首位・東京にとってリーグ戦2連敗中という難しい状況で迎えた、全34節の折り返し地点となる第17節。今節の対戦相手は、ACLの関係で消化試合数の少ない川崎・鹿島を抜き、暫定2位に浮上してきた横浜だ。東京と横浜の勝点差は「3」。今節の結果によっては首位交代もあり得るという大一番である。東京は失点がリーグ最少タイの「10」という鉄壁の守備を誇るのに対し、横浜は得点がリーグ最多の「27」という圧倒的な攻撃力が持ち味。どちらの持ち味が発揮されるか、いわゆる「ほこたて」対決というやつだ。今節は試合後に海外移籍が決定した久保のセレモニーが行われることもあり、勝って気持ちよく久保を送り出したい気持ちもある。東京の気になるスタメンは、前節と同じ11人をチョイス。負けている中で強気の選考だ。内容は悪くないという判断なのだろう。対する横浜も、結果を出し続けている仲川・エジガル・遠藤という強力な3トップを揃えてきた。
スタートのシステムを確認すると、東京は東が右サイド、サンホが左サイドに入っている。立ち位置が前節と逆だ。室屋・小川との縦関係のユニットの相性も考慮したのかもしれない。しかし先に積極的な姿勢を見せてきたのは横浜。ハーフスペースに危険なボールをどんどん入れてきて、東京は意識が中へ中へと集中。代わりにサイドにスペースが生まれてくる。すると15分、仲川が右サイドを一気に縦に突破して中に侵入。折り返しをマルコスが押し込み、アウェイの横浜が先制。厳しい立ち上がりだ。しかし17分、羅相浩が左サイドからカットインして強引にシュートへ持ち込むと、これがGKのファンブルを誘ってゴール右隅に転がり込み、1-1の同点。相手のミスによるものではあるが、形はどうあれゴールはゴールだ。そしてこれでチームが勢いを取り戻すのだからサッカーは分からない。38分、髙萩が裏のスペースに蹴ったボールに永井が抜け出すと、飛び出してきたGKの頭上を抜くループシュートを決めて2-1と逆転。シンプルだが横浜の弱点を見事に突く形でリードを奪い、前半を終える。後半に入っても東京のペースは変わらない。55分、中央の髙萩から左サイドのスペースへ走った永井へロングパスが出ると、永井がドリブルでハーフスペースまで持ち込み、ファーサイドへの折り返しをフリーのディエゴが頭で押し込んで3-1。62分には中央に入り込んだ小川の意表を突くスルーパスに永井が抜け出し、シュートのこぼれ球をディエゴが押し込んで4-1。前節までのゴール欠乏症が嘘のようなゴールラッシュで、後半の早い時間帯で一気に横浜を突き放す。3点差ということもあり、試合はほぼ決まりかに見えたが、横浜も69分のエジガルの決定機を境に攻勢を強める。東京は髙萩を下げてアルトゥールを投入。中盤を落ち着かせて幕引きを図りたいところだが、横浜が次々に前線の危険なエリアへボールを入れてきて、それを許してくれない。83分、仲川に追撃の1点を許して2点差に詰め寄られると、さすがに心中穏やかでない気分になったが、それ以上の失点を許すほど東京の守備も甘くはなかった。どうにか逃げ切り、4-2で試合終了。東京が横浜との勝点差を「6」に広げ、首位の座をしっかりと守り切った。
先制こそ許したものの、そこからの立て直しがパーフェクトに近かった。見事な逆転勝利だった。サンホの同点弾は相手GKのミスによるものだったが、カットインからのシュートという、サイドからの崩しの中で唯一「個」で完結できる形を迷わず選択したことが吉と出た。前節と同じスタメンながら、東とサンホの立ち位置を代える配置転換が的中した場面でもあった。また、「原点回帰」というほど大それたものではないにせよ、割り切って裏のスペースに蹴る作戦が完璧に当たった。慎重になりすぎて自滅した前節からよく立て直したものだ。個人的にはアタッカー陣だけでなく、髙萩が素晴らしいプレイを見せていたと思う。特に左サイドでのキープから永井に出した2点目のロングパスは最高だった。守備の立て直しも良かった。ハーフスペースを繰り返し突かれ、中を意識しすぎて仲川をフリーにしてしまったことが1失点目の遠因に感じたが、中盤の選手がサイドのカバーに入ってスペースを埋めるようにしてからは、その流れも切ることができた。課題を挙げるならば4-1にした後の試合運びだ。もう「閉店」にしても良い展開だったが、ゲームスピードを落とせず、横浜のペースにしてしまったのは明確な課題。アルトゥールの起用法も含めて見直しが必要かもしれない。ただ、とにかく今日は連敗を止められたことが全てだ。久保がチームを離れてからさっぱりゴールを奪えず気を揉んでいたが、その懸念も今日の大量得点でひとまず払拭でき、ひと安心といったところ。試合後の久保の壮行セレモニーも非常に良い雰囲気で、大満足の夜だった。