8月に入ってから連日の猛暑に見舞われていた東京だが、今日は午前に局地的な大雨が降った影響などもあり、都心の最高気温が久々に30度を下回るなど落ち着いた天気。過密日程の選手にとっては少し助かるコンディションかもしれない。水曜日に前節のリーグ戦を消化したばかりの東京は、同じく中3日の湘南をホームに迎えての試合となった。東京は前節、アウェイで広島に3-3の引き分け。撃ち合いとなった前半を3-2でリードして終盤を迎えたが、5バックで守りに入った後半ATに追いつかれて勝点「3」を逃がす悔しい結果に終わった。今節の対戦相手は現在5連敗中で最下位に沈む湘南だが、このチームには何かと苦手な印象が強い。昨季終盤の第32節に対戦した際にはロースコアの展開に持ち込まれ、後半ATに1点取ってドローに追いつくのがやっと。結果、横浜Mに首位を譲ることになり、そのまま優勝をさらわれたのは記憶に新しいところだ。今回はそのような重要局面ではないが、ここでまたぞろ足をすくわれるわけにはいかない。今節は髙萩がベンチにも入らず、代わりにU-18出身3年目の品田愛斗がMF登録でJ1初スタメン。また、高卒2年目の中村拓海も同じくJ1初スタメンだ。日程が詰まっているだけに、ここは若手の力も試したいという長谷川監督の思惑だろう。非常に楽しみなラインナップだ。
試合の入りはやや東京が攻め込む展開。6分、右サイドを攻めあがった拓海がPA右隅付近で受けてさっそくシュートを放つ。クロスを選ぶ余裕は無かったかもしれないが、さっそく積極性を見せてくれる。その後はやや湘南がボールを持つ時間が多くなり、試合は膠着気味。ハイテンションの時は前から猛烈にプレスをかけにいく永井も今日はややセーブ気味で、チーム全体の意識として自陣で跳ね返していく感じだ。パスミスからピンチを迎える場面もあったが、決定機は作らせない。すると37分、左サイドでのキープから永井がDFラインの裏へ抜け出す動きを見せてスルーパスを引き出してチャンス。この場面はCKに逃れられるが、その左CKをGK・谷が弾いたボールが相手選手に当たり、こぼれ球を永井が押し込んで1-0。拮抗した雰囲気の中、永井のワンチャンスを狙った動き出しから得たセットプレーで東京が先制に成功し、前半を終える。後半の頭は東京にもチャンスはあったが、全体的には再び湘南が攻める展開。55分、中盤で品田のパスをカットしてから速攻を仕掛け、HT明けから投入されたタリクにラストパスが渡って決定機となるが、タリクのフィニッシュを林がビッグセーブで凌ぎ、東京がピンチ脱出。更に59分にも左サイドの馬渡が拓海の裏を取ってPA内まで侵入し、チャンスを作る。前半から拓海との対面で何度かチャンスを窺っていた馬渡だが、この時間帯になっていよいよ牙を剥いてきた感じだ。長谷川監督の判断も早い。63分、東京は三田と拓海を下げ、アルトゥールと中村帆高の2人を同時に投入。守備面でのハードワークを意識した交代で、まずは安定を取り戻す。スタミナ的に切れてくる時間帯だが、この重要どころで永井も前からプレスをかけに走り、スタンドからは大きな拍手。永井は76分にアダイウトンへ交代となったが、このおかげで東京も後方に余裕ができ、攻撃を仕掛ける場面が徐々に増える。そして84分、ディエゴがドリブルでの仕掛けからレアンドロとのワンツーでPA内に侵入し、パワーシュートをねじこみ2-0。勝利を大きく手繰り寄せる追加点だ。更に後半AT3分、自陣でのボール奪取からアルトゥール→レアンドロと繋いでカウンターを仕掛け、最後はレアンドロのラストパスを途中出場の原が決めて3-0。駄目押しの1点が決まり、勝利を完全に自分たちのものとした。ほどなくして試合終了のホイッスル。東京が勝点「3」を確保した。
守りに入って失敗した前節の学びを生かすことのできた試合だった。後半に守勢に回る時間はあったが、自陣に過度に閉じこもることなく、中盤より前からも積極的にプレスをかけにいったことで、後方に余裕ができ、終わってみればクリーンシートを達成。3失点を喫した前節から守備は明確に改善されたと思う。攻撃に関しても、前半はスコアが動かなさそうな空気がなんとなく漂っていたが、永井の裏抜けから得たCKで先制。得点自体はセットプレーによるものだったが、そこに至るまでの過程が見事だった。少ないチャンスを一発で仕留めて全体を優位に進められた所には、チームの底力を感じた。得点者も永井・ディエゴと「決めるべき人」が決めただけでなく、途中出場の原がしっかりと結果を残した。カウンターで自陣から猛然とスプリントしてフィニッシュまで持ち込んだ貪欲さはいかにもストライカーという感じで、今後にも期待が持てそうだ。また、ゴールこそ無かったものの、レアンドロの働きには毎試合驚かされる。後半立ち上がりの決定機でのシュートミスはご愛嬌だが、2点目のディエゴへのリターンパスや3点目のカウンターでの突破&ラストパスなど、得点にはほぼ関与しており、チームに欠かせない存在だ。そして、J1初スタメンの拓海と品田もしっかりと役割を果たしていた。拓海は三田とディエゴのサポートは受けつつも、攻撃面でセンスを発揮。特にクロスを入れる際、局面に応じてボールの質を蹴り分けることができそうなのが面白い。今日は守備面での戦術的理由から交代となったように見えたが、デビュー戦としては申し分ない出来だったと思う。品田はアンカーポジションで黒子に徹し、堅実にピンチの芽を摘み取っていた印象。1度だけ林に救ってもらった大きなミスがあったが、それ以外は攻守に安定していた。試合終盤にはPA外から意表を突くロングシュートを放つなど、独特なセンスを感じさせるプレーもあった。9月に入ってからは週2試合ペースの日程が続くため、若手起用を含めた総力戦になることは必至。今日の出来なら2人とも今後の出場機会はありそうだ。次は中2日で水曜に鹿島戦が控えている。レアンドロが出られない一戦なだけに、ここは試金石となりそうだ。