前々節の札幌戦を勝利で飾り、カップ戦とリーグ戦のアウェイ連戦を戦いホームに戻ってきた東京。ルヴァンカップの鳥栖戦では1-0と勝利を収め、プレーオフステージ進出を決めることができたが、先週末に行われたリーグのC大阪戦では終盤の失点で0-1と敗れ、遂にリーグ戦で土がついた。ただ、重要なのは連敗をしないことであり、そのためにも今節の大分戦は負けられない。鳥栖戦のラフプレイによってリーグ戦2試合出場停止の処分が科されているヒョンスが前節に続いて試合に出られないものの、既に出番を重ねている渡辺がスタメンに名を連ねており、大きな問題にはならないだろう。大分の片野坂監督はG大阪時代にコーチとして長谷川監督を支えた経歴があり、いわゆる「師弟対決」でもあるようだ。今季の大分はJ1昇格シーズンであるが、緻密なパスワークを駆使したロングカウンターを武器に開幕からコンスタントに勝点を積み重ね、現在も4位につけている。
試合は東京のピンチで幕を開ける。4分、自陣右サイド深くで渡辺がオナイウにボールを奪われ、PAに侵入を許す。オナイウのラストパスに星がフリーで飛び込む決定機となるが、足元を狙ったシュートを林が足に当てて阻止。時間帯、そして奪われる形が良くなかっただけに、チームを救うビッグプレーだった。その後は東京がミスに気を付けながら試合を進める慎重な時間が続く。すると30分、久保が右サイド深くまで切り込んでマーカーを引き付け、フリーの室屋へパス。室屋の折り返しを橋本がヘディングでゴール右隅に叩き込み、東京が先制する。ボールを持ちながらもなかなか思うようにシュートまで持っていけない中、大きな意味を持つゴールだった。更に39分、中盤でボールを奪った久保がドリブルで持ち込み、シュートがDFに当たってゴールイン。若干ラッキーな得点ではあったが、今の久保にはこんな運さえも味方につけてしまうような雰囲気がある。後半に入り54分、今度は久保が右サイドの仕掛けから鮮やかな切り返しでマーカーを完全に振り切るも、クロスは得点に結びつかず。しかし久保のパフォーマンスはもはや「独壇場」といって差し支えないレベルだ。59分、大分はオナイウがゴール前でマークに付かれながらも強引に振り抜いたシュートがゴール右隅に突き刺さり、1点を返す。ここまで圧倒的な東京のペースだった分、この1点の意味は大きかった。ピッチ上の情勢は一変、大分が押す展開となり、片野坂監督はすかさず交代カードを駆使してシステムを4-2-3-1に変更。攻撃にかける人数をかけて押し込んでくる。それでも東京は跳ね返し続け、後半ATに大分のバックパスを奪った久保がGK・高木をかわして無人のゴールに流し込んで3-1。これがとどめの1点となった。粘る大分を最後に突き放して試合を決めた東京が、連敗を食い止める貴重な1勝を飾った。
フィジカル的にかなり追い込まれ、コストをかけた試合だっただけに、価値のある勝利だった。中途半端なボールロストで一気にカウンターを食らう恐れがある中、慎重に試合を進めて先制できたことが大きかった。後半は1点返されたのを境に押される時間が続いたが、信頼感のある最終ラインの守備、久保の仕掛け、前線で時間を作ってくれるディエゴの存在に助けられた。大分は前半立ち上がりのビッグチャンスを決めていたら全く違うゲームにできていた可能性のあった試合。星と松本のサイド入れ替えや、後半のシステム変更など様々な策を講じ、選手もそれに応えてあと一歩という所まで東京を追い詰めてきた。上位争いをしているのも納得の強さだった。本当に苦しい試合だった東京だが、全ての得点に関与した久保の存在が決定的に大きかった。先制点は久保がマークを2人引き付けて室屋をフリーにしたことで得点が生まれたし、自身が決めた2,3点目はフィニッシュは勿論、その前のボール奪取が見事。改めて久保の成長を実感した。チームとしても我慢の試合運びができており、首位固めに向けて大きな意味を持つ1勝だった。