前節から中3日でのリーグ戦。東京はホームでの連戦となる。前節のG大阪戦は雨で水浸しとなったピッチに苦しみ、相手のPKによる失点でのビハインドを取り返すことができず敗戦、残念ながらリーグ優勝の可能性は極めて難しくなってしまった。ただし2位以下は依然として混戦が続いており、来季のACLや天皇杯への出場権は充分に射程圏内。消化試合数に差があるため暫定の順位はアテにならず、とにかく勝点を着実に積み重ねなければならない。今節は暫定17位と苦しむ清水をホームに迎えての試合だ。日本平での開幕節では、先制を許しながらも鮮やかな逆転劇で勝利しており、それほど苦手なイメージは無いが、不振に苦しむ状況下の試合で何か変化を見せてくる可能性もあり、侮れない相手だ。東京は髙萩がスタメンに復帰するなど明るい材料もある一方、前節の試合中に相手選手への悪質なプレイがあったレアンドロがリーグ戦3試合出場停止という厳しい裁定。手癖の悪い選手であることは分かっていたので、いずれこういう事はあり得るだろうとは思っていたが、この大事な時期に大黒柱の1人を3試合も欠くのは痛い。ただ、今はどうにかして乗り切るしかない。代役というわけではないが、今節は田川が先発。また、渡辺が前節に続いて欠場。おそらく勤続疲労だと思うが、少し心配だ。
スタートの布陣が気になる東京は、ディエゴと永井が最前線で横並び。昨季までの基本システムでもある4-4-2だ。連敗だけはしたくないだけに、まずは攻守でバランスの取れた戦い方をしたい狙いもあるのだろう。しかし立ち上がりは清水の攻勢。テンポの良いパス回しで東京の陣内に攻め込み、一気にシュートまで持ち込む場面が続く。攻撃でも2トップに良い形でボールを収められず、波に乗れない時間が続く中、東京は22分にゴール正面でFKを獲得。三田の蹴ったボールは一度壁に跳ね返されるが、こぼれ球を執拗にゴール前に入れ続けると、混戦から清水の中途半端なクリアボールの落ち際を三田がダイレクトで振り抜き、ゴール正面の田川に僅かに触れてコースが変わりゴールイン。攻撃で形を作れていなかった中、セットプレイの流れから先制に成功する。その後は再び清水がボールを持つ時間が多く、押し込まれる場面もあるが、39分に髙萩のボール回収から永井がシュートに持ち込む速攻を見せるなど、武器をちらつかせながら1-0で前半終了。内容は良くないが、リードして折り返せたのは大きい。すると後半、ようやく東京が流れを掴んで自分たちの流れ。55分、小川がドリブルで中へ運ぶと、裏へ走る動きを見せた永井へ絶妙なスルーパス。ラインギリギリで抜け出した永井が一度足元にボールを置くと、冷静にシュートをゴール左隅に突き刺して2-0。大きな追加点だ。後半に入ってから守備は安定しており、2点差ならば安全圏だろう。選手たちのプレイにも余裕が感じられるようになり、これでひと安心・・・といきたかったが、79分に事故が起きる。DFラインからのバックパスを受けた林の縦パスがドゥトラに完全に読まれてパスカットを許すと、すかさずゴール左隅にシュートを叩き込まれて2-1。ここ最近は見られなかったバックライン間のミスでの失点だ。この展開での1点差は何があるか分からない。終盤は清水が猛攻に出て東京は防戦一方。冷や汗ものの展開だ。しかしベンチワークは冷静沈着。失点後に守備固めとして中村(帆)、前線のターゲットとして原を投入すると、後半ATに髙萩の左サイドでのキープからボールを引き取った原がPA内に侵入して折り返し、中央のアダイウトンが押し込んで3-1。途中出場の2人の連携で追いすがる清水を突き放し、試合を決着させた。最後は少しばたつく時間帯もあったが、東京がホームで勝点「3」の確保に成功した。
内容はさておき、連敗しなかったことを喜びたい。立ち上がりから清水の勢いに押されて受け身に回ってしまったが、どうにか守備が耐え、攻撃でなかなかアクションを起こせない中でもセットプレイの流れでしっかり1点を奪うことができた。シーズンの中でどうしても上手くいかない時期というものはあるが、そういう時にセットプレイで点を取れるというのは重要だ。三田のシュートが僅かに当たっただけというラッキーな形とはいえ、レアンドロ不在の影響で出番を得た田川が1点を取ったというのも大きい。後半も清水の守備対応の遅さに救われた部分はあるが、小川が見事なパスセンスを見せて永井のゴールをアシスト。永井もリーグ後半戦に入ってからゴールという形でますます存在感を示している。後半にリードを2点に広げてからは攻守に余裕のある戦いぶりで、ディエゴは同胞であるヴァウドやヘナトアウグストに敢えてデュエルを仕掛けるなどの「遊び心」も見せていた。こういった余裕ある戦い方ができるのも、髙萩が戻ってきたことの影響が大きい。中盤でボールが落ち着くし、ボランチでコンビを組む安部が潰し役をやってくれるので、ボールロストしてもすぐに奪い返すことができ、清水に主導権を渡さなかった。バックラインでは林のパスミスからの失点という良くない形があったが、林にはこれまで何度も勝点奪取に繋がるビッグセーブをしてもらっている。今日も最終的に勝っており、このミス1回だけで過度に責任を問うのも酷かなと感じた。また、相手チームの批判をするのはあまり気乗りしないが、今日は清水のサッカーに助けられた感もあった。DFラインはデュエルには強さを見せた一方、組織でボールを奪う意識をあまり感じなかった。中盤の選手が潰しに行けないことで、2点目の小川のスルーパスのようなFWへの縦パスがあっさり通ってしまうのは問題だ。攻撃でも、2トップのカルリーニョスとドゥトラのどちらか一方がボールを受けに下がってきてしまうので、インサイドに2人も置いている意味が無いように感じた。これだけ隙があれば東京の勝利は至極妥当といえるだろう。ただ、内容がどうであれ、勝点「3」の重みは全く変わらない。観客数の上限が緩和された中で来場者数が4,000人を割り込んでしまったのは寂しかったが、それでもチームは結果を出している。ここから再び上昇の流れに乗ることができるか、楽しみにしたい。