J1リーグ後半戦最初となる第18節、早くも重要な一戦がやってきた。暫定3位の東京と、2位・C大阪との上位直接対決である。両者の勝点差は「4」。消化試合数に差があるとはいえ、共に堅守速攻を誇るチーム同士コツコツと勝点を積み上げてきただけに、リーグ後半戦へ勢いをつけるためにも非常に重要な「6ポインター」だ。発表された東京のスタメンには、ディエゴ・永井・レアンドロという盤石のアタッカー陣に加え、4試合ぶりに安部が復帰。同じく離脱の続く髙萩と共に、コンディション不良で試合出場が困難と伝えるスポーツメディアもあったが、重要な一戦で戻ってきてくれた。そんな期待の高まる一戦だが、自分はといえば職場の撤収に見事なまでに手間取り、慌てて飛び乗った準特急が飛田給に臨時停車しないなど、相次ぐドタバタぶりで大遅刻。味スタに着いたのは前半10分に差し掛かる頃だった。幸いにしてスコアはまだ0-0のまま。試合中とは思えないようなスタンドの静寂が試合の緊張感を物語っていた。そんな静寂をより引き立たせていたのが、この日ずっと降り続いた冷たい雨。3日前の仙台戦は半袖でも問題ないレベルだったが、それから気温が更に下がり、肌寒さすら感じるほどだ。ピッチ条件に影響は無く、選手たちにとってはちょうど良い涼しさなのかもしれない。
ざっとピッチを見渡して最初に気づいたのは、東京のシステムがいつもの3トップではないこと。ディエゴが左サイドハーフに近い位置取りをしており、アルトゥールと安部のボランチ2枚、そして前線にレアンドロと永井が並ぶ、変則的な4-4-2のようだ。レアンドロではなくディエゴをサイドに置いているのは、おそらくC大阪の速攻を警戒して、守備をセットしやすくするのが狙いのように感じる。C大阪もスペースを埋める守備で自陣を固め、中盤でボールを持たせない。様子見の時間が続く中、東京は40分に右サイドで粘った中村(帆)のクロスを繋ぎ、左サイドから攻撃参加した小川がシュートに持ち込むチャンスとなったが枠外。少し押し込めた時間もあったが、決めきれずにHTを迎える。後半立ち上がりはC大阪が攻勢。58分、右サイドで松田が粘ってクロスを入れると、中で混戦となり、奥埜の強烈なシュートがゴール右ポストを直撃。跳ね返りを更に詰められるが、幸いにも林が正面でキャッチ。東京が最大のピンチを切り抜ける。劣勢の続く東京は、この直後にアダイウトンと内田の2枚を投入。この交代は当たりだった。63分、右サイドでのスローインからアダイウトンがボールを収めて安部に繋ぐと、前方に空いたスペースに安部がドリブルで突進して一気に相手陣内へ侵入。左サイドからスプリントで上がってきたディエゴにラストパスを送ると、やや狭い角度ながらディエゴが左足でファーサイドに流し込み、東京が1点先制。ここまでなかなかチャンスの少なかった東京だが、ようやく得たロングカウンターのチャンスをしっかりと生かしてリードを得る。更に66分、東京は左CKの流れからこぼれ球を回収し、攻め残っていた森重が左サイドでパスを引き出してクロス。これをファーサイドの内田が相手選手と競り合いながら落とし、フリーのアダイウトンが押し込んで2-0。3分間で一気にC大阪を突き放す。リードを奪って余裕が生まれた影響か、ここから東京はルーズボールをことごとく支配。C大阪につけ入る隙を与えない。88分のC大阪の直接FKは、シュートが壁に入っていたレアンドロの腕に当たったとしてC大阪の選手がPKではないかと猛抗議するが、これも主審はPKを取らず。ATは東京が猛烈なハイプレスでボールを追い回してC大阪に組み立てさせず、試合終了。東京が重要な一戦を2-0の無失点で制し、C大阪との勝点差を「1」に詰めることに成功した。
リーグ後半戦最初の山場といえる一戦で、これ以上ないといえるくらいの会心のゲームだった。キーポイントとなったのは、今季の基本システムだった4-1-2-3を見直して、ボランチを2枚に増やしたことが挙げられるだろう。スタメンを見た時点では「誰がアンカーをやるのだろう」と思ったが、試合を観て合点がいった。特にディエゴを左サイドに置いたのは大正解だった。C大阪の攻撃における最大の武器は右サイドの松田・坂元のユニットだが、ディエゴの存在が2人の攻撃参加に対する牽制になったと思うし、自陣に戻っての守備でもプレスをかけて貢献。更に先制点の場面では自分のポジションである左サイドを一気に駆け上がり、安部のラストパスを引き出して見事に決勝点を決めてみせた。そして、その先制点の場面でアシストを決めた安部のパフォーマンスも見事だった。復帰して最初の試合とは思えないような運動量で、潰し役から繋ぎの部分で貢献。相方のアルトゥールと分担しながら、セントラルMFとしてやってほしい仕事を全部1人でこなしてくれた。髙萩がまだ戻ってこない中、本当に貴重な戦力だ。また、前節に続いて無失点に抑えた守備の頑張りも光った。後半立ち上がりに攻め込まれてゴールを割られる寸前となる場面もあったが、あの時間帯を耐えたことで、先制点を呼び込む良い空気を呼び込むことができたと思う。リードして迎えた試合終盤も、渡辺・森重のCBコンビでボールを跳ね返し、簡単にシュートを撃たせなかった。改めてこの2人の存在のありがたみを実感できる試合だったのではないかと思う。敗れたC大阪は守備のブロックを固めてスペースを与えない手堅いサッカーをやってきたが、後半の頭に一度ギアを上げて得点を奪いきれず、直後の落ち着いた時間帯で少し中盤が間延びしてしまったところを東京に仕留められてしまった。得意のサイドからこじ開ける攻撃も、東京の守備に対応されて最後は尻すぼみになってしまった印象だ。今のJ1は川崎の首位独走がどうしても目立つが、2位に入ることで天皇杯の準決勝からの出場権を得られるなど、2位に入ることで得られる恩恵も少なくない。最大の目標がリーグタイトルなのは変わらないとしても、2位浮上の可能性を手元まで手繰り寄せられたことは大きいのではないか。次節からリーグ戦3試合、そしてルヴァンカップ準決勝を含めてアウェイでの4連戦となるが、ホームで連勝できたことで勢いが作れたように感じるし、この勢いを継続して乗り切ってほしいところだ。