受け続けることで体力的にも削られ、サイドに展開するまでの精度も徐々に悪くなってしまったように感じる。終盤の失点を重ねた場面は体力的な限界も当然あったと思うが、それ以上に精神的なダメージの方がより大きそうに見えただけに、同情を禁じ得ない気分にさせられた。試合後、スタンドへ挨拶に来た十勝の選手たちにファンから惜しみなく拍手が贈られた。十勝は今彼らに出来るサッカーをちゃんとやっていた。JFL昇格の道のりは険しくなったが、まずは気持ちを切り替えて次の試合に臨んでほしい。そう思わずにはいられなかった。