J1首位の東京と、東京を勝点「7」差で追い上げる3位・川崎との上位対決。勝点差はついているものの、勝点獲得の勢いは明らかに川崎の方が上回っており、ここで川崎が勝てば一気に首位争いの行方が分からなくなるという重要な6ポインターだ。恒例の「多摩川クラシコ」ということもあり、チケットは早々に完売。自分は武蔵野でJFLの試合を見てからのハシゴ観戦となったが、味スタに到着した18時過ぎには既にバック上層自由席はほぼ満席という状態。どうにか空席を作ってもらい座席を確保したが、これほど早くバック上層自由席が満席になるのは、ほぼ初めてに近い経験だ。後に発表された観客数は42,401人で、いかにこの試合の注目度が高かったかを窺わせる。東京は、前節欠場していた張賢秀が、サウジアラビアのアルヒラルへの完全移籍が決定。このタイミングで守備の要であるヒョンスが抜けるのは非常に痛手であると言わざるを得ないが、幸いにして出場機会を順調に伸ばしていた渡辺がおり、ひとまず緊急事態は回避といった状況だ。一方の川崎は、リーグ戦13試合連続無敗という非常に安定した戦いぶりで東京を猛追。前節の試合で途中交代した大島が不在だが、代わりに中村がトップ下でスタメン。その他には、今季なかなか出番を確保できていない下田もスタメンに起用してきた。
試合の立ち上がりは、川崎のボール保持に対して東京が速攻で対応する「想定通り」の試合展開。9分にはディエゴのヘディングシュートからこぼれ球を永井が押し込もうとするなど、ゴール前まで攻め込む場面を作る。しかし15分、川崎は中村の右CKにジェジエウが頭で合わせ、クロスバーに弾かれる決定機。初めてゴールを脅かすと、20分には下田の左CKを小林がヘディングで仕留めて0-1。セットプレイで川崎が先手を奪う。この時間になると、東京がボールを持つとすぐに囲まれて奪われる場面が目立つようになり、なかなかチャンスを作れない。個人でマークを剥がして攻め込む場面を何度か作るようになるが、それでも得点までは至らず。苦しい展開のまま0-1で前半を終える。なんとか巻き返しを図りたい後半だが、次の1点を奪ったのも川崎だ。54分、バイタルエリアでボールを受けた中村から、ハーフスペースに入り込んだ小林、更に中央の齋藤へとダイレクトでパスを繋ぎ、齋藤が悠々と流し込んで0-2。東京は守備の人数こそ揃っていたが、川崎が得意とするパスワークで完全にブロックを崩されてしまう。この失点のショックはかなり大きかったか、その後もボールこそ持ちながら攻めきれない東京に対し、川崎は69分にカウンターから齋藤が抜け出して林と1vs1。シュートは林が辛うじて防ぐものの、こぼれ球を森重がクリアミスしたところをすかさず拾い、最後は阿部がミドルシュートを叩き込んで0-3。東京の集中力を欠いたミスにすかさずつけこみ、勝利を大きく手繰り寄せた。この時点でまだ時間は20分以上残されていたが、スタンドから観ていても両チームの攻撃の質の差は歴然だ。追加点こそ生まれないものの、その後も川崎の攻撃に脅かされ続けて試合終了。川崎がパーフェクトに近いクリーンシートで大一番を制し、東京との勝点差を「4」に詰めることに成功した。
スコアのとおり・・・否、それ以上と言っても差し支えないレベルの、圧倒的な内容の差だった。「惨敗」という表現すら生ぬるく感じるくらいに、信じられないほど全く歯が立たなかった。試合の入りは悪くなかったが、セットプレイで先制を許してからは完全に川崎のリズムに飲み込まれてしまった。相手に先制を許したのは、これでリーグ5戦連続。それ自体が大きな問題なのは論を俟たないが、このうちセットプレイによるものは今回が初めて。今季セットプレイでの失点が少ないのが東京の強みだったが、その芯がいきなり揺るがされた。そういう意味では、この大一番で下田を先発させ、CKのキッカーを任せた川崎の選手起用は見事に的中したといえるだろう。その後は当然東京が攻めこんだが、川崎の強みでもある素早いプレッシングの前に少しずつパスの精度が狂ってしまった。主に髙萩が狙っていた、ちょっとしたボールの持ち出しによる局面の打開も、読まれていた場面が多かった。後半立ち上がりにリードを広げられ、リスクを負ってボールにチャレンジせざるを得なくなり、速攻を食らうのは仕方ない面もあったが、あまりに冷静さを欠いた場面もあったのは残念。ほぼマイボールだったこぼれ球を、みすみす相手に渡して決められた3失点目は象徴的だった。ここまで積み重ねてきたサッカーで、真正面から川崎と対峙したが、残念ながら川崎の方が明らかに強かった。この現実は受け止めるしかない。まずは今日の試合で露呈した乱れを正すことが先決だろう。内容がほとんど伴わない完敗だったにも関わらず、試合後にスタンドに残ったファンからは激励の拍手が少なからず送られていた。下を向いている時間は無い。