9月に入って最初の試合は、平日開催のルヴァンカップ・準々決勝。今季は新型コロナウイルスの関係で日程が大幅に圧縮され、グループステージが1回総当たり、プレーオフステージは中止、そして準々決勝以降のプライムステージは全て一発勝負というレギュレーションに変更となっている。ACL出場のためプライムステージから登場となる東京は、組み合わせ抽選の結果、準々決勝をホーム、準決勝をアウェイで行うことが決定済み。そしてこの本日の準々決勝の対戦相手は、グループステージから勝ち上がった名古屋だ。半月前の8/15にリーグ戦でも戦っており、その際は1-0で東京が勝利しているが、相手の指揮官はなんといってもマッシモ監督、同じ轍を踏むようなことはしないだろう。東京は先週末のにアウェイ・G大阪戦で3-1と勝利してから中3日でのカップ戦ということもあり、メンバーは多少なりとも入れ替えるのではないかと思われたが、発表されたスタメンはベストメンバーといって差し支えのない豪華陣容。3回勝利すれば優勝という他に比べれば手が届きやすいタイトルだけに、本気度も高いのだろうか。同じく中3日の名古屋は若干メンバーを入れ替えてきているが、シャビエル・阿部・金崎などの強力な交代カードがベンチに控えており、途中から出てこられた方がむしろ厄介かもしれない。名古屋のDFラインには丸山・太田に加え、昨季G大阪からの期限付き移籍で東京に在籍したジェソクもおり、4人中3人が元・東京の選手。ベンチ入りした米本も含めて親しみのある名前が並んでいる分、負けたくない気持ちも強い一戦だ。
試合の立ち上がりは両チーム共にリスクの低い攻撃が中心。東京はディエゴやレアンドロが1人で仕掛ける場面がいつも以上に多い印象だ。人数をかけずに個人で打開できれば1点取り切ってしまいたいという狙いだろう。一方の名古屋は、スタートこそ山﨑と前田の2トップ気味だったが、すぐに前田とマテウスがポジションを入れ替え、右サイドの前田がドリブルで仕掛けつつ、逆の左サイドからも相馬のカットインと太田のクロスという2つの武器で攻め込んでくる。中央でも髙萩がシミッチのマークに遭って余裕を与えてもらえず、東京は一時自陣にブロックを敷いて守る時間が続く。ひとつターニングポイントになったのは、飲水タイムまでを耐え抜いたこと。飲水タイムで一回ブレイクが入ったことで、ここから再び東京が盛り返しを見せる。すると37分、右サイドでボールを受けたディエゴがドリブルでハーフスペースまで侵入し、中へグラウンダーのラストパス。ニアに入った永井がボールをスルーすると、ファーに詰めていた安部が押し込んで1-0。名古屋の攻撃を耐え抜き、押し返した時間帯で1点を取り切る、理想的な点の取り方だ。前半はこのまま1-0で終了。すると、名古屋は後半の頭から交代カードを3枚同時に切り、前線に金崎、ボランチに米本、そして右SBに成瀬を投入。攻守共に機能していなかった所をしっかり手当てしてきた形だ。後半開始直後から金崎がポストプレーでボールを収めるなど、名古屋が危険な形を作ってくるが、今日の東京は相手が前がかりになってきた所を見逃さない。53分、ハーフウェイライン付近でボールを奪取したアルトゥールが左サイドを走ったレアンドロへパスを出すと、更にレアンドロを追い越したディエゴへ繋ぎ、PA内に侵入。更にディエゴのサポートでPAに入ってきた安部へと繋ぎ、狭い角度ながら安部がシュートを叩き込んで2-0。鮮やかな速攻が決まり、リードを広げることに成功する。60分過ぎになると、急激に天候が悪化してゲリラ豪雨に見舞われ、ピッチコンディションは急変。視界の確保すら難しそうな状況となる中、名古屋はシャビエルを投入して更に攻勢を強めるが、東京も切り札のアダイウトンを投入。76分、中盤での名古屋の中途半端なバックパスを見逃さなかったアダイウトンがボールを奪い、一気にドリブルでゴール前へ運ぶ。最後はランゲラックとの1vs1を難なく流し込み、勝利を決定づける3点目をゲット。雨が降ってきてからは攻撃が少し淡泊になってしまっていただけに、相手のミスに乗じて1点を取れたのは大きい。その後も名古屋は負傷明けの阿部を投入して一縷の望みに賭けてきたが、悪天候の中でも最終ラインが集中を切らさずに対応し、そのまま試合終了。3-0の完勝で東京が勝利を収め、準決勝進出を決めた。
一発勝負の舞台で、東京がこれ以上ない勝負強さを見せた試合だった。名古屋が勝負を仕掛けてきた時間帯にしっかりと我慢できたのが大きかった。まずは前半の飲水タイム前。一度ブレイクが入ることを見越して名古屋が執拗にサイドを突いてきたが、そこで前からプレスに行かず、自陣に退いて跳ね返す守備に徹した。何度か両サイドを崩されて危ない場面もあったが、中央でクリアして耐え、無失点で飲水タイム。その後に攻撃に転じ、安部の先制点に繋げることができた。2点目も後半頭に名古屋が3枚替えを敢行し、先手を仕掛けてきたところで耐えたことで、相手の後ろにできた隙を突くことができた。後半の豪雨はここ近年の味スタの試合では見たことのないような強い雨で、もし同点やビハインドの状況で雨に降られていたら相当苦しんだと思うが、リードした状況だったのは幸運だった。今日は先制点の重みがいつも以上に大きいシチュエーションだったが、前半はディエゴとレアンドロが1人で局面を打開しにいくことで圧力をかけることができた。ディエゴは先制点のお膳立てとなったドリブル突破があったし、レアンドロも同じくドリブルで仕掛け、対面のジェソクから前半のうちにイエローカードを誘い、HTに交代へ追い込む働きぶり。後半も2点目のカウンターに絡んでいた。また、インサイドの安部とアルトゥールが以前にもまして高い位置で攻撃に絡むことができるようになっていると感じる。特に安部はゴール前に何度も顔を出し、今日は遂に2得点という決定的な活躍。今、東京の4-1-2-3の「2」の部分はこの2人が最も際立った働きをしていると言って良いはずだ。また、直近のリーグ戦では右SBに中村(拓)が起用されていたが、今日起用された中村(帆)も遜色ない活躍を見せてくれた。守備は安定してこなしていたし、攻撃面でも、浅い位置からのクロスや、深く切れ込んで低い弾道のクロスなど、ボールの質を使い分ける工夫が見られた。実際のところがどうかは分からないが、拓海の活躍に良い刺激を受けているのではないかと思う。カップ戦ながら現状の鉄板スタメン11人で臨み、90分トータルで流れをコントロールできる実力があることは充分に証明できた試合だった。10月に行われる準決勝の相手は川崎に決定。極めて難しい相手と言わざるを得ないが、あと1ヵ月でどこまで川崎の実力に近づけるか期待したい。次の試合は中2日でリーグのアウェイ・大分戦という厳しい日程。おそらくメンバーを入れ替えることになるのだろうが、その中で今日のようなクオリティを維持できるかが注目点になるだろう。