2019年シーズンの締め括りとなる天皇杯の元日決勝は、2014年の元日以来6年ぶりとなる、聖地・国立競技場での開催。いよいよ開催年を迎えた東京オリンピック・パラリンピックを控えて大規模な改修工事を完了した新しい国立競技場で行われる、最初のスポーツ公式戦となった。チケットも完売となった記念すべき試合で相対するのは神戸と鹿島。神戸はクラブ史上初のカップファイナル。イニエスタ・ポドルスキ・フェルマーレンという強力な外国人トリオが揃い踏みでスタメンを飾り、必勝態勢で決戦に挑む。対する鹿島は怪我人が続出しており、フルメンバーとはいえない状況だ。
試合は前半から神戸が圧倒的に押す展開となった。10分、FKをイニエスタがクイックリスタートで右サイドの西にボールを通し、マイナスの折り返しをフリーの古橋がシュート。鹿島の虚を突く大チャンスだったが、これは枠の右。直後の13分にもミドルゾーンでのボール奪取からカウンターを仕掛け、古橋の折り返しを藤本がフリーで撃つが枠の上。神戸にとっては立て続けのビッグチャンスを外して嫌な雰囲気が漂うかと思われたが、均衡が破れたのは18分。左サイドでボールを受けたポドルスキがドリブルで中へ仕掛けると、デュエルのこぼれ球を酒井が拾い、再びポドルスキが受けて狭い角度ながら強引にフィニッシュ。GK・權純泰が弾いたボールはゴール前にいた犬飼に当たってゴールに転がり込み、オウンゴールで1-0。神戸が大きな先制点を挙げる。中盤でミスなくボールを繋ぎ続ける神戸を前に、鹿島は反撃の糸口を掴めず。その後も手を緩めない神戸は、38分に追加点。山口が右サイドのスペースに出したボールを西が拾うと、グラウンダーのクロスをDFがクリアしきれず、こぼれたボールをゴール前に詰めていた藤本が押し込み2-0。アタッキングゾーンを攻め切るスピードで圧倒した神戸がリードを2点に広げて前半を終了する。
後半、鹿島はHT明けから土居、52分には山本を投入し、システムを3-4-2-1に変更。鹿島にとっては珍しく、4バックを棄ててミラーゲームを仕掛ける。左WBで山本がフリーとなり、サイドで時間を作れるようになった鹿島は、ここからようやく反撃開始。アタッキングゾーンまで攻め入り、鋭いクロスも何度か入るようになるが、勝負どころを迎えた神戸も身体を張った守備で跳ね返す。時計が進むうちに神戸もカウンターを仕掛けられるようになり、鹿島の押し込む勢いは徐々に減退。結局、システム変更で一時的に流れを掴んだ時間帯に1点も返せなかったことが運命を分ける形となった。神戸は終盤にイニエスタやポドルスキを下げ、後半ATには今季限りで引退するビジャをピッチへ送り出すこの上ないシナリオで撤収を完遂。2-0のクリーンシートで鹿島を下した神戸が、クラブ史上初となる国内3大タイトル初制覇を達成。来季のACL本戦への出場を決めた。