お盆明けから週2試合ペースの過密日程が続く中、前節はアウェイで大分に1-0で勝利した東京。CKからの安部の得点をしぶとく守り切り、首位・川崎と勝点「10」差の勝点「28」でリーグ暫定3位の座をキープしている。今節はホームに戻り、J2からの昇格組である横浜FCを迎えて中3日での試合。シーズン前は苦戦を予想されていた横浜だが、8月には3連勝を飾るなど徐々に結果を出し始めており、ここまでの順位も13位と悪くない。昇格クラブだからといって見くびれば、足元をすくわれかねない相手だ。前節から負傷明けでチームに戻ってきた田川が2試合連続のスタメン。代わりにディエゴは2試合連続のメンバー外、更に前節活躍した安部と森重もメンバー外となり、今季U-18から昇格したばかりの木村がJ1初スタメンを飾る。現状のチームでコアともいえる選手を複数人欠いた中で、どのような試合を見せてくれるか、期待と不安が入り混じる中での一戦となった。横浜も前節からは数人メンバーを入れ替えてきているが、攻撃の中心である左サイドハーフの松尾や、柏所属時代に味スタで強烈なミドルを決めたことのある手塚など、危険な名前がスタメンに名を連ねており注意が必要だ。水曜日開催にも関わらず、味スタには現状での入場制限5,000人に迫る4,941人が来場。新型コロナウイルスの感染リスクがある今、チケットを買うのはチームの熱心なファンが中心だと思われるが、そういったファンならば週末・平日関係なく来場率は高いのだろうなと感じる。
両者様子見の色濃いスローな立ち上がりとなった前半だが、先に均衡を破ったのはアウェイチーム。17分、中央でボールを受けた松尾が縦パスを入れる形から、DFラインの裏へ出た浮き球のパスを跳ね返したルーズボールが皆川のもとへ。ボールの落ち際を叩いた皆川のミドルはブロックに入った小川に当たってコースが変わり、転々とゴール左隅に決まって0-1。東京は人数が揃っていたにも関わらず、強引にこじ開けられて先行を許した形だ。早いうちに同点に追いつきたい東京だが、横浜のボールを奪われてからの寄せや帰陣が早く、中盤でボールを受けても、横浜の4-4ブロックが常に目の前にセットされている状況。早くも手詰まり感が漂うが、30分にアルトゥールの仕掛けからフリーで受けた髙萩がボールを持つと、右サイドから中央へ走りこんできた田川へ鋭いスルーパス。田川がトラップしながら素早く反転し、右足でボール右隅にシュートを叩き込んで1-1。髙萩と田川、たった2人の関係性で1点を取り切り、同点に追いつくことに成功する。しかし流れは依然として横浜だ。HTを挟んで後半に入り、東京はアダイウトンを投入してシステムを4-4-2に変更。攻撃の場面は徐々に増えてきたものの、横浜の守備、特にボランチに入る安永の寄せが厳しく、なかなか余裕を与えてもらえない。1-1の状態が続く中、71分に東京は内田・原・拓海の若手3人を同時に投入。過密日程や交代レギュレーションの変更が無かったら決して見られなかったであろう交代策だ。この交代は流れを変えた。右SBの拓海、左SHの内田がサイドで時間を作り、攻撃に「縦の勢い」と「幅」をもたらす。しかし、レアンドロがチャンスでシュートを外すなど、仕上げの部分で度重なるチャンスを生かせない。84分、横浜は途中出場のレアンドロドミンゲスが右サイドからクロスを入れると、ゴール正面でフリーの瀬沼がドンピシャのヘディング。完全に1点もののチャンスだったが、これを林が左手1本で止めるスーパーセーブで切り抜け、こちらも勝ち越しを許さない。すると直後の85分、小川のロングフィードにアダイウトンが競り、こぼれた所に待っていた原がトラップから反転、そのまま強烈なシュートを叩き込み2-1。コースは正面と甘かったが、反転してシュートに持ち込むまでの素早さにGK・南もほとんど反応できないというスーパーゴールだ。残り時間は小川に代えて丹羽を投入するなど守備を固め、東京がそのまま逃げ切りに成功。リーグ戦の連勝を「3」に伸ばすことに成功した。
どちらに転んでもおかしくない中で、東京がしっかりとチャンスをものにした試合だった。横浜は強いチームだった。とにかく攻撃から守備への切り替えが早い。ボールを奪われたらまずは奪い返す守備を行い、一方で素早く自陣に撤退。特に前半は東京にカウンターをほとんど撃たせず、自分たちの組むブロックに容易に侵入させなかった。個人的に新たな発見だったのはボランチの安永だ。19歳の若さでのスタメン出場だったが、ボールを狩る仕事と組み立ての両面でハードワークし、手塚とのコンビも良好。切り替えの早さが肝要になるであろう横浜のサッカーに適性の合う選手だと感じたし、こういった若手を積極的に起用できる下平監督の眼力にも恐れ入るばかりだ。ただ今日に関しては、東京が更にその上を行った。HT明けのシステム変更で4-4-2にしたことで攻守でやることを明確にしたことも勝因の1つだと思うが、それよりも71分の若手3枚替えが大きかったように思う。拓海はドリブルで右サイドを何度も縦に崩したし、内田も左サイドで時間を作り、レアンドロとアダイウトンの負担軽減に貢献。原は劇的な決勝点をマークし、チームにとって欠かせない戦力になりつつあることを証明した。これまでまでの彼らはまだどちらかといえば「経験を積む」目的での出場が多かったが、今日は戦術的な意図のもとに投入され、全員がしっかりと役割を果たした。それはチームにとって非常に大きな収穫といえるだろう。負傷から戻ってきた田川の今季初ゴールも良かった。髙萩から相手の守備ブロックを切り裂くようなスルーパスを引き出し、素早い反転からゴールに持ち込むまでの一連の動きは改めて才能を感じさせた。もう1つ、勝敗の分かれ目になったのは、84分の瀬沼の決定機を防いだ林のビッグセーブだろう。後半の中盤~終盤にかけてのチャンスをことごとく外す展開で、いかにも嫌な空気が流れた中で迎えたピンチだっただけに、あそこを耐えきれたのは大きかった。試合の行方を大きく分けるプレーだったと思う。課題を挙げるならば、相手の切り替えの早さに対応できず、中盤を支配されてしまったこと。そこでの劣勢が試合内容全体に波及した感は否めなかった。安部の不在も影響したと思うが、今季は今後もそういったシチュエーションは充分に起こりえる。そうなった際にどう立ち回るかは宿題となりそうだ。次節は中2日でアウェイ・神戸戦。難しい相手が続くが、今日のようにメンバーを入れ替えながら、上手く乗り切ってほしい。