間違いなく、正念場の一戦を迎えた。この2週間、日本サッカーにおける最大のトピックスといえたのは、久保のレアルマドリードへの完全移籍決定。スペインで長く過ごした経験のある久保が18歳になってすぐに届いたメガクラブからのオファーを受けるのは、ある意味当然であり、そこには純粋に頑張ってほしいという気持ちしかない。その一方で、東京は残りのシーズンを久保抜きで戦わなければならなくなった。加えて、リーグ戦の中断中に行われた日本代表の試合に召集されていた永井が肩を負傷。今週末の試合には出ることができない。前節までの主力2名が一気に欠けることとなった今節、迎える相手は13位の神戸だ。4月からリーグ7連敗を喫するなど苦しい神戸だが、今節はとにかく「読めない」。リージョ監督の契約解除からバトンを引き継いだ吉田監督が、前節の後に退任。今節からはフィンク新監督が指揮を執る。サンペールとダンクレーの2人の外国籍選手が出場停止の一方、イニエスタが第9節以来のスタメンに入るなど、どのような戦いをしてくるのかが読めない状況だ。生憎の雨に見舞われた味スタだが、相手がイニエスタ擁する神戸ということもあり、チケットは売れに売れて38,000人を超える大入りに。今季初のナイトゲームでもあるが、新設されたリボンビジョンやLEDの照明を使った試合前のライトアップの演出にスタンドから驚きの歓声が上がる。
試合の立ち上がりは出入りの激しい展開。東京は矢島が身体を張ってボールを収め、ディエゴをフォローする形。いつもと勝手が違うせいか、ディエゴの持つ時間がやや長いように見える。矢島自身にもシュートチャンスが何回か訪れるが、神戸も守護神の金承奎が立ちはだかる。神戸は監督交代の影響もあるのか、まずは守備をしっかりというスタンスで、なかなかスペースを与えてくれない。イニエスタとビジャの連携は当然怖いが、ウェリントンがトップ下のような位置取りでボールに多く絡んできて捉えどころが無い感じだ。14分の小川のシュートがクロスバーに当たるなど、何度かピンチはあったものの、無失点で前半終了。しかし49分、神戸は右サイドからのクロスが流れたところを拾ったイニエスタがニアサイドを撃ち抜くミドルを突き刺して0-1。シュート威力は少し弱めに見えたが、林の反応が一歩遅れた。クロスを警戒してシュートを予測していなかったか。直後の53分、今度は神戸にミスが出る。GK・金承奎のキックミスにより、ボールはゴール正面で待つ矢島のもとへ。「決めるだけ」という場面がいきなり生まれるが、矢島のシュートは金承奎が足に当てて間一髪。東京は相手に貰ったビッグチャンスを逃してしまう。長谷川監督は早い時間帯にサンホとインスを2枚同時に投入し、何とか流れを変えようと試みるが、撤収を図る神戸の守備を崩すことができない。84分には左FKを橋本が頭で合わせるが、ゴールポストに弾かれて同点にはならず・・・。これが最後の決定機だった。0-1で試合終了。神戸に逃げ切りを許す形となり、東京にとっては今季リーグ戦初のホームゲームでの敗戦となった。
神戸が監督交代後の初戦で堅実に90分間を戦い抜いた。フィンク監督の指揮下で準備時間は多くなかったと思うが、そのぶんしっかり守備を整えてきた。かつてバイエルン在籍時には勝ち試合でのクローザー的役割をしていた印象の強いフィンク監督だが、さすがの手腕といったところ。アウェイでの試合というのも、割り切る上でプラス材料になったのではないかと思う。東京にとっては、端的にショックの大きな敗戦だ。チャンスは少なかったが、それでも仕留められそうな場面は何回かあり、そこを決めきれなかったことで苦しくなってしまった。後半立ち上がりに失点してしまったのに対し、直後に貰ったチャンスを決めきれなかったことで、神戸に自信を与えてしまった感は否めない。多少ディエゴに依存しているように見えたとはいえ、久保と永井の不在の影響はそれほど感じなかったが、だからこそ結果を出して安心感を得たかった。それだけに、重く響く敗戦だった。