10月に入ってから観客数制限が緩和され、一部スタジアムではビジター席の設置やキャパシティの50%までの入場が認められるようになったJリーグ。新型コロナウイルスの感染拡大は世界的には依然として予断を許さない状況であり、自分もFC東京のホームゲーム以外の観戦は控えていたが、そろそろ他所の試合も観に行きたくなってきたので、このタイミングで久々にJ2を観戦することにした。近場では味スタでヴェルディの試合もあったが、せっかくなので味スタは選択肢から省き、フクアリをチョイス。総武線快速で蘇我へ向かった。天候は残念ながら雨となり、気温も13℃まで降下。フクアリが海沿いの立地ということもあり、風の影響も考えてダウンジャケット着用で向かったが、どうやら正解だったようだ。蘇我駅からの道はほとんど人通りがなく、本当に試合があるのか疑わしいレベル。フクアリの入場ゲートに少しだけ列が形成されているのを見て少しだけ安心するが、それでも試合中に発表された公式入場者数は1,758人。諸々の条件を踏まえれば仕方ない気もするが、あのジェフのホームゲームで1,000人台というのは、それこそ市原臨海時代に逆戻りしたような感じだ。一方で、今節からは応援席での太鼓の使用が許可されるようになり、ゴール裏中央付近からは太鼓のリズムが聞こえてくる。声をあげての応援はまだ許可されていないので、太鼓と手拍子だけでの応援だが、どのチャントなのかはよく分かった(笑)。なおビジター席の設置はなく、アウェイサポーターは来場できなかったようだ。こればかりはクラブの判断なので致し方ない。
試合は千葉×町田という対戦カード。千葉の尹晶煥監督、町田のポポヴィッチ監督は共に今季からチームを率いるシーズンだが(ポポヴィッチ監督はJFL時代以来の再登板)、前節終了時点で千葉が17位、町田が14位と、共に中位にとどまっている。今季はJ1参入プレーオフの開催が無く、かといってJ3への降格も無いため、両チーム共にJ1昇格の望みが現実的には厳しくなった今、モチベーションをどのように保つのかが気になるところ。前半立ち上がりはホームの千葉が攻め立てる展開。球際の部分で半歩先に足が出てくるような印象でボールがテンポ良く繋がり、PA手前までは素早く運ぶことができるが、決定的なフィニッシュというところまでは至らない。19分には、中盤でまずまず存在感を見せていた田口が腕か肩の辺りを負傷した様子で、小島との交代を余儀なくされる。この流れで、出遅れていた町田も徐々に守備からリズムを取り戻す。34分には中盤で千葉の中途半端なバックパスを平戸が奪い、最後は髙江がミドルシュートに持ち込むが、ゴール右のポストを叩いて先制はならず。千葉はせっかく良い入り方をしただけに、ミスで流れを手放してしまうことだけは避けたいところだ。結局それ以外の場面は膠着した状態のまま、0-0で前半を終える。後半に入ると試合は徐々にスピードアップ。千葉は右SBの本村から良いクロスが度々入るようになり、ゴール前の競り合いの場面が増えるが、町田も深津と水本のCBコンビで跳ね返す。水本はJ2の舞台で久々の古巣対決ということもあり、気合が入っているだろう。町田もカウンターの場面が徐々に増え、64分には左サイドの鄭充根の突破から折り返しを中央の平戸がフリーで受けるが、トラップの置き所に失敗してシュートが弱くなり、千載一遇のチャンスを決められない。千葉は66分に鳥海がアクシデントで交代となり、代わって入った増嶋のロングスローなどを使いながら攻め立てるが、やはり中央で競り勝てず。終盤の88分には左サイドからカットインして持ち込んだ山下のシュートがゴール右ポストに弾かれ、こちらも決定機をものにすることができない。町田も残り時間が少なくなってから交代カードを次々に切って1点を取りにいく姿勢を見せるが、効果的なカウンターを出すことはできず、試合を通してシュート4本、CKはゼロという結果に。結局互いにチャンスはあったが、0-0のままスコアレスドローとなった。
両チームのなかなか上手くいかないもどかしさが表れていた90分間だった。スコアレスドローは妥当な結果といえるだろう。全体的には、どちらかといえば千葉が押していたように思うが、最後までいかんせん迫力不足だったかなという印象が残った。前半の立ち上がりなどテンポ良く繋がる場面はあったが、町田の守備もアジャストするのが早かった。早い時間で田口が負傷交代となったのもアンラッキーだったが、千葉は立ち上がりの良いリズムが少しずつ萎んでいってしまった感がある。そこでオープンな展開に持ち込むなどプランはありそうな感じだったが、押しきるところまで行けないところにもどかしさを感じた。特に後半、右SBの本村が良いクロスを何度も入れていたので、そこを多用しても良かったかもしれない。町田は立ち上がりの出足の遅さは少し気になったが、修正後は守備時にすぐボールへ寄せることができていて、それほど不安要素は無さそうだった。ただ、攻撃になると選手同士の距離が少し離れてしまい、どこかで個人プレーに頼らざるを得なくなっているように見えた。前半の途中、ボール保持時に前線の動きが乏しく、ベンチからポポヴィッチ監督が怒声をあげていたのが印象的だった。全体的には攻守共に相馬監督時代の遺産を食いつなぎながら、新たな形を模索中という感じ。両チーム共に最後まで切らさずやりきったという点では実のある試合だったが、やはりそれ以上に悔しさの残る結果だったのではないか。どちらに関してもいえることだが、新監督を迎えたシーズンで、いきなり結果を出すのは容易ではない。他方、「こうすれば勝てる」という最低限の得点パターンや勝ちパターンがあることも上位進出には欠かせない要素で、それがありそうに見えなかったところが苦戦の要因なのかもしれないなと感じた。共に現実的にはJ1昇格が厳しくなってしまったが、残りのシーズンをただの消化試合にしてしまうのはあまりに勿体ない。おそらく両監督共に続投が基本線だろうし、来季に向けてどこまで積み上げられるかが重要になるだろう。選手たちを拍手で迎える千葉サポーターの姿を見届けてフクアリを撤収。千葉駅で総武線快速への乗り継ぎが無いことには溜め息をつくしかなかったが、この体験もまた、気軽にサッカー観戦ができる日常がちょっとずつ戻ってきた証かなと前向きに捉えることにして、しぶしぶ三鷹行の各駅停車に乗り込んだ。