今日は夜にユアスタで仙台×東京のカードを観戦する予定となっており、昼の予定が空いている。こうなれば自然とJFLや地域リーグの日程が気になるところだ。調べてみると、ちょうど松島で東北1部のコバルトーレ女川×盛岡ゼブラというカードを発見。これならばハシゴ時間にも余裕がありそうだ･･･ということで、朝の新幹線で仙台に乗り込み、仙石線に乗り継いで陸前富山へ。初訪問の松島フットボールセンターは陸前富山駅から歩いて20分程度。人工芝のピッチが2面あり、客席が広いピッチ1で試合が行われる。地域リーグとはいえ、選手紹介などの場内アナウンスもしっかり行われており、れっきとした｢女川のホームゲーム｣という雰囲気。地域リーグによくある｢試合をやるだけ｣の簡素な雰囲気と異なり、観客がいることを想定している感じで良いと思う。そのホーム扱いとなる女川だが、昨季はクラブ初となるJFLの舞台で戦ったものの、残念ながら1年での東北リーグ降格。今季は再出発のシーズンとなっている。今季の東北1部はいわきFCが早速全勝で首位を快走しており、女川はそれを追う形。対する盛岡ゼブラは東北1部の中では中堅どころのクラブだが、今季は既に3勝を挙げており、決して侮れないチームだ。

試合序盤は盛岡が攻勢。積極的な仕掛けからセットプレイのチャンスを作る。盛岡はDFラインがやや個人プレイという感じで、統率がやや緩い印象を受けるが、そのぶん対人はしっかりしている。2トップのプレスバックもあって、女川に思うように組み立てさせていないのも大きい。前半の中盤に差し掛かるまでは危ういながらも0-0の均衡状態が続き、33分には盛岡の直接FKの場面から古谷がシュートに持ち込むものの、GKがセーブ。続くCKもフィニッシュに持ち込むが、これまた女川が跳ね返してピンチ脱出。すると36分、女川が左サイド深くまで粘って持ち込んだ野口のクロスを池田がボレーで決めて1-0。続く37分には、野口のヘディングシュートがゴールポストを叩き、跳ね返りを拾った池田がミドルを右隅に叩き込んで2-0。43分にも女川がカウンターから追加点を挙げ、僅か10分間で一気に3点を積み重ねてHTに入る。盛岡は前線のプレスバックが徐々に掛からなくなり、個人プレイで持ちこたえていた守備が崩れてしまった形だ。後半に入ると、その流れはますます色濃いものとなり、女川のゴールラッシュとなる。まず64分、右CKを桝沢がヘディングで叩き込み4-0。75分には中盤での奪取から嶺岸がスルーパスを通し、池田が左隅に決めて5-0。池田はこれでハットトリック達成だ。再開直後にもカウンターから途中出場の武田が決めて6-0。なおも攻勢を緩めない女川は、81分に野口、82分に梅田が決めて2得点を追加。終わってみれば8-0の大差で試合終了。女川は優勝争い返り咲きへの足掛かりを掴む、会心のゲームとなった。

少なくとも女川が先制する前の35分くらいまでは、とても8点差がつくような内容ではなかった。盛岡は個人のスキルは悪くなかった。2トップのプレスバックが地味に効いていて、女川はなかなか組み立てられずにいた。しかし女川がサイドを使ってしっかり手数をかけて先制すると、それこそ｢ガラガラ｣という音が聞こえてきそうなくらいに盛岡の守備が崩れてしまった。立ち上がりからDFラインの裏を何回か使われるという失点の兆しはあったが、それにしても突然のことだった。3点差で迎えた後半になると盛岡は前線のプレスが掛からなくなり、女川はセカンドボールを拾い放題。女川がセットプレイで中押しの4点目を決めると、それがゴールショー開始の合図になった。盛岡は後半の途中からメンタル的に｢切れてしまった｣感じで、立て続けの失点などはそれを象徴していた。そこは少し残念な印象だ。女川はセットプレイ中心にチャンスを作られて難しい入り方となったが、慌てずにボールを回してリズムを作ることができた。中でもトップ下の10番･池田の存在感は抜群だった。常に周囲を見ながら動き回り、あらゆる局面に顔を出した。ハットトリックは納得の出来といえる。JFL昇格から僅か1シーズンで東北へのリターンを余儀なくされた女川だが、粘り強い繋ぎと鋭いカウンターという2つの持ち味を堪能することができた。最後まで一切手を抜かずに戦いきる集中力の高さも、全国リーグの舞台を経験した賜物なのだろうなと感じた。次に女川のホームゲームを観る際にはできれば女川の地を訪れたいなと思いつつ、松島を後にした。