そういえば、今季はまだJ3を観に行けていない。どこかで現地観戦できる機会があればと考えていたのだが、ちょうどこの週末にJ1が行われないこともあり、日曜日に行われる三ツ沢でのYSCC×北九州を選択した。J3では下位に甘んじるシーズンの続くYSCCだが、今季は10試合を終えて既に4勝。例年を考えれば決して悪くない序盤戦だ。特に前節はアウェイで沼津を破っており、見どころはありそう。対する北九州は昨季J3最下位という屈辱を味わったが、今季は「昇格請負人」として知られる小林伸二監督が就任。さっそく上位争いに名を連ねている。前節はホームで熊本との上位対決に敗れて首位の座を譲っており、このまま優勝争いに踏みとどまるためにも負けられない試合だ。三ツ沢の天候はどんよりとした曇り。観戦日和という感じではないが、選手にとっては悪くない条件だろう。
立ち上がりは北九州がこぼれ球をしっかり拾ってリズムを作る。手数をかけた繋ぎはそれほど多くなく、2トップの一角に入る町野を狙ったクロスなどからフィニッシュを狙う場面が何回かあったが、YSCCもしっかりと寄せて対応してフリーでは撃たせない。序盤は劣勢だったYSCCも、前に出て行って奪うプレスが徐々に機能するようになる。前半はこれといって大きな動きのないまま0-0で終了。後半、北九州は負傷のディサロに代えて池元を投入。すると54分、北九州は中盤からの縦パスに池元が抜け出し、やや狭い角度ながらしっかりと決めて北九州が先制。後半立ち上がりの、YSCCは少し自陣に引き気味で、中盤の出し手にプレスをかけに行けなかったのが裏目に出た感じだ。YSCCも60分にカウンターから浅川が抜け出すチャンスを作り、ここからはややオープンな攻防が増える。前に出てきたYSCCに対して北九州がカウンターで狙うスペースが増えてきたものの、なかなか追加点を奪えない。YSCCも終盤に波状攻撃を仕掛ける場面があったが、北九州もDFの気迫のカバーリングでボールを跳ね返し、何とか1点を守り切る姿勢だ。そして迎えた後半AT3分、北九州はカウンターから町野が1人で相手陣内へ持ち込み、DF2人に付かれながらもPA外から強引に放ったシュートがゴール左隅に決まって0-2。これでようやく試合に決着をつけた形だ。粘るYSCCを振り切った北九州がクリーンシートで試合を制し、首位・熊本にプレッシャーを与える勝点3を獲得している。
1点勝負をしっかりモノにできる北九州の勝負強さが光った試合だったのではないか。前半の攻勢をかける時間帯で得点を獲り切れず、徐々にホームチームに押し返される難しい試合展開だったが、その時間帯をしっかりと凌ぎ、後半の早い時間帯に先制点をマーク。その後再び押し込まれる展開となり、カウンターもなかなか決まらなかったが、守備が最後まで集中を切らさなかった。こういう試合で我慢できるチームは強い。首位争いに絡んでいるのも納得のいく内容だった。フィニッシュに多く絡んでいた町野は決して器用なタイプではないが、身体を張ってボールを収め、時間を作っていた。小林監督の好きそうな選手だ。先制点の池元はクラブの「ニューウェーブ北九州」時代を知るフランチャイズプレーヤーで、この苦しい試合で途中出場してからすぐにゴールを決めてくるところもさすが千両役者といった感じだ。ホームのYSCCも攻守においてバランスよく戦えていたが、後半の立ち上がりだけは少し慎重になりすぎてボールに行けていなかった印象。ただ、先制を許してからの人数をかけた攻撃には迫力があり、昨季までにJ3で観てきたYSCCの「火力不足」からはワンランク上がっていたように見えた。まだシーズン序盤であり、両チーム共に今後の戦いが楽しみに思える試合だった。