東京にとって3試合ぶりとなるホームゲーム。都内は新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向にあり、8月から予定されていた観客数上限の引き上げは見送りとなったため、7月に引き続いての5,000人上限の中での開催となった。東京は直近のアウェイ2連戦で、札幌・鹿島と2試合連続の引き分け。移籍のためチームを離れた橋本に続き、札幌戦で負傷交代となった東の骨折が判明し、シーズン終盤まで戻ってこれないことが確定。チームは一気に主力2人を欠いての戦いを強いられることとなった。今節の対戦相手は、今季未だにリーグ戦の勝利が無い鳥栖。互いに喉から手が出るほど勝利が欲しい一戦だ。東京は東が離脱してからシステムを4-4-2に戻しており、今節も継続。鳥栖はスタメンを見ただけだとどういう並びで来るのか少し分からないが、始まってみたらオーソドックスな4-4-2だった。
試合は入りから鳥栖が前線から強烈なプレスを敢行。東京に圧力をかけ、そのままゴールへ迫ってくる。東京はゆったりとボールを持たせてはもらえず、難しい立ち上がりだ。それでも10分、小川のロングパスを永井が落とし、ディエゴが強烈なシュートを放つが、惜しくもポストに弾かれて先制ならず。鳥栖が前に出てくる分、チャンスもそれなりにはあるものの、なかなか思うようにいかない感じだ。すると29分、右サイドの森下が起点となり、小川の裏のスペースへ走った樋口へスルーパスが出ると、樋口の折り返しのこぼれ球を石井がダイレクトで蹴りこみ、鳥栖が先制。東京にとっては序盤から続いた鳥栖の前への圧力に屈した形だ。36分、東京はレアンドロが相手陣内でFKを獲得すると、レアンドロが難しい角度ながら右隅に蹴りこみ1-1。序盤のディエゴの決定機以外、ほとんどチャンスを作れていなかった東京にとってはありがたいセットプレイからの得点で同点に追いつく。レアンドロが中央に近い位置でプレイするようになり、ようやくエンジンが掛かったか・・・と思われた矢先の43分、今度は鳥栖の森下が右サイドからドリブルでカットインし、左足で強烈なミドルシュート。僅かに林が触れるものの、シュートはゴールに突き刺さり、鳥栖が1-2と勝ち越し。鳥栖が再びリードして前半を終える。後半に入っても鳥栖のペースは変わらず、55分には右CKのサインプレーからフリーになった趙東建が決めて1-3。東京にとって手痛い2点ビハインド。味スタのスタンドもこの展開には呆気にとられたような感じで、失点後の奮起を促す拍手が起きるまでにも少し間が空いた。何とか攻勢に出たい東京だが、攻撃のキーマンとなるレアンドロは樋口とのマッチアップで執拗なマークを受け、警告を受けた状態で退場スレスレのファウルを起こすなど、スタンドから見ていてもメンタル的に厳しそうな状況となり途中交代。アダイウトン・内田・原と、攻撃的なカードを切って攻撃に出るが、鳥栖の守備が堅く、ディエゴも自陣に戻ってきて組み立てに関わるなど、なんとなく「これじゃない」感じの試合展開が続く。86分、ディエゴとのワンツーで右サイドを抜け出した室屋の折り返しをGK・高丘が弾き、その競り合いを原が押し込んで2-3。1点差に詰め寄り、残り時間はパワープレイに出るが、このまま試合終了。鳥栖が今季リーグ戦初勝利。東京はリーグ戦3試合勝利無しとなった。
鳥栖の出足の良さに気圧され、そのまま飲み込まれてしまった。そんな試合だったのではないか。攻撃の起点をひたすらプレスで潰され、ストレスを抱え始めた時間帯に樋口にサイドを崩されて失点。セットプレイで一度は同点にしたが、ボールサイドにしつこく寄せて中央に侵入を許し、ミドルを浴びて失点。鳥栖の右サイド、樋口と森下のユニットに完膚なきまでに叩きのめされてしまった。鳥栖の運動量がかなり多かったため、試合終盤にスタミナ切れを起こす見込みもあったが、その前にセットプレイで追加点を奪われ、2点差にされてしまったことが致命的だった。終盤までひたすら中盤を潰される展開が続き、レアンドロは退場寸前に近い形で途中交代となったことで、ディエゴが下がって組み立てる場面が増え、ゴール前の迫力も減ってしまった。終盤に原がJ1初得点を挙げたことは数少ない収穫といえるが、松岡や石井といった若手選手が溌剌とプレイしていた鳥栖のインパクトに比べると、少し印象は薄いと言わざるを得ないだろう。ただ、中心選手が一気に抜けてしまったことで、シーズン当初に想定していたシステムを変更せざるを得ない状況になっているチーム事情もある。また、試合後の報道で分かったことだが、鳥栖の当初の帯同メンバーに発熱者がいた関係で、東京の選手には試合前から少なからず動揺はあったようだ。ただ、条件は鳥栖とて同じであり、メンタル面だけに敗因を求めるのは良くない。今季は特殊なシーズンであり、自分たちが当事者になる可能性もある。こういった出来事は受け入れながら戦うしかないだろう。順位が6位に後退し、厳しい戦いが続くが、シーズンを諦めるにはまだ早い。まずは今の戦力でのベストの戦い方を見つけることが重要になりそうだ。