この1週間は仕事が休暇のため、久しぶりに「青春18きっぷ」を利用して東北を回っている。そこで目を付けたのが、水曜日開催となったJ2・第25節。ちょうどNDスタで山形のホームゲームが組まれていたので、この試合観戦を旅程に組み込むことにした。いつもならば山形駅からシャトルバスで来るところだが、ローカル線乗り潰しのため左沢線に乗り、寒河江から路線バスで天童までやってくるという、おそらく誰もやらないであろうアクセスでNDスタに到着(笑)。平日開催の山形のホームゲームは当然初訪問で、名物の芋煮もゆっくりいただくことができた。さて、肝心の試合だが、現在4位の山形が19位・福岡を迎えるというシチュエーション。一時はJ1自動昇格圏内にまで食い込んでいた山形だが、7月に入ってからは思うように勝点が伸びず、逆に調子を上げてきた京都・柏の後塵を拝している状況だ。一方の福岡も今季は苦しいシーズン。J1昇格を目指してスタートを切ったシーズンだが、春先から思うように勝点を伸ばせず、今季就任したペッキア監督は6月に退任。現在はコーチから昇格した久藤監督がチームを指揮する。現在の勝点は「21」で、J3降格ラインとなる21位・栃木との勝点差は僅かに「1」しかない。両者の置かれた状況は全く異なるが、勝点「3」が欲しいのはどちらも同じだろう。
スタートのシステムは両チーム共に3-4-2-1のミラーゲーム。アウェイの福岡は1トップの梁東炫がロングボールを引き出し、城後のサポートを受けながらやや優位に試合を進める。山形は今季東京から期限付き移籍中の柳が右サイドに定着しており、ここからクロスやカットインでチャンスを窺う。21分にはその柳がドリブルでハーフスペースまで侵入してクロスを入れるなど、「得点になりそうな形」は山形の方が多い。しかし27分、福岡は自陣でのボール奪取から山形のプレスかいくぐって中盤の前川にボールを繋ぐと、広大な裏のスペースに動き出しを見せた城後に鮮やかなスルーパスを通し、城後がGKを抜いて無人のゴールに流し込んで0-1。城後は試合序盤から何度か裏を狙う動きを見せていたが、そのトライが伏線となる良い崩しだった。試合は1点差のまま後半へ。山形はHT明けにボランチの秋山を削って南を投入し、髙木を1列上げて3-3-2-2に近い攻撃的なシステムに移行する。54分の井出のクロスに大槻がヘディングで合わせた場面は左のゴールポストに弾かれてしまうが、61分に松本のパスを受けた中村がPA内をドリブルで仕掛けて切り崩し、左の角度の狭いところからニアにシュートを叩き込んで1-1。山形がシステム変更からの同点という良い流れを作る。残り時間を考えれば逆転もいけるかという空気がスタジアムに漂い始めた。しかしその矢先の67分、福岡が右CKを獲得。これを鈴木が蹴ってエリア内に入れると、城後が叩きつけるヘディングシュート。GK・櫛引がなんとか防ぐが、正面に弾いたところをすかさず梁東炫がヘディングで押し込み、1-2。セットプレイから福岡が再び勝ち越しに成功する。1-1にした直後、ターゲット役の大槻を交代させていた山形にとってはよもやの展開だ。74分、山形はジェフェルソンを投入して再び前線にターゲットを据えるが、福岡は5-4-1のブロックを敷いて自陣に閉じこもる。結局、福岡の勝ち越し後は山形の決定機は生まれず、そのまま試合終了。山形にとっては手痛いホームでの敗戦となった。
福岡にとって、J2残留争い脱出の足掛かりとなる大きな勝利だった。3-4-2-1のミラーゲームにしつつ、ポストプレイからゲームメイク、そしてフィニッシュまで何でもこなせる城後を梁東炫の近くに配し、縦のボールで揺さぶりをかけ続けたことで梁東炫の負担が減り、何より城後自身が裏のスペースをとりやすくなった。先制点はこの2人の距離の取りかたの賜物といえるのではないだろうか。後半に山形のシステム変更から押し込まれて一時同点とされ、流れが一気に山形へ傾いたが、そこからCKで再び勝ち越すことができたのは、チームに粘り強さがある証拠。スペースを埋めても人に付ききれない時間帯はあったが、90分間を通して素早く5-4-1のブロックをセットをできていたのが印象的だった。敗れた山形は、サイドからは何度も良い突破やクロスがあったが、中央で相手の嫌なところを突くことができなかった。南の投入で前線の枚数を強化したことが奏功して、一時同点にしたが、再び勝ち越されてからはロングパスの精度がガクッと落ちた。それだけ福岡の2点目は精神的にこたえたのではないかと思う。山形の試合中での立て直し方が悪かったわけではない分、この敗戦が尾を引かないか気になる一戦だった。