あまりにもショックの大きかった、川崎戦での0-3の大敗から1週間。東京にとって出直しとなる第20節は、アウェイ・日本平で清水との一戦だ。チームとしてどのように立て直すことができたのかが問われる、重要な試合となる。対戦相手の清水は現在14位。5月に前任のヨンソン監督が解任となり、後任として2017年シーズン途中まで東京を率いていた篠田監督が就任。失点こそここまでリーグ最多の「40」ながら、残留ラインには何とか踏みとどまっている状況だ。東京は移籍マーケットでの選手流出で手薄になったポジションの補強を実施。SBのポジションにはG大阪から呉宰碩を期限付き移籍で獲得。そして中盤には、神戸から三田を完全移籍で獲得。三田は2016年シーズン途中に仙台へ期限付き移籍で放出して以来、3年ぶりの古巣帰還となった。そのジェソクと三田はさっそくベンチ入り。スタメンは羅相浩が大森に代わった所以外は変更無し。スタイルは貫き通す構えだ。
立ち上がりはホームの清水が猛攻を仕掛ける。なんといっても怖いのは北川とドウグラスの2トップだ。8分にアウグストのパスカットからドウグラスを経由して北川がフィニッシュ、13分にもCKからドウグラスがバイシクルシュートに持ち込み、東京は危険な場面を立て続けに作られるが、いずれも林がセーブして辛うじてゴールを割らせない。序盤の清水の猛攻が落ち着いた16分、東京はカウンターから右サイド深くまで室屋が侵入し、戻したボールを受けた大森がドリブルでカットインしてミドルシュート。これがクロスバーに当たってゴールに突き刺さり、アウェイの東京が先制。スタメン起用に応える大森の一発で貴重なリードを奪う。更に30分、東京の波状攻撃から室屋のクロスのこぼれ球をディエゴがシュート。西部が辛うじて弾くが、すかさず永井が押し込み、0-2とリードを広げることに成功。清水はPA内に枚数こそ揃っていたが、ボールを目で追うことしかできずに立ち遅れていたように見えた。清水は前半途中から4-1-4-1にシステム変更してやや落ち着きを取り戻したが、セカンドボールを東京が支配して前半終了。後半に入ると、今度は清水のボール支配がやや上回るが、これも想定済み。前線から永井がしつこくチェイスをかけて相手に余裕を持って回させず、逆に単発ながら速攻でチャンスを作っていく。67分、東京はディエゴを下げて三田を投入。満を持しての三田の登場に、ビジタースタンドからは大きな「タマ」コールが上がる。清水は80分に滝を投入し、両SBをWBに押し上げた3-4-2-1にシステム変更するが、これも東京にとって大きな問題ではなかった。後半ATまで集中を切らさず戦い抜き、試合終了。0-2のクリーンシートで東京が逃げ切りに成功し、首位の座をしっかりとキープした。
前節の大敗で失いかけた自信を取り戻す、価値のある勝利だった。多少難しい時間もあったが、それでも完璧に近い内容だったのではないか。8月下旬から控えるアウェイ8連戦の長期ロードを前にして、アウェイでの勝ち方をしっかり確立することができたという意味でも大きい。サンホがメンバー外になった理由はよく分からなかったが、代わりにスタメンで出た大森が大仕事をやってのけた。寄せられながらもコンパクトに振り抜くフィニッシュワークは、G大阪や神戸に所属していた頃から大森の持ち味だと思っていたが、それが遂に炸裂した。チームが苦しい時にこそ何より必要になるのが、サボらず走り切れる献身的な運動量。それを体現できる大森の存在のありがたみが分かる試合だったといえるだろう。2点目はファストブレイクが一度失敗してからの作り直し。清水は人数こそ揃っていたが、ゴール前にほぼ横一列にベッタリ張り付きになっていて、外から狙いやすかった。得点こそ永井だが、その前のディエゴのシュートを含め、ゴールに至るまでの繋ぎはしっかり逆算されていたように思う。後半、清水が中村を投入して流れが相手に傾きかけたが、そこで「永井行ってこい作戦」を躊躇なく実行して食い止められた。前節ほとんど良さを出せなかった小川や渡辺も、攻守にわたり対人で確かな存在感を見せていたし、3年ぶりに帰還した三田もボールを散らす役割をしっかりと貫徹。シーズン中の加入とは思えないくらい違和感なくプレイしていたように見えた。選手層の再整備も完了し、次節からは長期ロード前のホーム3連戦。まだまだ気は抜けないとはいえ、まずはひと安心といえるアウェイでの勝利だった。