FC東京にとって、1週間半ぶりとなる公式戦の日がやってきた。本来ならば11/7(土)に国立競技場でルヴァンカップ決勝の柏戦が行われる予定だったが、対戦相手の柏に新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応を示した選手・スタッフが相次いだ影響で、試合は大会史上初となる延期に。カップファイナルを目前にして試合が流れてしまった東京にとっては思いがけないインターバルが生まれた形だ。振替日程は年末年始という話があるようだが、いずれにしても、10月の横浜FC戦をきっかけにリーグ戦4連敗と苦しんでいた東京にとって、中10日の試合間隔が空いたことは、ひと息をつくにはちょうど良いタイミングだったのかなと思っている。とはいえ、日程はここから再び過密に。今日からリーグ戦が3連戦で行われ、その後にはカタールに飛んでのACLの連戦がスタートする。まずは今日、連戦のスタートとなる一戦で連敗を脱出するところから始めたいところだ。今節の対戦相手は、11/3に行われた前節の試合で首位・川崎を2-0で破っている札幌。その試合ではFW登録の選手がスタメンにいない、いわゆる「ゼロトップ」采配で相手の意表を突いた形だ。今季はやや成績が伸び悩んでいる札幌だが、ペトロヴィッチ監督が率いるチームだけに油断のできない相手である。発表されたスタメンを見ると、札幌は今日もスタメンにFW登録の選手がゼロ。一方の東京はほぼベストメンバーといえる陣容だが、GKは林ではなく、波多野が今日もゴールマウスに入るようだ。
試合序盤は札幌がややゲームを支配している印象。前線には駒井とチャナティップが並び、少し下がり目の位置に荒野がいる。ただし荒野はほぼフリーマンのような役割で、最終ラインから最前線までどこにでも顔を出す感じだ。荒野の動きに連動してシステムも4バックのようになるなど、東京としてはマークに付きづらいところがあり、まずは自陣でしっかり守りたいところだ。すると、序盤の札幌の支配が落ち着きを見せ、少し中盤でもボールを奪えるようになった東京が先にゲームを動かす。21分、中盤でボールを持った安部が左サイドで裏を狙う動きを見せた永井へスルーパスを通すと、ドリブルでそのままPA内に持ち込み、ニアにシュートを決めて1-0。札幌のDFラインがやや高い位置取りとなっていた中、その裏に出たボールを永井が追いついたことで生まれた、「永井にしか獲れない」先制点である。33分、札幌はチャナティップに代えてアンデルソンロペスを投入。アクシデントによるものかはよく分からなかったが、いずれにしても、ここまで札幌の前線にほとんど仕事をさせていなかった分、逆に嫌な交代だ。前半を1-0で終えると、札幌は後半の頭からドウグラスオリヴェイラを投入。前線に強力なアタッカーを増やして押し込みたいのだろう。55分、札幌は中盤でのプレスでボールを奪い、ロペスがゴール前でフリーになるが、安部がカットしてシュートを撃たせず。中途半端なボールロストからの失点は防がなければならない。札幌のゲーム支配が続く中、東京は63分に髙萩を投入。これは的確な采配だった。髙萩のコントロールによって中盤で落ち着きを取り戻したことで、東京もやや押し返し。74分には中盤でボールを持ったディエゴが曲芸レベルのドリブルでゴール前まで迫るものの、追加点を奪えない。札幌は終盤にジェイを投入し、更に前線を強化。一時的に楽になっていた東京も最後はひたすら我慢の時間だ。後半AT、札幌はジェイのポストプレイからゴール前で粘り、最後は駒井がフリーでフィニッシュに持ち込むものの、渡辺がブロックに入って僅かにコースの変わったシュートはゴールの僅か右に逸れ、スタンドからは大きな安堵の溜め息。最後は肝を冷やしたが、どうにか耐えきり試合終了。前半の永井の先制点を守り切った東京が、連敗を「4」でストップした。
内容はお世辞にも良いとは言えないものだったが、とにかく勝ったことに大きな意味のある試合だったのではないか。ルヴァンカップ決勝の開催中止によって公式戦の間隔が空き、ここからはシーズンのクライマックスに向けてラストスパートをかけていく段階。その最初のゲームで連敗を脱出できたのは大きい。札幌が前線の顔ぶれを次々に代えてくる中、最後まで無失点で乗り切れたのは今後の戦いに繋がる大きな収穫だ。決勝点は永井のスピードを生かした1点。試合序盤の札幌のゲーム支配が少し鳴りを潜め、逆に中盤でボールを狩れるようになった時間帯で、安部から見事なパスが出た。一度裏に行くと見せかけて足を止め、マーカーだった金眠泰がそれにつられた一瞬のタイミングですかさず動き出し、完全に置き去りにしてみせた。シュートを決めきるまでのボールの運び方も完璧だった。試合中に訪れた決定機がほとんど無かった中で、数少ないチャンスをものにできたのは今後に繋がると思う。守備は全体を通して札幌に押し込まれる時間が長かったが、ひとつ大きかったのは後半途中の髙萩投入。これは即効性抜群だった。あっという間に試合が落ち着き、時間を稼ぐことができたように思う。終盤は札幌がジェイを投入してきたことでかなり苦しくなったが、髙萩の投入で一度落ち着かせていなかったら、防戦一方のまま同点、あるいは逆転まで持っていかれたかもしれず、地味ながら試合の分岐点となる交代だったと思う。札幌は川崎を粉砕したゼロトップを今節も採用してきたが、チャナティップの交代でそれもやり遂げることはできず。一方で、途中出場のロペス・ドウグラス・ジェイが前線でターゲットとなり、終盤は押し込む流れを作れていた。どちらに転んでもおかしくなかったが、そこは東京の地力が僅かに上回っていたということなのだろう。東京は次節から名古屋・仙台とのアウェイ連戦となるため、ACL前のホームゲームはこれが最後。12月に行われる残り2試合は帰国者の自主隔離期間と重複してしまうため、ベストメンバーで臨むことのできる年内最後のホームゲームとなるおそれがあった。それだけに、ここで勝ち試合を見ることができたのは素直に嬉しかった。リーグ戦は残り4試合。上位進出は厳しくなったが、試合をするからには1ポイントでも多く積み上げてほしい。