関東リーグはいよいよ最終節。関東2部から1部への昇格枠「2」のうち1位は既にCriacao Shinjukuが確定。残された1枠を巡って争われる熾烈な昇格争いは、最終節の結果を持ってその結末を迎える。前節まで2位に立っていた東邦チタニウムがホームで最下位の神奈川県教員SCに敗れ、それまで3位だったエスペランサSCが勝点「3」を積み上げたことで、最終節を前にエスペランサが2位に浮上。最終節で勝利すればこのまま2位となり、JFLと関東1部の間での昇降格の有無によっては、関東1部昇格となる可能性がある。相手は、前節にその東邦チタニウムを1-0で撃破し、間接的にエスペランサをアシストした形となった神奈川教員。既に最下位での神奈川県リーグ降格が確定しているチームながら、リーグ戦の最終戦という重要局面になって思わぬ形でキャスティングボートを握ることになった。
先制したのは昇格の懸かるエスペランサ。立ち上がりから積極的に仕掛けて相手陣内に攻め入ると、16分、左サイドから矢野が入れたクロスをファーサイドの古川が胸で押し込み、0-1と先制。重圧のかかる中、早い時間帯で先制したことで、エスペランサが更に勢いに乗る。2列目の推進力とボール回収能力の高さで相手を上回るエスペランサはその後も流れを渡さず、31分、33分とフィニッシュがゴールポストを叩くチャンスを連続して作ると、40分には中盤でのこぼれ球を拾ってカウンターを仕掛け、ドリブルで持ち込んだ山本のミドルシュートがDFに当たってゴールに入り0-2。ラッキーな得点も重なったエスペランサの2点リードで前半終了。
前半にリズムを上げられなかった神奈川教員は、後半頭からボランチの髙原に代えて土屋を投入。この交代によって、神奈川教員が見違えるように息を吹き返す。55分、土屋の縦パスを起点に神奈川教員のスピード感ある攻撃が始まり、新村のシュート性のクロスがゴールを襲うチャンスを作ると、直後の58分にはゴール前を押し込む流れから竹内がPA内に侵入したところを倒され、PKを獲得。これを竹内自身が決め、まずは1点を返す。更に続く63分、今度は佐野が右サイドからPA内に侵入し、竹内を経由したラストパスを中央でフリーの私市が右隅にシュートを叩き込んで2-2。土屋の投入によって前に出ていけるようになった私市のゴールにより、あっという間に同点に追いつくことに成功する。勝たなければ3位後退の可能性があるエスペランサは再び攻勢。70分、途中出場の井上が鈴木の縦のロングパスに反応すると、右サイドからPAへ一気に走り込み、ニアにシュートを叩き込んで3-2。再度勝ち越しに成功。エスペランサのサポーターも喜びを爆発させ、スタンドはこの日最大の盛り上がりとなる。この1点差を守りきれば良い状況となったエスペランサは、巧みに時間を使いながら「撤収」の支度。時計が進んでATに入り、エスペランサの勝利&1部昇格は、時間の問題かと思われた。しかしAT4分、神奈川教員は右サイドの展開から、途中出場の山田(康)がドリブルで果敢にPA内へ切れ込んで折り返し。中央でフリーで待っていたのは、後半のキーマンだった土屋。土屋の強烈なシュートがゴールに突き刺さり、土壇場で3-3の同点。エスペランサの選手たちが呆然と立ち尽くし、エスペランサのサポーターが多くを占めたスタンドは、驚嘆と悲鳴の声が入り混じる異様な雰囲気となった。それから時間を置かずにタイムアップのホイッスル。他会場で3位・東邦チタニウムが勝利したため、勝点「35」でエスペランサに並び、得失点差で上回る東邦チタニウムが2位に滑り込み。1部昇格の可能性を残すこととなった。エスペランサは最後の最後に追いつかれて昇格を目前で逃す残酷な結末。一方、神奈川教員は関東リーグに別れを告げる最後の一戦で驚異的な巻き返しを見せる圧巻のパフォーマンス。勝ち切れなかったとはいえ、関東リーグに長く在籍したチームらしく確かな爪痕を残した。